階乗の一般化                             戻る

 自然数 n に対して、その階乗 n! は、1から n までの全ての自然数の積として定義され
る。
     n!=n・(n−1)・(n−2)・・・・・3・2・1

 たとえば、 3!=3・2・1=6 であり、5!=5・4・3・2・1=120 となる。

 また、 0!=1 であることは、順列・組合せの単元で、矛盾のない「約束」として学ぶ事
柄である。

 それでは、たとえば、分数を用いて、 (1/2)! や (3/2)! などはどう理解すればい
いのだろうか?

 オイラーは、このような問いかけに対する答えとして、次のような関数を考えている。

ガンマ(Gamma)関数
                  

 たとえば、部分積分法やロピタルの定理を活用して、

          

          

          

          

となる計算からも分かるように、

 Γ(4)=3!=3・2・1=6 、Γ(3)=2!=2・1=2 、Γ(2)=1!=1 、Γ(1)=0!=1

に相当していることがうかがえる。 一般に、漸化式

       

が成り立つので、x が自然数 n のとき、 Γ(n+1)=n! となる。

 したがって、ガンマ関数は、自然数 n に対して、n!を対応させる関数(定義域は自然数
全体)を正の実数全体を定義域とする関数にまで拡張したものと考えることができる。

 この意味で、 『 Γ(x+1)=x! 』 と書くことも可能ではないだろうか?

たとえば、 冒頭の (1/2)!は、
                       
となる。 実際に、

    
において、
               
と変数変換すれば、
               
であるので、
         
となる。
     (→ 参考 : 無限の拡がりをもつ面積 1 の図形について

 読者に対して、練習問題を残しておこう。

問題  (3/2)! はいくらであるか?


(追記) 当HPがいつもお世話になっているHN「攻略法」さんに解いていただきました。
                                     (平成22年10月14日付け)

(解) (3/2)!=Γ(3/2+1)=3/2Γ(3/2)

   ここで、Γ(3/2)=Γ(1/2+1)=(1/2)!=(√π)/2 なので、

      (3/2)!=3(√π)/4  (終)

(コメント) 解答をお寄せいただいた攻略法さんに感謝します。


(参考文献:黒川信重 著 数学の夢 素数からのひろがり (岩波書店))


(追記) 「2項係数の実数への拡張」と題して、当HPがいつもお世話になっているHN「GAI」
    さんからご投稿いただきました。(令和2年12月4日付け)

 階乗n!が実数へガンマ関数を用いることで拡張されていることから、通常、自然数で処
理している2項係数の nk でも、nやkにも実数を使用できることが伺える。

 ここはひとつ、nをπ、kを e (自然対数の底)とした場合でのπCeなる値を求めてほしい。


(コメント) ガンマ関数Γを用いて、

  nk =Γ(n+1)/{Γ(k+1)Γ(n−k+1)}

と定義するのが筋でしょう。

Γ(π+1)=7.1880827289760327020821943451247587185593017639684371624100356994...

Γ(e+1)=4.2608204763570033817001212246457024649334243739593219749116048935...

Γ(π−e+1)=0.8862401476927945595149591312081724927019004042634231139478032368...

 よって、

 πCe=Γ(π+1)/{Γ(e+1)Γ(π−e+1)}

=1.9035680657299063389008337214817935341640585815058055763034476883...

とWolframAlpha先生は答えてくれました。おおよそ πCe=1.9 位なんですね!

 32 =3、33 =1 で、2.5<e<3 から、1と3の真ん中辺より1よりに近い数という

直感と合致する値で納得できますね。