解の公式を鮮やかに導く方法
2次方程式 aX2+bX+c=0 の解の公式は、新学習指導要領により、数学Tでの履修
内容となった。各教科書会社の教科書においては、横並びに同じような証明(文字の分数
が洪水のように押し寄せる、例の証明です!)が掲載されている。文字を含む分数式の計
算が不慣れな高校1年生にとっては、辛い計算となっている。
最近、その解の公式の証明で、鮮やかな方法があることを知った。次のようにやるらしい。
aX2+bX+c=0 より、 aX2+bX=−c だから、 4a2X2+4abX=−4ac
よって、 4a2X2+4abX+b2=b2−4ac より、(2aX+b)2=b2−4ac
したがって、 であるので、
求める解の公式は、
となる。
ちょっとした工夫だが、途中計算に、文字の分数が一切出ないところが素晴らしいと思う。
多分、この裏技をみて一番感動するのは、教科書の証明で苦労をした人々だろう。
(参考文献:野崎昭弘・何森 仁・伊藤潤一・小沢健一 著
数と計算の意味がわかる (ベレ出版))
(追記) 平成21年11月25日付け
最近、上記の鮮やかな解法が、実は、シュリーダラ(Sridhara 10〜11世紀頃)によるも
のであることを知った。シュリーダラは、2次方程式 aX2+bX=c の解を次のように述べ
ている。
方程式の両辺に未知数の平方の係数の4倍に等しい量を掛け、両辺に未知数
の係数の平方に等しい量を加え、次に平方根をとれ
これは正しく上記で述べた式変形である。
(追記) 令和5年4月17日付け
解の公式は、シモン・ステヴィン(1548〜1620)が1594年に発見したと言われるが、現在
我々が知っている形式での解の公式は、1637年にルネ・デカルトによるものである。
2019年、ポーシェン・ローにより、解の公式に代わる新解法が発見された。
以下で、いくつかの例について、その新解法を体験してみた。
例 x2−4x+3=0 を解け。
因数分解して、 (x−1)(x−3)=0 から、x=1、3 であるが、これを、次のように解く
らしい。
x2−4x+3=(x−a)(x−b)=x2−(a+b)x+ab から、 a+b=4 、ab=3
4÷2=2 を求めて、a=2+u 、b=2−u (u>0) とおくと、 (2+u)(2−u)=3
よって、 4−u2=3 から、 u2=1 より、 u=1
よって、解は、 a=2+u=3 、b=2−u=1 となる。
例 x2+6x+3=0 を解け。
x2+6x+3=(x−a)(x−b)=x2−(a+b)x+ab から、 a+b=−6 、ab=3
−6÷2=−3 を求めて、a=−3+u 、b=−3−u (u>0) とおくと、
(−3+u)(−3−u)=3 より、 9−u2=3 から、 u2=6 より、 u=
よって、解は、 a=−3+u=−3+ 、b=−3−u=−3+ となる。
(コメント) 当然ながら、この結果は、解の公式を用いて解いた場合と一致する。
例 2x2+6x+3=0 を解け。
x2+3x+(3/2)=(x−a)(x−b)=x2−(a+b)x+ab から、 a+b=−3 、ab=3/2
−3÷2=−3/2 を求めて、a=−3/2+u 、b=−3/2−u (u>0) とおくと、
(−3/2+u)(−3/2−u)=3/2 より、 9/4−u2=3/2 から、 u2=3/4 より、
u=/2
よって、解は、a=−3/2+u=−3/2+/2 、b=−3/2−u=−3/2−/2 となる。
すなわち、解 x は、 x=(−3±)/2 となる。
(コメント) 私としては、これまで通り、「解の公式」を用いる方が自然で楽かな...?
上記の解法の(原理)を考えてみた。
2次方程式 x2+mx+n=(x−a)(x−b)=x2−(a+b)x+ab において、
a+b=−m 、ab=n を満たす a、b を m、n で表すことを考える。
−m÷2=−m/2 を考え、 a=−m/2+u 、b=−m/2−u (u>0) とおく。
このとき、 ab=m2/4−u2=n から、 u2=m2/4−n=(m2−4n)/4
よって、 u={√(m2−4n)}/2 から、
a=−m/2+{√(m2−4n)}/2 、b=−m/2−{√(m2−4n)}/2
すなわち、解は、 (−m±√(m2−4n)/2 となり、解の公式が得られる。
上記の手順では、「−m÷2=−m/2 を考え」ることがキーポイントだろう。これは、2次
式の平方完成に通じるもので、計算様式は異なるものの、基本的な計算は、平方完成によ
る2次方程式の解法そのものといっても過言ではないだろう。
したがって、新解法かどうかは若干疑問である。
以下、工事中!