指導者のためのたすき掛け                  戻る

 たすき掛けによる因数分解は、高校1年生にとって最初の高校数学への関門だろう。難な
く出来る者もいれば、何故か苦労する者も多い。多分それはたすき掛けがパズル的な要素
を持っているからだろう。中学校数学ではあまり経験しなかった試行錯誤の能力が必要とさ
れるからだ。

 たすき掛けの因数分解の問題を作ることは易しい。因数分解された式を逆に展開するだ
けだ。その式を因数分解するには、いくつか実験をして項の組み合わせを考えることになる。

 最近、このたすき掛けによる因数分解について、山口県立岩国高校の西元教善先生より、
新しい技をご教示いただいた。

例 6x2−17x+12を因数分解する場合、

× −3 −9   左図の組み合わせから、 (2x−3)(3x−4) と因数分解される。
−4 −8
12 −17

 ここで、たすき掛けの難しさは、2×3、(−3)×(−4)の組み合わせから、−9、−8を計
算して、さらに、その和がxの係数−17に一致することを確かめるという2段階の計算が必
要なところだろう。

 西元先生の技によれば、「−9」や「−8」は実は次のように計算しても求められる。

 6x2−17x+12 の判別式 D=172−4・6・12=289−288=1 より、k=√D=1

 このとき、 (−17−k)/2=−9 、 (−17+k)/2=−8 が得られる。

 もちろん、Dを計算するんだったら解の公式から、x=(17±1)/12=3/2、4/3 を求め

  6x2−17x+12=6(x−3/2)(x−4/3)=(2x−3)(3x−4)

と因数分解する方が速いし自然である。ただ、不幸にも、このような式変形は高校2年生に
なってから学ぶことである。

 西元先生の技は、

× −9
−8
12 −17

の形から、4つの数の組み合わせを見つけた方が多少は試行錯誤が軽減されるだろうとい
うことで、因数分解の指導の際に教える側にとって十分メリットがありそうだ。

 ax2+bx+c=(px+q)(rx+s)=prx2+(ps+qr)x+qs の判別式をDとおくと、

 D=(ps+qr)2−4pqrs=(ps−qr)2 から、k=√D=ps−qr または、−(ps−qr)

 よって、 b=ps+qr 、k=ps−qr から、 ps=(b+k)/2 、qr=(b−k)/2

 同様に、 b=ps+qr 、k=−(ps−qr) から、 ps=(b−k)/2 、qr=(b+k)/2

 何れにしても、たすき掛けの右の列に入るべき数は、(b+k)/2 と qr=(b−k)/2 で
ある。

 読者のために、練習問題を残しておこう。

問題 18x2−3x−28 を因数分解せよ。

(解) D=9+2016=2025=452 なので、 k=√D=45

   (b+k)/2=21 と (b−k)/2=−24

 よって、次の空所を補充すればよい。

×  21
−24
18 −28 −3

 補充すると、

×  7  21   左図の組み合わせから、(6x+7)(3x−4) と因数分解される。
−4 −24
18 −28 −3