関数の値                                     戻る

 高校に入って暫くして、先生方による添削指導の中で、次のような問題に出会った。

        X=  のとき、 X5−X3+X の値を求めよ。

 当時、計算には自信があったので、強引に 3乗、5乗を計算して値を求めた。何日か後
に返却された添削プリントには、「解法が美しくないです!そのまま代入しては、ダメです。」
と書かれてあった。模範解答として、次のような答が印刷されていた。

      (2X−1)2 = 5 から、X2−X−1 = 0
     このとき、 X5−X3+X = (X2−X−1)(X3+X2+X+2)+4X+2 なので、
            X5−X3+X =

 確かに、上の解答は、自分自身の解答に比べて美しい。目標に向かって、着実に突き進
んでいる感じがする。それにひきかえ自分のは、力任せに何となく出来ちゃったという感は
免れない。
 それまでは、「数学の解答は自分だけのもの、解ければO.K.」だと思っていたが、この
問題を契機として、「解けるだけでは駄目だ!他の人が見ても、そして自分自身にとっても
『美しい!』と思えるような解法を心がけよう」と思うようになった。しかし、計算力に頼るとい
う私の癖は、すぐに直るわけでもなく、大学時代のセミナーの先生からは、「君の解答は、
何となく出来ちゃっているんだよね!」と喝破されてしまった。汗顔のいたりである。

 このページでは、関数の値を求めるときに有効な裏技を紹介する。関数の値の計算は、
数学の種々の場面で遭遇する計算なので、必ず身につけるべき技術だろうと思う。

(例) 関数 F(X) = X3+3X2−6X+9 の極値の和を求めよ。

  導関数 F’(X) = 3X2+6X−6 = 3(X2+2X−2) = 0 は、相異なる2つの実数解
 α 、 β ( α < β ) を持ち、極大値は、F( α )、極小値は、F( β )である。
  ここで、
         X3+3X2−6X+9 = (X2+2X−2)(X+1)−6X+11
 なので、
  (極値の和)= F( α )+F( β ) = (−6 α +11)+(−6 β +11)
                  = −6( α + β )+22
                  = 34   (← α + β =−2 )

 (注) 解の公式を用いて、 α 、 β を具体的に求め、それを、F(X) に代入しても出来ると
    思うが、多分、計算は、大変なことになるでしょう!?

    (参考:ホームページ「大川研究室」の中の数学の問題コーナー 問題13)

   (別解) 上記の例題に対して、「裏技」とはまた一味違う裏技を用いると、次のように
        も解けるということを、広島工業大学の大川研究室よりご教示頂いた。

      三次関数のグラフは、変曲点について点対称なので、変曲点は、極大点と極小
     点の中点である。
       F”(X) =6X+6=0  より、X=−1
     よって、F(−1)=(極値の和)/2 なので、(極値の和)=2 F(−1)=2×17=34

     (コメント) 極値の和を求める問題に限定すれば、とても簡潔で有効な裏技だと思
           う。
 極値の和だと、上記のような美しい裏技が存在するが、「極値の差」としても次のような美し
裏技が知られている。(平成31年1月2日付け)

(例) 関数 F(X) = X3+3X2−6X+9 の極値の差を求めよ。

  導関数 F’(X) = 3X2+6X−6 = 3(X2+2X−2) = 0 は、相異なる2つの実数解
 α 、 β ( α < β ) を持ち、極大値は、F( α )、極小値は、F( β )である。
  解と係数の関係より、 α+β=−2 、αβ=−2
 このとき、
 (極値の差)= F( α )−F( β ) =∫βα F’(X) dX=−3(α−β)3/6=−(α−β)3/2
 ここで、
      (α−β)2=(α+β)2−4αβ=4+8=12 より、 α−β=−2
 なので、
      (極値の差)=12

(コメント) 極値の差の計算に定積分の面積の公式が使えるとは驚きです!関数に文字が
      入っているときの処理に有効でしょう。

(例) X = のとき、 X4−3X3+9X2−10X+1 の値を求めよ。

  α= とおくと、α2 なので、 X = 1−α+α2
 このとき、αX = α−α2+2 = 3−X の両辺を平方して、 α22 = (3−X)2
 よって、 左辺= (X−1+α)X2 = (X−1)X2+(3−X)X = X3−2X2+3X なので、
          X3−2X2+3X = (3−X)2  即ち、X3−3X2+9X−9 = 0
 したがって、 与式 = X(X3−3X2+9X−9)−X+1 =

 (注) 上の例からも分かるように、この裏技のポイントは、次の2点である。
    (1) X が満たすべき方程式を求めること
    (2) 整式の割り算

(例) X =  のとき、 8X5+16X4+4X3−4X2−X+3 の値を求めよ。

 ここまで問題が複雑になってくると、もう代入して計算しようという気は全く起こらないだろう。
ここで、裏技の出番である。

 Xの逆数を求め、−1を左辺に移行して、両辺を平方する。
        
 両辺を展開し、式を整理して、さらに、両辺を平方する。
        
 上の式を整理して、 8X4+16X3+4X2−4X−1 = 0
 したがって、 与式 = X(8X4+16X3+4X2−4X−1)+3 = 3

 今の高校生に、このような骨のある計算をさせる場面がなくなってきている。以前に比べて
計算する力が、速さ・正確さの両面で非常に落ちてきている。計算力がないので、先の見通
しも立たず、問題解決に至らず、挫折してしまうのが、今の高校生の現状である。非常に長
い計算に、諦めずに耐えて、結果を得る喜びというものを経験することも、高校時代の大切
なテーマであると私は考える。