普段何気なく使っている記号にも、それなりの歴史があるはず。このページでは、その歴
史をまとめてみたい。
X | ・・・ | 方程式でXといえば、未知数を意味する。最初に、この記号が使われたのは、デカ ルトの「方法序説」(1637年)の付録の「幾何学」においてである。フランスのヴィエト (1540~1603)は「解析論入門」で既知の量は子音、未知の量は母音で表したが、既 知の量はアルファベットの前の方(a、b、c、・・・)、未知の量はアルファベットの後の 方(x、y、z、・・・)としたのがデカルト(1596~1650)である。 (注) ヴィエトの業績として、解と係数の関係の発見もあげられる。 |
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π | ・・・ | 円周率の記号として初めて用いたのは、1706年ウィリアム・ジョーンズである。 π=3.14159 26535 89793 23846 26433 83279 50288・・・ |
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e | ・・・ | e は 「自然対数の底」 又は Napier 数 といわれるが、記号でeと書いたのは Leonhard Euler (オイラー) である。 e =2.71828 18284 59045 23536 02874 71352 66249・・・ |
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+ - | ・・・ | 記号としては、ヨハネス・ウイットマン(1489年)、計算の記号としては、ファンデル・ フッケ(1514年)が初めて用いた。+はandを意味するetから。 -はminusのmからといわれている。 負の数を「-2」などと記したのは、天文学者のチコ・ブラーエ。 |
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= | ・・・ | ロバート・レコードの「whetstone of witte」(1557年)に初めて使われる。長さの等し い平行線ほど等しいものはないということらしい。 |
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× | ・・・ | 乗法の記号。ウィリアム・オートレッドの「数学の鍵」(1631年)に初めて使われる。 | |||||||||||||
÷ | ・・・ | 除法の記号として、スイスのラーン(1659年)が用いた。初めて用いられたのは、 15世紀初め頃のロンドンの金融街で、半分を意味していた。 (例 6÷は、3の意味) |
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: | ・・・ | ライプニッツが、導入(1684年)。除法の記号として、ヨーロッパで広く使われる。 | |||||||||||||
± | ・・・ | 複号の記号。オートレッド(1631年)が用いた。 | |||||||||||||
√ | ・・・ | デカルト。 ルドルフという説もある。 | |||||||||||||
<> | ・・・ | 不等号の記号。トマス・ハリオット(1631年)が用いた。しかし、当時のイギリスでは
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⊥ | ・・・ | 垂直を表す記号。ヘリゴン(1634年)が用いた。 | |||||||||||||
∠ | ・・・ | 角を表す記号。オートレッド(1657年)が用いた。 直角を表す記号として「∟」があるが、手書きの場合、「∠」と区別が付きづらいこと があり、「∠R」(RはRight Angle)と表すことがある。 |
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∽ | ・・・ | 相似の記号。ライプニッツ(1679年)が用いた。 | |||||||||||||
≡ | ・・・ | 合同の記号。ボヤイ(1897年)が用いた。ガウスの発案とも言われる。 | |||||||||||||
・ | ・・・ | 掛け算を示す記号としては、レギオモンタヌス(1463年)にはじまり、×よりも歴史は 古い。 |
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∞ | ・・・ | 無限大の記号。ワリスが「無限算術」(1655年)において使う。 | |||||||||||||
∫ | ・・・ | 積分の記号。ライプニッツ(1675年)が用いた。ドイツ古書体の長いsから作った記 号。 |
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. | ・・・ | 小数点の記号。ジョン・ネ-ピアが数の整数部分と小数部分を分けるために、小数 点の使用を提唱。 小数点の記号として、「.」を使うのは英米流だが、世界の国々では、何故か「,」が 多数派である。因みに、「,」派は位取りを字間の開きなどで表す。 |
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y’ | ・・・ | 導関数の記号。ラグランジュ(1797年)が用いた。関数の記号fxも提案。 | |||||||||||||
・・・ |
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∀ ∃ |
・・・ | 「∃」は、ラッセルにより、(∃X)P(X)と用いられていたが、∀X P(X) という形で 「∀」を用いたのは、ゲンツェンである。従って、∀は英語の any や all ではなく、ド イツ語の alle からきたものらしい。 |
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{ } | ・・・ | 括弧は多項式から根を引き出す場合の記号として、ヴィェット(1593年)が用いた。 | |||||||||||||
an | ・・・ | べき乗の記号。シュケ(1484年)が用いた。 | |||||||||||||
()〔〕 | ・・・ | 括弧の記号。ジンラル(1629年)が用いた。 | |||||||||||||
a/b | ・・・ | 分数記号。フィボナッチ(1202年)が用いた。 | |||||||||||||
% | ・・・ | 「100について」という意味で使われた(15世紀頃のイタリア)。17世紀頃は と書かれていた。 |
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・・・ | 平行線の記号。オートレッド(1677年)が用いた。当初は「=」が用いられた。 | ||||||||||||||
≒ | ・・・ | 「=」ではないが、全然「≠」というわけでもないという意味。 | |||||||||||||
i | ・・・ | 虚数単位として、オイラー(1777年)が用いた。 | |||||||||||||
f | ・・・ | 関数の記号として、オイラー(1734年)が用いた。 | |||||||||||||
sin | ・・・ | ヘリゴン(エリゴンヌ(仏))(1634年)が用いた。諸説ありそう...。(→ 参考) | |||||||||||||
cos | ・・・ | ムーア(1674年)が用いた。オイラー(スイス)という説もある。 | |||||||||||||
tan | ・・・ | ジラール(1625年)が用いた。フィンケ(1583年)という説もある。 垂直影=tangent |
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Q.E.D. | ・・・ | Quod Erat Demonstrandum(これが証明すべきことであった)の略。 現在は古くさいとされ、ハルモスの四角形(□や■)が使われる。 |
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φ | ・・・ | 空集合の記号。∅(0に斜線 Unicode:U+2205 ギリシャ文字のφではない)という記 法もあるが、これはアンドレ・ヴェイユ(1906~1998)が彼の著作で使ったのが起源と 言われる。 |
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{an} | ・・・ | 一般的な数列の表記。しかし、順序を意識しない集合の表記と同じで好ましくない。 そこで、(an)=(a1,a2,a3,・・・)などのような表記もある。 |
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? | ・・・ | quaestio(疑問)の最初と最後の文字を縦に並べてできたもの。 | |||||||||||||
! | ・・・ | 階乗の記号にも使われるが、感動詞ioを縦に並べてできたもの。 | |||||||||||||
& | ・・・ | et(and)の省略記号で、アンパサンドと読まれる。 | |||||||||||||
@ | ・・・ | ad(at)の簡略記号で、アットマークと読まれる。本来は単価を表す商業記号。 | |||||||||||||
i.e. | ・・・ | id est の省略形 「つまり」の意。 | |||||||||||||
etc. | ・・・ | ラテン語「et cetera」の省略形 「・・・など」の意。最後の「.」は「略しました」という 意味の記号。因みに、「エトセトラ」は文の最後以外に「その他いろいろ」という意味で 文中で使うこともある。 |
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e.g. | ・・・ | exempli gratia の省略形 「例えば」の意。 | |||||||||||||
cf. | ・・・ | confer の省略形 「比較せよ」の意。 | |||||||||||||
vs. | ・・・ | versus(バーサス) の省略形 「~対~」の意。 | |||||||||||||
Σ | ・・・ | ラテン語summa(頂上)の頭文字Sをギリシャ文字Σに置き換えたもの。 頂上が和の意味になったのは、昔、計算結果を上に書く習慣があったから。 |
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( ) | ・・・ | 丸括弧(parenthesis) | |||||||||||||
[ ] | ・・・ | 角括弧(bracket) | |||||||||||||
{ } | ・・・ | 波括弧(curly bracket) | |||||||||||||
<> | ・・・ | 山括弧(angle bracket) | |||||||||||||
’ | ・・・ | ダッシュ または プライム と読まれる。 | |||||||||||||
” | ・・・ | ツーダッシュ または ツープライム と読まれる。 | |||||||||||||
* | ・・・ | スター または アステリスク と読まれる。 | |||||||||||||
~ | ・・・ | チルダ または チルド と読まれる。 | |||||||||||||
^ | ・・・ | ハット と読まれる。 | |||||||||||||
- | ・・・ | バー と読まれる。 | |||||||||||||
・ | ・・・ | ドット と読まれる。 | |||||||||||||
・・・ | ・・・ | 途中や以降の省略を表す記号。三点リーダーと言われる。 | |||||||||||||
iff | ・・・ | if and only if の省略形 「必要十分」の意。 | |||||||||||||
a.e. | ・・・ | almost everywhere の省略形 「ほとんど到るところ」の意。 | |||||||||||||
0 | ・・・ | 数の大きさや位取り記数法における数字の空位を示すのに用いられる。 6世紀~20世紀のインドでは「○」で表され、8~9世紀にアラビアに伝わった。 アラビアでは、10世紀~21世紀まで「・」で表していたという。スペイン人または 十字軍によりアラビアからヨーロッパに伝わり、14世紀頃「φ」と表していたが、 15世紀以降に現在の「0」が用いられるようになったらしい。 日本にインドアラビア数字が入ったのは幕末から明治時代の17世紀で、オラ ンダ人によってもたらされたと言われる。 |
(参考文献:啓林館 編 数学記号について)