2項間漸化式
最近、ある予備校の方とお話しをする機会があって、その中で、「2項間漸化式の裏技」
なるものをご教示いただいた。
例1 次で定義される数列 { an } の一般項を求めよ。
a1=1 、 an+1=2an+1 (n=1,2,3,・・・)
(通常の解法) 特性解を x とおくと、 x=2x+1 より、 x=−1
よって、 an+1+1=2(an+1)
これより、数列 { an+1 } 初項 a1+1=2、公比 2 の等比数列であるので、
an+1=2・2n-1=2n
したがって、求める一般項は、 an=2n−1
(裏技の解法) 数列 { bn } について、 bn+1=2bn+1 (n=1,2,3,・・・) が成り立
つとして、辺々引くと、 an+1−bn+1=2(an−bn) である。
ここで、 bn+1=2bn+1 を満たす最も簡単な数列 { bn } として、
bn=x とすると、 x=2x+1 より、 x=−1
よって、 an+1+1=2(an+1)
これより、数列 { an+1 } は、初項 a1+1=2、公比 2 の等比数列であるので、
an+1=2・2n-1=2n
したがって、求める一般項は、 an=2n−1
(注) 平成21年6月25日付けで、当HPがいつもお世話になっているS(H)さんより、
「特性解」という用語について、ご教示いただいた。
上記の計算で x=2x+1 を、「特性方程式」と呼ぶのは、どうも受験数学だけらし
い。私自身は、いろいろな先生方、書籍からずっとそう教えられてきたので、疑問にも
思わなかったが、「特性方程式」の本来の意味とはずれているらしいことを、S(H)さん
からいただいた情報により知った。
2階常微分方程式 y”−y’−2y=0 で、 Dy=y’ 、 D2y=D(Dy)=y” と考え
れば、
D2y−Dy−2y=0 すなわち、 (D2−D−2)y=0
から、「特性方程式」: D2−D−2=0 が得られる。
同様に、3項間漸化式 an+2−an+1−an=0 において、
E(an)=an+1 、 E2(an)=E(E(an))=an+2
と考えれば、 (E2−E−1)(an)=0 より、「特性方程式」: E2−E−1=0 が得ら
れる。
このような考え方が「特性方程式」の本来の姿だろうが、次のように解釈すれば、今
まで「特性方程式」と思っていた式も日の目を見るのではないだろうか?
すなわち、 an+2−an+1−an=0 を、 an=En が満たすものとすると、
En+2−En+1−En=0 より、 E2−E−1=0 が得られる。
同様に、 an+1=2an+1 を、 an=x が満たすものとすると、
x=2x+1 が得られる。
(裏技の解法)は、「特性方程式」という言葉を表に出さず、上記のような考え方「・・・を
満たす最も簡単な数列 { bn }を求める」ことを前面に出した解法とも言える。
「特性解」という用語を用いず、「特殊解」という言い方もあるが、それは五十歩百歩
だろう。
上記の解法では、解答内に「特性解」という用語を用いたが、実際は、この部分の計
算は欄外で計算され、
an+1=2an+1 から an+1+1=2(an+1)
と指導されるのが常だろう。
例2 次で定義される数列 { an } の一般項を求めよ。
a1=1 、 an+1=2an+n (n=1,2,3,・・・)
(通常の解法) an+2=2an+1+n+1 と辺々引いて、
an+2−an+1=2(an+1−an)+1
bn=an+1−an とおくと、 a2=2a1+1=3 なので、 b1=3−1=2
bn+1=2bn+1 より、 bn+1+1=2(bn+1)
よって、 bn+1=3・2n-1 より、 bn=3・2n-1−1
階差数列の公式を用いて、
n≧2 のとき、 an=1+(3・2n-1−n−2)=3・2n-1−n−1
この式は、n=1 のときも成り立つので、
n≧1 のとき、 an=1+(3・2n-1−n−2)=3・2n-1−n−1
(裏技の解法) 数列 { bn } について、 bn+1=2bn+n (n=1,2,3,・・・) が成り立
つとして、辺々引くと、 an+1−bn+1=2(an−bn) である。
ここで、 bn+1=2bn+n を満たす最も簡単な数列 { bn } として、
bn=x・n+y とすると、 x・(n+1)+y=2{x・n+y}+n より、
x・n+x+y=2x・n+2y+n すなわち、 (x+1)・n−x+y=0
n の恒等式とみて、 x=−1 、 y=−1
よって、 bn=−n−1
このとき、 an+1+(n+1)+1=2{an+n+1)
これより、数列 { an+n+1 } は、初項 a1+1+1=3、公比 2 の等比数列で
あるので、
an+n+1=3・2n-1 より、求める一般項は、 an=3・2n-1−n−1
この手法を用いると次のような問題も簡単に解けそうだ。
例3 次で定義される数列 { an } の一般項を求めよ。
a1=1 、 an+1=2an+n2 (n=1,2,3,・・・)
(裏技の解法) 数列 { bn } について、 bn+1=2bn+n2 (n=1,2,3,・・・) が成り立
つとして、辺々引くと、 an+1−bn+1=2(an−bn) である。
ここで、 bn+1=2bn+n2 を満たす最も簡単な数列 { bn } として、
bn=x・n2+y・n+z とすると、
x・(n+1)2+y・(n+1)+z=2{x・n2+y・n+z}+n2 より、
(x+1)・n2+(y−2x)・n+z−x−y=0
n の恒等式とみて、 x=−1 、 y=−2 、 z=−3
よって、 bn=−n2−2n−3
このとき、 an+1+(n+1)2+2(n+1)+3=2{an+n2+2n+3)
これより、数列 { an+n2+2n+3 } は、初項 a1+1+2+3=7、公比 2 の
等比数列であるので、 an+n2+2n+3=7・2n-1 より、
求める一般項は、 an=7・2n-1−n2−2n−3 となる。
(コメント) 特性解や階差数列を利用した解法が、「・・・を満たす最も簡単な数列
{ bn } 」
を考えることにより、統一的に解かれることに感動しました!
特に、例3は、階差数列の公式を2回も用いる大変な計算ですが、これだと簡
単かな?
この裏技はよく知られているようで、HN「tetsuya」さんも、次のように教えているとのことで
ある。(平成21年6月24日付け)
a1=1 、 an+1=2an+n (n=1,2,3,・・・)
において、 bn=an+α・n+β が等比数列の漸化式 bn+1=2bn を満たすように、
α , β を決定しよう。
あとは、上記の計算と同様である。
an+1+α・(n+1)+β=2{an+α・n+β} より、
2an+n+α・n+α+β=2an+2α・n+2β
すなわち、 (α−1)・n−α+β=0
n の恒等式とみて、 α=1 、 β=1
よって、 an+1+(n+1)+1=2{an+n+1}
このとき、数列 { an+n+1 } は、初項 a1+1+1=3、公比 2 の等比数列で
あるので、
an+n+1=3・2n-1 より、求める一般項は、 an=3・2n-1−n−1
(コメント) この手法は、与えられた漸化式を等比型に導く自然な解法なのかもしれないで
すね!tetsuya さんに感謝します。