ある点の軌跡                       戻る

軌跡1   左図のような△ABCにおいて、辺AB上の任意の
 位置に点Pをとる。

  いま点Pが辺ACに平行に動き、辺BCとぶつかっ
 たら進路を変更して、今度は辺ABに平行に動く。
  辺ACにぶつかったら、さらに進路を変更して、辺
 BCに平行に動く。
  このように点Pは、△ABC内を各辺に平行に動き
 点Pに戻ったら、動きを停止するものとする。

 最初この問題を見たとき、「点Pは、永遠に三角形内を動き続けるのでは?」と思ったが、
「平行」という条件がすこぶる厳しく、意外に、はやく収束するのには驚かされた。

軌跡2   結果は、左図の通りで、点Pが辺ABの中点でな
 ければ、辺と 6 回目にぶつかる時点で、元の点P
 にかえる。 (中点の場合は、3回目で元の点にかえる。)
 
 (検証)   AP:BP=CP1:BP1
      CP1:BP1=CP2:AP2
      CP2:AP2=BP3:AP3

   よって、AP:BP=BP3:AP3
 同様にして、AP3:BP3=BP6:AP6 なので、AP:BP=AP6:BP6 から、P6=P

軌跡3  上記の比の計算は、左図のように考えれば、分か
 りやすいかもしれない。

   △OPP5∽△OP'2P'3 であることが直ちに了
 解できるので、確かにP6とPは一致する。


  また、点Pが元の点にかえるまでに描く軌跡の長
 さは、△ABC の周の長さに一致するということも、
 図から明らかであろう。





(追記) 上記のような問題を、今度は正方形について考えてみよう。上記では、「平行」に
     移動したが、正方形の場合は、正方形内を任意の方向に直線的に移動し、正方
     形の辺にぶつかったら、反射(入射角と反射角は等しい)により、移動する向きを
     変えるものとする。

 例えば、次のように移動する。
                    

 点P を出発した点が、元の点P に戻れる確率は、上記の平行移動とは違って、著しく低
いように感じる。事実、その確率は、0 であって、元に戻れたとしたら、それは稀有な偶然
が起こった場合のみである。それ故に、ビリヤードは面白いのだろう。

 それでは、元の点に戻れる場合とは、どのような条件を満たす場合であろうか?

一つ例示をして、考えてみよう。
                    

 上図の場合、5回反射して、元の点 P に戻っているが、その状況を詳しく分析すると、次
のようになっているものと考えてよい。

                 

 すなわち、上記のような格子を考え、点Pと同様な位置にある2点を結ぶ直線上を移動す

る場合のみ、元の点 P に戻る。

 このように考えると、元の点に戻る条件は、直線の傾きが有理数ということになる。

したがって、実数全体に対して、有理数の個数は少ない(?)(=測度が0)ので、元に戻る

確率は、0 である。しかし、有理数自体は無限個あるので、元に戻る場合は、たくさん起こ

り得る。ここら辺は、確率が「0」という認識と微妙なズレがあって、面白い。

(参考文献:栗田 稔 著 問題はどう作られるか (東京出版))


(追記) 令和7年9月13日付け

 次の東北大学 前期理系(1999)の問題は、上記の趣旨の問題である。

問題  長方形ABCD内を減速しながら進む点を考える。時刻 t=0 に初速vで発射させた
  点Pは、時刻 t では速さve-tで直進するとする。ただし、Pがいずれかの辺に来たときは
  等しい入射角と反射角で反射するとし、頂点A、B、C、Dのいずれかに来たときは、そこ
  で停止するとする。ABの長さは4でADの長さは2とし、出発点はADの中点Oとする。初
  速をv=14としたとき、最も長い時間をかけてPをどれかの頂点に到達させるにはどの
  方向に発射させればよいか。OAとの角をθ(0<θ<π/2)として、tanθを求めよ。
  また、そのとき、Pが頂点に到達する時刻を求めよ。

(解) 長方形ABCDを横方向にm枚、縦方向にn枚用意し、初めて光が頂点に到達したもの
  とする。

  

 Pが頂点に到達するまでの時間をTとして、その道のりLは、

 L=∫0T 14e-tdt=14[−e-t]0T=14(1−e-T

このとき、 L2=(2m−1)2+(4n)2<142=196 から、 n=1、2、3

 n=1 のとき、 (2m−1)2<196−16=180 から、 m=1、2、・・・、7 で、

 m=7 のときLは最長で、 L2=132+42=185

 n=2 のとき、 (2m−1)2<196−64=132 から、 m=1、2、・・・、6 で、

 m=6 のときLは最長で、 L2=112+82=185

 n=3 のとき、 (2m−1)2<196−144=52 から、 m=1、2、3、4 で、

 m=4 のときLは最長で、 L2=72+122=193

以上から、最も長い時間をかけてPをどれかの頂点に到達させるには、長方形ABCDを

横方向に4枚、縦方向に3枚用意すればよい。そのとき、到達する頂点は、Cである。

 このとき、 tanθ=12/7 である。

 また、 14(1−e-T)=√193 より、 T=−log(1−(√193)/14)  (終)



  以下、工事中!