レイリーの定理
平成26年12月7日(日)、筑波大学附属駒場高校で行われた数学の研究会で、筑駒の
更科先生から、レイリーの定理の話題を伺った。大変授業が盛り上がる問題とのことである。
レイリー(Rayleigh)の定理
正の無理数 a、b が、 1/a+1/b=1 を満たすとき、[ ]をガウスの記号として、
[ aの自然数倍 ]と[ bの自然数倍 ] は重複せず、これらで自然数を全て網羅できる。
この定理は、Beattyの定理とも言われ、数列 [a]、[2a]、[3a]、 … [b]、[2b]、[3b]、 … は、
Beatty列とも言われる。
一般性を失うことなく、 0<a≦b としてよいので、 1=1/a+1/b≦2/a より、
0<a<2<b
そこで、 a= とおくと、 1/b=(−1)/ から、 b=2+
Excel さんにご協力いただいて計算してみた。
n | [na] | [nb] |
1 | 1 | 3 |
2 | 2 | 6 |
3 | 4 | 10 |
4 | 5 | 13 |
5 | 7 | 17 |
6 | 8 | 20 |
7 | 9 | 23 |
8 | 11 | 27 |
9 | 12 | 30 |
10 | 14 | 34 |
11 | 15 | 37 |
12 | 16 | 40 |
13 | 18 | 44 |
14 | 19 | 47 |
15 | 21 | 51 |
16 | 22 | 54 |
17 | 24 | 58 |
18 | 25 | 61 |
19 | 26 | 64 |
20 | 28 | 68 |
・・・ | ・・・ | ・・・ |
確かに、2つの数列には共通する項がなく、自然数が1、2、3、・・・と出現していて、レイ
リーの定理が成り立っているような...雰囲気!不思議ですね。
S(H)さんから参考文献「PELLIAN REPRESENTATIONS」をご紹介頂きました。
(平成26年12月8日付け)
空舟さんからのコメントです。(平成26年12月9日付け)
レイリーの定理の説明を見つけました。
区間 (-N/b, N/a) は長さNの区間であり、区間の端が無理数なので整数をN-1個持つ。
同様に、区間 (-(N+1)/b,(N+1)/a) は整数をN個持つ。「ちょうど1個だけ増える」ということ
から、次のうち、ちょうど一方だけが成立することが言える。
[1] N/aと(N+1)/aの間に整数が存在する
[2] N/bと(N+1)/bの間に整数が存在する
(コメント) なるほど、「1/a+1/b=1」という条件は、そんな使い方ができるんですね!
レイリーの定理の証明は、それほど難しくないようです。
(証明) <重複がないこと>
ある自然数 m、n、k に対して、 [ma]=[nb]=k が成り立つと仮定する。
このとき、 k<ma、nb<k+1 より、
m/(k+1)<1/a<m/k 、n/(k+1)<1/b<n/k
辺々加えて、 (m+n)/(k+1)<1<(m+n)/k より、 k<m+n<k+1 (矛盾)
よって、2つの数列に共通する項はない。
<自然数が全て網羅できること>
出現しない自然数kがあると仮定する。このとき、ある自然数 m、n が存在して、
ma<k<k+1<(m+1)a 、nb<k<k+1<(n+1)b
が成り立つ。すなわち、
m/k<1/a<(m+1)/(k+1) 、 n/k<1/b<(n+1)/(k+1)
辺々加えて、(m+n)/k<1<(m+n+2)/(k+1) より、k−1<m+n<k (矛盾)
よって、全ての自然数が出現する。 (証終)
DD++さんから別証明を頂きました。(平成26年12月10日付け)
わざわざ背理法を使う必要もなければ、唯一性と網羅性を分けて証明する必要もないよう
に思います。上記証明の遠回りしているところを省くとこんな感じになるかと...。
(別証明) k を自然数とする。
[a]、[2a]、[3a]、 … の中に k 以下の数が m 個あったとすると、
ma< k+1 < (m+1)a (a は無理数なので等号にはならない)
これを変形して、 (k+1)/a −1 < m < (k+1)/a
[b]、[2b]、[3b]、 … の中に k 以下の数が n 個あったとすると、
nb < k+1 < (n+1)b (b は無理数なので等号にはならない)
これを変形して、 (k+1)/b −1 < n < (k+1)/b
1/a+1/b=1 に注意して、2式を加えると、 k−1 < m+n < k+1
k は自然数、m、 n は 0 以上の整数なので、 m+n=k
つまり、 [a]、[2a]、[3a]、 … [b]、[2b]、[3b]、 … の中に k 以下の数はちょうど k 個ある。
これが任意の k について成り立つのだから、この数列には全ての自然数が1つずつ存在
する。 (別証終)
(コメント) 鮮やかな証明ですね!確かに唯一性と網羅性を分けて証明する必要はなく、同
時に示されてしまいますね...。DD++さんに感謝します。
以下、工事中!