方程式の生成                              戻る

 数の拡張は、方程式に依存している。自然数のみの世界で生きる者にとっては、方程式
 X+1=0 の解は存在しえないが、整数のみの世界で生きている者にとっては、解は存
在して、−1 と答えられる。しかし、方程式 2X+1=0 の解は考えられない。

 今、α = という数を考える。我々は、この数が、ある方程式の解と認識でき
る世界に生きているものとする。

 数 α の満たす方程式とは、どんなものだろうか?

 普通に計算すれば、次のようにするのだろう。

  ( α − 3=( 3  より 、 α3 − 3 α2 − 6 α + 2 = 2

よって、  α3 − 6 α − 2 = (3 α2 − 2)  の両辺を平方して、

    α6 + 36 α2 + 4 − 12 α4 + 24 α − 4 α3 = (9 α4 − 12 α2 + 4)・(−2)

整理して、  α6 + 6 α4 − 4 α3 + 12 α2 + 24 α + 12 = 0 となる。

 以上から、数 α の満たす方程式は、

        X6 + 6 X4 − 4 X3 + 12 X2 + 24 X + 12 = 0

となる。(逆に、この方程式を解いて、数 α が解になるというのは想像もつきませんね!)

 上記のような解法が一般的と思われるが、次のような解法もあることを最近知った。

 数 α = において、β =  、γ = とおく。

このとき、 α = β + γ 、 β3 = 2  、 γ2 = −2  である。

( 1 , β , β2 ) と ( 1 , γ ) の組合せ

  β β2
β β2
γ γ β γ β2 γ

から、  1 、 β 、 γ 、β γ 、 β2 、 β2 γ の 6 個の数を考える。

このとき、  α・1 = 1・β + 1・γ
           =0・1+1・β+1・γ+0・β γ+0・β2+0・β2 γ

        α・β = 1・β2 + 1・βγ
           =0・1+0・β+0・γ+1・β γ+1・β2+0・β2 γ

        α・γ = 1・β γ+ 1・γ2 = −2・1+ 1・β γ
           =−2・1+0・β+0・γ+1・β γ+0・β2+0・β2 γ

        α・βγ = 1・β2 γ+ 1・β γ2 = −2・β+ 1・β2 γ
           =0・1+(−2)・β+0・γ+0・β γ+0・β2+1・β2 γ

        α・β2 = 1・β3+ 1・β2 γ = 2・1+ 1・β2 γ
           =2・1+0・β+0・γ+0・β γ+0・β2+1・β2 γ

       
α・β2 γ= 1・β3 γ+ 1・β2 γ2 = 2・γ+ (−2)・β2
           =0・1+0・β+2・γ+0・β γ+(−2)・β2+0・β2 γ

から、次のような行列の式で表される。

        

 上記の列ベクトルは、零ベクトルでないから、行列の理論を用いて、

        

が成り立つ。行列式の計算公式から、左辺は、

   

と分解される。 同様な分解を続ければ、左辺は、

        α6 + 6 α4 − 4 α3 + 12 α2 + 24 α + 12

となる。(ここの計算は、少し大変でした!)

 以上から、数 α の満たす方程式は、

        X6 + 6 X4 − 4 X3 + 12 X2 + 24 X + 12 = 0

となる。

(コメント)
 このような解法は、裏技とは呼べない代物かもしれないが、発想がとても斬新であり、感
動を引き起こす。

(参考文献:山本芳彦 著 数論入門2 (岩波書店))

(追記) 平成18年5月9日 当HPの読者の方(HN:U 様)より、方程式の定数項に誤り
     がある旨のご指摘をいただいた。再計算したところ、確かに誤りであることが確認
     された。お詫びして訂正いたします。(上記は既に修正済み)