ある無理方程式の解法                    戻る

 当HPの掲示板「出会いの泉」に、いつもお世話になっている未菜実さんから、ある無理
方程式のおもしろい解法についての書き込みがあった。

 未菜実さんも初めて見る解法とのことであるが、私自身もこれまで、そのような解法の存
在を知らなかった。

 ある特殊な場合の無理方程式に関するものだが、一つの裏技として紹介したいと思う。

問題 無理方程式  を解け。

 通常は両辺を平方して、根号のない形の方程式に変形して解くのが一般的であるが、こ
の問題の場合は、4次方程式になってしまって、その解を求めることは一般的に困難であ
る。

 平方してできた4次方程式に対して、次のように巧妙に発想の転換を図ると、鮮やかに
解が求まる。

 無理方程式の両辺を平方して、  x+5=25−10x2+x4

この式において、P=5 とすると、  x+P=P2−2Px2+x4

よって、Pに関して整理すると、  P2−(2x2+1)P+x4−x=0

これは、Pに関する2次方程式で、その判別式をDとおくと、

      D=(2x2+1)2−4(x4−x)=4x2+4x+1=(2x+1)2

である。よって、解の公式より、

   P=(1/2)(2x2+1±(2x+1))=x2+x+1 、x2−x

P=5 だったので、 x2+x+1=5 または x2−x=5

すなわち、 x2+x−4=0 または x2−x−5=0 となる。

≦ x ≦  に注意して、x についての2次方程式の解を求めると、

          、   

 通常の解法では得られない解と遭遇することができて、とても感動することができた。
情報を提供していただいた未菜実さんに感謝します。

 上記の解答で、Pに関する2次方程式の判別式が完全平方式になっているところが一番
のポイントである。「5」を移項して、「25」とまとめてしまうと、もう解くことは困難である。
Pの係数で、「2x2+1」となっている点が心憎いばかりの巧妙さである。

 上記の問題を一般化して、無理方程式  について考えてみよう。

両辺を平方して整理すると、   b2−2bx2+x4−x−a=0

このままでは目的は達せられないから、適当な定数 k を用いて、

         b2−(2x2+k)b+x4−x+kb−a=0

と変形しておく。このとき、判別式Dは、

   D=(2x2+k)2−4(x4−x+kb−a)=4kx2+4x+k2−4kb+4a

これが完全平方式になるためには、判別式をD’として、

   D’/4=4−4k(k2−4kb+4a)=−4k3+16bk2−16ak+4=0

すなわち、 k3−4bk2+4ak−1=0 となるように、定数 k を定めることができれば、上

記の裏技が常に活用できる。

 簡単な計算から、冒頭の問題では、a=b=5 なので、この場合、k=1 となる。このよ

うな背景があって、冒頭の巧妙な式変形が編み出されたわけである。

 ただし、任意の a 、b に対して、3次方程式 k3−4bk2+4ak−1=0 の解を見つけ

ることは、それほど易しいことではないようだ。

 a = b ならば、常に、k=1 が解となるが、それ以外の場合は、何か大変そうである。


(追記) HN「ますた〜」さんから、上記の一般化に関しての話題をメールでいただいた。
                                      (平成27年7月19日付け)

 ここの問題は個人的に物凄いお気に入りでして、一般化したりよく友達などに出してます。
二点報告があります。

 まず一点。一般化について、上記では難しいとのことですが、私は、

   √(ax±bP)=a2x2/b3-+P ((a,b)≠0) (-+はマイプラの意味)

が一般形だと発見していたので報告します。

 二点目は、別解についてです。これはある人が思い付いたようですが、有理化したあとの

式 x4-10x2-x+20=0 は、 (x2+x-4)(x2-x-5)=0 と因数分解が出来ます。または、

「y=√(x+5) と y=5-x2 のグラフは、y=-x に関して対称より、y=-x と y=5-x2 (y=√(x+5)) の

交点が一つの解→それを利用して因数分解」という方法があったようです。

 固い頭が少しほぐれた気分です。ご参考まで。


(コメント) √(ax±bP)=a2x2/b3-+P の両辺を平方して、

  ax±bP=a4x4/b6-+2Pa2x2/b3+P2 より、 P2-+(2a2x2/b3+b)P+a4x4/b6-ax=0

 判別式Dは、D=(2a2x2/b3+b)2-4(a4x4/b6-ax)=4a2x2/b2+4ax+b2=(2ax/b+b)2 と完全平
方になる!

 この公式で、問題がたくさん作れそうです。HN「ますた〜」さんに感謝します。

 因みに冒頭の問題は、この公式で、「a=1、b=-1、P=5」とすれば得られます。

 また、y=√(x+5) と y=5-x2 のグラフが、y=-x に関して対称ということから、

の解の一つをαとおくと、αは、5-x2=-x すなわち、x2-x-5=0 を満たすので、

x4-10x2-x+20=0 の因数分解の一つの明白な指針となることに感動しました。