整数問題                                 戻る

 当HPがいつもお世話になっているHN「FN」さんから頂いた話題である。
(当HPの掲示板「出会いの泉」 平成22年5月15日付け)

 数研出版の「数学難問集100」の入門の部の2番に次のような問題がある。

 n は2以上の整数とする。

(1) n で割ると 1 余る正の整数は n と互いに素であることを示せ。

(2) (n−1)n(n+1) の正の約数の中で n で割ると 1 余るものをすべて求めよ。

(出典:お茶の水女子大学入試問題)


 FNさんによれば、掲載されている解答(平成19年4月発行)が全く解答になっていないと
のことである。

 FNさんは、これよりも難しいが、一般的な状況を表していると思われるという類題を作ら
れた。

 n は2以上の整数とする。

(1) n で割ると 1 余る正の整数は n と互いに素であることを示せ。

(2) n(n+1)(n+2) の正の約数の中で n で割ると 1 余るものをすべて求めよ。

 この類題を解くことで、冒頭の問題の理解が深まるそうである。さらに、数研出版の解答
のような方法では解けないことも分かるとのことである。

 FNさんが、類題の解答を寄せられた。(一部多少文言等を修正させていただきました。)

(類題の解答)

(1) n で割ると 1 余る正の整数は、0 以上の整数 k を用いて、 n・k+1 とおける。

 このとき、 n・(−k)+(n・k+1)・1=1 なので、n と n・k+1 の公約数は 1 以外に

あり得ない。よって、n と n・k+1 は互いに素である。

(2) (1)と同様にして、n(n+1)(n+2)の正の約数で、n で割ると 1 余る数は、0 以上

の整数 k を用いて、 n・k+1 とおける。

k=0 のときの n・k+1=1 、k=1 のときの n・k+1=n+1 は、n(n+1)(n+2)

の正の約数で、明らかに、n で割ると 1 余る数である。

よって、以下では、k は2以上の整数として考えてもよい。

n・k+1 は、n で割ると 1 余る正の整数なので、(1)より、n と互いに素である。

したがって、n・k+1 は、(n+1)(n+2)の約数となる。

このとき、 (n+1)(n+2)=(n・k+1)・m (m は整数) とおける。

ここで、 n+1<(n・k+1) なので、 n+2>m である。

また、(n+1)(n+2)=(n・k+1)・m の左辺は、n で割ると余りが2なので、右辺の m

も n で割ると余りが2でなければならない。

ところが、n+2>m なので、m=2 となる。

このとき、 n2+3n+2=2n・k+2 において、

n が偶数のとき、上式を満たす整数 k は存在しない。

n が奇数のとき、上式より、 k=(n+3)/2

以上から、n(n+1)(n+2)の正の約数で、n で割ると 1 余る数は、

n が偶数のとき、 1 と n+1 のみ

n が奇数のとき、 1 と n+1 と n(n+3)/2+1 のみ


(コメント) FNさん、とてもエレガントな解答ですね!感動しました。FNさんに感謝します。


(追記) 平成26年5月24日付け

 不定方程式の問題で、解に条件をつければ整数問題となる。島根大学医学部(2014)で
は次のような問題が出題された。何れもパターン化された問題であり、受験問題集での経験
もあるはずなので、受験生にとっては容易な問題だったと思う。

島根大学医学部(2014)

 a、b、c、n を自然数とし、a≦b≦c かつ n(a+b+c)=abc を満たすとする。

(1) a=b=c のとき、nは3の倍数であることを示せ。

(2) n=3のとき、自然数の組(a,b,c)をすべて求めよ。

(解)(1) 題意より、 3na=a3 なので、 3n=a2 となる。このとき、a2 すなわち、

a は3の倍数となる。a=3k (kは自然数) と書けるので、 3n=9k2

すなわち、 n=3k2 となり、nは3の倍数である。

(2) 題意より、 3(a+b+c)=abc≦9c なので、 ab≦9 から、

(a,b)=(1,1)、(1,2)、(1,3)、(1,4)、(1,5)、(1,6)、(1,7)、(1,8)、(1,9)、
  (2,2)、(2,3)、(2,4)、(3,3)

(a,b)=(1,1)、(1,2)、(1,3) のとき、 等式を満たす自然数cは存在しない。
(a,b)=(1,4) のとき、 3(c+5)=4c より、 c=15
(a,b)=(1,5) のとき、 3(c+6)=5c より、 c=9
(a,b)=(1,6) のとき、 3(c+7)=6c より、 c=7
(a,b)=(1,7) のとき、 3(c+8)=7c より、 c=6 (不適)
(a,b)=(1,8) のとき、 3(c+9)=8c  この式を満たす自然数cは存在しない。
(a,b)=(1,9) のとき、 3(c+10)=9c より、 c=5 (不適)
(a,b)=(2,2) のとき、 3(c+4)=4c より、 c=12
(a,b)=(2,3) のとき、 3(c+5)=6c より、 c=5
(a,b)=(2,4) のとき、 3(c+6)=8c   この式を満たす自然数cは存在しない。
(a,b)=(3,3) のとき、 3(c+6)=9c より、 c=3

 以上から、求める解は、

(a,b,c)=(1,4,15)、(1,5,9)、(1,6,7)、(2,2,12)、(2,3,5)、(3,3,3) (終)


(追記) 平成26年12月23日付け

 今日は、天皇誕生日で満81歳を迎えられた。TVからは元気なお姿を拝見することが出来
た。思えば、昭和天皇陛下が崩御されたのが、昭和64年1月7日。翌日から元号は平成と
なった。

 学習院大学文学部入試問題(平成15年度)に次のような整数問題が出題された。

問 題  mを整数とする。方程式 mx2+16x+m+2=0 の解のうち少なくとも1つが整数
   であるようなmをすべて求めよ。

 どこから手をつけるべきか悩む問題なので、いくつか実験してみよう。

m=0 のとき、 16x+2=0 は整数解を持たないから不適。
m=1 のとき、 x2+16x+3=0 は整数解を持たないから不適。
m=−1 のとき、 −x2+16x+1=0 は整数解を持たないから不適。
m=2 のとき、 2x2+16x+4=0 は整数解を持たないから不適。
m=−2 のとき、 −2x2+16x=0 は、2x(x−8)=0 と変形され、整数解 0、8 を持
つので、適である。
m=3 のとき、 3x2+16x+5=0 は、(3x+1)(x+5)=0 と変形され、整数解 −5
を一つ持つので、適である。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 こんな風に一つ一つ確かめていけば、条件にあうmが順次求められ、実際の試験でも部
分点はいくらかはもらえるだろう。mの取り得る値の範囲を制限していないから、それほど
でもないかな?

 まず、mの取り得る値の範囲を求めて、そこから題意に適するものを選択するという考え
方でいいだろう。

 上記では具体的な整数解を見て、mの値を求めている。問題には整数解を求めよとは一
切書いていないが、少なくとも一つ整数解を持つような整数mを求めるためには、実際の解
がどうなるかを調べないと、mの値が適かどうかは判明しない。

(解) m≠0 としてよいので、方程式は2次方程式である。判別式をDとすると、

 D/4=64−m(m+2)=−m2−2m+64

題意より、 −m2−2m+64≧0 すなわち、 m2+2m−64≦0

 (m+1)2−65≦0 より、 −√65≦m+1≦√65

よって、 −8≦m+1≦8 より、 −9≦m≦7

 mは0以外の整数なので、 m=±1、±2、±3、±4、±5、±6、±7、−8、−9

これらの値に対して、D/4=−m2−2m+64が0以上の平方数になるのは、

 m=−2、3、−5、6、7、−8、−9

これらの値に対して、解 x=(−8±√(D/4))/m に整数が現れるのは、

 m=−2、3、−5、6、7、−9 ( ← m=−8のみ不適)  (終)


 DD++さんからのコメントです。(平成26年12月23日付け)

 受験数学的正攻法は間違いなく上記の解答でしょうけれど、出題側の想定はこの手順で
はないかな、と。

 m=0 のとき、明らかに不適。以下では m≠0 とする。両辺に m をかけて、

 m2x2+16mx+m2+2m=0 より、 (mx+8)2 + (m+1)2 = 65

ここで、mx+8 と m+1 はともに整数で、また 65 を平方和で表す方法は 1+64 と 16+49 のみ

よって順序や正負を考慮して、

 (mx+8,m+1) = (±1,±8)、 (±4,±7)、 (±7,±4)、 (±8,±1)

このうち m≠0 かつ x が整数となるのは、

 (m,x) = (7,-1)、 (-9,1)、 (6,-2)、 (3,-5)、 (-5,3)、 (-2,0)

すなわち、求める m の値は、 m=-9、-5、-2、3、6、7


 なぜ、これが出題者想定と思われるのかというと、判別式=0を解いたときに出てくる √65
というところに、「2次不定方程式の問題でたくさん解を持たせたい」「2通りの平方和で表せ
る数字を使えばそれが実現できる」「それを実現できるのは 4N+1 型素因数を非平方で2つ
もち、4N+3型はあっても全て平方な数」「そういう数字の最小は 5×13=65」という数学的背景
を利用して作ったのが見え隠れしているので……。

 一見するといきなり m 倍する突飛な解答にも見えますが、判別式が(高校数学的には)二
次方程式の解の公式を作るときに平方完成した残骸に由来していること、またそのときに両
辺を 4a 倍してから解くと平方完成で分数計算にならないこと、この2つを知っていれば「4m
倍して平方完成」はさほど特殊な変形ではないような気も。実際は、今回は16が偶数なので
4倍は不要でこんな感じになります。


(コメント) mに何らかの制限を設けるために判別式を利用したわけですが、DD++さんの解
     のように平方の和に変形することも可能なんですね。とても美しい解答に仕上がって
     います。DD++さんに感謝します。


(追記) 令和2年8月23日付け

問題  自然数 a、b に対して、等式 a2+b2=2340 を満たすものをすべて求めよ。

が与えられた場合、どのようなアプローチをすべきだろうか?

 例えば、次のようにして、取り得る値の範囲を考える方もいらっしゃるだろう。

 b2=2340−a2>0 から、 a=1、2、3、・・・、48 が分かる。

このうち、自然数 b が存在するのは、 a=6、24、42、48 の場合で、

求める解は、 (a,b)=(6,48)、(24,42)、(42,24)、(48,6) となる。

 この手法は計算が大変で実用的ではない。もっと別な方法で範囲を狭めることを考えよう。

 まず、気がつくのは、「2340は3の倍数」であることである。

 ここで、次の性質が有名である。

 どんな自然数もその平方数を3で割った余りは、0または1 である。

 この性質から、a、bは3の倍数ということが分かるので、

 a=3m、b=3n (m、nは自然数)

とおける。このとき、与式は、 m2+n2=260 と簡単になる。

 さらに、「260は4の倍数」なので、m、nは4で割った余りが、0または2 である。

何れにしても、m、nは偶数なので、

 m=2p、n=2q (p、qは自然数)

とおける。このとき、与式は、 p2+q2=65 とさらに簡単になる。

 q2=65−p2>0 から、 p=1、2、3、4、5、6、7、8 が分かる。

このうち、自然数 q が存在するのは、 p=1、4、7、8 の場合で、

 (p,q)=(1,8)、(4,7)、(7,4)、(8,1) となる。

以上から、求める解は、それぞれを6倍して、

 (a,b)=(6,48)、(24,42)、(42,24)、(48,6) となる。


(追記) 令和2年8月24日付け

 いきなり、「15x+55y+33z=2 を満たす整数解を求めよ。」なんて問題を出されたら、
ちょっと戸惑ってしまう。でも、少しの工夫で解けるんですね

(出典:東京工業大学 前期理系(2018)(改題))

(解) 15=3×5、55=5×11、33=3×11 に注意して、

 mod11で、 4x≡2 より、 x≡6 よって、 x=11m+6 (mは整数) とおける。

 mod3で、 y≡2 より、 y=3n+2 (nは整数) とおける。

 このとき、 15(11m+6)+55(3n+2)+33z=2 より、

 z=−5m−5n−6 と書ける。

 以上から、 (x,y,z)=(11m+6,3n+2,−5m−5n−6) (m、nは整数)  (終)


#例えば、m=0、n=−1とすると、 (x,y,z)=(6,−1,−1) が一つの解となる。


(別解) z=5n−1 (nは整数) を代入して、15x+55y=35−165n より、

 3x+11y=7−33n から、 3x+11(y+3n)=7

 3×(−5)+11×2=7 なので、 3(x+5)+11(y+3n−2)=0

よって、 x=−11m−5 、y=3m−3n+2 (m、nは整数) と書ける。

以上から、 (x,y,z)=(−11m−5,3m−3n+2,5n−1) (m、nは整数)  (終)


# m=−M−1、m−n=N とおくと、

 −11m−5=11M+6,3m−3n+2=3N+2,
 5n−1=5(−M−1−N)−1=−5M−5N−6

で先の結果と一致する。


(コメント) 別解のように解答する人は皆無でしょうね...。


(追記) 令和5年2月1日付け

 今年度の大学受験も始まっていますね!どんな問題に出会えるか、とても楽しみです。
その前に、過去問から興味を引いた問題でウォーミングアップしておきましょう。

 ちょっと気になった東北大学前期理系(2018)の問題です。

第3問 整数 a、b は、等式 3−2=1 ・・・ @ を満たしているとする。

(1) a、bはともに正となることを示せ。
(2) b>1ならば、aは偶数であることを示せ。
(3) @を満たす整数の組 (a,b) をすべてあげよ。

(解)(1) 3=2+1>1 より、 a>0 である。

 aは整数なので、a≧1 である。このとき、2=3−1≧2>1 なので、 b>0 である。

(2) b>1のとき、bは整数なので、 b≧2 である。

 このとき、 2=3−1=(3−1)(3a-1+3a-2+・・・+1)=2(3a-1+3a-2+・・・+1)

より、 2b-1=3a-1+3a-2+・・・+1 となる。

 b≧2 なので、 左辺=2b-1 は偶数より、 右辺=3a-1+3a-2+・・・+1 は偶数

ここで、a個の項 3a-1、3a-2、・・・、1 は全て奇数なので、その和が偶数ということから、

aは偶数でなければならない。

(3) b=1 のとき、 3=3 から、 a=1

 b>1 のとき、(2)より、 aは偶数 なので、 a=2k (kは自然数) とおける。

このとき、 2=32k−1=(3−1)(3+1)

 ここで、 3−1=2 、3+1=2 (1≦m<n) とおける。

よって、 2−2=2 より、 2(2n-m−1)=2

 ここで、n−m≧2 とすると、 2n-m−1は奇数 となるので、不適

 よって、 n−m=1 で、 2=2 から、 m=1 、n=2

このとき、 3−1=2 、3+1=4 から、 k=1 で、 2=8 すなわち、 b=3

 よって、 3=9 より、 a=2

以上から、 (a,b)=(1,1) 、(2,3)  (終)


(コメント) こんな整数問題に受験で遭遇したら、途方に暮れてしまう方が多分多いんだろう
     と思う。(3)などは、相当な腕力を要する問題でした。


(追記) 令和5年5月12日付け

問題  ある2桁の整数に、その整数の各位の和と積を足したら、ちょうど 50 になったと
    いう。この整数を求めよ。

(解) 2桁の整数を 10a+b とおくと、題意より、 (10a+b)+(a+b)+ab=50

すなわち、 ab+11a+2b=50 より、 (a+2)(b+11)=72

この式を満たす a、b は、 a=2 、b=7 または a=4 、b=1 である。

よって、求める整数は、27 または 41  (終)


 DD++ さんからのコメントです。(令和5年5月13日付け)

 41 の他に 27 も解ではないでしょうか?

 27 + (2+7) + (2*7) = 27 + 9 + 14 = 50


(コメント) DD++ さん、誤りをご指摘いただきありがとうございます。(解)は修正しました。


(追記) 令和6年7月31日付け

 次の東北大学 文理共通(1976)の問題も典型的な整数問題である。

第1問  2次方程式 x2+ax+b=0 が引き続いた2つの整数を解にもち、2次方程式
  x2+bx+a=0 が正の整数を解にもつとき、a、b の値を定めよ。

(解) 引き続いた2つの整数解を、n、n+1 とおく。このとき、解と係数の関係から、

 n+n+1=−a 、n(n+1)=b すなわち、 a=−2n−1 、b=n2+n

 よって、 x2+bx+a=x2+(n2+n)x−2n−1=0 より、

 xn2+(x−2)n+x2−1=0 (x は正の整数)

この n に関する2次方程式が実数解をもつので、判別式をDとおくと、D≧0

 D=(x−2)2−4x3+4x≦(x−2)2−4x2+4x=4−3x2 から、 4−3x2≧0

この不等式を満たす正の整数 x は、 x=1 のみ。

 よって、 n2−n=0 から、 n=0、1

n=0 のとき、 a=−1 、b=0

n=1 のとき、 a=−3 、b=2  (終)


(コメント) 「x>0 のとき、x2≦x3」 という不等式の活用は感動しました。「引き続いた2つの
   整数」という表現は初見でした。


(追記) 令和6年8月13日付け

 nの小さい値に対して具体的に計算して整数解を求め、ある値以上では整数解を持たない
ことを示すという手順は、整数問題のある意味で王道の解法だろう。その王道をいく問題が、
東北大学 文理共通(1978)で出題された。

第4問  (1) 任意の正の整数 n に対して、次の不等式が成立する。

  (n+6)2<2n+5

 この事実を、数学的帰納法で証明せよ。

(2) 1+3+5+・・・+(2k+1)=2+4 を満たす正の整数 k を求めよ。

(解)(1) n=1 のとき、左辺=72=49 、右辺=26=64 から、左辺<右辺 で、n=1

のとき、命題は成立する。

n=k(k≧1) のとき、成り立つと仮定する。すなわち、 (k+6)2<2k+5

 両辺を2倍して、 2(k+6)2<2k+6

このとき、 2(k+6)2−(k+7)2=k2++10k+23>0 より、 (k+7)2<2(k+6)2

よって、 (k+7)2<2k+6 となり、命題は、n=k+1 のときも成り立つ。

したがって、任意の正の整数 n に対して、(n+6)2<2n+5 が成り立つ。

(2) 1+3+5+・・・+(2k+1)=(k+1)2 より、(k+1)2=2+4 を満たす正の整数

k を求める。

 k=1 のとき、 22<21+4 から、不適。

 k=2 のとき、 32>22+4 から、不適。

 k=3 のとき、 42>23+4 から、不適。

 k=4 のとき、 52>24+4 から、不適。

 k=5 のとき、 62=25+4 から、適。

 k≧6 のとき、 (k+1)2=2+4 を満たす正の整数 k について調べる。

 k+1≧7 なので、 k+1=n+6 (n≧1) とおける。

 (1)より、 (n+6)2<2n+5 なので、 (k+1)2<2<2+4

 よって、k≧6 のとき、(k+1)2=2+4 を満たす正の整数 k は存在しない。

以上から、1+3+5+・・・+(2k+1)=2+4 を満たす正の整数 k は、5  (終)


(追記) 令和6年8月31日付け

 令和6年8月16日付け朝日新聞朝刊に、「数学は世界をつなぐ共通の言語」と題して、特
集が掲載された。自由な発想と創造力で世界とつながるべく、挑戦してみた。

問題  p≦q なる素数の組(p,q)であって、15(p−1)(q−1) がpqの倍数となるようなもの
  すべてについて、pq を足し合わせた値を求めよ。

 問題の意味を理解するために、いくつか実験してみた。

15(p−1)(q−1) pq ○×
15 ×
30
60 10
90 14 ×
60 ×
120 15
180 21 ×
240 25 ×
360 35 ×

 条件を満たす素数の組(p,q)は、それほどないような雰囲気!

(解) 15(p−1)(q−1) がpqの倍数、すなわち、qの倍数で、p−1≦q−1はqで割り切れ

ないから、15がqの倍数となる。よって、 q=3、5

q=3 のとき、 p≦q から、 p=2、3

 表から、p=2のみ、適する。

q=5 のとき、 p≦q から、 p=2、3、5

 表から、p=2、3のみ、適する。

以上から、求める値は、 6+10+15=31  (終)


(追記) 令和6年9月14日付け

 次の東北大学 理系(2018)の問題は、3の累乗数と2の累乗数が隣り合う数同士になる
のはいつかを問う素朴な問題である。
(この問題は、令和5年2月1日付けで上記で取り上げられていました!)

例 31−21=1 、32−23=1

第3問  整数a、bは等式 3a−2b=1 を満たしているとする。

(1) a、b はともに正となることを示せ。
(2) b>1 ならば、a は偶数であることを示せ。
(3) 等式を満たす(a,b)をすべてあげよ。

(解)(1) 3a=2b+1>1 より、 a>0 で、a は整数から、a≧1 となる。

 このとき、 2b=3a−1≧3−1=2 より、 b≧1>0 

 以上から、a、b はともに正となる。

(2) b>1 ならば、b は整数から、b≧2 となる。このとき、

 2b=3a−1=2(3a-1+3a-2+・・・+1) より、 2b-1=3a-1+3a-2+・・・+1

b≧2 より、2b-1 すなわち、 3a-1+3a-2+・・・+1 は偶数となる。

ここで、a 個の 3a-1、3a-2、・・・、1 はすべて奇数なので、和が偶数であるためには、a は

偶数となる。

(3) b=1 のとき、 3a=2+1=3 より、 a=1

 b>1 とすると、(2)より、a は偶数なので、 a=2k (kは正の整数) とおける。

このとき、 2b=32k−1=(3k+1)(3k−1) より、

 3k+1=2 、3k−1=2 (s、t、は正の整数で、 s>t)

と書ける。辺々引いて、 2=2−2=2(2s-t−1) となる。

ここで、 s−t≧2 とすると、2s-t−1≧3 となり、2≧3・2 で、矛盾。

よって、s−t≦1 で、s、t、は正の整数で、s−t>0 から、 s−t=1 となる。

このとき、 2=2 から、t=1 すなわち、s=2 となる。

よって、3k+1=22=4 、3k−1=21=2 から、 2b=4・2=8 より、 b=3

このとき、 3a=8+1=9 より、 a=2

以上から、等式を満たす(a,b)は、 (1,1) 、(2,3)  (終)


(コメント) この問題に関連して、次のカタラン予想(1844)が有名である。

カタラン予想  x、y、m、n を1より大きい整数とするとき、

 xm−yn=1 を満たす(x,y,m,n)は、(3,2,2,3)に限る。


 この予想の完全解決は、ミハイレスク(2002)によってなされ、以後、ミハイレスクの定理
と呼ばれるようになった。東北大学 理系(2018)の問題は、ミハイレスクの定理で、「x=3、
y=2」という特別な場合になっている。


(追記) 令和6年10月30日付け

 次の東北大学 理系(1984)の問題も正接の加法定理を絡めた整数問題である。

問題3  正の数 α、β、m、n が次の条件を満たしている。
  2α+β=π/4 、tanα=1/m 、tanβ=1/n

(1) mを用いてnを表せ。
(2) m、n がともに整数であるとき、mとnを求めよ。

(解)(1) 1/n=tanβ=tan(π/4−2α)=(1−tan2α)/(1+tan2α)

ここで、tan2α=2tanα/(1−tan2α)=2m/(m2−1)

よって、

 1/n=(m2−2m−1)/(m2+2m−1) より、n=(m2+2m−1)/(m2−2m−1)

(2) n=1 のとき、 m2+2m−1=m2−2m−1 から、m=0 (不適)

よって、 n≧2 である。

 m、n がともに正の整数であるので、

 m2−2m−1>0 かつ m2+2m−1≧2(m2−2m−1) 即ち、 m2−6m−1≦0

よって、 m<1−、m>1+ かつ、 3−≦m≦3+ から、

 1+<m≦3+ となり、正の整数mは、m=3、4、5、6

m=3 のとき、n=7

m=4 のとき、n=23/7 (不適)

m=5 のとき、n=17/7 (不適)

m=6 のとき、n=47/23 (不適)

 以上から、求める正の整数m、nは、 m=3、n=7 である。  (終)


(コメント) この m=3、n=7 は、問題の条件を満たしているだろうか?

 tanα=1/3 、tanβ=1/7 から、 0<α、β<π/4 なので、 0<2α+β<π

 tan(2α+β)=(tan2α+tanβ)/(1−tan2αtanβ)

ここで、 tan2α=3/4 なので、

 tan(2α+β)=(3/4+1/7)/(1−(3/4)(1/7))=1

0<2α+β<π より、 2α+β=π/4 となり、確かに条件を満たしている。


 よおすけさんからのコメントです。(令和6年11月2日付け)

 上記の東北大学 理系(1984)の問題3の関連問題が、2017年に京都大学で出題され
ました。前期文系、前期理系両方で出題されましたが、元の問題文が若干違います。

(2017年京都大前期文系)

 p、q を自然数、α、βを tanα=1/p、tanβ=1/q を満たす実数とする。

(1) 次の条件 (A) tan(α+2β)=2 を満たすp、qの組(p,q)のうち、q≦3 であるものを
  すべて求めよ。

(2) 条件(A)を満たすp、qの組(p,q)で、q>3 であるものは存在しないことを示せ。


(2017年京都大前期理系)

 p、q を自然数、α、βを tanα=1/p、tanβ=1/q を満たす実数とする。このとき、

tan(α+2β)=2 を満たすp、qの組(p,q)をすべて求めよ。


(コメント) 文系・理系の問題を統一して解いてみました。

 tan(α+2β)=(tanα+tan2β)/(1−tanαtan2β)

ここで、 tanα=1/p 、tan2β=2tanβ/(1−tan2β)=2q/(q2−1) を代入して、

 (1/p+2q/(q2−1))/(1−2q/(p(q2−1)))=2

すなわち、 1/p+2q/(q2−1)=2(1−2q/(p(q2−1)))

両辺に p(q2−1) を掛けて、 q2−1+2pq=2p(q2−1)−4q

すなわち、 (2p−1)q2−2(p+2)q−2p+1=0

ここで、 y=(2p−1)x2−2(p+2)x−2p+1 とおくと、2p−1>0 から、下に凸の放物

線となる。軸の方程式は、x=(p+2)/(2p−1) で、p≧1 から、

 (p+2)/(2p−1)≦3 となる。

x=1 のとき、 y=−2p−4=0 とおくと、p=−2 で、不適

x=2 のとき、 y=2p−11=0 とおくと、p=11/2 で、不適

x=3 のとき、 y=10p−20=0 とおくと、p=2 で、適

 よって、求める解の1組は、(p,q)=(2,3)

x>3 のとき、y≧22p−31 で、p=1 のとき、q2−6q−1=0 は整数解を持たないの

で、p≧2 となり、このとき、y>0 で、よって、x>3 では、y=0 は解を持たない。  (終)


(追記) 令和7年1月9日付け

 次の東北大学 文系(1988)の問題も整数問題と言えよう。

問題  1<a<b<a2<100 を満たす整数 a、b の組で logb が有理数となるものを
  すべて求めよ。

(解) 1<a<b<a2<100 より、 a=2、3、4、5、6、7、8、9 である。

a=2 のとき、 2<b<4 を満たす整数は、 b=3

 log23=m/n とすると、 2=3 左辺が偶数に対して、右辺は奇数となり、この式を
満たす自然数m、nは存在しない。

a=3 のとき、 3<b<9 で、 logb が有理数となるものは存在しない。

a=4 のとき、 4<b<16 で、 b=8 のとき、logb=log48=3/2 は有理数。

a=5 のとき、 5<b<25 で、 logb が有理数となるものは存在しない。

a=6 のとき、 6<b<36 で、 logb が有理数となるものは存在しない。

a=7 のとき、 7<b<49 で、 logb が有理数となるものは存在しない。

a=8 のとき、 8<b<64 で、 b=16 のとき、logb=log816=4/3 は有理数。

  b=32 のとき、logb=log832=5/3 は有理数。

a=9 のとき、 9<b<81 で、 b=27 のとき、logb=log927=3/2 は有理数。

以上から、求める整数 a、b の組は、

 (a,b)=(4,8)、(8,16)、(8,32)、(9,27)  (終)


(コメント) logb=m/n (有理数) とすると、 b=a^(m/n)

 a<b<a2 から、1<m/n<2

a が素数のとき、 b=a より、 bはaで割り切れるので、 b=a (kは自然数)

 よって、 kn=m より、 m/n=k で、 1<k<2 を満たす自然数は存在しない。

従って、a=2、3、4、5、6、7、8、9 のうち、最初から、a=2、3、5、7 は除外してよい。



   以下、工事中!