こてんこてん蔵庫5(その8)             戻る

 目次に戻りたい場合は、「戻る」をクリックして下さい

第36回・係助詞

 次の赤文字の語は助詞である。種類と意味を答えなさい。ただし中級以上の問題は助
詞以外のものも含まれています。用言の場合は活用種類・基本形・活用形を、助動詞の
場合は意味・基本形・活用形を答えなさい。また、中級以上の問題では赤文字の部分だ
けでは一語とならないものがあります。それらは「×」と解答してください。

【初級】
 問01・何事も古き世のみ慕はしき。
 問02・和歌こそなほをかしきものなれ。
 問03・法皇「人ある。人やある。」と召されけれど、御答へ申す者なし。
 問04・いづれの山天に近き。
 問05・そこらの燕、子産まざらむやは
 問06・鳶のゐたらんは何かは苦しかるべき。
 問07・かの白く咲けるをなむ夕顔と申し侍る。
 問08・若きによらず、強きにもよらず、思ひかけぬは死期なり。
 問09・人の亡き後ばかり悲しきなし。
 問10・たとひ耳鼻こそ切れ失すとも、命ばかりはなどか生きざらん。


【中級】
 問11・いつしか梅咲かなむ
 問12・散りなむ後ぞ恋しかるべき。
 問13・「これなむ都鳥」と言ふを聞きて、
 問14・早く往なむとて「潮満ちぬ。風も吹きぬべし。」と騒げば、船に乗りなむとす。
 問15・気色ある鳥のから声に鳴きたるも、梟はこれにと覚ゆ。
 問16・「何射る。な射そ。な射そ。」と制し給ひて、こと醒めにけり。
 問17・今は明けぬるに、かう大殿籠るべきかは
 問18・「この矢当たれ」と仰せらるるに、同じものを中心には当たるものかは
 問19・これを見給へば物思す気色はある
 問20・この殿の御心、さばかりにこそ


【上級】
 問21・この隣の男のもとよりかくなむ
 問22・あはれ、いと寒し
 問23・「この住吉の明神は例の神ぞかし。欲しき物ぞおはすらむ。」とは、今めくもの
 問24・いかに。今は見果てつや。
 問25・雨も降る。
 問26・烏などもこそ見つくれ。
 問27・龍の首の玉取り得ず、帰り来な。
 問28・今様むげにいやしくこそなりゆくめれ。
 問29・男女の情けも偏へに逢ひ見るを言ふものかは。
 問30・跡問ふわざも絶えぬれ、いづれの人と名をだに知らず。


【解答・解説】

 問01・係助詞/強意
    係助詞のうち「なむ」「ぞ」「こそ」は直前の語を強調する働きを持つ。強調の度合い
   は「なむ」が最も弱く「ぞ」が最も強くなる。係助詞「ぞ」が使われた場合は文末の活用
   語が連体形となる。問題文では係助詞がなければ終止形「慕はし」となる。

 問02・係助詞/強意
    係助詞「こそ」が使われた場合は文末の活用語が已然形となる。問題文では係助
   詞がなければ終止形「なり」となる。

 問03・係助詞/疑問
    現代語訳は「法皇は『誰か人がいるか?誰か人がいるか?』とお呼びになったが、
   返事を申し上げる人がいない。」となる。係助詞「や」が使われた場合は文末の活用
   語が連体形となる。問題文では係助詞がなければ終止形「あり」となり、疑問文にも
   ならない。

 問04・係助詞/疑問
    現代語訳は「どの山が天に近いか?」となる。係助詞「か」が使われた場合は文末
   の活用語が連体形となる。

 問05・係助詞/反語
    反語とは、外見上は相手に問いかける形にして述べたことと反対の内容を強調す
   る言い方である。現代語訳は「多くの燕が子どもを産まないであろうか。いや、産む
   だろう」となる。係助詞「やは」が使われた場合は、文末の活用語が連体形となる。

 問06・係助詞/反語
    現代語訳は「鳶が屋根に止まっていることがどうして不都合だろうか。不都合では
   あるまい」となる。係助詞「かは」が使われた場合は文末の活用語が連体形となる。

 問07・係助詞/強意
    「なむ」には終助詞や助動詞「な」+助動詞「む」で構成されたものがあるが、これ
   らは、いずれも活用語の後に使われる点に注目。問題文は直前の語が助詞なので
   「なむ」は係助詞となる。係助詞「なむ」が使われた場合は文末の活用語が連体形
   となる。問題文では係助詞がなければ終止形「侍り」となる。

 問08・係助詞/同趣の一つ
    「同趣の一つ」とはある事柄に該当するものを列挙する場合の用法。係助詞「も」が
   使われた場合は文末の活用語が終止形となる。

 問09・係助詞/区別
    現代語訳は「人が亡くなった後ほど悲しいものはない」となる。係助詞「は」は他とは
   区別する場合や取り立てて述べる場合に用いる。よく主格と勘違いされがちだが、主
   格を表すものは格助詞の「が」「の」であり、係助詞の「は」ではない。なお係助詞「は」
   が使われた場合は文末の活用語が終止形となる。

 問10・係助詞/強意
    現代語訳は「たとえ耳と鼻が切れてなくなったとしても命だけはどうして助からないこ
   とがあろうか。いや、助からないことはないだろう。」となる。問02と同じく「こそ」が使
   われているが、結びとなる「切れ失す」で文が終わっていないために、係り結びが流れ
   てしまったものである。

 問11・終助詞/願望
    係助詞「なむ」が文末に使われる場合もあるのだが、問題文は「なむ」の直前が未
   然形であるため終助詞と判断する。現代語訳は「早く梅が咲いて欲しい」となる。

 問12・×
    文末が助動詞「べし」の連体形なので一見「なむ」の結びと判断しがちだが、「べき」
   は係助詞「ぞ」の結びであり「なむ」とは関係がない。「なむ」の直前の語が連用形の
   場合は強意を表す助動詞「ぬ」の未然形に助動詞「む」がついた形である。問題文は
   「む」が連体形なので「む」の意味は婉曲となる。

 問13・係助詞/強意
    体言「都鳥」で文が終っているので係助詞も結びもないように思われるが、これは
   文末の活用語である断定の助動詞「なり」の連体形「なる」が省かれている形である。

 問14・×
    現代語訳はこれは「なむ」で一語ではない。ナ行変格活用動詞「往ぬ」の未然形「往
   な」に意志を表す助動詞「む」がついた形である。

 問15・係助詞/疑問
    「梟はこれにや」が心内表現文で一文。助詞「や」で終っているが「や」の後に「あら
   む」が省かれている。現代語訳は「梟はこれであろうか」となる。

 問16・係助詞/反語
    現代語訳は「どうしてまだ射るのか。射る必要がない。もう射るな。もう射るな」とな
   る。「射る」はヤ行上一段活用動詞なので終止形と連体形が同じになるが、係助詞
   「か」の結びなので文末の「射る」は当然連体形となる。

 問17・係助詞/反語
    現代語訳は「今はもう夜が明けてしまったのに、このようにお休みになっていてよい
   ものだろうか。いや、良いわけがない」となる。「かは」が文末にあり結びの文節がな
   いが、これは係助詞の文末用法である。

 問18・×
    これは「ものかは」で一語の終助詞で、体言「もの」に係助詞「かは」がついた形で
   はない。現代語訳は「同じ的に当たるにしても的の中心に命中するではないか」とな
   る。「ものかは」は「〜ではないか」と訳し、意外な出来事に対して驚嘆の心情を表す
   終助詞である。

 問19・係助詞/断定
    係助詞「ぞ」で文が終わっている。「ぞ」の後に省かれている文節もないので、係助
   詞の文末用法であるが、「ぞ」の文末用法は断定を表す。現代語訳は「これ(=月)を
   御覧になると物思いをなさるそうだよ」となる。

 問20・係助詞/強意
    係助詞「こそ」で文が終わっているが、「こそ」の後に「おはしけれ」が省かれている。
   現代語訳は「この殿のお心はこの程度のものでいらっしゃったのだ」となる。

 問21・係助詞/強意
    係助詞「なむ」で文が終わっているが「なむ」の後に「ありける」が省かれている。現
   代語訳は「この隣の男のところからこのような手紙が送ってきた」となる。

 問22・終助詞/詠嘆
    助詞「や」には係助詞と間投助詞とがある。後者は文末や句末に用いられる。問題
   文は「寒し」で文末になった後に使われているので、係助詞ではない。現代語訳は「あ
   あ、寒いなあ」となる。

 問23・終助詞/詠嘆
    現代語訳は「『この住吉の明神は例の欲張りな神であるよ。何か欲しいものがおあ
   りなのだろう』とは何と今風なことを言うものだなあ」となる。助詞「か」には係助詞と終
   助詞とがあるが、終助詞「か」は体言や活用語の連体形の後に続いて使われる。

 問24・係助詞/強意
    現代語訳は「どうだ。もうこれまでだと見極めがついたか」となる。これも結びの語が
   ないので問19と同様に係助詞の文末用法である。

 問25・係助詞/懸念
    現代語訳は「もし雨が降ったら困る」となる。係助詞「こそ」ないし「ぞ」の前に係助詞
   「も」がある場合は自分にとって不都合な事態を仮定して「もしそのようになったら困る」
   と懸念する心情を表す。

 問26・係助詞/懸念
    現代語訳は「もし烏などが見つけたら困る」となる。問25と同じで係助詞「も」+「こ
   そ」のセットで懸念する心情を表す。

 問27・接続助詞/順接の仮定条件
    現代語訳は「もし龍の首の玉を取って持って来ることができなかったら、帰って来る
   な」となる。打消の意味を表す助動詞「ず」の未然形や形容詞の未然形に接続助詞
   「ば」が続く場合は清音になる。

 問28・係助詞/区別
    現代語訳は「最近のものはやたらと卑俗になってゆくだけのようである」となる。係
   助詞「は」は主に体言・助詞・活用語の連体形の後に続いて使われる。

 問29・係助詞/区別
    現代語訳は「男女の恋愛もひたすら逢って結婚することだけが価値があるのもの
   だろうか。いや、そうではない」となる。係助詞「は」の直前に格助詞「を」がある場合
   は連濁となる。接続助詞「ば」は活用語の未然形ないし已然形の後に続いて使われ
   るので、助詞「を」の後にある「ば」は係助詞「は」の濁音化したものと考える。

 問30・接続助詞/順接の確定条件
    現代語訳は「死者を弔う法事も絶えてしまうので、(その死者が)どこの誰とは名前
   さえもわからなくなる」となる。直前の語が完了の意味を表す助動詞の已然形になる
   ので、已然形+「ば」で確定条件となり「ば」が接続助詞であることがわかる。


第37回・終助詞/間投助詞

 次の赤文字の語は助詞である。種類と意味を答えなさい。ただし中級以上の問題は助
詞以外のものも含まれています。用言の場合は活用種類・基本形・活用形を、助動詞の
場合は意味・基本形・活用形を答えなさい。また、中級以上の問題では赤文字の部分だ
けでは一語とならないものがあります。それらは「×」と解答してください。

【初級】
 問01・いかでこのかぐや姫を見てしがな
 問02・今はいかで見聞かずだにありにしかな
 問03・心あらん友もがなと都恋しう覚ゆれ。
 問04・惟光、とく参らなむと思す。
 問05・あが君、いづ方にかおはしましぬる
 問06・荒海佐渡に横たふ天の川
 問07・玉の緒絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする
 問08・世の中道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる
 問09・いたく住江・忘れ草・岸の姫松などいふ神にはあらずかし
 問10・今来むと言ひしばかりに長月の有明の月を待ちいでつるかな


【中級】
 問11・物知らぬことなのたまひ
 問12・いろをし、ここに候ふ。かくのたまふは誰
 問13・時方と仰せらるるは誰に
 問14・「この住吉の明神は例の神ぞかし。欲しき物ぞおはすらむ」とは今めくもの
 問15・つくづくと一年を過ぐすほどだにも、こよなうのどけし
 問16・お子はおはす
 問17・されど、門の限りを高う作る人もありける
 問18・見せばやな雄島のあまの袖だにも濡れにぞ濡れし色は変はらず
 問19・思ひつつ寝ればや人の見えつらむ夢と知りせばさめざらましを
 問20・心あてに折らばや折らむ初霜のおきまどはせる白菊の花


【上級】
 問21・憎しとこそ思ひたれ
 問22・我もいたづらになりぬるめり。
 問23・今さらに大殿籠りおはしましそ。
 問24・妹が見しあふちの花は散りぬべし我が泣く涙いまだ干くに
 問25・花の色はうつりにけりいたづらにわが身世にふるながめせしまに
 問26・かばかりになりては、飛び降るとも降りん。
 問27・八重桜は奈良の都にのみありける、この頃ぞ世に多くなり侍るなる。
 問28・憂かりける人を初瀬の山おろしよはげしかれとは祈らぬもの
 問29・みかきもり衛士の焚く火の夜は燃え昼は消えつつものこそ思へ
 問30・とまれかくまれ、まづ疾く聞こえむ。


【解答・解説】

 問01・終助詞/自己の希望
    現代語訳は「何とかしてこのかぐや姫を見たい」となる。「見る」動作をするのは自分
   自身なので自己の希望となる。

 問02・終助詞/自己の希望
    問01と同じ意味の助詞。「てしがな」「てしが」「にしがな」「にしが」は自己の希望を
   表す。現代語訳は「今は何としてでも見たり聞いたりだけでもしないで過ごしていたい」
   となる。

 問03・終助詞/他者への希望
    現代語訳は「物の情趣を理解しあえる友が欲しいものだ」となる。問01と同様に希
   望には変わりないが、自分の行動に対する希望ではなく、他者や社会に対して物事
   を望むのが「もがな」の特徴である。

 問04・終助詞/他者への希望
    現代語訳は「源氏の君は『惟光が早く参上してほしい』とお思いになる。」となる。問
   03と同様に他者など外に対して何かを望む心情を表す。

 問05・間投助詞/呼びかけ
    現代語訳は「わが君よ。どこへおいでになってしまったのか」となる。直前の語句が
   生物を表す体言で、後続の語の前に読点がある場合は直前の生物に対する呼びか
   けと考えるようにしたい。

 問06・間投助詞/詠嘆
    五・七・五の初句の末尾にあるので俳句における切れ字の用法。この場合の「や」
   はすべて間投助詞の詠嘆である。現代語訳は「目の前に荒海が広がっているなぁ。」
   となる。

 問07・間投助詞/呼びかけ
    五・七・五・七・七の初句の末尾にあるが俳句ではないので切れ字にならない。上の
   句の現代語訳は「私の命よ、もし絶えてしまうのならいっそのこと絶えてしまえ」となり、
   命に対する呼びかけになる。

 問08・間投助詞/詠嘆
    第2句までの現代語訳は「世の中というものはまあ、(つらいことから)逃れる方法が
   ないものだなあ」となる。問07と同じく和歌の初句にある「や」であるが、直前の語が
   生物を表す体言ではない点に注意したい。

 問09・終助詞/強意
    現代語訳は「住江・忘れ草・岸の姫松などという(和歌に詠まれているような)立派な
   神ではないのだな」となる。念を押す言い方である。

 問10・終助詞/詠嘆
    下の句の現代語訳は「(あなたが訪れてくれないまま)有明の月を待ち迎えてしまっ
   たよ」となる。「かな」は活用語の連体形や体言の後に使われ、詠嘆を表す。

 問11・終助詞/禁止
    現代語訳は「ものわかりのないことをおっしゃな」となる。直前の語は動詞の連用形
   であるが、陳述の副詞「な」+動詞の連用形+終助詞「そ」の構文で、中間にある動
   詞の動作を禁止する意をを表す。

 問12・係助詞/強意
    現代語訳は「いろをしという者はここに居ります。そのようにおっしゃるのは誰だ。」
   となる。これは本来「ぞ」になるべき語で係助詞。問11の「そ」とは全く別の助詞であ
   る。「そ」になったの理由は直前の「誰」を「た」と読むため清音化したものである。

 問13・係助詞/疑問
    現代語訳は「時方とおっしゃる方はどなたであろうか」となる。係助詞が文末にある
   ため係り結びになっている活用語が見当たらないが、「か」の後に「あらむ」が省かれ
   ている。「か」の直前の「に」は断定の意味を表す助動詞「なり」の連用形。「にやあら
   む」「にかあらむ」の形は「あらむ」が省かれ、「にや」「にか」で文が終わることが多い
   ので注意したい。現代語訳は「〜であろうか」となる。

 問14・終助詞/詠嘆
    現代語訳は「なんと現代風なことよ」となる。問13と同じく文末にある「か」だが、係
   り結びとなる文節が省かれているのではないので問13の「か」とは全く別の助詞であ
   る。

 問15・間投助詞/詠嘆
    現代語訳は「しみじみと一年を過ごす間でさえも格別に心がゆったりすることよ」と
   なる。「や」の直前の語が終止形である点に注目したい。間投助詞「や」は文末に使
   われる場合は言い終えた文の後に続いて使われるので、係り結びがない限り終止
   形となる。

 問16・係助詞/疑問
    現代語訳は「お子さんはいらっしゃいますか」となる。これは「お子やおはする。」と
   いう文と同じ意味になる。

 問17・終助詞/詠嘆
    現代語訳は「しかし、門だけを高く作る人もいるものだななあ」となる。助詞「は」が
   文末にある場合は係助詞ではなく終助詞で詠嘆を表す。

 問18・終助詞/自己の希望
    現代語訳は「(悲しみの余り涙で色変わりしてしまった私の袖を)見せたいものだ」
   となる。直前の「見せ」はサ行下二段活用動詞「見す」の未然形。後続の「や」は詠嘆
   を表す間投助詞である。

 問19・×
    これは接続助詞「ば」に係助詞「や」のついた形で、「ばや」で一語ではない。上の句
   の現代語訳は「あなたのことを思いながら寝たので、夢の中にあなたを見たのだろう
   か」となる。終助詞「ばや」は未然形の後に続いて使われる。「寝れ」は已然形なので
   接続助詞「ば」は確定条件である。

 問20・×
    これは接続助詞「ば」に係助詞「や」がついた形で問19と同じである。ただ直前の語
   「折ら」が未然形であるので紛らわしい。上の句の現代語訳は「当て推量で折れるなら
   ば折ろうか」となる。接続助詞「ば」は仮定条件である。

 問21・終助詞/詠嘆
    現代語訳は「憎いと思っているのだな」となる。終助詞「な」は言い終えた文の後に使
   われる。直前の語は存続の意味を表す助動詞「たり」の已然形であるが、これは係助
   詞「こそ」の結びになっているためである。

 問22・断定/なり/連体
    現代語訳は「私も命が絶えてしまう(運命)であるようだ」となる。本来は「なる」だが、
   後続の助動詞が「めり」「らし」「なり」の場合は連体形「る」の省かれて短縮形となる。

 問23・陳述の副詞/禁止
    現代語訳は「今頃になってからお休みなさいますな」となる。問11と同じ構文で、後
   続の動詞に対して禁止を表す。

 問24・打消/ず/未然
    下の句の現代語訳は「私の涙がいまだに乾いていないのに」となる。直前の語はハ
   行上一段活用動詞「干る」の未然形。後続の語は「く」になる場合は打消「ず」である。

 問25・終助詞/詠嘆
    現代語訳は「花の色はすっかり色褪せてしまったなぁ」となる。二句切れで直前の語
   が終止形である点に注目。文末に使われた「な」と同様なので終助詞である。

 問26・強意/ぬ/未然
    現代語訳は「飛び降りても飛び降りることができるだろう」となる。直前の語が連用形
   である場合の「な」は完了ないし強意の助動詞「ぬ」の未然形である。後続の語が「む」
   「むず」の場合は強意である。

 問27・接続助詞/逆接の確定条件
    現代語訳は「八重桜は奈良の都にだけあったけれども」となる。後続の文節の現代
   語訳は「この頃は世の中に多くなったようです」なので、逆接の関係であることがわか
   る。

 問28・×
    下の句の現代語訳は「いっそう激しくなれとは祈らなかったのになあ」となる。現代
   語訳を見る限り逆接に思われるが、接続助詞「を」は活用語の後に続いて使われる
   点に注意。これは「ものを」で一語となる接続助詞である。

 問29・格助詞/動作の対象
    下の句の現代語訳は「昼は心も消え入るばかりに物を思い悩んでいるよ」となる。
   「ものを」をそのまま「ものを」と訳せる場合の「を」は格助詞である。

 問30・間投助詞/強意
    現代語訳は「ともかく何はさておいても早速申し上げよう」となる。「を」を省いても文
   の意味が変わらない点に注目。この「を」は語の調子を整えるだけの目的で挿入した
   もので、文字通り「間投助詞」としての役割である。


第38回・助詞の現代語訳(1)

 次の各文の赤文字の部分を、使われている助詞の意味に注意して現代語訳しなさい。

【初級】
 問01・風吹けば沖つ白波たつた山夜半にや君が一人越ゆらむ
 問02・この枝かの枝、散りにけり。
 問03・家にありたき木は松・桜。
 問04・あるときは糧尽きて、草の根を食物としき。
 問05・古き墳は鋤かれて、田となりぬ
 問06・まだ暁より足柄を越ゆ。
 問07・峰にてすべきやう教へさせ給ふ。
 問08・御前の火炉に火をおくときは、火箸して挟むことなし。
 問09・その遣戸から顔をさし出で給へ。
 問10・都へと思ふものの悲しきは帰らぬ人のあればなりけり


【中級】
 問11・このことを帝聞こしめして、竹取が家に御使遣はさせ給ふ。
 問12・烏の群れゐて池の蛙を取りければ、御覧じ悲しませ給ひてなん。
 問13・玉の枝取りになむ罷る
 問14・逢坂にて人を別れける時に詠める
 問15・翁年七十に余りぬ。今日とも明日とも知らず
 問16・聞きしよりもまして、言ふかひなくぞ毀れ破れたる。
 問17・御物の怪にて時々悩ませ給ふ。
 問18・御車入るべき門は鎖したりければ、人して惟光召させて待たせ給ひけるほど、
 問19・昔見給へし女房の、尼にて侍る、東山の辺に移し奉らん。
 問20・万葉集に入らぬ古き歌、みづからのをも奉らしめ給ひて、


【上級】
 問21・生まれしも帰らぬものを我が宿に小松のあるを見るが悲しさ
 問22・日暮るるほど、例の集まりぬ
 問23・この国にある物にもあらず
 問24・伏籠の中に籠めたりつるものを
 問25・変化の人といふとも、女の身持ち給へり。
 問26・これを見るより他のことなければ、
 問27・梅の花咲きて散りなば桜花継ぎて咲くべくなりにてあらずや
 問28・狩の御装束着かへなどして出で給ふ。
 問29・世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。
 問30・ひしひしとただ食ひに食ふ音のしければ、


【解答・解説】

 問01・君が
    「が」は主格を表す格助詞。そのまま「が」と訳して良い。
 問02・この枝もあの枝も
    「この」「かの」の「こ」「か」はいずれも代名詞。その後の「の」は連体修飾格を表す格
   助詞。「も」は問題文にはないが、訳す上では補う必要がある。

 問03・家に
    「に」は場所を表す格助詞。そのまま「に」と訳して良い。
 問04・草の根を
    「の」は問02と同じ。「を」は動作の対象を表す格助詞。
 問05・田となってしまう
    「と」は変化の結果を表す格助詞。「なり」はラ行四段活用動詞、「ぬ」は完了の意味
   を表す助動詞。

 問06・明け方から
    「より」は動作の起点を表す格助詞。
 問07・山頂で
    「にて」は場所を表す格助詞。「で」と訳す。「○○交響楽団第38回定期演奏会。大
   阪城ホールにて」という言い方がある。

 問08・火箸で
    「して」は動作の手段・方法を表す格助詞。「で」と訳す。
 問09・引き戸から
    「から」は動作の起点を表す格助詞。そのまま「から」と訳して良い。
 問10・「『都へ(帰ることができる)』と
    「へ」は動作の方向を表す格助詞。そのまま「へ」と訳して良い。
 問11・竹取の翁の家に
    「が」は連体修飾格を表す格助詞で「の」と訳す。「竹取が」と主格に訳さないように注
   意したい。「に」は問03と同じ。

 問12・烏が群れ集まって止まって
    「の」は主格を表す格助詞。したがって「が」と訳す。「烏の」と連体修飾格に訳さない
   ように注意したい。「群れゐ」はワ行上一段活用の複合動詞。「て」は単純接続を表す
   接続助詞。

 問13・取りに出かける。
    「取り」は外見上は動詞の連用形だが、これは名詞。現代語でも「彼の走りはすばら
   しい」という表現と同じである。動詞の連用形は名詞に転化することも知っておきたい。
   「に」は動作の目的を表す格助詞。「なむ」は強意の係助詞。最後の「罷る」はラ行四
   段活用動詞なので終止形と連体形が同じだが、勿論ここでは連体形である。

 問14・人と別れた
    「を」は動作の相手を表す。この用法は「逢ふ」「別る」など、離合する意味を持つ動
   詞に限って使われる。「ける」は過去の意味を表す助動詞「けり」の連体形。

 問15・今日とも明日ともわからない
    「と」は引用を表す格助詞、「も」は同趣の一つを表す係助詞。「とも」をそのまま「と
   も」と訳して良い。また「と」の手前でカギカッコを補うことができるのも接続助詞「とも」
   との識別点になる。

 問16・聞いた(話)よりもまして
    「し」は過去の意味を表す助動詞「き」の連体形。直後に体言「話」が省かれている。
   「より」は比較の対象を表す格助詞でそのまま「より」と訳してよい。「て」は単純接続を
   表す接続助詞。問題文は「話に聞いた以上に」と意訳できる。

 問17・御物の怪のために
    「にて」は原因・理由を表す格助詞。「〜のために」と訳す。
 問18・人に命じて惟光を呼んで来させて
    「して」は使役の対象を表す格助詞。「召さ」はサ行四段活用動詞、「せ」は使役の意
   味を表す助動詞「さす」の連用形。

 問19・昔お会いした女房で
    「し」は過去の意味を表す「き」の連体形、「の」は同格を表す格助詞。同格の場合は
   「で」と訳す。「昔見給へし女房」と、「の」の直後にある「尼」とが同一人物をさす。

 問20・自分が(作った和歌)をも
    「の」は直後に体言「歌」を補うことができるので準体用法を表す格助詞。「を」は動作
   の対象を表す格助詞。「も」は同趣の一つを表す係助詞。

 問21・小さな松があるのを見ると
    「の」は主格を表す格助詞。「を」は動作の対象を表す格助詞。「が」は単純接続を表
   す接続助詞。「が」には格助詞もあるが、活用語の連体形の直後に使われた格助詞
   「が」は「が」の直前に体言を補うことができる。これが接続助詞との識別のポイントで
   ある。

 問22・いつものように集まった
    「の」は連用修飾格を表す格助詞。「〜のように」と比喩になるように訳す。「ぬ」は完
   了の意味を表す助動詞。

 問23・この国にある物でもない
    「の」は連体修飾格を表す格助詞。最初の「に」は場所を表す格助詞。これはそのま
   ま「に」と訳す。「物」の後にある「に」は断定の意味を表す助動詞「なり」の連用形。こ
   ちらは「〜で」と訳す。いずれも体言の直後に使われているが、語の中身そのものが
   違うので訳し方も当然異なる。「も」は同趣の一つを表す係助詞。

 問24・閉じ込めておいたのに
    「たり」は存続、「つる」は完了を表す助動詞。両方で「〜ていた」と訳す。「ものを」は
   逆接の確定条件を表す接続助詞の文末用法で「〜のに」と訳す。

 問25・変化の身と言っても
    「の」は連体修飾格、「と」は引用を表し、いずれも格助詞。「言ふ」はハ行四段活用
   動詞の連体形。後にある「とも」は一語で接続助詞。逆接の仮定条件を表す。問15
   にも「とも」があるが、これは「と」+「も」で構成されている。問25は直前の語が体言
   ではなく連体形である点が判別のポイントとなる。

 問26・見るしか
    後続の語に「なけれ」がある。これは形容詞だが意味上は「ず」と同じく打消を表す
   語であるので、「より」は限定を表す格助詞となる。他に方法のないことを表す。

 問27・なってしまっていないか
    「なり」はラ行四段活用動詞「なる」の連用形。「に」は完了の意味を表す助動詞「ぬ」
   の連用形。「て」は単純接続を表す接続助詞。したがって「にて」で一語とはならない。
   問07の「にて」とは直前の語が体言ではなく活用語の連用形になっている点で識別す
   る。「ず」は打消の意味を表す助動詞。最後の「や」は疑問の意味を表す係助詞の文
   末用法。

 問28・着替えなどをして
    「など」は婉曲を表す副助詞。「し」はサ行変格活用動詞「す」の連用形、「て」は単純
   接続を表す接続助詞。したがって「して」で一語ではない。問08の「して」とは「して」が
   文節の先頭になっていて、そのまま「して」と訳せる点で識別する。

 問29・世の中に暮らす人間とその人々の住居と
    「の」は連体修飾格、「に」は場所を表し、いずれも格助詞。「と」は並列を表す格助
   詞。そのまま「と」と訳して良い。

 問30・ひたすら食べる音ばかりするので
    「に」は強意を表す格助詞。この場合は動詞の連用形の後に使われ、「に」の後続
   の語も同じ動詞が使われる。


第39回・助詞の現代語訳(2)

 次の各文の赤文字の部分を、使われている助詞の意味に注意して現代語訳しなさい。

【初級】
 問01・燕の巣食ひたらば、告げよ。
 問02・口惜しきこと多かれど、え尽くさず。
 問03・すべて月・花をば、さのみ目にて見るものかは。
 問04・音には聞けども、いまだ見ぬなり。
 問05・唐の物は薬の他はなくとも、事欠くまじ
 問06・道知れる人もなくて、惑ひ行きけり。
 問07・久しからずして亡じにし者どもなり。
 問08・やがて起きも上がらで、病み伏せり。
 問09・月出づれば、出で居つつ嘆き思へり
 問10・取りつきながらいたう睡りて、落ちぬべき時に目をさますことたびたびなり。


【中級】
 問11・悪しく探ればなきなり
 問12・浜を見れば、播磨の明石の浜なりけり。
 問13・貧しくて分を知らざれば盗み、力衰へて分を知らざれば病を受く。
 問14・つれなく嫉きものの、忘れがたきに思す。
 問15・日暮れかかるに、なほ宿るべき所遠し。
 問16・あまり憎きに、その法師をば斬れ。
 問17・旅の御姿ながらおはしたり。
 問18・我が弓の力は強きを、龍あらばふと射殺して首の玉は取りてむ。
 問19・大勢にて上らんと議せられけるが、その支度相違したりけり。
 問20・身は賎しながら、母なむ宮なりける。


【上級】
 問21・龍ならばや、雲にも乗らん。
 問22・物語といふもののあなるを、いかで見ばやと思ひつつ、
 問23・もし死なずはありとも、限りと思ふなり。
 問24・御船海の底に入らずは、雷落ちかかりぬべし。
 問25・光源氏のあるやうなど所々語るを聞くに、いとどゆかしさまされど、
 問26・雀の子を犬君が逃がしつる。伏籠の中に籠めたりつるものを
 問27・今一度小松殿に見え奉らばや
 問28・身一つからうじて逃るるも、資材を取り出づるに及ばず。
 問29・来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くやもしほの身もこがれつつ
 問30・さすがに辺土の遺風忘れざるものから、殊勝に覚えらる。


【解答・解説】

 問01・巣を作ったら
    「たら」は完了の意味を持つ助動詞「たり」の未然形。未然形の後に続いて使われる
   接続助詞「ば」は順接の仮定条件を表す。

 問02・多いけれども
    「多かれ」はク活用の形容詞「多し」の已然形。「ど」は逆接の確定条件を表す接続
   助詞。

 問03・一般的に言って月・花を
    「を」は動作の対象を表す格助詞。「ば」は係助詞で本来は「は」だが、直前の語が
   「を」なので連濁となったものである。接続助詞の「ば」と紛らわしいが、接続助詞の場
   合は直前の語が未然形か已然形になることが判別のポイントとなる。

 問04・話には聞いているけれど
    「音」とは「噂」や「話」。「ども」は問02と同じで逆接の確定条件を表す接続助詞。
 問05・なくても不自由はしないだろう
    「なく」はク活用の形容詞「なし」の連用形。「とも」は逆接の仮定条件を表す接続助
   詞。「とも」は普通、活用語の終止形の後に続いて使われるが、直前の語が形容詞・
   形容詞型活用をする助動詞、及び打消の助動詞「ず」の場合は連用形の後に続いて
   使われる点に注意したい。

 問06・いなくて
    「て」は肯定の単純接続を表す接続助詞。
 問07・長く(続か)ないで
    「して」は肯定の単純接続を表す接続助詞。直前の語が打消の意味を表す助動詞
   「ず」の場合は両方で打消の単純接続となり「で」と同じ働きになる。

 問08・起き上がらないで
    「で」は打消の単純接続を表す接続助詞。
 問09・縁側に出て座っては思い嘆いている
    「つつ」は動作の反復を表す接続助詞。この文では「出で居る」と「嘆き思へ」とが絶
   えず繰り返されていることになる。

 問10・(木の枝に)しがみつきながらひどく眠りこけて
    「ながら」は動作の並行を表す接続助詞で、現代語と同じ用法である。この文では
   「取りつき」と「睡り」とが同時に行なわれていることを表す。

 問11・探し方が悪いからないのである
    「ば」の直前の語が已然形なので「ば」は順接の確定条件を表す接続助詞。順接の
   確定条件の場合は、(1)原因・理由、(2)偶然条件(3)恒常条件の3種類を判別しな
   ければならないが、この文では結論「なき」の理由が「悪しく探れ」になるので、(1)の
   訳し方を選択する。最後の「なり」は断定の意味を表す助動詞。

 問12・浜を見ると
    問11と同じく「ば」は順接の確定条件を表す接続助詞。「浜を見る」という行為の後、
   たまたまそこが「播磨の明石の浜であった」ということになるので、「ば」は偶然条件に
   なる。

 問13・身の程を知らないと必ず盗みをするようになり
    問11と同じく「ば」は順接の確定条件を表す接続助詞。「貧しくて分を知らざれ」とい
   う状況では必ず「盗み」という行為が起こるという関係なので、「ば」は恒常条件になる。

 問14・恨めしいけれど
    「ものの」は逆接の確定条件を表す接続助詞。「ものの」の直前の語が連体形である
   こと、また後に読点を挟んで後続の文節につながっているので名詞「もの」に格助詞
   「の」がついた形ではない。

 問15・日が暮れだしたが
    「に」の直前の語は活用する語の連体形、後続は読点を挟んで別の文節につながっ
   ているので「に」は接続助詞である。この場合、順接の確定条件・逆接の確定条件・肯
   定の単純接続の3種類があるので、原文を現代語訳して最適なものを選択しなければ
   ならない。「日が暮れる」ということは夜が近づく時刻。旅をしているのなら当然宿に泊
   まらなければならないというのが常識的な理屈である。しかし宿への道のりはまだまだ
   遠いということなので投宿できないことがわかる。したがって、物の道理に反する関係
   になるので「に」は逆接であることがわかる。

 問16・あまりにも憎いので
    「に」は問15と同じ接続助詞だが、「斬れ」という結論に至った理由は「あまり憎き」な
   ので、「に」は順接の確定条件を表す用法である。

 問17・旅から戻った御姿のまま
    「ながら」は接続助詞。動作の並行の場合もあるが直前の語が体言の場合は、同じ
   状態が続いていることや該当する物すべてを表す。この文では前者。「旅から戻った
   御姿と同じ状態で」という意味になる。

 問18・私の弓(を射る)力は強いので
    「が」は連体修飾格を表す格助詞で「の」と訳す。その後の「の」も同じく連体修飾格
   を表す格助詞。最後の「を」は、直前の語は活用する語の連体形、後続は読点を挟ん
   で別の文節につながっているので接続助詞。この場合、「に」と同じく順接の確定条件
   ・逆接の確定条件・肯定の単純接続の3種類があるので、原文を現代語訳して最適な
   ものを選択しなければならない。「龍の首の玉を取り」という結論に至る理由が「弓の力
   は強き」になるので、「を」は順接の確定条件を表すことがわかる。

 問19・相談なさったけれど、
    「られ」は尊敬、「けれ」は過去の意味を表す助動詞。最後の「が」は、直前の語は活
   用する語の連体形、後続は読点を挟んで別の文節につながっているので接続助詞。こ
   の場合、逆接の確定条件・肯定の単純接続の2種類があるので、原文を現代語訳して
   最適なものを選択しなければならない。この文では後続が「相違し」なので逆接になる。

 問20・身分は低かったけれども
    「ながら」は接続助詞。問10のように動作の並行を表す用法もあるのだが、その他に
   逆接の確定条件もある。

 問21・龍であるならば
    「なら」は断定の意味を表す助動詞「なり」の未然形。「ば」は順接の仮定条件を表す
   接続助詞。「や」は疑問の係助詞。未然形の後に続いて使われる助詞としては、別に
   「ばや」という終助詞もあるが、この場合は「ばや」で文末となり、後に続く語がない。

 問22・何とかして見たい
    「ばや」の後に引用を表す格助詞「と」があるので、「物語といふもののあんなるをいか
   で見ばや」で一文となる。したがって「ばや」は希望を表す終助詞である。問21の接続
   助詞「ば」と係助詞「や」の組み合わせと区別できるようにしたい。

 問23・死なないでいるとしても
    「ず」は打消の助動詞「ず」の連用形、「は」は係助詞。「とも」は逆接の仮定条件を表
   す接続助詞。

 問24・海の底に沈まないならば
    「ず」は打消の助動詞「ず」の未然形。「は」は本来は「ば」であるので、順接の仮定条
   件を表す接続助詞。

 問25・所々語ってくれる(話)を聞くと
    「を」は格助詞。直前の語は動詞の連体形だが、その直後に体言を補って訳すことが
   できる場合は接続助詞ではなく格助詞である。最後の「に」は接続助詞。「聞く」という
   動作の後に「ゆかしさまされど」となる関係なので、「に」は肯定の単純接続になる。

 問26・閉じ込めておいたのに
    「ものを」は接続助詞。通常、接続助詞で文末になることはないのだが、「ものを」に関
   しては和歌や散文において文末での用法があるので注意。この場合は自分の期待とは
   逆の結果になったことに対する詠嘆(落胆の気持ち)を表す。

 問27・お会い申し上げたい
    「奉ら」は謙譲の意味を表す補助動詞でラ行四段活用の未然形。「ばや」は問22と同
   じく希望を表す終助詞である。

 問28・やっとのことで逃げても
    「も」は係助詞もあるが、これは接続助詞。「自分の身体だけはどうにかを逃れる」と
   「中に残した財産や家財道具を取り出せない」との関係を考えれば、逆接の確定条件
   を表すことがわかる。

 問29・身も焦がれるほど恋い慕い続けていることよ
    「つつ」は接続助詞で通常は動作の並行や反復を表すが、和歌の句末に使われる場
   合は「つつ止め」と言われ、詠嘆を表す点に注意したい。

 問30・忘れないでいるから
    「ものから」は接続助詞。平安・鎌倉時代に成立した作品の場合、「ものから」は逆接
   の確定条件を表すが、近世の文学作品では順接の確定条件を表す用法があるので注
   意したい。


第40回・助詞の現代語訳(3)

 次の各文の赤文字の部分を、使われている助詞の意味に注意して現代語訳しなさい。

【初級】
 問01・水をだにのどへ入れ給はず。
 問02・言問はぬ木すら妹と兄有りとふをただ独り児にあるが苦しさ
 問03・世は定めなきこそいみじけれ。
 問04・下ざまの人の物語は、耳驚くことのみあり
 問05・明くる日まで頭痛く、物食はず。
 問06・されど、なほ夕顔といふ名ばかりはをかし。
 問07・御果物、御酒など、良きやうなるけはひしてさし出されたる、いと良し。
 問08・今し、羽根といふ所に来ぬ。
 問09・徳大寺にも、いかなる故か侍りけん
 問10・この鏡には文や添ひたりし


【中級】
 問11・梟はこれにやと覚ゆ。
 問12・かかることは文にも見えず、伝へたる教へもなし。
 問13・中垣こそあれ、一つ家のやうなれば、望みて預かれるなり。
 問14・とり集めたることは、秋のみぞ多かる
 問15・あやしき家の見所もなき梅の木などには、かしがましきまでぞ鳴く。
 問16・人の亡きあとばかり悲しきはなし。
 問17・「験あらん僧たち、祈り試みられよ」など言ふ
 問18・急ぎしもせぬほどに月出でぬ。
 問19・生きとし生ける者、いづれか歌を詠まざりける
 問20・近き火などに逃ぐる人は、しばしとやは言ふ


【上級】
 問21・散りぬとも香だに残せ梅の花恋しき時の思ひ出にせむ
 問22・見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮
 問23・烏などもこそ見つくれ
 問24・されど、門の限りを高う作る人もありけるは
 問25・昔ありし家は稀なり
 問26・住み果てぬ世に醜き姿を待ち得て何かはせん
 問27・行き別るるほど、行くもとまるも皆泣きなどす
 問28・人のもとにやらんとしける文あり。
 問29・「この住吉の明神は例の神ぞかし。欲しき物ぞおはすらむ。」とは、今めくものか
 問30・「お子はおはすや。」と問ひしに、「一人も持ち侍らず。」と答ふ。


【解答・解説】

 問01・水さえ
    「だに」は類推を表す副助詞。程度の軽い物を挙げて、程度のより重い物を推測さ
   せる働きがある。ここでは「水」が程度の軽い物になる。「水さえも喉を通らない」とい
   う状態なのであるから、「ましてや食事(これが程度の重い物になる)はなおさら口に
   入らない」であろうことを読者に推測させている。

 問02・木でさえ
    「すら」も問01と同じく類推を表す副助詞。
 問03・定まっていないからこそ
    「こそ」は強意を表す係助詞。「人の寿命は定まっていない」という事実を、「こそ」で
   強調している。「こそ」が使われた場合、基本的にその文末にくる活用語が已然形で
   結ぶ。

 問04・びっくりすることばかりある
    「のみ」は限定を表す副助詞。「〜だけ」「〜ばかり」と訳し、それしかないことを表す。
 問05・明くる日まで
    「まで」は範囲を表す副助詞。問題文の場合、「その日から翌日までの間はずっと」
   ということになる。

 問06・名前だけは
    「ばかり」は限定を表す副助詞。問04の「のみ」と同様に訳す。「は」は特定を表す
   係助詞。

 問07・御果物やお酒など
    「など」は例示を表す副助詞。「御果物」と「御酒」とを具体例として挙げている。
 問08・
    「し」は強意を表す副助詞。これは特に訳さないので、結果として「今」だけを訳すこ
   とになる。

 問09・どんな理由があったのでしょうか。
    「か」は疑問を表す係助詞。文末の「けむ」は係り結びにより連体形となる。「侍り」が
   丁寧の意味を表す敬語なので、普通なら「〜たのだろうか」となるところが、「〜たので
   しょうか」となる。

 問10・手紙が添えてあったか。
    「や」は疑問を表す係助詞。文末の活用語は係り結びにより連体形となるので、文末
   の「し」は過去の意味を表す助動詞「き」の連体形である。

 問11・梟(という鳥)はこれであろうか
    「に」は断定の意味を表す助動詞「なり」の連用形、「や」は問10と同じく疑問を表す
   係助詞。係助詞の場合、通常なら結びとなる述語が存在するが、書かなくてもわかり
   きっている語句の場合は作者が意図的に省く。省略せずに表記すると「梟はこれにや
   あらむ」となるので、現代語訳の際は省かれた部分も含めて訳す。

 問12・(医学の)書物にも見当たらず
    「に」は対象を表す格助詞、「も」は同趣の一つを表す係助詞。現代語と同様に「にも」
   はそのまま「にも」と訳す。

 問13・自宅と隣家とを仕切っている垣根はあるけれども
    「こそ」は強意の係助詞だが、これを受ける活用語「あれ」で文末となっていない点に
   注目。係り結びとなる活用語がありながら、それでは文末とはならない場合を「係り結
   びの流失」という。「こそ」が使われて流失した場合は、逆接の確定条件に訳す。

 問14・特に秋に多い。
    「のみ」は限定の他に強意を表す用法がある。こちらは現代語にはない用法なので
   注意したい。直後にある「ぞ」は強意である。

 問15・やかましいくらいに
    「まで」は範囲の他に程度を表す用法がある。こちらは古語独特の用法なので注意
   したい。

 問16・人が亡くなった後ほど
    「ばかり」は限定の他に程度を表す用法がある。
 問17・などと言う
    「など」は副助詞だが、引用を表す格助詞「と」と同じ用法があって、「と」と同様に会
   話文や心内表現文を受ける。

 問18・(特に)急ぎもしないうちに
    「急ぎ」は動詞の連用形から転じた名詞である点に注意したい。これは、現代語にも
   ある「あの選手の走りは素晴らしい」という文の「走り」と同じ用法である。したがって、
   「急ぎ」の直後にある「し」は副助詞で特に訳さない。「せ」はサ変動詞、「ぬ」は打消の
   意味を表す助動詞なので「急ぎもしない」となる。「急ぎ」をガ行四段活用動詞の連用
   形、「し」を過去の意味を表す助動詞の連体形と勘違いしやすいので注意したい。

 問19・誰が和歌を詠まない者がいただろうか。いや、歌を詠まない者はいなかった。
    「か」は疑問の他に反語の用法がある。反語とは外見上は疑問文にしておきながら、
   述べたこととは反対の内容を強調する表現である。したがって、疑問を提示しその直
   後にそれを打ち消す表現を付加するのが訳し方の基本である。

 問20・「しばらく(待ってみよう)」と言うだろうか。いや、言うはずがない。
    「や」は疑問のほかに反語の用法がある。問19と同じ訳し方になる。「しばし」は副
   詞なので、これを修飾する用言があることも見抜かなければならない。問題文では、
   「待たむ」が省かれているので、それを補った上で訳す必要がある。

 問21・せめて香だけでも
    「だに」は類推の他に最小限の希望を表す用法がある。この場合は述語の部分が
   希望・命令・仮定・意志を表す場合に限られる。

 問22・春の桜も秋の紅葉も
    「も」は同趣の一つの他に並列を表す用法がある。並列の場合は、「も」の前後とも
   等価の事物が列挙されているのが特徴である。現代語と同じなので、そのまま「も」と
   訳せば良い。

 問23・烏などが見つけたら困る
    直後に係助詞「こそ」を伴った場合の「も」は、起きては困る事態を仮定して、それに
   対する不安を表す。

 問24・高く作る人もいることだよ
    「は」が文末にある場合は特定ではなく詠嘆を表す。
 問25・昔からあった家は非常に少ない
    「し」の判別に関する問題。直前の語がラ行変格活用動詞の連用形、後続の語が体
   言であるので、この「し」は過去の意味を表す助動詞「き」の連体形である。

 問26・何をしようというのだろうか。いや何もできないだろう。
    「かは」は係助詞「か」と係助詞「は」とが合成したものである。この場合の「か」は疑
   問ではなく反語を表す。「せ」はサ行変格活用動詞「す」の未然形、「ん」は意志(推量
   でも可)を表す助動詞「む」の連体形である。

 問27・泣いたりなどする
    「など」は例示・引用の他に婉曲の用法がある。この場合はそのまま「など」と訳す。
 問28・女のもとへ送ろうとした手紙がある
    「し」の判別に関する問題。「し」が何であるかを判別するにはその直前を見る。する
   と、「もと(名詞)+に(助詞)」で一文節になるので、「し」の直前で文節が切れることが
   わかる。文節の先頭に付属語(助動詞・助詞)が来ることは絶対にないので、この「し」
   はサ行変格活用動詞「す」の連用形とわかる。

 問29・当世風な(ことを言う)ものよ
    「か」の判別に関する問題である。「か」には係助詞の他に終助詞がある。終助詞の
   場合は詠嘆を表す。係助詞の文末用法と紛らわしいが、疑問にも反語にも訳せない
   こと、結びとなる述語を補って訳すことができないことが判別のポイントである。

 問30・お子様はいらっしゃいますか。
    「や」の判別に関する問題である。詠嘆や呼びかけを表す間投助詞と紛らわしいが、
   その場合は活用語の場合は連体形から接続すること、また「や」を取り除いても文意
   に変化がないことが判別のポイントである。