濃度の計算                                戻る

 単純な四則計算が出来ても濃度などの百分比や割合の概念が入った問題に苦手意識
を持つ者は多い。
むしろ、比の計算が弱いというのは日本の高校生の特徴だろう。

 平成19年9月8日付け朝日新聞夕刊に、碇塾の塾長 碇 優さんが斬新な解法を紹介
している。まさしく裏技と呼べる解法で、とても新鮮であった。

 分数の入った面倒な計算から解放される方法で、是非中・高校生に広めたい解法であ
る。

例題  4%の食塩水と12%の食塩水を混ぜ合わせて、10%の食塩水を100g作りた
    い。それぞれ何gずつ混ぜればよいか?

 通常の解法を知らずして裏技の解法を知っても、何の感動も得られないと思うので、通
常の解法をまずあげておこう。

(通常の解法) 4%の食塩水を x g とすると、12%の食塩水は、100−x g である。

         このとき、塩分の量に着目して、

           0.04x+0.12(100−x)=0.1×100

         よって、 0.04x+12−0.12x=10

                0.08x=2 より、 x=25

         以上から、 4%の食塩水を 25 g と、12%の食塩水を、75 g 混ぜれば

        よい。

 これに対して、碇さんの開発された裏技で解くと、次のように解けるらしい。

(裏技の解法)  10%−4%=6% 、 12%−10%=2% より、

                 6% : 2% = 3 : 1

         

          上図のような天秤を考え、釣り合っているので、 3x=100−x

           よって、 4x=100 より、 x=25

          したがって、4%の食塩水を 25 g と、12%の食塩水を、75 g 混ぜれば

          よい。

(コメント) 濃度の問題に「天秤」を使うという発想に驚かされました。それにしても、計算
      が非常に易しい形になっていますね。

           0.04x+0.12(100−x)=0.1×100=0.1(x+100−x)

      と式変形して、 0.1x−0.04x=0.12(100−x)−0.1(100−x)

      なので、  0.06x=0.02(100−x)  すなわち  3x=100−x

      から、裏技の正当性が確認されます。

      4%、10%、12%の濃度の関係から、12%の方が4%よりたくさん食塩水を
     使って重いという発想から「天秤」という考えが思いつかれたのでしょうか?

(追記) 平成19年9月15日付け

 上記において、(通常の解法)、(裏技の解法)の何れも方程式を作って解いたが、方程
式を用いない解法も存在するようだ。

 すなわち、上記の問題は、鶴亀算の考え方で解かれる。鶴亀算を復習しておこう。

[鶴亀算] 鶴と亀が合わせて10匹いる。足の本数が26本のとき、亀は何匹いるか?

 (解) 10匹全部が鶴とする。(←鶴亀算の常套手段!)

    このとき、足の本数は、20本で、 26−20=6(本)余る。

    この余った足は全て、亀の残りの足の分である。(1匹当たり、4−2=2(本))

    よって、亀は、 6÷2=3(匹) である。  (終)


 この鶴亀算の考え方が、濃度の計算にも応用できる。


(鶴亀算による解法) 10%の食塩水100gには、食塩が、 100×0.1=10(g) 含

             まれる。

              ここで、食塩水100g全てが4%とすると、(←鶴亀算的発想!)

             食塩は、 100×0.04=4(g) 含まれる。

              このとき、食塩は、 10−4=6(g) 余る。

             この余った塩は全て、12−4=8(%) の食塩水からのものである。

              よって、 12%の食塩水は、 6÷0.08=600÷8=75(g)

              以上から、 4%の食塩水を 25 g と、12%の食塩水を、75 g 混

             ぜればよい。

(コメント) 鶴亀算の考え方をすると、方程式も使わず算数的に処理されるが、小数計算
      が煩わしい。この点からも、裏技の解法が光って見える!

(追記) 平成19年9月18日付け

 碇さんの方法は、次のような問題にも適用されるそうだ。

(例) 去年の学園祭(土、日の2日間)の入場者数は、500人であった。今年は、土曜日
   が雨で、昨年の土曜日の入場者の15%減であったが、日曜日は晴れて、昨年日曜
   日の入場者の35%増で、全体としては、5%増えた。今年の土曜日、日曜日の入場
   者の数を求めよ。

 文章が長すぎて混乱しそうだが、まずは通常の解法からやってみよう。

(通常の解法) 昨年度の土曜日の入場者数を x 人とすると、

          0.85x+1.35(500−x)=1.05×500

              0.5x=675−525=150

               よって、 x=300

          したがって、今年の土曜日の入場者数は、

                    0.85×300=255(人)

                 今年の日曜日の入場者数は、

                    1.35×200=270(人)

(裏技の解法) 昨年度の土曜日の入場者数を x 人とする。

         5%−(−15)%=20% 、35%−5%=30%  より、

                 20% : 30% = 2 : 3

          x と 500−x がこの比で釣り合っていると考えて、

                 2x=3(500−x) より、 x=300

          したがって、今年の土曜日の入場者数は、

                    0.85×300=255(人)

                 今年の日曜日の入場者数は、

                    1.35×200=270(人)