任意の鋭角三角形ABC の内部の点Pに対して、 PA+PB+PC が最小となる点Pを作図せよ。 この問題は、フェルマーがトリチェリに出題したといわ れる。 そのため、この問題は正式には「フェルマーの問題」 と言われるようだ。 |
さらに、上記の三角形は、120°を超えない内角を持つ三角形に拡張され、点Pのことを、
Fermat point と言うそうだ。
トリチェリにより、いくつかの解法が知られている。
点Pの作図のために、次の定理が用いられる。
ヴィヴィアーニ(Viviani)の定理
正三角形ABC の内部の任意の点Pに対して、点Pより各辺に下ろした垂線の長さ
の和は一定で、正三角形の高さに等しい。
証明は、中学レベルで可能だろう。
正三角形において、重心と垂心は一致するので、重心から正三角形の各辺に下ろした垂
線の長さは、正三角形の高さの1/3で、その長さを3つ合わせれば、正三角形の高さに一
致する。重心に限らず、正三角形の内部の任意の点でも、やはり、その長さの和は正三角
形の高さに等しいことを主張する定理が、ヴィヴィアーニの定理である。
(証) △ABC=△PAB+△PBC+△PCA より、明らか。 (終)
任意の鋭角三角形に外接する正三角形がうまく作図できれば、ヴィヴィアーニの定理に
より、トリチェリの問題は解決される。
作図の方法 下図において、△ABC が任意に与えられた鋭角三角形とする。
(1) △ABC の各辺を一辺とする 正三角形(水色)を作図する。 (2) 各正三角形の外接円を作図 する。 (3) 3円の交点Pが求める点であ る。 ∠APB=∠BPC=∠CPA=120° から、上記の点Pがただ一つ定まる ことは明らかだろう。 |
作図した点P が求める点であることを示すために、上図のような正三角形KLM(赤色)
を作図する。
正三角形の各辺は、それぞれPA、PB、PCに対して垂直であるようにできる。
点Qを△ABC の内部の任意の点とする。このとき、明らかに、QA+QB+QCの値は、
点Qより正三角形KLMの各辺に下ろした垂線の長さの和以上に大きい。
ところが、ヴィヴィアーニの定理により、点Qより正三角形KLMの各辺に下ろした垂線
の長さの和は PA+PB+PC に等しい。
よって、PA+PB+PC≦QA+QB+QC となり、作図された点Pが、QA+QB+QC
の最小値を与える点であることが分かる。
(参考文献:H.デリー 著 根上生也 訳 数学100の勝利(シュプリンガー・フェアラーク東京))
当HPがいつもお世話になっているS(H)さんからの情報によれば、次のようにしても作
図できるようだ。
すなわち、正三角形の頂点と、正三角形の1辺の対角の頂点を結ぶ線分の交点として
作図される。(証明は円周角の定理より明らかだろう。)
また、次のような図と睨めっこしても上図のことは了解できるだろう。S(H)さんよりご教示
いただきました。S(H)さんに感謝します。
△ABCの内部の点Pに対し、△BPP’が正三角形になるように取る。
ABを1辺とする正三角形の他の頂点をA’、ACを1辺とする正三角形の他の頂点をA”と
する。
このとき、 PA+PB+PC=A’P’+P’P+PC≧A’C なので、PA+PB+PCが最小と
なる点Pは、線分A’C上にある。
同様にして、PA+PB+PCが最小となる点Pは、線分A”B上にある。
以上から、求める点Pは、線分A’Cと線分A”Bの交点として作図される。