部分分数分解の真実
よくクイズで、
の値を求めよ!という風な問題が出されるときがある。4項だけなので、強引に計算しても
求まるが、「5秒で答えよ。」なんて言われたら焦ってしまう。この問題を見て、
と即答できる人は相当クイズ慣れしている方だろう。次の式変形 :
がこの問題を攻略するポイントで、部分分数分解と言われる手法である。すなわち、
と求められる。
この部分分数分解の手法は、いろいろな数列の和や積分計算で活躍するが、知ってい
て損はしないテクニックである。(→参考:連立方程式の回避)私が高校生の頃は高校1年
次に教わったが、つい最近までは高校3年次、平成15年から施行された新学習指導要領
においては、高校2年次で学ぶことになっている。
部分分数分解というと上記のような式変形に終始し、その幾何学的意味というものを今ま
で深く考えることはなかった。最近その幾何学的意味を知る機会があり、このページに整理
しておこうと思う。
左図において、 が意味づけられる。 |
このことを利用すると、 となり、 の幾何学的意味が明らかとなる。 |
したがって、
の和を求めるには、
上図から、
とすればよいことが分かる。
(追記) 令和6年11月24日付け
次の東北大学 文系(1986)の問題は、部分分数分解の問題である。
問題 数列{an}を a1=3、ak+1=4ak+3 (k=1、2・・・) で帰納的に定義する。
(1) 一般項 an を求めよ。
(2) 次の和 Σk=1n 1/(log2(ak+1)log2(ak+1+1)) を求めよ。
(解)(1) ak+1+1=4(ak+1) から、 an+1=4n なので、an=4n−1
(2) (1)より、
Σk=1n 1/(log2(ak+1)log2(ak+1+1))=Σk=1n 1/(2k(2k+2))
=(1/4)Σk=1n (1/k−1/(k+1))=(1/4)(1−1/(n+1))=n/(4(n+1)) (終)
kuiperbelt さんからのコメントです。(令和6年11月26日付け)
1/(k*(k+1)*(k+2))=(1/2)*(1/(k*(k+1))-1/((k+1)*(k+2)))
1/(k*(k+1)*(k+2)*(k+3))=(1/3)*(1/(k*(k+1)*(k+2))-1/((k+1)*(k+2)*(k+3)))
・・・・・
1/(k*(k+1)*(k+2)*...*(k+m))=(1/m)*(1/(k*(k+1)*...*(k+m-1))-1/((k+1)*(k+2)*...*(k+m)))
なので、
1/(1*2*3)+1/(2*3*4)+...+1/(n*(n+1)*(n+2))=(1/2)*(1/(1*2)-1/((n+1)*(n+2)))
1/(1*2*3*4)+1/(2*3*4*5)+...+1/(n*(n+1)*(n+2)*(n+3))=(1/3)*(1/(1*2*3)-1/((n+1)*(n+2)*(n+3)))
・・・・・
1/(1*2*3*...*(m+1))+...+1/(n*(n+1)*(n+2)*...*(n+m))=(1/m)*(1/m!-n!/(n+m)!)
というのも言えますね。
(追記) 令和6年12月27日付け
次の東北大学 理系(1988)の問題も、部分分数分解の問題である。
問題5 数列{an}は任意の自然数nに対して、Σk=0n-1 3-kan-k=1/{n(n+1)(n+2)}
を満たしているとする。このとき、m≧3に対して、Σn=1m nan を求めよ.
(解) an+(1/3)an-1+(1/32)an-2+・・・+(1/3n-1)a1=1/{n(n+1)(n+2)}
n≧2 のとき、an-1+(1/3)an-2+(1/32)an-3+・・・+(1/3n-2)a1=1/{n(n−1)(n+1)}
よって、n≧2 のとき、
an=1/{n(n+1)(n+2)}−1/{3n(n−1)(n+1)} で、 a1=1/6
このとき、
nan=1/{(n+1)(n+2)}−1/{3(n−1)(n+1)}
=1/(n+1)−1/(n+2)−(1/6){1/(n−1)−1/(n+1)} なので、
Σn=1m nan=1/6+Σn=2m nan
=1/6+{1/3−1/(m+2)}−(1/6){1+1/2−1/m−1/(m+1)}
=1/4−(4m2+m−2)/{6m(m+1)(m+2)}
=(3m3+m2+4m+4)/{12m(m+1)(m+2)} (終)
以下、工事中!