大学院入試問題集 解答編

問題 1 (京都大学) の解答例(目次に戻る

 まず、(2)を証明する。(1)は、この(2)より明らかとなる。

 題意より、F は全単射で、また、連続性から、単調関数である。
いま、F は、単調増加であると仮定する。
 条件 F≠ I により、F(X)≠X となる X が存在し、F(X)>X または F(X)<X が成り立つ。
 F(X)>X とすると、X=F・F(X)>F(X) となり、これは、F が、単調増加であることに矛盾。
 F(X)<X としても、同様に矛盾を得る。したがって、F は、単調減少である。
このとき、G(X)=X−F(X) とおくと、Gは連続で、
 十分小さい全てのXに対して、G(X)<0 で、十分大きい全てのXに対して、G(X)>0
となることから、中間値の定理により、
       G(a)=0 すなわち、a=F(a) となる a が存在する。
そこで、写像 φ 、ψ を次のように定義する。

        

 このとき、簡単な計算により、φ・ψ = I 、ψ・φ = I となるので、φ は全単射である。
また、φ 、ψ の定義から、明らかに φ 、ψ は連続である。よって、 φ は、R から R への位相
同型写像となる。このとき、ψ=φ-1 であるので、
  X≧0 のとき、φ・F・φ-1(X) = φ・F(X+a) = a−F・F(X+a) = a−(X+a) = −X
  X≦0 のとき、φ・F・φ-1(X) = φ・F(F(a−X)) = φ(a−X) = a−X−a = −X
を得る。したがって、φ・F・φ-1 = −I が成り立つ。以上で、(2)が示された。

次に、(1)について、
 F(X)=1−X なので、X=F(X)=1−X を解けば、X=1/2≡a である。
したがって、φ(X)=X−1/2 とすればよい。(終)

(参考図) 上の問題で考えられた写像を図式化すれば、下図のようになる。

     

   φ は、a を境として、左側の目盛を変える働きをすることが分かる。

問題 2 (東京教育大学(現 筑波大学)) の解答例(目次に戻る

 命題は、真である。
 いま、Mが上に有界でないとすると、任意の自然数 n に対して、n <Xn となるMの要素
Xn が存在する。このとき、Mの部分集合{Xn|n≧1}は最大数を持たないので、矛盾。
 よって、Mは、上に有界である。同様にして、Mは、下にも有界である。
Mの空でない任意の部分集合Aは、上に有界であるから、上限 a を持つ。いま、a がA に
属さないとすると、任意の自然数 n に対して、a−1/n は、Aの上界でないから、
            a−1/n ≦Xn<a
となるAの要素 Xn が存在する。このとき、Mの部分集合{Xn|n≧1}は最大数を持たない
ので、矛盾。よって、a は、Aに属する。同様にして、下限 b があって、b も Aに属する。
 いま、Mが無限集合であると仮定する。
1 を、Mの上限とすると、 a1 はMに属する。さらに、M−{ a1}の上限を、 a2 とすると、
2 は、Mに属する。同様にして、数学的帰納法により、Mの点列  a1、a2、・・・、a、・・・
がとれる。ただし、n≧2であれば、a は、M−{ a1、a2・・・、an-1}の上限である。
 このとき、Mの部分集合{a|n≧1}は最小数を持たないので、矛盾。
したがって、Mは有限集合である。(終)

問題 3 (大阪大学) の解答例(目次に戻る

 R2上に、相異なる3点 A、B、C をとる。
いま、f は、1対1写像であるとすると、f(A)、f(B)、f(C) はすべて異なる。一般性を失うこと
なく、f(A)<f(C)<f(B) と仮定してよい。
 R2−{C} は弧状連結だから、連続写像 ξ : [0,1]→R2−{C} で、ξ(0)=A、ξ(1)=B とな
るものが存在する。ξと f は、連続写像だから、f・ξ : [0,1]→R1 は、連続写像で、しかも、
f・ξ(0)= f(A)、f・ξ(1)= f(B) である。このとき、中間値の定理により、
f・ξ(t)= f(C) となる t (0<t<1)が存在する。ξ(t)=Dとおくと、C≠D で、f(C)=f(D) となる。
これは、仮定に矛盾する。したがって、f は、1対1写像でない。

問題 4 (大阪市立大学) の解答例(目次に戻る

 X=Y={1,2,3,4}とする。A={1,2}、B={3,4}とおく。
いま、Ω={Φ,A,B,X}、Ω={Φ,Y}とおくと、Ω、Ωは、X、Yの開集合系を定める。
このとき、(X、Ω)、(Y、Ω)は位相空間となる。ただし、Ω⊃Ωである。
 よって、f を恒等写像とすると、f は、XからYの上への1対1連続写像となる。
しかるに、Xの開集合Aに対して、f-1(A)=A は、Yの開集合ではないので、f-1 は連続写像
となりえない。したがって、f は同相写像ではない。

問題 5 (神戸大学) の解答例(目次に戻る

問1 集合Mが有限集合であると仮定する。(2)より、φは、MからMへの写像で、また、
  (3)より、φは、1対1の写像となり、上への写像になる。(1)から、0∈Mなので、
  φ(X)=0 となるX∈Mがある。これは、(4)に矛盾する。
   したがって、Mは無限集合である。
問2 Mとして、実数全体、φ(X)=-x とおくと、明らかに(1)〜(4)は成り立つが、(5)は
  成り立たない。実際に、A=[0,1] とおくと、0∈A⊂M かつ φ(A)⊂A であるが、
  A≠M である。
問3 あるX∈Mに対して、φ(X)=0 と仮定する。
  A={X,φ(X),φ2(X),・・・}、B={φ(X),φ2(X),・・・}とおくと、φ(X)=0 だから、
  0∈A⊂M、0∈B⊂M となる。また、φ(A)⊂A、φ(B)⊂B である。
  よって、(5)より、M=A=B が成り立つ。
   このとき、X∈B より、X=φ(X)となる自然数 n が存在する。
  よって、M={X,φ(X),φ2(X),・・・φn−1(X)}となり、Mが無限集合であることに矛盾
  する。したがって、X∈M ならば、φ(X)≠0 である。
問4 M={0,1}とし、f :M→M を、f(0)=1、f(1)=0 で定義する。
  このとき、(1)(2)(3)(5)が成り立つが、(4)は成り立たない。

問題 6 (東北大学改題) の解答例(目次に戻る

 ψ(X+Y)=ψ(X)ψ(Y) を満たすような実数全体を定義域とする実数値関数ψ(X) を
任意にとる。
 (X=0 での微分可能性を仮定すれば、このような関数は、ψ(X)=C と定まるが、この場合は、
  より一般的な場合を考えている。 
 参考「関数方程式」
このとき、φ(X)=ψ(X)+ψ(−X) とおくと、
  φ(X+Y)+φ(X−Y)=ψ(X+Y)+ψ(−X−Y)+ψ(X−Y)+ψ(−X+Y)
               =ψ(X)ψ(Y)+ψ(−X)ψ(−Y)+ψ(X)ψ(−Y)+ψ(−X)ψ(Y)
               =(ψ(X)+ψ(−X))(ψ(Y)+ψ(−Y))
               =φ(X)φ(Y)
が成り立つので、φ(X) は方程式を満たす。
 よって、方程式を満たす関数 φ(X) が一つ構成された。

(注) 広島工業大学の大川研究室より、次のようなご指摘をいただきました。そのご指摘を
   もとに、上記のように、解答(問題も!)を一部修正しました。

      関数φ(X) についての情報が曖昧である。
     (1)定義域は何処なのか?(実数全体と推測される?)
       値域も不明(これも実数全体と推測される?)
     (2)連続性は仮定するのかどうか?
     (3)その様な物を全部求めるのか、少なくとも1つ求めるのか?(少なくとも1つな
       ら、自明で、定数関数 たとえば、φ(X)=2 がすぐ見つかる!)
     解答を見ると、 ψ(X+Y)=ψ(X)ψ(Y) を満たす一般の関数 ψ(X) が書いてい
     ないので、結局の所は解の一例、φ(X) = ex + e -x を求めているのに過ぎない。
     他に、φ(X) = 2cos ( ax ) などいろいろある。


問題 7 (九州大学) の解答例(目次に戻る

 E を、Hausdorff 空間であるとする。任意の(X,Y)∈ E×E−Δ とすると、X≠Y だか
ら、 X∈U1 、Y∈U2 、U1∩U2 である E の開集合 U1 、 U2 が存在する。
 このとき、(X,Y)∈U1×U2 ⊂E×E−Δ が成り立つから、E×E−Δ は、E×E の
開集合である。よって、Δ は、E×E の閉集合である。逆も同様である。

問題 8 (京都大学) の解答例(目次に戻る

 A と B は同相であるとすると、S={(x,y)∈R2|x2+y2=1} は、[a,b] に埋め込
める。即ち、S から R の中への同相写像 f がある。 0≦θ≦2π に対して、
e(θ)=(cosθ,sinθ) とおくと、e :[0,2π] → S は、連続な全単射である。
 特に、e :[0,2π) → S は連続な単射である。
よって、f・e :[0,2π) → R は、連続な単射である。したがって、f・e は、[0,2π)で狭義
単調である。f・e は、[0,2π]で連続であるから、[0,2π]で狭義単調関数である。
[0,2π] は連結ゆえ、f・e ([0,2π]) は区間である。f・e は単調だから、その区間は閉
区間で、f・e (0)、f・e (2π) は両端点である。e (0)=e (2π) であるから、これは矛盾。
 したがって、A と B とは同相になりえない。

問題 9 (立教大学) の解答例(目次に戻る

 A、B がともに連結でないとすると、
         A=F∪F’ 、F∩F’=
         B=G∪G’ 、G∩G’=
となるような、空でない閉集合 F、F’、G、G’ が存在する。
 このとき、次のように空でない閉集合 H、H’を定めることができる。
   A∩B= のとき、
     H=F∪G 、H’=F’∪G’ とおく。
   A∩B={ a } のとき、
     a∈F∩G としてよいから、H=F∪G 、H’=F’∪G’ とおく。
   A∩B={ a ,b } ( a ≠ b )のとき、a∈F∩G としてよい。
     b∈F∩G または b∈F’∩G’ のとき、H=F∪G 、H’=F’∪G’ とおく。
     b∈F∩G’ のとき、H=F∪B 、H’=F’ とおく。
     b∈F’∩G のとき、H=A∪G 、H’=G’ とおく。
このとき、A∪B=H∪H’ 、H∩H’= となり、A∪B が連結であることに矛盾する。
 よって、A、B の少なくとも一方は連結である。

問題 10 (名古屋大学) の解答例(目次に戻る

 行列 tA、AtA の表す線形写像をそれぞれ F、G とする。
任意の X∈ker F に対して、tAX=F(X)=O より、G(X)=AtAX=AO=O
 よって、X∈ker G が成り立つので、ker F ⊂ ker G
逆に、 任意の X∈ker G に対して、AtAX=G(X)=O より、tXAtAX=O
 よって、|tAX|2=(tAX,tAX)=tXAtAX=O がいえるので、tAX=O
したがって、X∈ker F が成り立つので、ker G ⊂ ker F
 以上から、ker F = ker G が成り立つ。
このとき、
 rank tA = dim(ImF) = m−dim(ker F) = m−dim(ker G) = dim(ImG)
dim(ImG) = rank AtA だから、rank tA = rank AtA が成り立つ。
 ここで、rank tA = rank A なので、
            rank A = rank AtA 
が成り立つ。

問題 11 (東北大学) の解答例(目次に戻る

(1) F(x)=d(x ,B)とおくと、Fは、A上の連続関数である。Aはコンパクト集合だから、
  ある a∈A が存在して、任意の x ∈A に対して、d(a ,B)≦d(x ,B)
   いま、d(a ,B)=0 とすると、Bは閉集合だから、a∈B となり、A∩B= に矛盾
  よって、任意の x ∈A に対して、d(x ,B)>0 より、d(A ,B)>0
(2) A={(x ,y)∈2|y=0 }、B={(x ,y)∈2|xy=1 } とおくと、A 、Bはともに
  2 の閉集合で、A∩B= である。しかるに、d(A ,B)=0

問題 12 (北海道大学) の解答例(目次に戻る

 題意より、F(Z)=u(x,y)+iv(x,y) 、G(Z)=expu(x,y)+iw(x,y) と書ける。ただし、
Z=x+iy とする。 Cauchy-Riemannの方程式より、
      u=v 、u=−v 、expu・u=w 、expu・u=−w
が成り立つ。
 このとき、expu・u2+expu・uxx=wxy 、expu・u2+expu・uyy=−wxy なので、

        expu(u2+u2)+expu(uxx+uyy)=0

u は調和関数なので、uxx+uyy=0 が成り立つ。 よって、expu(u2+u2)=0

expu≠0 より、u2+u2=0 なので、u =u =0 即ち、v =v =w =w =0

よって、u、v、w は、定数となり、したがって、F(Z)、G(Z) は定数である。

問題 13 (北海道大学) の解答例(目次に戻る

 mについての数学的帰納法により示す。
m=1 のとき、x1(g)α1=0 において、x1(g)≠0 より、α1=0 なので成り立つ。
いま、m>1 とし、m より少ない個数の準同型に対して命題が成り立つとする。
 仮定より、 x1≠xm なので、x1(h)≠xm(h) となる h∈G が存在する。
このとき、
      x1(g)x1(h)α1+x2(g)x2(h)α2+・・・+xm(g)xm(h)αm=0
      x1(g)xm(h)α1+x2(g)xm(h)α2+・・・+xm(g)xm(h)αm=0
辺々引いて、
    x1(g)(x1(h)−xm(h))α1+・・・+xm-1(g)(xm-1(h)−xm(h))αm-1=0
帰納法の仮定により、
      (x1(h)−xm(h))α1=・・・=(xm-1(h)−xm(h))αm-1=0
ここで、x1(h)≠xm(h)より、
                   α1=0
よって、x2(g)α2+・・・+xm(g)αm=0 から、α2=・・・=αm=0 となり、命題は
m についても成り立つ。
 以上から、数学的帰納法により、命題は、すべての自然数mについて成り立つ。

問題 14 (大阪大学) の解答例(目次に戻る

 V が有限次元ベクトル空間のとき、 dim V =dim(kerF)+dimF(V)  が成り立つ。
このことより、V の一次変換 F が 1対1であることと、F が上への一次変換であることと
は同値であることが分かる。
 V が無限次元空間のとき、このことは必ずしも成立しない。
V=[X] とおくと、V は上無限次元空間である。F: V → V を、F(f(x))= f’(x) で
定義すると、F は V 上の一次変換である。このとき、F は全射であるが単射でない。
 実際に、kerF = だからである。
次に、F: V → V を、F(f(x))= xf(x) で定義すると、F は V 上の一次変換である。
このとき、F は単射であるが全射でない。
 実際に、(⊂[X])にうつる [X] の要素は存在しない。また、xf(x) = 0 とする
と、x は多項式として 0 でないから、f(x) = 0 となる。

問題 15 (北海道大学) の解答例(目次に戻る

 G(Z) = F(Z)−F(a) とおくと、G(Z) は、| Z−a | <1 で正則で、かつ、G(a) = 0
このとき、Cauchy の積分公式により、

       

となる。

問題 16 (東京都立大学) の解答例(目次に戻る

 det A =1+ade+bcf−ac−be−df なので、
|det A|≧1−|ade|−|bcf|−|ac|−|be|−|df|>1−1/8−1/8−1/4−1/4−1/4=0
 よって、det A ≠ 0 が成り立つ。

問題 17 (名古屋大学) の解答例(目次に戻る

(1)  d(P,F(P))≦d(P,Q)+d(Q,F(Q))+d(F(P),F(Q))
     d(Q,F(Q))≦d(P,Q)+d(P,F(P))+d(F(P),F(Q)) より、
      |G(P)−G(Q)|≦d(P,Q)+d(F(P),F(Q))<2d(P,Q)
  が成り立つので、任意のε>0 に対して、δ=ε/2 とおけば、
     d(P,Q)<δ ならば、|G(P)−G(Q)|<2δ=ε
  であることが、任意のP、Q∈S に対して成り立つ。
    よって、Gは、S上の連続関数である。
(2) Sはコンパクトだから、最小値が存在する。すなわち、あるP∈S が存在して、
  全てのQ∈S に対して、G(P)≦G(Q) が成り立つ。
   いま、P≠F(P) と仮定すると、
      d(F(P),F(F(P)))<d(P,F(P))  すなわち、 G(F(P))<G(P)
  となり、G(P)が最小値であることに矛盾する。
   よって、 F(P)=P が成り立つ。
  また、P≠Q となる P、Q∈S で、F(P)=P、F(Q)=Q が成り立つと仮定すると、
      d(P,Q)=d(F(P),F(Q))<d(P,Q)
  となり、矛盾である。
   よって、F(P)=P を満たす点Pは唯一つである。

問題 18 (奈良女子大学) の解答例(目次に戻る

 F(2X)=F(X+X)=F(X)+F(X)=2F(X)、 F(3X)=3F(X)、・・・ より、
自然数 n に対して、F(nX)=nF(X) が成り立つ。
 また、F(0)=F(0)+F(0) より、F(0)=0 で、F(0)=F(X+(−X))=F(X)+F(−X)=0
より、F(−X)=−F(X) が成り立つ。
このとき、自然数 n に対して、F((−n)X)=−F(nX)=(−n)F(X) であるので、
整数 m に対して、F(mX)=mF(X) が成り立つ。
 また、自然数 n に対して、
F(X)=F(n・(1/n)X)= n・F((1/n)X) より、F((1/n)X)=(1/n)F(X) が成り立つ。
 したがって、有理数 r = m/n (m は整数、n は自然数)に対して、
F(rX)=F((m/n)X)=F(m・(1/n)X)=mF((1/n)X)=m・(1/n)F(X)=(m/n)F(X)=rF(X)
が成り立つ。
ここで、F(1)=a とおくと、有理数 r に対して、F(r)=rF(1)=ar となる。
 任意の実数 X に対して、X に収束する有理数の点列{r}が存在する。
関数 F(X) は連続なので、任意の実数 X に対して、
 F(X)=F(lim r)=lim F(r)=lim ar=aX (lim はいずれも、n→∞ とする。)
が成り立つ。(この問題に関連して、こちらを参照)

問題 19 (大阪大学) の解答例(目次に戻る

 単位元を、e とおくと、題意より、任意の a∈G に対して、a=e が成り立つ。
いま、G1={ a∈G | a1=e }、G2={ a∈G | a2=e } とおくと、G=G1×G2 である。

1 の位数を m1、G2 の位数を m2 とする。

n=m1・m2 だから、n1・n2=m1・m2 である。

 いま、n の任意の一つの素因数を、p とし、任意の a∈G の位数を、d とする。

d が p で割り切れる場合、ad/p の位数は、p である。

d が p で割り切れない場合、a によって生成される群を、H とおく。: H=<a>
 このとき、商群 G/H の位数は、n/d で、n よりも小さく、また、p が素数であることから、
 n/d は p で割り切れる。
 従って、群の位数に関する帰納法により、商群 G/H の元 bH で、位数が、p であるもの
 が存在する。b の位数を、k とすると、(bH)k = bkH=eH=H で、bH の位数は、p で
 あるから、k は、p で割り切れる。このとき、bk/p の位数は、p である。

 以上により、位数 n のアーベル群 G に対して、位数 n の任意の素因数 p を位数とする
ような a∈G が存在する。

 いま、m1 と n2 が互いに素でないとすると、m1 と n2 に共通な一つの素因数 p がある。
この素因数 p は、群 G1 の位数 m1 の素因数なので、上記より、位数が p の元 b∈G1
が存在する。このとき、n2 は、p で割り切れるので、b2=e である。よって、b∈G1∩G2
であるから、b=e となる。これは、矛盾である。
 よって、m1 と n2 は互いに素である。

同様にして、n1 と m2 も互いに素である。これより、n1・n2=m1・m2 において、

      n1 は、m1 で割り切れ、かつ、n2 は、m2 で割り切れる。
      m1 は、n1 で割り切れ、かつ、m2 は、n2 で割り切れる。

 よって、n1 = m1、n2 = m2 となる。

 従って、 G1 の位数は n1、G2 の位数は n2 で、G1 の定義より、位数 n1 の部分群は、
1 に限る。

問題 20 (東北大学) の解答例(目次に戻る

(1) 帰納的に、d(xn+1,x)≦a・d(x1,x0) が成り立つ。
   三角不等式より、m≧n ならば、
    d(x,x)≦d(x,xm-1)+・・・+d(xn+1,x)≦(am-1+・・・+a)d(x1,x0
   すなわち、
           d(x,x)≦a(1−am−n)/(1−a)
   ここで、0<a<1 より、n → ∞ のとき、a → 0 なので、d(x,x) → 0
    したがって、点列{x}は、コーシー列である。
(2) n≧1 のとき、
           d(F(x*) ,x*)≦d(F(x*),F(x))+d(F(x),x)+d(x,x*)
                    ≦a・d(x*,x)+d(xn+1,x)+d(x,x*)
   n → ∞ のとき、右辺の各項は、0 に収束するので、
           d(F(x*) ,x*)=0
    よって、F(x*) =x* が成り立つ。
(3) F(x) =x とする。d(x ,x*)=d(F(x),F(x*))≦a・d(x,x*)
   よって、 (1−a)d(x,x*)≦0 より、d(x,x*)=0 が成り立つ。
    したがって、x =x*

問題 21 () の解答例

   以下工事中