無理数を近似する分数                  戻る

 正の有理数 X に対して、正の有理数 を作る。 この有理数を新たに X として、同
様の操作を繰り返すと、だんだんと、 (≒1.732)に近づく。

 実際に、計算してみると、

3/2 9/5 12/7 33/19 45/26 123/71 168/97 ・・・
1.5000 1.8000 1.7142 1.7368 1.7307 1.7323 1.7319

上記の次の値が、168/97≒1.7320 なので、ほぼ「1.732」までは正しい値と判断して
よいだろう。

 7回程度の分数計算で無理数の近似値が求まるが、これが「速いか遅いか」は判断の分
かれるところである。

  ≒ 1.73205080756888 に到達するのに、上記の計算が何回位必要か、計算
してみた。(但し、初期値として、X=1 と設定)

     [実行結果]         表計算ソフト Excel のVBAスクリプト

   Sub 平方根3の近似()
   Dim N, X As Variant
   N = 1
   X = 1
   Range("A1").Select
   Do Until Abs(X - 1.73205080756888) < 1E-14
   X = (X + 3) / (X + 1)
   If Abs(X - 1.73205080756888) < 1E-14 Then
    With ActiveCell
             .Offset(1, 0).Value = X
             .Offset(1, 1).Value = N
    End With
   Else
    With ActiveCell
             .Value = X
             .Offset(1, 0).Select
    End With
   N = N + 1
   End If
   Loop
                      End Sub

 上記の実行結果から、 の近似値として小数点以下第14位まで一致させるために、25
回の計算が必要であることが分かる。(1.732程度でよければ、7回位)


 このページでは、無理数がある分数により近似できること、さらによい近似となる分数が簡
単にできること、そしてその性質等についてまとめておきたい。

  を近似する分数としては、

         

が有名である。(参考:平方根2を求める数列

 この分数は、ニュートン・ラフソン法により、微分を用いて求められる。

これに対して、 という分数は、微分を用いないで求められる点が優れている。

 X = から、X2=3 なので、両辺に X を加えれば、X2+X = X+3

すなわち、X(X+1) = X+3 より、

          X =

となる。もっとも、X2=3 から、2X2= X2+3 と変形して、両辺を 2X で割れば、

          X=

が得られるので、わざわざ微分を用いなくてもよかったのかもしれない。

  が、に収束する様子は、次のグラフから分かる。

        

  の値の左右交互に近似値が現れ、しかも、だんだんと の値に近づいている。

このことを、性質としてまとめれば、次のようになる。

(1)  に近い正の有理数を X とし、

     の値を Y とおく。

   このとき、 は、X と Y の間にあり、Y は、X よりもよい の近似値である。

(2) X と の間にある次の有理数

        

   は、X、Y よりもよい の近似値である。

 証明は易しいので、読者の練習に残しておこう。

(参考文献:石谷 茂 著 不等式の解法と証明 (大阪教育図書))


 当HPがいつもお世話になっているS(H)さんから、この話題に関する問題を頂いた。
                                      (平成21年5月14日付け)

   とおく。次の問いに答えよ。

(1) F()= であることを示せ。

(2) x≧0 ならば、 F(x)≧2 であることを示せ。

(3) x≧2 、y≧2 ならば、 |F(x)−F(y)|≦|x−y|/100 であることを示せ。

(4) x≧2 ならば、 |F(F(x))−|≦|x−|/10000 となることを示し、

   これを用いて、|r−|<10-4 を満たす有理数 r を 1つ求めよ。

(コメント) わずか2回の計算で、10-4 のオーダーとは、収束が速いですね!
      S(H)さんに感謝します。



    以下、工事中