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025 | 平成21年度後期 | 横浜国立大学 | 工学部 | ・・・ | 整数問題(数学TB) | 標準 |
この問題は目標に向かって誘導が適切な良問と思う。その誘導を適切に理解し乗っかる
ことが出来るかどうかが合否の分かれ目だろう。
横浜国立大学 工学部(2009)
次の問いに答えよ。
(1) x2−y2=2009 をみたす正の整数 x , y の組をすべて求めよ。
(2) x2+y2=41 をみたす正の整数 x , y の組をすべて求めよ。
(3) 式 (ac−bd)2+(ad+bc)2 を因数分解せよ。
(4) n を正の整数とする。x2+y2=2009n をみたす正の整数 x , y が存在することを
示せ。
この問題の眼目は当然(4)だろう。そのために分かりやすく導入がなされている。(3)の
因数分解を見て、「易しいジャン!」と思った人で(3)が主張するところの真実の意味を理
解しない場合は、(4)で躓く手順になっている。(3)に対する心構えで、この問題の得点率
は大きく左右すると思われる。
(解)(1) (x+y)(x−y)=72・41 より、
( x+y , x−y )=( 2009 , 1 )、( 287 ,7 )、( 49 , 41 ) なので、
( x , y )=( 1005 , 1004 )、( 147 ,140 )、( 45 , 4 )
(2) x2+y2=41 より、 y2=41−x2≧0 である。
x は正の整数なので、 x=1 、2 、3 、4 、5 、6
x=1 のとき、 y2=40 (不適) 、 x=2 のとき、 y2=40 (不適)
x=3 のとき、 y2=32 (不適) 、 x=4 のとき、 y2=25 より、 y=5
x=5 のとき、 y2=16 より、 y=4 、 x=6 のとき、 y2=5 (不適)
以上から、 ( x , y )=( 4 , 5 )、( 5 , 4 )
(3) (ac−bd)2+(ad+bc)2=a2c2−2abcd+b2d2+a2d2+2abcd+b2c2
=a2(c2+d2)+b2(c2+d2)
=(a2+b2)(c2+d2)
(別解) 虚数単位を i として、
ac−bd+i・(ad+bc)=a(c+id)−b(d−ic)
=a(c+id)+ib(c+id)
=(a+ib)(c+id)
このとき、両辺の絶対値をとれば、所要の等式が示される。 (終)
(4) 2009=72・41=72・(42+52)=282+352 なので、
x2+y2=2009 をみたす正の整数 x , y が存在する。
このことは、命題:「x2+y2=2009n をみたす正の整数 x , y が存在する」が、n=1
のとき成り立つことを示す。
n=k(kは1以上の任意の正の整数)のとき、命題が成り立つと仮定する。
すなわち、 x2+y2=2009k をみたす正の整数 a , b が存在する。
このとき、 a2+b2=2009k
また、 282+352=2009 なので、
(a2+b2)(282+352)=2009k・2009=2009k+1
(3)より、 (a2+b2)(282+352)=(28a−35b)2+(35a+28b)2 なので、
(28a−35b)2+(35a+28b)2=2009k+1
すなわち、x2+y2=2009k+1 をみたす正の整数
x , y が存在する。
このことは、命題が、n=k+1 のときも成り立つことを示す。
以上から、数学的帰納法により、
すべての正の整数 n に対して、x2+y2=2009n をみたす正の整数 x , y が存在する
ことが示された。 (終)
平成21年3月15日付けで、当HPがいつもお世話になっているS(H)さんが、n=12の
場合に、x2+y2=200912 をみたす正の整数 x , y を求められた。
(1) | 1443 2390 5685 2005 0609 | 6414 3958 0823 1133 6040 | |
(2) | 1581 4121 2856 1247 7359 | 6381 7355 1939 5612 3760 | |
(3) | 2816 0762 0849 1717 1920 | 5941 1385 5652 6275 5759 | |
(4) | 2943 7098 7358 5620 0200 | 5878 9441 8582 3738 1809 | |
(5) | 4051 5437 8898 5491 8991 | 5178 0696 6791 7696 7880 | |
(6) | 4162 4120 1502 0449 8641 | 5089 3750 8708 9730 4160 |
解は、全部で6個かな?
また、S(H)さんは、上記の話題に関連して次のHPを紹介された。
http://arxiv.org/PS_cache/arxiv/pdf/0812/0812.4850v1.pdf
上記問題(3)の恒等式は、「Brahmagupta Fibonacci identity」(ブラマーグプタ・
フィボナッチの恒等式)と呼ばれるらしい。
上記HPで、「1318」という数が、{ 6 , 16 , 26 , 41 }の4種類の数のみを用いて、
1318=6・41+16・26+16+41=6・16+6・26+26・41
という2つの表現が可能という事実は面白いですね!
さらに、S(H)さんは、数学的帰納法に依らない直接的な構成を与えて証明された。
すなわち、ガウス平面において、
複素数 z=7n(4+5i)n (i は虚数単位)の絶対値の平方は、
|z|2=(72|4+5i|2)n=(72×41)n=2009n
そこで、 z=x+y・i として、z の実部 x と虚部 y を、
x=(z+)/2=7n・{(4+5i)n+(4−5i)n}/2
y=(z−)/2i=7n・{(4+5i)n−(4−5i)n}/2i
と定義すると、 x 、 y は明らかに整数となる。このとき、必要があれば、−x 、−y を考える
ことにより、
x2+y2=(x+y・i)(x−y・i)=z=|z|2=2009n
となる正の整数 x 、 y は必ず存在する。よって、命題は証明された。
(コメント) 数学的帰納法による証明も数学的ですが、直接的な証明も味があっていいで
すね!直接的な証明を与えていただいたS(H)さんに感謝します。
上記の証明で x 、 y は負の整数の場合もあるので、少し加筆しました。S(H)
さんのご指摘に感謝します。S(H)さんが求められたように、絶対値の方が適切
かもしれません。
「{(4+5i)n+(4−5i)n}/2 、{(4+5i)n−(4−5i)n}/2i がともに整数」という話題
に関連して、S(H)さんは、東京女子大学の問題を紹介された。
(5+)(1−
)n+(5−
)(1+
)n は整数であることを示せ。
(解) α=1+ 、β=1−
とおくと、 αβ=−4
このとき、 与式=αβ(βn-1−αn-1)=4
(αn-1−βn-1)
2項定理により、
αn-1=1+n-1C1+n-1C2(
)2+n-1C3(
)3+・・・・・
βn-1=1−n-1C1+n-1C2(
)2−n-1C3(
)3+・・・・・
よって、 αn-1−βn-1=2(n-1C1+n-1C2・5+n-1C4・52+・・・・・) より、
与式=40(n-1C1+n-1C2・5+n-1C4・52+・・・・・) となり、整数である。 (終)
さらに、S(H)さんの創作問題
(7−i)(4+5i)n+(7+i)(4−5i)n は整数であることを示せ。
も出されたが、これはほとんど自明だろう。
実際に、 z=(7−i)(4+5i)n とおくと、与式=z+=2・Re(z)で、
z=(7−i)(4+5i)n=(7−i)(a+bi) (a、bは整数) と書けることから、
与式=2・Re(z)=2(7a+b) は整数
となる。
ところで、平成21年3月16日付けで、S(H)さんが指摘されているように、この横浜国立
大学の問題の底流には、整数論における深遠な話題が流れている。
小学校で学ぶ自然数の素因数分解と同様に、ガウスの整数環 Z[i] において、いつ有
理整数が合成数となるかを問う問題とも関連している。
すなわち、次の事実(フェルマー・オイラーの素数定理)が知られている。
( → 参考 : 「整数論の基礎知識」の中のフェルマー・オイラーの素数定理)
有理整数 p が、4で割って 1 余る数のとき、
方程式 x2+y2=p は、有理整数解を必ず持つ
(換言すれば、4で割って1余る有理整数は、Z[i] において、合成数となる!)
ここで、2009≡1 (mod 4) なので、フェルマー・オイラーの素数定理により、
x2+y2=2009n をみたす正の整数 x , y が必ず存在する。
(但し、必要があれば、−x 、−y を考える)
横浜国立大学の問題には、上記のような理論が背景にあったわけである。
もっとも、入試の答案で、「フェルマー・オイラーの素数定理より、云々」と書いたら、まず、
○はもらえない方の確率が高いかもしれないが...。
ところで、S(H)さんからの練習問題です。
練習問題
(1) x2+y2=1777 をみたす正の整数 x , y の組をすべて求めよ。
(2) (イ) x2+y2=641497n をみたす正の整数 x , y が存在することを証明せよ。
(ロ) x2+y2=6414972 をみたす正の整数 x , y の組は何組存在するか。
(ハ) x2+y2=6414973 をみたす正の整数 x , y の組は何組存在するか。
(ニ) x2+y2=6414974 をみたす正の整数 x , y の組は何組存在するか。
(ホ) x2+y2=6414975 をみたす正の整数 x , y の組は何組存在するか。
(ヘ) x2+y2=641497n をみたす正の整数 x , y の組が何組存在するかを予想し、
その予想が正しいことを証明せよ。
(コメント) 当初、問題を間違えて、「x2+y2=64197 をみたす正の整数 x , y の組は
何組存在するか。」としてしまった! 64197≡1 (mod 4) より、整数解は
存在するはずだから、「まっ、いいか!」としたが、ところがどっこい、
y2=64197−x2≧0 より、 x=1、2、3、・・・、253
で、しらみつぶしに調べても解を見いだせなかった。(Excelを利用)
これはどこに原因があるのだろうか?不思議だ?
64197=32×7×1019 で、 7≡3 (mod 4) 、 1019≡3 (mod 4)
だから、存在しないのでしょう!
(解答) (1) y2=1777−x2≧0 より、 x=1、2、3、・・・、42
しらみつぶしに調べて、解は、
( x , y )=( 16 , 39 )、( 39 , 16) の2組
(2) (イ) n=1 すなわち、 x2+y2=641497 の場合を考える。
y2=641497−x2≧0 より、 x=1、2、3、・・・、800
しらみつぶしに調べて、解は、
( x , y )=( 304 , 741 )、( 741 ,304 ) の2組
ところで、 641497=192×1777 であることを考えると、横浜国立大学の問題と
同様にして考えれば、しらみつぶしに調べなくとも、次のようにして解は求められる。
すなわち、 162+392=1777 より、
(19×16)2+(19×39)2=192×1777=641497
よって、 3042+7412=641497 が成り立つ。
一般に、ガウス平面において、
複素数 z=19n(16+39i)n (i は虚数単位)の絶対値の平方は、
|z|2=(192|16+39i|2)n=(192×1777)n=641497n
そこで、 z=x+y・i として、z の実部 x と虚部 y を、
x=(z+)/2=19n・{(16+39i)n+(16−39i)n}/2
y=(z−)/2i=19n・{(16+39i)n−(16−39i)n}/2i
と定義すると、x 、 y は明らかに整数となる。このとき、必要があれば、−x、−y を考える
ことにより、
x2+y2=(x+y・i)(x−y・i)=z=|z|2=641497n
となる正の整数 x 、 y は必ず存在する。
(ロ)〜(ホ)については、Brahmagupta Fibonacci identity
(a2+b2)(c2+d2)=(ac−bd)2+(ad+bc)2
が活躍する。
n=2 すなわち、 x2+y2=6414972 をみたす正の整数 x , y の組を探そう。
(イ)より、 3042+7412=641497 に注意して、起こりうる場合を考えて、
6414972=(3042+7412)(3042+7412)
=(304・304−741・741)2+(304・741+741・304)2
=4566652+4505282
6414972=(3042+7412)(7412+3042)
=(304・741−741・304)2+(304・304+741・741)2
=02+6414972
よって、この場合は、
( x , y )=( 456665 , 450528 )、( 450528 ,456665 ) の2組
n=3 すなわち、 x2+y2=6414973 をみたす正の整数 x , y の組を探そう。
641497=3042+7412 、6414973=641497・6414972 と考えて、
起こりうる場合は、
6414973=(3042+7412)(4566652+4505282)
=(304・456665−741・450528)2
+(304・450528+741・456665)2
=1950150882+4753492772
6414973=(3042+7412)(4505282+4566652)
=(304・450528−741・456665)2
+(304・456665+741・450528)2
=2014282532+4726674082
6414973=(3042+7412)(02+6414972)
=(304・641497)2+(741・641497)2
=1950150882+4753492772
よって、この場合は、
( x , y )=( 195015088 , 475349277 )、
( 475349277 ,195015088 )、
( 201428253 ,472667408 )、
( 472667408 ,201428253 ) の4組
n=4 すなわち、 x2+y2=6414974 をみたす正の整数 x , y の組を探そう。
6414974=6414972・6414972=641497・6414973 と考えて、
起こりうる場合は、
641497=3042+7412
6414972=4566652+4505282=02+6414972
6414973=1950150882+4753492772=2014282532+4726674082
であることに注意して、
6414974=(4566652+4505282)(4566652+4505282)
=(456665・456665−450528・450528)2
+(456665・450528+450528・456665)2
=55674434412+4114807382402
6414974=(4566652+4505282)(4505282+4566652)
=(456665・450528−450528・456665)2
+(456665・456665+450528・450528)2
=02+4115184010092
6414974=(4566652+4505282)(02+6414972)
=(450528・641497)2+(456665・641497)2
=2890123604162+2929492275052
6414974=(641497・641497)2
=4115184010092+02
6414974=(3042+7412)(1950150882+4753492772)
=(304・195015088−741・475349277)2
+(304・475349277+741・450528)2
=2929492275052+2890123604162
6414974=(3042+7412)(4753492772+1950150882)
=(304・475349277−741・195015088)2
+(304・195015088+741・475349277)2
=02+4115184010092
6414974=(3042+7412)(2014282532+4726674082)
=(304・201428253−741・472667408)2
+(304・472667408+741・201428253)2
=2890123604162+2929492275052
6414974=(3042+7412)(4726674082+2014282532)
=(304・472667408−741・201428253)2
+(304・201428253+741・472667408)2
=55674434412+4114807382402
よって、この場合は、
( x , y )=( 5567443441 , 411480738240)、
( 411480738240 ,5567443441)
( 289012360416 ,292949227505)
( 292949227505 ,289012360416) の4組
n=5 すなわち、 x2+y2=6414975 をみたす正の整数 x , y の組を探そう。
6414975=6414972・6414973=641497・6414974 と考えて、
起こりうる場合は、
641497=3042+7412
6414972=4566652+4505282=02+6414972
6414973=1950150882+4753492772
6414974=55674434412+4114807382402
=2890123604162+2929492275052
=02+4115184010092
であることに注意して、
6414975=641497・
6414974
=(3042+7412)(55674434412+4114807382402)
=(304・5567443441−741・411480738240)2
+(304・411480738240+741・5567443441)2
=3032147242297762+1292156200147412
6414975=641497・
6414974
=(3042+7412)(4114807382402+55674434412)
=(304・411480738240−741・5567443441)2
+(304・5567443441+741・411480738240)2
=1209646688351792+3065997298419042
6414975=641497・
6414974
=(3042+7412)(2890123604162+2929492275052)
=(304・289012360416−741・292949227505)2
+(304・292949227505+741・289012360416)2
=1292156200147412+3032147242297762
6414975=641497・
6414974
=(3042+7412)(2929492275052+2890123604162)
=(304・292949227505−741・289012360416)2
+(304・289012360416+741・292949227505)2
=1251015939067362+3049351351476692
6414975=641497・
6414974
=(3042+7412)(411518401009)2
=(304・411518401009)2+(741・411518401009)2
=1251015939067362+3049351351476692
6414975=6414972・6414973
=(4566652+4505282)(1950150882+4753492772)
=(456665・195015088−450528・475349277)2
+(456665・475349277+450528・195015088)2
=1251015939067362+3049351351476692
6414975=6414972・6414973
=(4566652+4505282)(4753492772+1950150882)
=(456665・475349277−450528・195015088)2
+(456665・195015088+450528・475349277)2
=1292156200147412+3032147242297762
6414975=6414972・6414973
=(02+6414972)(1950150882+4753492772)
=(641497・195015088)2+(641497・475349277)2
=1251015939067362+3049351351476692
よって、この場合は、
( x , y )=(303214724229776 ,129215620014741)
=(129215620014741 ,303214724229776)
=(120964668835179 ,306599729841904)
=(306599729841904 ,120964668835179)
=(125101593906736 ,304935135147669)
=(304935135147669 ,125101593906736) の6組
(コメント) 平成21年3月18日付けで、S(H)さんからご教示いただいた。
n=5 のとき、 x2+y2=6414975 をみたす正の整数
x , y の組は、
(120964668835179 , 306599729841904)、(125101593906736 , 304935135147669)
(129215620014741 , 303214724229776)、(306599729841904 , 120964668835179)
(304935135147669 , 125101593906736)、(303214724229776 , 129215620014741)
の 6個存在する。
(へ)については予想だにできませんね!今後の研究課題とします。
S(H)さんの指針がなければ、上記の計算は多分途中で放り出していました!S(H)さん
に感謝します。
当HPがいつもお世話になっているHN「FN」さんが、上記のS(H)さんからの練習問題を
考察された。(平成23年1月4日付け)
練習問題(再掲)
(1) x2+y2=1777 をみたす正の整数 x , y の組をすべて求めよ。
(2) (イ) x2+y2=641497n をみたす正の整数 x , y が存在することを証明せよ。
(ロ) x2+y2=6414972 をみたす正の整数 x , y の組は何組存在するか。
(ハ) x2+y2=6414973 をみたす正の整数 x , y の組は何組存在するか。
(ニ) x2+y2=6414974 をみたす正の整数 x , y の組は何組存在するか。
(ホ) x2+y2=6414975 をみたす正の整数 x , y の組は何組存在するか。
(ヘ) x2+y2=641497n をみたす正の整数 x , y の組が何組存在するかを予想し、
その予想が正しいことを証明せよ。
「641497」という大きな数字が使われていますが、641497を素因数分解すると、
641497=1777・192 で、 1777≡1 、19≡3 (mod 4) であることが本質的で
(2)は、次の問題と実質的に同じです。
(2A) p、q は素数で、p≡1、q≡3 (mod 4)であるとする。
A=p・q2 に対して、x2+y2=An (x<y)を満たす自然数 x、y の組は何組あ
るか。
x=y はありえないので、x<y と限定してもいいのでそうしました。もとの問題の答えの半
分になりますが、このほうがやや考えやすいかなと思います。あるいは逆に、x<y
も x>0
も y>0 もなしにして、x、y が整数だけにしたほうがいいかもしれません。xとyの交換、xや
yの符号の変更があり、基本的には8倍ですが、nが偶数のときに、x、yの一方が0というの
が入ってくるので少し違ってきます。
なお、(1)は(2)で使うために必要なのは何組あるかだけですからその形に変えます。
(1A) p≡1 (mod 4) を満たす素数pに対して、x2+y2=p (x<y) を満たす
正の整数 x、y は何組あるか。
ただし、(1)は具体的な数なのでしらみつぶしが可能ですが、(1A)はそれは無理なので
(1A)は(1)より難しくなります。(2)(ヘ)と(2A)はしらみつぶしができないので難易度に差は
ないでしょう。
(2)の解答が、n=1、2、3、4、5のときに、それぞれ2、2、4、4、6であること、(2A)の
形では、それぞれ1、1、2、2、3であることが書いてあります。ただし、それだけの解があ
ることは書いてありますが、それ以外にはないことは書いてないようです。こちらの方が重
要だと思います。そしてそのためには理論が必要です。
2次体の整数論の基礎的なことだけで十分です。具体的にはガウス整数の素数、単数が
どのようなものかと素因数分解の一意性が成り立つことだけでいいと思います。
(1A)、(2A)を解いてください。
FNさんの問いかけに対して、攻略法さんが考察されました。(平成23年1月6日付け)
(1A) p≡1 (mod 4) を満たす素数pに対して、x2+y2=p (x<y) を満たす
正の整数 x、y は何組あるか。
については、フェルマーの2平方和の定理
4k+1型の素数は、1組の2つの平方数の和で表される
より、解は、1組である。
また、中心が原点で、半径がの円: x2+y2=p の円周上の格子点の個数は、
( ±x ,±y ) 、 ( ±y ,±x ) (複号任意) の8つ
であるので、
(2A) p、q は素数で、p≡1、q≡3 (mod 4)であるとする。
A=p・q2 に対して、x2+y2=An (x<y)を満たす自然数 x、y の組は何組あ
るか。
については、中心が原点で、半径がqの円: x2+y2=A の円周上の格子点の個数を
求めると、
n が奇数の場合 (n+1)/2 個
n が偶数の場合 n/2 個 (02+y2 が1つ を除く)
一般に、x2+y2=m の円周上の格子点の個数は、
定 理 自然数 m を 2つの平方数の和として表す方法の総数Cは、次式で与えら
れる。
C=4・{(m の4k+1型の正の約数の個数)−(m の4k+3型の正の約数の個数)}
で求まる。
系 4k+3型の素数を、2つの平方数の和として表すことは不可能である。
x2+y2=m の円周上の格子点の個数について、攻略法さんからの追記です。
(平成23年1月7日付け)
m=p1e1・p2e2・・・・・ と素因数分解されるとする。関数 g(p,e)を次のように定義する。
pが2なら、 g=1
pが4k+1型の素数なら、 g=e+1
pが4k+3型の素数で偶数個なら、 g=1
pが4k+3型の素数で奇数個なら、 g=0
このとき、x2+y2=m の円周上の格子点の個数は、 g(p1,e1)・g(p2,e2)・・・・
で求まる。
ただし、軸上は含む。第1象限という意味では、mが平方数(指数部がすべて偶数)の場
合は1小さくなる。
これを使って、
(1) x2+y2=1777 をみたす正の整数 x , y の組をすべて求めよ。
は、 1777が4k+1型の素数なので、 g(1777,1)=1+1=2
(2) (ロ) x2+y2=6414972 をみたす正の整数 x , y の組は何組存在するか。
(ハ) x2+y2=6414973 をみたす正の整数 x , y の組は何組存在するか。
(ニ) x2+y2=6414974 をみたす正の整数 x , y の組は何組存在するか。
(ホ) x2+y2=6414975 をみたす正の整数 x , y の組は何組存在するか。
は、 641497=1777・192 で、1777≡1 、19≡3 (mod 4) であることから、
g(1777,1・n)・g(19,2・n) において、 n=2、3、4、5 として、
(ロ) (2+1)・1−1=2 (ハ) (3+1)・1=4 (ニ) (4+1)・1−1=4
(ホ) (5+1)・1=6
また、
(コメント) 当初、問題を間違えて、「x2+y2=64197 をみたす正の整数 x , y の組は何組存在するか。」と
してしまった! 64197≡1 (mod 4) より、整数解は存在するはずだから、「まっ、いいか!」とし
たが、ところがどっこい、y2=64197−x2≧0 より、 x=1、2、3、・・・、253 で、しらみつぶしに調
べても解を見いだせなかった。(Excelを利用)
これはどこに原因があるのだろうか?不思議だ?64197=32×7×1019 で、 7≡3 (mod 4)、
1019≡3 (mod 4) だから、存在しないのでしょう!
については、 g(3,2)・g(7,1)・g(1019,1)=1・0・0=0 より明らかだろう。
攻略法さんの考察に対して、FNさんのコメントです。(平成23年1月6日付け)
(1A)については、まさに定理そのものなので、私としては、ガウス整数についての基本的
な知識
ガウス整数全体が作る整数環 Z[ i ] において、
(1) 単数は、1、−1、i、−i の4つである。
(2) 有理素数 p に対して、
p≡3 (mod 4) のとき、pは素数
p≡1 (mod 4) のとき、p=(u+vi)(u−vi) と書けて、u+vi、u−vi は素数
p=2 のとき、 2=(1+i)(1−i) と書けて、 1+i、1−i は素数である。
以上に出てきた素数とそれに単数をかけたものが、素数のすべてである。
(3) すべての整数は、有限個の素数の積に表せる。またその表し方は単数を除いて一
意的である。
即ち、整数Aが、 A=P1P2・・・Pn=Q1Q2・・・Qm と2通りの素数の積として表され
れば、n=mで、適当に並び変えることにより、
P1=Q1*単数、P2=Q2*単数、・・・、Pn=Qn*単数 とすることができる。
ノルムに関するごく基本的な性質
(0) A=a+bi に対して、ノルム N(A)=a2+b2 とすると、 N(AB)=N(A)N(B)
を前提として解いてほしいと思います。
(1A)の解が1個以上あることは、下記を示すのに必要で、しかも最も重要な部分のように
思います。
(2A)については、正解です。上記を前提として証明してください。
(1A)について、私が考えている証明(ガウス整数の基本的な性質を使った)を書きます。
(証明) x2+y2=p とすると、 (x+yi)(x−yi)=p
一方、素数 u+vi、u−vi を使って、 p=(u+vi)(u−vi) と書けるから、素因数分解
の一意性より、x+yiやx−yiが2つ以上の素数の積になることはなく、これらは素数である。
再び、素因数分解の一意性より、x+yi は、u+vi または u−vi に、1、−1、i、−i
をかけ
たもので、この8通りをこの順に書くと、
( x ,y )=( u ,v )、( −u ,−v )、( −v ,u )、( v ,−u )、
( u ,−v )、( −u ,v )、( v ,u )、( −v ,−u )
u、−uの一方が正、v、−vの一方が正だから、u、vが正としてよい。
u=v であれば、 u2+v2 が偶数になるから、 u<v、u>v の一方が成り立ち、8個
の中に丁度1個、x<y を満たす正の整数 x、y が存在する。 よって、解は、1組。(証終)
この解答からすると、次の問題の方が自然です。
(1B) p≡1 (mod 4)を満たす素数pに対して、x2+y2=p を満たす整数 x、y
は何組あるか。
これであれば、「x+yi は、u+vi または u−vi に、1、−1、i、−i
をかけ
たものである。」が出た段階で8通りとしてよいでしょう。
(1回位は8通り全部書く方がいいけど...。)
(2A) p、q は素数で、p≡1、q≡3 (mod 4)であるとする。
A=p・q2 に対して、x2+y2=An (x<y)を満たす自然数 x、y の組は何組あ
るか。
について、これを少しやさしい問題に変える所までを書いておきます。すっきりしない解答で
す。もう少しきれいに書けると思います。
x2+y2=An とすると、 (x+yi)(x−yi)=An=pn・q2n ・・・ (*1)
両辺のノルムを取って、N(x+yi)N(x−yi)=N(An)=N(A)n=A2n=p2n・q4n
N(x+yi)=N(x−yi) より、 N(x+yi)=pn・q2n ・・・ (*2)
qは素数であるから、x+yi、x−yi がそれぞれ qs、qt で丁度割り切れるとすると、
(*1)より、 s+t=2n で、 (*2)より、 s≧n、t≧n
従って、 s=t=n となり、 x+yi=qn(u+vi) 、x−yi=qn(u−vi)
これを、(*1)に代入して、両辺を q2n で割ると、 (u+vi)(u−vi)=pn
従って、q2n がない場合の問題と同じになる。即ち次の(3A)と(2A)の解は同じである。
(3A) p≡1 (mod 4)を満たす素数 p に対して、x2+y2=pn (x<y)を満たす
自然数 x、y の組は何組あるか。
(1A)と(1B)の関係と同じで、次の(3B)の方が問題としては自然です。まず、(3B)をやって
から(3A)をやるのがいいと思います。
(3B) p≡1 (mod 4)を満たす素数 p に対して、x2+y2=pn を満たす整数 x、
y の組は何組あるか。
攻略法さんが、(3B)について考察されました。(平成23年1月6日付け)
共役のガウス整数を幾つずつ取るかということになるので、4(n+1)個となる。
攻略法さんの考察に対して、FNさんのコメントです。(平成23年1月6日付け)
正しいですが、考察ではなく、できれば証明が欲しいです。実際に、証明を書こうとすると、
意外に面倒なことになると思います。考察と証明の距離は意外に大きいです。
(x+yi)(x−yi)=(u+vi)n(u−vi)n において、
x+yi=(u+vi)s(u−vi)t として、ちょっと考えれば、s+t=n に決まっていて、とかわ
かるけど、その辺もきちんとして、単数の処理もきちんとして・・・。
(証明となるとそんなに簡単でもないと思います。)
このあたりの単純なところをきちんと押さえておけば、一般の場合もすんなりいけるように
なると思います。前に攻略法さんが書かれたルジャンドルの結果の証明もそんなに難しくは
ないでしょう。
以下工事中