坪について                                 戻る

 フランス革命後の1790年にフランス議会ではメートル法が議決された。日本では1959
年(昭和34年)に、それまでの尺貫法にかえ、メートル法が施行された。地球の子午線の
極と赤道間の距離の1千万分の1の長さを1メートルとし、これを基に作ったメートル原器
(白金が90%、イリジウムが10%の合金)は、パリの度量衡万国中央局に保存されてい
るという。日本にも、同じ型の副原器が独立行政法人産業技術総合研究所に保管されて
いると聞く。

 メートル法が施行され、学校教育でも尺貫法に触れる機会は減っているが、依然として、
しぶとく生き延びている単位がある。そのひとつは、「一寸の虫にも五分の魂」ということわ
ざにも使われている「寸」という単位である。実際の長さは、3.03センチであるが、短いと
いう意味をこめて、よく寸評とか寸志など日常生活でも目にすることが多い。

 また、「坪」という単位もよく使われている。不動産を考えるときは、坪単位で考える方が
分かりやすい。不動産の表示に関する公正競争規約により、面積は平方メートルを単位
として表示することになっているが、畳2枚分を意味する1坪という概念は、頭の中に広さ
をイメージしやすい。それだけ、日本人の無意識の中に畳文化が根付いている証拠だろう。
 奈良時代の「養老令」の中の「田令」には、次のような記述がある。
「長さ30歩、幅12歩の広さを、1段とする。10段を、1町とする。」
従って、1段は360歩(1歩は5尺四方(令大尺)で、約1.8m四方のこと)ということになる。
また、「歩」は、日本では「ブ」と読むが、中国では「ホ」と読まれるので、1歩四方の広さの土
地を表す「1歩」は「ヒトツホ」となる。それが、「ヒトツボ」と読まれ「1坪」になったものと推察
される。

 因みに、奈良時代の条里制では、60歩四方すなわち3600歩を「坪」とよんだので、今我
々が用いている「坪」とは全く違う広さを表すことに注意しなければならない。

 律令の税制において、田1段につき2束2把(706年より1束5把(1把の量が変わったた
めらしい)、現在量で約3升)の稲を納めることになっていた。税率は、収穫高の約3%とい
うことなので、逆算すると、1段から米がおよそ100升(1000合)収穫できたことになる。
 1日3食毎回米を1合食べると、1年間で約1000合の計算になる。これは、1段の田から
収穫できる米の量とほぼ同じなので、1坪は、1人が1日に食べる米が取れるだけの広さと
いうことになる。

 このように、尺貫法の単位には、人間的営みが基準となっているものが多い。そのような
例として「里」という単位もあげられる。不動産屋さんの広告では、80メートル歩くのに1分
かかるものとして表示されているが、以前は、1時間で歩く1つの目安として、1里という単
位があった。1里は、実際には、3927メートルなので、1分間で65.45メートル歩く計算
である。現代よりも、きっと、のんびり景色を楽しみながら、歩いたのだろう。


(参考文献:博学こだわり倶楽部編 数の不思議 (青春出版社)
        坂本賞三・福田豊彦 監修 総合日本史図表 (第一学習社))