絶対値の面白い使い方
高校生にとって、「絶対値」はとても難しいらしい。「−3の絶対値は3」という段階では何
ということもないが、
x ≧ 0 のとき、 |x|= x
x < 0 のとき、 |x|= −x
ということを学ぶ段階では、教える側は生徒の非常な抵抗を感じざるを得ない。
たとえば、 と普通に計算できても、根号の中が文字になると、平気
で、 という誤りを犯す場合が多い。正しくは、 であるが、これを警
鐘する意味も込めて、
(ルートの中は、怖い事情)
と、いつも教えることにしている。
絶対値は、数直線の原点からの距離を表すという定義以上に、数学のいろいろなところ
で活躍する。
は一つの例であるが、私的には、
−|x|≦ x ≦|x|
という不等式が一番気に入っている。
今回紹介する裏技は、 の両辺を2乗した形 |x|2=x2 を利用するもので
ある。
問題 方程式 x2−4x = 3|x−2| を解け。
通常、この問題は教科書・問題集などでは、多分次のように解かれている。
(解) x ≧ 2 のとき、 |x−2|= x−2 なので、 x2−4x = 3( x−2 )
よって、x2−7x+6 = 0 より、 ( x−1 )( x−6 )=0 なので、 x = 1、6
ここで、 x ≧ 2 なので、 解は、 x = 6
x < 2 のとき、 |x−2|= −x+2 なので、 x2−4x = 3( −x+2 )
よって、x2−x−6 = 0 より、 ( x−3 )( x+2 )=0 なので、 x = 3、−2
ここで、 x < 2 なので、 解は、 x = −2
以上から、求める解は、 x = 6、−2
絶対値がよく分かっている方だったら、すんなり納得できる解答であるが、不確かな理解
しかない場合は上記の解答は多分読めないだろう。
上記の解答では、おそらく「場合分け」をしている部分が生徒にとって一番の難解な部分
だと考えられる。
これを回避する策として、次のような解法があることを最近知る機会があった。
(裏技の解) x2−4x = 3|x−2| より、 ( x−2 )2−4 = 3|x−2|
ここで、
( x−2 )2 = |x−2|2
なので、
|x−2|2−4 = 3|x−2|
すなわち、
|x−2|2−3|x−2|−4 = 0
となる。
|x−2|= X とおくと、 X ≧ 0 で、 X2−3X−4 = 0
よって、
( X−4 )( X+1 )=0 より、 X = 4、−1
ここで、 X ≧ 0 なので、解は、 X = 4 のみ
したがって、 |x−2|= 4 より、 x−2= ±4 なので、 x
= 6、−2
(コメント) この裏技はいつも使えるとは限らないが、このような考え方もあるのかと感心さ
せられた。