最大と最小
平成20年11月5日付けで、当HPの掲示板「出会いの泉」に、S(H)さんが、次のような
最大最小の問題を提案された。
x2+y2=1 がなりたつとき、(x+y)4+(x−y)2 の最大値と最小値を求めよ。
S(H)さんからの情報によれば、判別式を用いたり、その他に媒介変数を用いたりなどし
て、少なくとも7通りの解法が存在するという。
S(H)さんは、瞬時に5個の解法を思いつかれたという。私も、この問題の別解がどれほ
どあるのか、どのような別解が可能なのか大いに興味があったので、このページにそれら
の別解をまとめたいと思う。
別解その1 ・・・ 一番最初に思いついた解法
x=cosθ、y=sinθ とおくと、
与式=(cosθ+sinθ)4+(cosθ−sinθ)2
=(1+sin2θ)2+1−sin2θ
=(sin2θ)2+sin2θ+2
=(sin2θ+1/2)2+7/4
−1≦sin2θ≦1 より、 最大値は 4、 最小値は 7/4
別解その2 ・・・ ちょっと強引とも思える解法(解法の指針は別解その1とほとんど同じ)
与式=x4+4x3y+6x2y2+4xy3+y4+x2−2xy+y2
=(1−y2)2+4xy(1−y2)+6(1−y2)y2+4xy3+y4+1−y2−2xy+y2
=−4y4+4y2+2xy+2
=4y2(1−y2)+2xy+2
=(2xy)2+2xy+2
=(2xy+1/2)2++7/4
ここで、相加平均と相乗平均の関係より、 x2+y2≧2|xy| で、 x2+y2=1 より、
1≧2|xy| すなわち、 −1≦2xy≦1
このとき、 最大値は 4、 最小値は 7/4
(補足) 上記の計算では、与式を単純に展開したが、次のように計算してもよい。
x2+y2=1 より、 (x+y)2−2xy=1 なので、 (x+y)2=2xy+1
よって、 与式=(2xy+1)2+x2−2xy+y2
=(2xy+1)2−2xy+1
=(2xy)2+2xy+2
・・・・・・・・・・・・・・
以下、上記と同様である。
(コメント) 息子にこの問題を考えてもらったら、別解その2の補足の方で解いていました
ね!こちらの方が解き方として自然なのでしょうか?その1で解いた私って、も
しかして変わり者かな?
別解その3 ・・・ 受験テクニックを意識した解法
x+y=a 、xy=b とおくと、x、y
は2次方程式 t2−at+b=0 の2つの実数解なので、
判別式を D
とおくと、 D=a2−4b≧0 が成り立つ。
このとき、 x2+y2=(x+y)2−2xy=a2−2b=1 なので、上式に代入して、
a2−2(a2−1)≧0 すなわち、 0≦a2≦2 となる。
よって、 与式=a4+x2+y2−2xy
=a4−2b+1
=a4−(a2−1)+1
=a4−a2+2
=(a2−1/2)2+7/4
このとき、 最大値は 4、 最小値は 7/4
別解その4 ・・・ ちょっと媒介変数に凝った解法
x+y=2m 、x−y=2n とおくと、 x=m+n 、 y=m−n
このとき、 x2+y2=1 より、 (m+n)2+(m−n)2=1 なので、 m2+n2=1/2
n2=1/2−m2≧0 なので、 0≦m2≦1/2
よって、 与式=16m4+4n2
=16m4+4(1/2−m2)
=16m4−4m2+2
=16(m2−1/8)2+7/4
このとき、 最大値は 4、 最小値は 7/4
別解その5 ・・・ 別解その4の解法を別な視点で試みた解法
x+y=2m 、x−y=2n とおくと、 x=m+n 、 y=m−n
このとき、 x2+y2=1 より、 (m+n)2+(m−n)2=1 なので、 m2+n2=1/2
n2=1/2−m2≧0 なので、 0≦m2≦1/2 となる。
ここで、 与式=16m4+4n2 であるので、 m2=X 、n2=Y とおくと、問題は、
X+Y=1/2 (0≦X≦1/2) のとき、 16X2+4Y の最大値、最小値を問う
ものに翻訳される。
16X2+4Y=k とおき、 Y=1/2−X を代入して整理すると、
16X2−4X+2−k=0
という2次方程式が得られる。この2次方程式が、0≦X≦1/2 の範囲において、少なくと
も一つ解があるように、定数
k の値の範囲を定めればよい。
まず、2次関数 F(X)=16X2−4X+2−k において、
判別式
D/4=4−16(2−k)=16k−28≧0 より、 k≧7/4
また、軸の式は、 X=1/8 で、 0≦X≦1/2 の範囲内にある。
F(1/2)=4−2+2−k=4−k≧0 より、 k≦4
以上から、 7/4≦k≦4 となるので、 最大値は 4、 最小値は 7/4
別解その6 ・・・ Lagrange
の未定乗数法を利用する解法
G( x , y )=x2+y2−1=0 のとき、 F( x , y )=(x+y)4+(x−y)2 の極値を求め
ることを考える。 Lagrange の乗数を λ
とすると、連立方程式
G( x , y )=0 、Fx( x , y )+λGx( x , y
)=0 、Fy( x , y )+λGy( x , y )=0
の解 ( x , y )が、極値を与える候補となる。
実際に、 4(x+y)3+2(x−y)+2λx=0 、 4(x+y)3−2(x−y)+2λy=0
から辺々引くと、 4(x−y)+2λ(x−y)=0 より、 2(x−y)(λ+2)=0 となる。
x−y=0 とすると、 x=y=1/ である。
このとき、 F( x , y )=(x+y)4 の形から、F( x , y )は極大で、
極大値 F( x , y )=4 となる。
λ=−2 とすると、 4(x+y)3+2(x−y)−4x=0 すなわち、
4(x+y)3−2(x+y)=0 から、 2(x+y)(2(x+y)2−1)=0
よって、 x+y=0 、1/ 、−1/ となる。
x+y=0 のとき、 x=1/ 、y=1/ (複号同順)
このとき、 F( x , y )=(x−y)2 の形から、F( x , y )は極大で、
極大値 F( x , y )=2 となる。
x+y=1/ のとき、
x2+y2=(x+y)2−2xy=1/2−2xy=1 より、 xy=−1/4
このとき、 x 、y
は、2次方程式 t2(1/)t−1/4=0 の2つの解なので、
x=(+)/4 、y=(−)/4
または、 x=(−)/4 、y=(+)/4 (複号同順)
このとき、 F( x , y )=1/4+(x−y)2 の形から、F( x , y )は極小で、
極小値 F( x , y )=1/4+3/2=7/4 となる。
以上から、最大値は 4、最小値は 7/4
別解その7 ・・・ グラフ描画による解法(コンピュータ利用)
x2+y2=1 より、 (x+y)2−2xy=1 なので、 (x+y)2=2xy+1
よって、 与式=(2xy+1)2+x2−2xy+y2
=(2xy+1)2−2xy+1
=4x2y2+2xy+2
そこで、 (青太線)
(赤太線)
のグラフを、グラフ描画ソフトを用いて描くと、下図のようになる。
上図から、 最大値は 4、 最小値は 7/4
(コメント) このグラフから、別解その6の怪しかった部分が補完されますね!
(追記) 平成21年4月7日付け
平野次郎 著 「解法の発見」 (学生社) という書籍を何とはなしに読んでいたら、最
大・最小について、新しい視座(少なくとも私にとって...!)と思われる記述に遭遇した。
変数 x の範囲(定義域)が、命題 D(x) により規定されているとき、関数 y=F(x)
の最小値 M を求めるには、命題 D(x) が真となるある値 x=m に対して、常に、
条件命題 D(x) → F(x)−F(m)≧0
が成り立つときの M=F(m) の値を定めればよい。
全く同様に、最大値についても、次のように捉えることが出来る。
変数 x の範囲(定義域)が、命題 D(x) により規定されているとき、関数 y=F(x)
の最大値 N を求めるには、命題 D(x) が真となるある値 x=n に対して、常に、
条件命題 D(x) → F(x)−F(n)≧0
が成り立つときの N=F(n) の値を定めればよい。
これらは、最大値と最小値の定義そのものと言っても過言ではなく、無理なく了解される
ことと思う。このような視点に立つと、定義域が複雑な場合にも対応できそうな...予感!
いくつか具体例を通して、上記の考え方を会得することにしよう。
例 x ≧ 1 のとき、 F(x)=x2−4x+3 の最小値を求めよ。
教科書等のよく知られた解法では、次のようであった。
(解) F(x)=x2−4x+3=(x−2)2−1 で、軸の式 x=2 ≧1 から、x=2 で最小で、
最小値は、−1 (終)
この問題を新しい視座で捉えると次のようになるであろう。
(解) 命題 x ≧ 1 が真となるある値 x=m を考えるので、m≧1 としてよい。
このとき、条件命題 x ≧ 1 → F(x)−F(m)≧0 が成り立つように、m
の値を定
めればよい。そこで、G(x)=F(x)−F(m) とおくと、2次方程式
G(x)=0 は、x=m
を解にもつ。すなわち、 x2−4x+3−F(m)=0 から、判別式をDとすると、
D/4=4−(3−F(m))=F(m)+1≧0 より、 F(m)≧−1
実際に、2次不等式 x2−4x+3−F(m)≧0 を解いて、
よって、条件命題 x ≧ 1 → F(x)−F(m)≧0 が常に成り立つためには
でなければならない。(← ここの部分の計算で、領域の考えが用いられる!)
ところで、 x=m は、2次方程式 G(x)=0 の解なので、
m≧1 より、
したがって、 が成り立つ。
これを解いて、 F(m)=−1 である。これが求める最小値である。
また、 F(m)=−1 より、 m=2
以上から、 x=2 のとき、 最小値 −1 をとる。 (終)
(コメント) いつもの解答に比べ、大変だったかな? この視座が活躍するときもあることを
信じることにしよう...。
例 x2−x−2 ≧ 0 のとき、 F(x)=x2−2x+3 の最小値を求めよ。
教科書等のよく知られた解法では、次のようであった。
(解) x2−x−2 ≧ 0 すなわち、 (x−2)(x+1)≧0 より、 x≦−1、x≧2
F(x)=x2−2x+3=(x−1)2+2 より、x=2 で最小で、最小値は、3 (終)
この問題を新しい視座で捉えると次のようになるであろう。
(解) 命題 x2−x−2 ≧ 0 すなわち、 x≦−1、x≧2 が真となるある値 x=m を考
えるので、 m≦−1、m≧2 としてよい。
このとき、条件命題 x≦−1、x≧2 → F(x)−F(m)≧0 が成り立つように、m
の
値を定めればよい。
そこで、G(x)=F(x)−F(m) とおくと、2次方程式 G(x)=0 は、x=m
を解にもつ。すなわち、 x2−2x+3−F(m)=0 から、判別式をDとすると、
D/4=1−(3−F(m))=F(m)−2≧0 より、 F(m)≧2
実際に、2次不等式 x2−2x+3−F(m)≧0 を解いて、
よって、条件命題 x≦−1、x≧2 → F(x)−F(m)≧0 が常に成り立つためには
でなければならない。
ところで、 x=m は、2次方程式 G(x)=0 の解なので、
である。
ここで、 (m<1) ならば、 m≦−1 より、
でなければならない。これを解いて、 F(m)=6
また、 (m>1) ならば、 m≧2 より、
でなければならない。これを解いて、 F(m)=3
3≦6 なので、求める最小値は、 3 である。
また、 F(m)=3 で、 m≦−1、m≧2 に注意して、 m=2
以上から、 x=2 のとき、 最小値 3 をとる。 (終)
(コメント) 慣れてくると、だんだんはまっていきそうな解法ですね!
平成21年8月9日付けで、S(H)さんより次の問題を頂いた。
(遊び心で追加してください...とのことなので追加しました・・・ f(^^;) )
平成20年度の埼玉大学大学院理工学研究科数理電子情報専攻数学コース(博士前期
課程)の入試問題らしいです。
R2 で定義された関数 F( x , y )= x2y 、G( x , y )= x2+y4 を考える。
(1) Fx=λGx 、Fy=λGy 、G( x , y )=1 を満たす実数の組 ( x , y ,λ )
をすべて求めよ。
(2) 条件 G( x , y )=1 の下で,関数 F( x , y )の最大値と最小値を求めよ。
(1)の与え方が、Lagrangeの乗数なので、その解法に従って解いてね!ということなのだ
ろうが、(2)だけを考えれば、そんな仰々しく解かなくても、数学Vの範囲で解決できそうな
...予感!
(1)については、指示通りに解くしかないですよね!
(解) 条件より、 2xy=λ・2x なので、 x=0 または y=λ
また、 x2=λ・4y3 、 x2+y4=1 が成り立つ。
x=0 のとき、 y=±1 で、 λ=0
y=λ のとき、 1−λ4=4λ4 より、 λ=±1/ なので、 x=±2/
以上から、
( x , y ,λ )=( 0 , 1 ,0 )、( 0 , −1 ,0 )、
( 2/ , 1/ ,1/ )、( 2/ , −1/ ,−1/ )、
( −2/ , 1/ ,1/ )、( −2/ , −1/ ,−1/ )、
の6組ある。 (終)
(2)については、次のように解く方が簡明だろう。
(解) x2+y4=1 より、 x2=1−y4≧0 なので、 −1≦y≦1
このとき、 z=x2y=y−y5 (−1≦y≦1) の最大・最小を求めればよい。
z’=1−5y4=0 とおくと、 y=±1/
z”=−20y3 より、
y=1/ のとき、 z”<0 より、 z は極大 このとき、 x=±2/
y=−1/ のとき、 z”>0 より、 z は極小 このとき、 x=±2/
となる。グラフを描けば、下図のようになる。
グラフからも明らかなように、
( x , y )=( 2/ , 1/ )、( −2/ , 1/ ) のとき、最大で、
最大値は、 4/(5) である。
( x , y )=( 2/ , −1/ )、( −2/ , −1/ ) のとき、最小で、
最小値は、 −4/(5) である。
(コメント) Lagrange の乗数を用いる場合は、y の符号から最大・最小を判断するのかな?
以下、工事中