正弦と余弦
数学Tの三角比で、正弦(sin)や余弦(cos)を学ぶ。数学Tでは図形の計量(正弦定理・
余弦定理)が主なテーマだ。
数学Uで初めて関数としての正弦・余弦を学び、その周期的なグラフの美しさに心を打た
れる。授業では両者のグラフを別々に書くが、下図からも分かるように、それらは同形であ
る。
上図では、y=cosx のグラフを起点として、 y=cos(x−θ) (θは実数)のグラフを書か
せたものである。
cos(x−π/2)=sinx なので、途中で、 y=sinx のグラフが出現する。
正弦(sin)や余弦(cos)は定義こそ一見違うように思えるが、両者は互いに密接に関係し
ており、概念的には同種のものである。
正弦(sin)や余弦(cos)について生徒を悩ませるのは、その公式の豊富さである。これに
ついて、兵庫県立武庫荘総合高校の楠田貴至先生が「sinクロス」という面白い覚え方を考
案されている。(→ 参考:数研通信:「平行移動を回転で」 、「『sinクロス』で微分する」)
sin(x+π/2)=cosx 、 cos(x+π/2)=−sinx が成り立ち、さらに、
sin(x+π/2)=cosx より、 −sin(x+π/2)=−cosx
cos(x+π/2)=−sinx より、 −cos(x+π/2)=sinx
が成り立つ。
このことから、 「+π/2」という操作により、
sinx → cosx 、cosx → −sinx 、−sinx → −cosx 、−cosx → sinx
と順次変化することが見て取れる。
これらの関係式で、「+π/2」の平行移動を、下図のように、「π/2 の回転」と考えること
が、「sinクロス」というものの考え方のようだ。
この方法を用いると、公式も自然と頭に浮かび上がってくるような気がする。
また、
sinx → cosx 、cosx → −sinx 、−sinx → −cosx 、−cosx → sinx
という関係は、正に微分の公式である。
したがって、上図は、三角関数の偏角公式の覚え方のみならず、微分や積分の公式の覚
え方にも使えるというわけだ!
このような新しい見方・考え方を発見された兵庫県立武庫荘総合高校の楠田貴至先生に
敬意を表したい。
(追記) 令和2年6月7日付け
や | の計算結果はとても |
美しい。これに勝るとも劣らず、実は、
や |
の計算結果も美しい。先ほどは定積分計算をしたが、実は、計算するまでもなく、値は両者
とも、π/4 であることが言える。
実際に、y=sin2x のグラフと y=cos2x のグラフは、直線 x=π/4 に関して線対称で
sin2x+cos2x=1 から、下図を得る。
図より、両者は等しく、面積が長方形の面積の半分(π/4)であることが了解されるだろう。