こてんこてん蔵庫5(その4)             戻る

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第16回・助動詞「たり」(存続・完了)「り」

 次の赤文字の語は用言ないし助動詞である。用言の場合は活用種類・基本形・活用形を、
助動詞の場合は意味・基本形・活用形を答えなさい。ただし中級以上の問題は用言でも助
動詞でもないものや赤文字の部分では一語とならないものがあります。それらは「×」と解答
してください。

【初級】
 問01・嵯峨の天皇の御時、都と定まりにけるより後、四百余歳を経たり
 問02・或いは去年焼けて今年造れ
 問03・一重なるが疾く咲きたるも、重なりたる紅梅の匂ひめでたきも、皆をかし。
 問04・牛飼・下部などの見知れもあり。
 問05・人の上にてたるだに、心憂し。
 問06・源氏物語には「物とはなしに」とぞ書ける。
 問07・桟敷には人を置きたれば、
 問08・事を知り、世を知れば、願はず、走らず。
 問09・朝に死に、夕に生まるるならひ、ただ水の泡にぞ似たりける。
 問10・予、物の心を知れしより、四十余りの春秋を送れる間に、世の不思議を見る事、
    ややたびたびになりぬ。


【中級】
 問11・首もちぎるばかりに引きたるに、耳鼻欠けうげながら抜けにけり。
 問12・大きなる辻風起こりて、六条わたりまで吹けこと侍りき。
 問13・用ありて行きたりとも、その事果てなば疾く帰るべし。
 問14・この文、清行が書けといふ説あれど、
 問15・そのたび、公卿の家十六焼けたり
 問16・この風、未の方に移りゆきて、多くの人の嘆きをなせ
 問17・去る者は日々に疎しといへることなれば、
 問18・老いたるも若きも、智あるも愚かなるも、変はる所なしと見ゆる。
 問19・いかにもののあはれもなかん。
 問20・岸うつ波も茫々たり


【上級】
 問21・所も変はらず人も多かど、いにしへ見し人は二三十人が中にわづかに一人二人
    なり。
 問22・一銭軽しといへども、これを重ぬば貧しき人を富める人となす。
 問23・身ひとつからうじて逃るも、資材を取り出づるに及ばず。
 問24・飢ゑ死ぬもののたぐひ、数も知らず。
 問25・ただ逃げ出でたるをことにして、向かひのつらに立てり。
 問26・塵を煙のごとく吹き立てたれば、すべて目も見えず、
 問27・山は崩れて河を埋み、海は傾きて陸地を浸せり。
 問28・舞人を宿せる仮屋より出で来たりけるとなん。
 問29・たとひ耳鼻こそ切れ失すとも、命ばかりはなどか生きざらん。
 問30・「後は誰に。」と心ざす物あらば、生けらんうちにぞ譲るべき。


【解答・解説】

 問01・存続/たり/終止形
    直前の語が用言・助動詞の場合の「たり」は存続・完了である。そして連用形の後に
   続いて使われる。

 問02・存続/り/終止形
    直前の語は四段動詞の已然形。後続の語はない。已然形から接続する助動詞はす
   べて存続の助動詞である。

 問03・存続/たり/連体形
    直前の語は四段動詞の連用形。後続の語は体言なので当然連体形となる。
 問04・存続/り/連体形
    直前の語は四段動詞の已然形。後続の語は助詞だがこの間に体言「人」が省かれ
   ている。

 問05・マ行上一段活用/見る/連用形
    上下の一段・二段動詞の場合未然形・連用形が同じであるが、未然形から接続する
   「たり」は存在しないので、連用形しか考えられない。

 問06・カ行四段活用/書く/已然形
    後続の「る」は存続の助動詞「り」の連体形。したがって「書け」は已然形である。文末
   で連体形となるのは係助詞「ぞ」の係り結びのためである。

 問07・存続/たり/終止形
    直前の語は四段動詞の連用形。後続の語は助詞。
 問08・存続/たり/已然形
    直前の語は四段動詞の已然形。後続の語は助詞。
 問09・存続/たり/連用形
    直前の語は上一段活用動詞だが、問05と同じ理由で「たり」は存続。後続の「けり」
   は過去の助動詞。この助動詞は連用形の後に続いて使われる。

 問10・存続/り/連用形
    直前の語は上一段活用動詞だが、問05と同じ理由で「たり」は存続の助動詞である。
   後続の「し」は過去の助動詞「き」の連体形なので問09と同じ理由で「り」は連用形とな
   る。

 問11・完了/たり/連体形
    完了の助動詞は「つ」「ぬ」があるため、「たり」「り」が完了の意味で使われるのは20
   %しかない。現代語訳の際「〜てしまった」と訳した方が適切な場合は完了である。こ
   の文の「たる」を存続と解釈し「首もちぎれるほど引っ張っていると、耳鼻が切れて穴が
   あいたものの足鼎は抜けてしまった」と訳してしまうと、以前からずっと引っ張り続けて
   いることになるので場面の状況として不自然になる。

 問12・完了/り/連体形
    ここも存続と完了の現代語訳を比較する。「大きな竜巻が発生して六条のあたりまで
   吹いていることがございました。」と訳すと竜巻がずっと同じ場所に居座り続けていて風
   が吹いている状態が以前からずっと続いていることになる。

 問13・存続/たり/終止形
    後続は助詞「と」なので「用ありて行きたり」が一文となる。したがって「たり」は終止形
   である。「用事があって出かけているとはいってもその用事が済んでしまったらすぐに
   帰るべきである」と訳せるのでこれは存続である。

 問14・完了/り/終止形
    問13と同じで「この文、清行が書けり」で一文となるため「り」は終止形となる。意味
   的には「書いた」と過去に意訳したほうが妥当な文なので、これは存続ではなく完了で
   ある。

 問15・完了/たり/終止形
    ここも存続と完了の現代語訳を比較する。「その時の火事で公卿の家でさえ16軒も
   焼けてしまった。」と訳したほうが適切。「焼けている」と訳すと以前からずっと焼け続け
   ていることになってしまう。

 問16・完了/り/終止形
    ここも存続と完了の現代語訳を比較する。「大勢の人の嘆きの種を作ってしまった。」
   と訳したほうが適切。したがって存続ではなく完了である。

 問17・ハ行四段活用/言ふ/已然形
    後続の「る」は存続の助動詞「り」の連体形。したがって「言へ」は已然形である。
 問18・ヤ行上二段活用/老ゆ/連用形
    問05と同じ理由で連用形。なお「老ゆ」は「悔ゆ」「報ゆ」とともにヤ行である。
 問19・×
    これは「なから」で一語のク活用の形容詞である。したがって「ら」一語で存続の助動
   詞ではない。存続の助動詞「り」はサ変動詞の未然形か四段動詞の已然形の後に続
   いて使われる。

 問20・×
    これは「茫々たり」で一語のタリ活用の形容動詞である。したがって「たり」一語で存
   続の助動詞ではない。存続の助動詞「たり」は連用形の後に続いて使われる。

 問21・×
    これは「多かれ」で一語のク活用の形容詞である。したがって問19と同じ理由で「れ」
   一語で存続の助動詞ではない。

 問22・×
    これは「重ぬれ」で一語の下二段動詞である。したがって問19と同じ理由で「れ」一
   語で存続の助動詞ではない。

 問23・×
    これは「逃るる」で一語の下二段動詞である。したがって問19と同じ理由で「れ」一
   語で存続の助動詞ではない。

 問24・×
    これは「死ぬる」で一語のナ変動詞である。したがって問19と同じ理由で「れ」一語
   で存続の助動詞ではない。

 問25・タ行四段活用/立つ/已然形
    後続の「り」は存続の助動詞。したがって「立て」は已然形だが、活用語尾がエの音
   なので「立つ」は四段活用である。

 問26・タ行四段活用/立つ/連用形
    後続の「たり」は存続の助動詞。したがって「立て」は連用形だが、活用語尾がエの
   音なので「立つ」は下二段活用である。「立つ」には自動詞と他動詞の違いで四段と下
   二段の2種があるので注意したい。

 問27・サ行四段活用/浸す/已然形
    後続の「り」は存続の助動詞である。
 問28・サ行変格段活用/宿す/未然形
    後続の「り」は存続の助動詞であるが「宿す」は四段動詞ではなく、これは名詞「宿」
   に「す」がついた形でサ変動詞である。したがって已然形ではなく未然形である。

 問29・カ行上二段活用/生く/未然形
    後続の「ざら」は打消の助動詞「ず」の未然形である。打消の助動詞「ず」は未然形
   の後に続いて使われるので「生き」は未然形。活用語尾がイの音なので上二段活用
   である。

 問30・カ行四段活用/生く/未然形
    後続の語は現在推量の「らん」ではなく存続の助動詞「り」の未然形と婉曲の助動詞
   「ん」の連体形とに区切れる。したがって「生け」は已然形になるのだが、問29とは違
   い上二段ではなく四段動詞である。「生く」には四段活用もあることを知っておきたい。


第17回・助動詞「ず」

 次の赤文字の語は用言ないし助動詞である。用言の場合は活用種類・基本形・活用形を、
助動詞の場合は意味・基本形・活用形を答えなさい。ただし中級以上の問題は用言でも助
動詞でもないものや赤文字の部分では一語とならないものがあります。それらは「×」と解答
してください。

【初級】
 問01・防がんとするに力もなく足も立た
 問02・もののあはれも知らなりゆくなんあさましき。
 問03・長くとも四十に足らほどにて死なんこそめやすかるべけれ。
 問04・年月経てもつゆ忘るるにはあらど、
 問05・存命の喜び、日々に楽しまざらんや。
 問06・仁和寺にある法師、年寄るまで石清水を拝まざりければ、
 問07・道を正しくせば、その化遠く流れんことを知らざるなり。
 問08・貧しくて分を知らざれば盗み、力衰へて分を知らざれば病を受く。
 問09・心の師とはなるとも、心を師とせざれ
 問10・神へ参るこそ本意なれと思ひて、山まではず。


【中級】
 問11・海賊は夜歩きせなり。
 問12・世には心得ことの多きなり。
 問13・日しきりにとかくしつつ、ののしるうちに夜更け
 問14・「今更にな大殿ごもりおはしましそ」とて、べきものとも思いたらぬを、
 問15・昨日今日君に逢はずて為すすべのたどきを知ら哭のみしそ泣く
 問16・静かに思へば、よろづに過ぎしかたの恋しさのみぞせんかたなき。
 問17・さやうの物、なくてありん。
 問18・宇治間山朝風寒し旅にして衣かすべき妹あらくに
 問19・植ゑともありなん。
 問20・かかる折だにもその恩を報じ申さば、何をもつてか報い申さん。


【上級】
 問21・その事果てば疾く帰るべし。
 問22・子になり給ふべき人めり。
 問23・はや夜も明けんと思ひつつゐたりけるに、
 問24・春暮れてのち夏になり、夏果てて秋の来るはあらず。
 問25・中納言の君、いへばえ悲しう思へる様を、人知れずあはれと思す。
 問26・すべて女の、うちとけたる寝もず、身を惜しとも思ひたらず、
 問27・住吉の神の導き給ふままに、はや舟出してこの裏を去り
 問28・今様の事どもの、珍らしきを言ひ広めもてなすこそ、またうけられ
 問29・落ちべきまで簾はり出でて押し合ひつつ、
 問30・日数の早く過ぐるほどぞ物にも似


【解答・解説】

 問01・打消/ず/終止形
    打消の助動詞は用言・助動詞の未然形の後に続いて使われる。
 問02・打消/ず/連用形
    「ず」の本活用は未然形・連用形・終止形が同じであるが、後続の語が動詞「なる」な
   ので、この「ず」は連用形である。

 問03・打消/ず/連体形
    直前の語は動詞の未然形、後続の語が体言なので、「ぬ」は打消である。完了の意
   味を表す助動詞の「ぬ」の終止形は直前の語は用言・動詞の連用形、後続の語はなく
   句点となる点に注意。

 問04・打消/ず/已然形
    直前の語は動詞の未然形、後続の語が助詞なので、「ね」は打消である。完了の意
   味を表す助動詞の「ぬ」の命令形は直前の語は用言・動詞の連用形、後続の語はなく
   句点となる点に注意。

 問05・打消/ず/未然形
    後続の語「ん」は推量の意味を表す助動詞である。このように助動詞につながる場合
   は本活用ではなくいわゆる補助活用が使われる。これは「ず」にラ行変格活用動詞「あ
   り」がついた形なのでラ変型活用をする。

 問06・打消/ず/連用形
    後続の語「けり」は過去の意味を表す助動詞である。したがって問06と同じく補助活
   用が使われる。

 問07・打消/ず/連体形
    後続の語「なり」は断定の意味を表す助動詞である。したがって問06と同じく補助活
   用が使われる。

 問08・打消/ず/已然形
    後続の語は助詞なので本来なら本活用である「ね」が使われるところであるが、漢文
   訓読調の文章ではしばしば後続の語が助動詞でなくても「ず」の補助活用が使われる
   ことも知っておきたい。

 問09・打消/ず/命令形
    本活用には命令形がないので、補助活用が使われる。
 問10・マ行上一段活用/見る/未然形
    後続の語は打消の助動詞である。したがって直前の語は未然形となる。
 問11・打消/ず/連体形
    本来なら「ず」の補助活用の連体形は「ざる」であるが、後続の語が伝聞・推定の意
   味を表す助動詞「なり」、推定の意味を表す助動詞「らし」、婉曲の意味を表す助動詞
   「めり」の場合は「ざる」の「る」が省かれた短縮形となる点に注意。

 問12・打消/ず/連体形
    直前の語が下二段活用動詞なので未然形・連用形が同じで、「ぬ」の判別が問題と
   なるところだが、その場合は後続の語を見る。「ぬ」で文が終わっていればその「ぬ」
   は完了、後続の語が体言なら打消の助動詞である。

 問13・完了/ぬ/終止形
    後続の語が句点なので終止形である。打消なら終止形は「ず」となるので、これは
   完了の助動詞である。

 問14・ナ行下二段活用/寝/終止形
    「寝」とあるので動詞とわかるが、仮にひらがなで書かれてあっても、文節の先頭に
   くる場合は助動詞ではないので、自立語を考える。後続の語は当然・義務を表す助動
   詞「べし」の連体形。これは終止形の後に使われる。

 問15・打消/ず/連用形
    打消の助動詞は奈良時代のみにあった用法として未然形に「な」、連用形に「に」が
   あった。いずれも前後の語が限定しているので、「蔵庫2」の該当項目を参照し覚えて
   おこう。

 問16・完了/ぬ/連用形
    後続の語は過去の助動詞「き」の連体形なので、この「に」は打消ではなく完了であ
   る。打消の助動詞から過去の助動詞につながる場合は、補助活用の「ざり」が使われ
   る点に注意。

 問17・強意/ぬ/未然形
    後続の語は推量の助動詞「む」の終止形なので、この「な」は打消ではなく強意であ
   る。(いわゆる「完了」の助動詞だが、後続が推量の場合は強意となり完了の意味は
   ない。)なお、打消の助動詞から推量の助動詞につながる場合は、補助活用の「ざら」
   が使われる。

 問18・打消/ず/未然形
    直前の語がラ行変格活用動詞「あり」の未然形なので、この「な」は奈良時代のみに
   使われていた打消の助動詞「ず」の未然形である。

 問19・打消/ず/終止形
    後続の語は引用を表す格助詞「と」なので、「植ゑず」が一文となる。したがって「ず」
   は終止形である。

 問20・打消/ず/未然形
    後続の語は接続助詞「ば」である。これは已然形の後に続いて使われる確定条件、
   未然形の後に使われる仮定条件の2種があるが、已然形なら「ね」ないしは「ざれ」に
   なるので、この「ず」は未然形である。

 問21・完了/ぬ/未然形
    後続の語は接続助詞「ば」である。問20に記した理由により、打消の助動詞ではな
   い。したがってこの「な」は完了の助動詞である。

 問22・断定/なり/連体形
    直前の語が体言であるからこの「な」は打消でも完了でもない。後続の助動詞が「め
   り」なので、問11と同じ理由で、これは断定の助動詞の連体形「なる」の「る」が省かれ
   た形である。

 問23・×
    これ直前の語が下二段活用動詞なので未然形と連用形の区別がつかない。したが
   って、強意の助動詞「ぬ」の未然形とも考えられるが、ここは文意を考える。「はやく夜
   が明けて欲しい」という希望の意味に訳せるので「なん」一語で終助詞となる。

 問24・断定/なり/連用形
    直前の語はカ行変格活用動詞「来」の連体形である。連体形の後に使われ、さらに
   「に」の後に動詞「あり」「侍り」がある場合の「に」は、断定の助動詞の連用形である。

 問25・打消/ず/連用形
    打消の助動詞「ず」の連用形「に」は奈良時代までの用法であるが、「いへばえに」と
   いう言い方(現代語訳は「口に出して言うこともできない」)に限り、平安時代以後も使
   われていた。

 問26・ナ行下二段活用/寝/未然形
    直前の語が助詞「も」なので、そこで文節が切れる点に注目。したがって、この「ね」
   は文節の先頭にあることになる。したがって自立語と考える。後続の語が打消の助動
   詞なのでこれは用言の未然形と判断すれば、あとは正解にたどりつけるはず。

 問27・完了/ぬ/命令形
    係り結びでない限り、文末の「ね」は命令形。したがって完了の助動詞である。直前
   の語が動詞の連用形である点にも注目。

 問28・打消/ず/已然形
    問28と同じく文末にある「ね」だが、文中に係助詞「こそ」があるので、これは已然形
   である。したがって完了ではなく打消の助動詞である点に注意。(完了の助動詞の已
   然形なら「ぬれ」になる。)

 問29・完了/ぬ/終止形
    後続の語「べき」は推量の助動詞「べし」の連体形である。助動詞「べし」は終止形の
   後に続いて使われるので、この「ぬ」は完了の助動詞である。(打消の助動詞の終止形
   なら「ず」である。)

 問30・打消/ず/連体形
    文末にある「ぬ」なので完了の助動詞の終止形と考えがちだが、文中に係助詞「ぞ」
   があるので、これは連体形である。したがって完了ではなく打消の助動詞となる点に
   注意。(完了の助動詞の連体形なら「ぬる」になる。)


第18回・助動詞「なり」(断定・存在)「なり」(伝聞・推定)

 次の赤文字の語は用言ないし助動詞である。用言の場合は活用種類・基本形・活用形を、
助動詞の場合は意味・基本形・活用形を答えなさい。ただし中級以上の問題は用言でも助
動詞でもないものや赤文字の部分では一語とならないものがあります。それらは「×」と解答
してください。

【初級】
 問01・男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。
 問02・男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり
 問03・古き墳は鋤かれて田となりぬ。
 問04・今は亡き人なれば、かばかりの事も忘れがたし。
 問05・京なる医師のがり率て行きける、道すがら、人の怪しみ見ること限りなし。
 問06・家の犬、常になれたり。
 問07・能ある人は無能になるべきなり。
 問08・山ならねどもこれらにも猫の経上がりて、猫またになりて人とることはあなるものを
 問09・今は忘れけり。
 問10・年月経てもつゆ忘るるはあらねど、去る者は日々に疎しといへることなれば、


【中級】
 問11・八重桜は奈良の都にのみありけるを、このごろぞ世に多くなり侍るなる。
 問12・世には心得ぬ事の多きなり
 問13・造麻呂が家は山もと近かなり
 問14・小野小町が事、極めて定かならず。
 問15・さて、いかがして人を恵むべきとならば、
 問16・人の国にかかる習ひあなりと、これらになき人事にて伝へ聞きたらんは、
 問17・長き契りのなかりければ、程なく罷りぬべきなめりと思ふが、悲しく侍るなり
 問18・長き契りのなかりければ、程なく罷りぬべきめりと思ふが、悲しく侍るなり。
 問19・声高にのたまひそ。
 問20・法師にやなりまし。


【上級】
 問21・道を正しくせばその化遠く流れん事を知らざるなり
 問22・限りなくかなしと思ひて、河内へも行かずなりにけり。
 問23・海賊は夜歩きせざなりと聞きて、夜中ばかりに船を出だして阿波の水門を渡る。
 問24・幣には御心の行かねば、御船も行かぬなり
 問25・また聞けば、侍従の大納言の御女亡くなり給ひぬなり
 問26・「奥山に猫またといふものありて、人を食ふなる。」と人の言ひけるに、
 問27・唐衣着つつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ
 問28・吉野の桜、左近の桜、みな一重てこそあれ。
 問29・またまた数ふれば、かれこれ間抜きゆくほどに、いづれものがれざる似たり。
 問30・継子立てといふものを双六の石て作りて立て並べたるほどは、


【解答・解説】

 問01・伝聞/なり/連体形
    直前の語はサ行変格活用動詞の終止形である。用言・助動詞の終止形の後に使わ
   れる「なり」は伝聞・推定の意味を表す助動詞である。

 問02・断定/なり/終止形
    直前の語はサ行変格活用動詞の連体形である。用言・助動詞の連体形の後に使わ
   れる「なり」は原則として断定・存在の意味を表す助動詞である。

 問03・ラ行四段活用/なる/連用形
    直前の語は助詞である。。「と」の前に名詞があって「AはBとなる」と訳すことができ
   る場合は、四段活用動詞の「なる」である。問題文の場合、Aにあたるものが「古き墳」
   でBにあたるものが「田」である。なお、漢字では「成る」だが、漢字で表記されることは
   ほとんどないので注意したい。

 問04・断定/なり/已然形
    直前の語は体言である。断定のの意味を表す助動詞は用言・助動詞の連体形の他
   に体言の後にも使われる。

 問05・存在/なり/連体形
    問04と同じく体言の後に続いて使われているが、直前の体言が場所を表す語の場
   合、「なり」は存在を表すことがある。問題文は「京都にいる医者のところへ連れて行っ
   たその途中の道で、人がこのうえなく不審に思って見ていた。」となるので、断定では
   なく存在の意味を表す助動詞である。

 問06・ラ行下二段活用/なる/連用形
    直前の語は副詞である。助動詞の「なり」は副詞の直後には使われないので、この
   「なれ」は動詞である。後続の語は存続の意味を表す助動詞「たり」なので、その直前
   の「なれ」は連用形になる。したがって四段活用ではなく下二段活用である。漢字で表
   記すると「馴る」または「慣る」だが、これもひらがなで表記されることが多い。

 問07・ラ行四段活用/なる/終止形
    直前の語は助詞である。問03と同じく「に」の前に名詞があって「AはBになる」と訳
   すことができる場合は、四段活用動詞の「なる」である。問題文の場合、Aにあたるも
   のが「能ある人」でBにあたるものが「無能」である。

 問08・断定/なり/未然形
    問05と同じく直前の語は場所を表す体言だが、「なら」を「で」と訳せる場合は存在で
   はなく断定である。問題文は「山でなくてもこの近辺にも猫が化けて猫またになって人
   の命を奪うことはあるとかいうのに。」と訳す。

 問09・完了/ぬ/連用形
    直前の語はラ行下二段活用動詞の連用形である。用言・助動詞の連用形の後に使
   われる「なり」は完了の意味を表す助動詞である。

 問10・断定/なり/連用形
    直前の語は問09と同じくラ行下二段活用動詞だが、活用形は連用形ではなく連体
   形である。用言・助動詞の連体形の後に使われる「なり」は原則として断定の意味を
   表す助動詞である。

 問11・ラ行四段活用/なる/連用形
    直前の語はク活用の形容詞の連用形である。連用形の後に使われる「なり」は動詞
   である。

 問12・断定/なり/終止形
    直前の語は問11と同じだが本活用の連体形である点に注目。普通、形容詞から助
   動詞につながる場合は本活用ではなく補助活用が使われるが、断定の「なり」に限り
   本活用の連体形から接続する。

 問13・伝聞/なり/終止形
    直前の語は問11と同じだが補助活用の連体形で、しかも連体形活用語尾の「る」が
   省かれた短縮形である点に注目。この短縮形の後に使われる助動詞は、伝聞・推定
   「なり」と「めり」「らし」の3語のみであることを知っておきたい。

 問14・×
    これは「定かなり」で一語の形容動詞である。
 問15・断定/なり/未然形
    断定の助動詞は大部分が用言・助動詞の連体形か体言の後に続いて使われるが、
   ごく稀に助詞「と」「ば」の後に続いて使われる。

 問16・伝聞/なり/終止形
    直前の語はラ行変格活用動詞「あり」の連体形で、問13と同じく連体形活用語尾の
   「る」が省かれた短縮形である。したがって問13と同じ理由で伝聞の助動詞である。

 問17・断定/なり/終止形
    直前の語はラ行変格活用動詞「侍り」の連体形だが、短縮形ではない点に注目。こ
   の場合は伝聞・推定ではなく断定の意味を表す助動詞である。

 問18・断定/なり/連体形
    後続の語が「めり」なので「な」は「なる」の短縮形である。直前の語は意志の意味を
   表す助動詞「べし」の連体形。「べし」は形容詞型の活用をする助動詞である。しかも
   補助活用ではなく本活用の連体形の後に続いて使われているので、この「な」は断定
   の助動詞である。

 問19・×
    直前の語はナリ活用の形容動詞で連用形である。連用形の後に続いて使われる
   「な」なので完了の助動詞も考えられるが、形容動詞の連用形は2種類あり後続の語
   が助動詞の場合は「なり」「たり」が使われ、「に」「と」は使われない。したがって助動
   詞ではないことがわかる。問題文の「な」は陳述の副詞である。「な」+動詞+「そ」が
   セットで使われ「〜するな」という禁止の意味を表す。

 問20・完了/ぬ/連用形
    直前の語はラ行四段活用動詞の連体形である。後続の語は躊躇する心情を含んだ
   意志の意味を表す助動詞で、これは未然形の後に続いて使われる。したがって「な」
   は「なる」の短縮形ではなく完了の意味を表す助動詞である。

 問21・断定/なり/終止形
    直前の語は打消の意味を表す助動詞の連体形である。連体形の後に使われる「な
   り」は動詞である。

 問22・ラ行四段活用/なる/連用形
    直前の語は問21と同じく打消の意味を表す助動詞であるが、本活用である点に注
   意。「ず」には未然形・連用形・終止形の3種がある。また、伝聞・推定の助動詞は終
   止形の後に続いて使われるのが原則だが、ラ変型活用語の場合は連体形の後に使
   われるという例外接続により、「ず」ではなく連体形の「ざる」が使われる。したがって、
   この「なり」は助動詞ではなく動詞であり、直前の「ず」は連用形である。

 問23・伝聞/なり/終止形
    直前の語は問21と同じく打消の意味を表す助動詞だが、補助活用の連体形で、し
   かも連体形活用語尾の「る」が省かれた短縮形である点に注目。この短縮形の後に
   使われる助動詞は伝聞・推定「なり」と「めり」「らし」の3語であることを知っておきたい。

 問24・断定/なり/終止形
    直前の語は問21と同じくこれも打消の意味を表す助動詞だが、本活用の連体形で
   ある点に注目。打消の助動詞から断定の助動詞につながる場合は、補助活用の連
   体形「ざる」が使われるときと、本活用の連体形「ぬ」が使われるときとがある。漢文訓
   読調の作品では「ざる」が使われ、和文調の作品では「ぬ」が使われる傾向にある。

 問25・伝聞/なり/終止形
    直前の語は問24と同じく打消の意味を表す助動詞の連体形に見えるが、「ぬ」のさ
   らに手前を見るとハ行四段活用動詞の連用形である点に注意。したがってこの「ぬ」
   は完了の助動詞の終止形である。終止形の後に続いて使われる「なり」は断定では
   ないので、答えは伝聞の助動詞だ。

 問26・伝聞/なり/連体形
    直前の語「食ふ」が終止形なら「なり」は伝聞、連体形なら「なり」は断定であるが、
   「食ふ」がハ行四段活用動詞なので外見上は終止形と連体形の区別がつかない。し
   たがって現代語訳をして両者を比較するしかない。問題文は奥山に出没する猫また
   について人々が噂話をしているので、これは伝聞と考えるほうが自然である。

 問27・ラ行下二段活用/なる/連用形
    直前の語「つつ」は助詞である。断定の助動詞「なり」は助詞「ば」「と」の後には使
   われるが、他の助詞の後には使われない。したがってこれは動詞である。後続の語
   は完了の助動詞「ぬ」の連用形なので、「なれ」は問06と同じ下二段活用動詞である。

 問28・断定/なり/連用形
    直前の語は体言。「に」の後に助詞を間に挟んで動詞「あり」または「侍り」がある場
   合の「に」は断定である。また、この場合「に」を「〜で」と訳せる点にも注意。問題文は
   「吉野の桜、左近の桜は、どれもみな一重である。」という現代語訳になる。

 問29・×
    直前の語は打消の助動詞「ず」の連体形なので「に」を断定の助動詞と考えがちだ
   が、「いづれものがれざる」が動詞「似」の目的語となっており、「に」をそのまま「に」と
   訳せる点に注意。断定の助動詞の「なり」の連用形の場合は「で」と訳せる。

 問30・×
    これは「にて」で一語の助詞である。問題文は「『継子立て』というものを双六の石で
   作り出して白黒の石を並べてあるうちは」という現代語訳になる。「にて」を「で」と訳せ
   ること、現代語文の「電車で行く」という場合の「で」と同じく方法や手段を表す働きが
   ある点に注目する。


第19回・助動詞「む」「むず」「じ」

 次の赤文字の語は用言ないし助動詞である。用言の場合は活用種類・基本形・活用形
を、助動詞の場合は意味・基本形・活用形を答えなさい。ただし中級以上の問題は用言で
も助動詞でもないものや赤文字の部分では一語とならないものがあります。それらは「×」
と解答してください。

【初級】
 問01・雨降ら
 問02・「はや、御馬にて二条院へおはしまさ。人さわがしくなり侍らぬ程に。」とて、右近
    をそへて乗すれば、
 問03・我、人を起こさ
 問04・「我こそ得」など言ふ者どもありて、後に争ひたる、さまあし。
 問05・木曾殿の最後の軍に女を具せられたりけりなんど言はれことも、しかるべからず。
 問06・この月の十五日に、かのもとの国より、迎へに人々まうで来むず
 問07・我は討ち死にせんと思ふなり。もし人手にかからば自害をせんずれば、
 問08・かくあやしき物参るやうもあら
 問09・あの国の人をえ戦はぬなり。弓矢して射られ
 問10・勝たんと打つべからず。負けと打つべきなり。


【中級】
 問11・さきざきも申さむと思ひしかども、必ず心惑はし給はものぞと思ひて、今まで過ご
    し侍りつるなり。
 問12・飽かず惜しと思はば、千年を過ぐすとも、一夜の心地こそせ
 問13・身を助けとすれば、恥をも顧みず、財をも捨てて逃げ去るぞかし。
 問14・男もすなる日記といふものを、女もしてみとてするなり。
 問15・ひとり歩か身は心すべきこそと思ひけるころしも、
 問16・「後は誰に」と心ざす物あらば、生けらうちにぞ譲るべき。
 問17・翁の申さむ事は聞き給ひてや。
 問18・いますかりつる心ざしもを思ひも知らで、まかりなむずる事の口惜しう侍りけり。
 問19・さてはもののあはれは知り給は
 問20・京にはあら、あづまの方に住むべき国求めにとて行きけり。


【上級】
 問21・さらず罷りぬべければ、思し嘆かが悲しきことを、この春より思ひ嘆き侍るなり。
 問22・たとひ耳鼻こそ切れ失すとも、命ばかりはなどか生きざら
 問23・ただ物をのみ見とするなるべし。
 問24・あまりに興あらとする事は、必ずあいなきものなり。
 問25・思ひ出でて偲ぶ人あらほどこそあらめ、そもほどなく失せて、
 問26・植ゑずともありな
 問27・馬など迎へおこせたらんに、桃尻にて落ちなは、心憂かるべし。
 問28・惟光、とく参らなと思す。
 問29・さる所へ罷らむずるも、いみじくも侍らず。
 問30・道心あらば住む所しもよら


【解答・解説】

 問01・推量/む/終止形
    助動詞「む」「むず」は推量・意志・勧誘・適当・仮定・婉曲と、数多くの意味があるが、
   主語が一人称の場合は意志、二人称は勧誘ないし適当、三人称なら推量になるのが
   原則。ただ例外が多いので、原則に従った結果不自然な現代語訳になった場合は他
   のものを考える。どのように現代語訳しても不自然なものは婉曲。その場合は助動詞
   を特に訳さない。問題文は主語が雨なので三人称。現代語訳は「雨が降るだろう」とな
   るから、原則どおり推量でよい。

 問02・勧誘/む/終止形
    これは話し手が聞き手に対して「早く御馬で二条院にお帰りなさいませ」と帰院を勧
   める現代語訳になるので勧誘である。行為の主語は聞き手つまり二人称である。

 問03・意志/む/終止形
    主語が「我」と明記されているのでこれは意志である。現代語訳は「私が人を起こそ
   う。」となる。

 問04・意志/む/已然形
    問03と同じく主語は一人称である。活用形は係助詞「こそ」の結びで已然形だ。
 問05・婉曲/む/連体形
    主語は不特定多数の人々なので三人称だが、推量で現代語訳をすると「『木曾殿は
   最後の戦いに女を連れ添っていらっしゃった』などと言われるだろうことも好ましくない
   だろう」となり、日本語として不自然なものになってしまう。こういう場合は「む」を婉曲と
   考えて無理に訳さない方がよい。したがって現代語訳は「『木曾殿は最後の戦いに女
   を連れ添っていらっしゃった』などと言われるのも好ましくないだろう」となる。なお、鎌
   倉時代以後の作品では「む」は「ん」、「むず」は「んず」と表記される。発音だけでなく
   仮名として「ん」が使われ始めたためである。しかし、基本形はあくまでも「む」「むず」
   である。

 問06・推量/むず/終止形
    直前の語はカ行変格活用動詞「来」の未然形なので「こ」と発音する。主語は「かの
   もとの国の人々」なので三人称。したがって推量でよい。現代語訳は「今月の15日に
   はあの元の月の都から人々が迎えにやってくるだろう」となる。

 問07・意志/むず/已然形
    直前の一文「我は討ち死にせんと思ふなり」で主語が「我」となっているので、この文
   も一人称である。現代語訳は「私は討ち死にをしようと思うのだ。もし人の手に捕まっ
   たら自殺をしようと思うので」となる。表記は「んずれ」となっているが、事情は問05で
   説明したとおりである。

 問08・打消推量/じ/終止形
    「む」の逆の意味が「じ」である。すなわち「推量」に対して「打消推量」、「意志」に対し
   て「打消意志」、「適当」に対して「不適当」の意味、それが助動詞「じ」の用法である。
   そして主語が一人称なら「打消意志」、二人称なら「不適当」、三人称なら「打消推量」
   の意味になるという原則も「む」「むず」と同じである。但し「勧誘」「仮定」「婉曲」の打消
   は「じ」には存在しない。問題文の現代語訳は「こんな粗末な食べ物を差し上げるのは
   良くない」となる。したがって「じ」は不適当である。

 問09・打消推量/じ/終止形
    直前の語は可能の意味を表す助動詞「らる」の未然形。主語はかぐや姫の昇天を阻
   止しようとする人々であるので三人称。現代語訳は「あの国の人と戦うことはできない
   のである。弓矢で闘おうとしても射て(相手に命中させる)ことはできないだろう」となる
   ので「むず」は打消推量となる。

 問10・打消意志/じ/終止形
    主語は一人称ではないが、これは双六に勝つにはどうすべきかという方法を説いて
   いる場面。現代語訳は「勝とうとしてを打ってはならない。負けまいとして打つのが良い」
   となるので打消意志である。

 問11・推量/む/連体形
    問題文は『竹取物語』の一節でかぐや姫が翁に話す場面。主語は聞き手なので二人
   称だが、翁の行動をかぐや姫が推し量っているので、ここは勧誘・適当ではなく推量で
   ある。現代語訳は「前々から申し上げようと思ったが、(本当のことを)話せば(翁は)き
   っとお心を惑わしなさるだろうと思って今まで(話さずに)過ごしてきたのです」となる。

 問12・推量/む/已然形
    主語は三人称。「もし(これほど長い人間の寿命を)不足に感じて惜しいと思うのなら
   ば、たとえ千年を過ごしても一晩の夢のような気持がすることだろう。」となる。したがっ
   て推量でよい。活用形は係助詞「こそ」の結びで已然形だ。

 問13・意志/む/終止形
    主語は一人称ではないが、現代語訳は「わが身を助けようとすれば恥をも顧みずに
   財産を捨てて逃げ去るものなのである」となる。活用形は後続の語が引用を表す格助
   詞「と」のため、「身を助けん」までが一文となり、終止形となる。

 問14・意志/む/終止形
    『土佐日記』の冒頭の一文。主語は作者自身なので一人称である。現代語訳は「男
   の人が書くとかいう日記というものを、女の私も書いてみようと思って書くのである」と
   なる。したがって意志である。活用形は問13と同じく後続の語が引用を表す格助詞
   「と」のため、「男もすなる日記といふものを、女もしてみむ」までが一文となり、終止形
   となる。

 問15・婉曲/む/連体形
    主語は一人称だが、意志に訳すと不自然なものになる。結局どう訳しても日本語と
   して不自然なものにしかならないので、婉曲となる。現代語訳は特に「ん」を訳さず、
   「一人歩きをする我が身は注意しなければならないと思っていた、ちょうどその頃」と
   なる。

 問16・婉曲/む/連体形
    主語は三人称だが、推量に訳すと不自然なものになる。これもどう訳しても日本語
   として自然にならないので、婉曲となる。現代語訳は特に「ん」を訳さない。「『自分の
   死後はこの人にあげよう』と決めている物があるのならば、生きているうちに譲って
   おくのがよい」となる。

 問17・推量/む/終止形
    現代語訳は「私の申し上げることはきっと聞いてくださるでしょうね」となる。竹取の
   翁がかぐや姫に対して自分の話を聞く意志の有無を確認する質問である。したがっ
   て主語は二人称であるが、推量となる。原則どおり適当にすると「きっと聞いてくださ
   るのがよい」となってしまい日本語として不自然だ。

 問18・婉曲/むず/連体形
    現代語訳は「今まで育ててくださった愛情をわきまえず、この国を去って行くことが
   残念でございます」となる。「去って行こうとすることが残念でございます」と訳し、「む
   ずる」を意志とする解釈も成立するがあまり好ましくない。理由はかぐや姫が月の都
   に帰るのは姫自身の積極的な意志ではなく天の人からの命令でるからである。正
   確には「去っていかなければならないことが残念でございます」というニュアンスにな
   る点に注意したい。

 問19・打消推量/じ/終止形
    現代語訳は「それではあなたは物事の情趣はおわかりにならないだろう」となる。主
   語は二人称だが、相手の心の状態を推し量っている表現なので打消推量である。原
   則どおり不適当にすると「それではあなたは物事の情趣はおわかりになるのはよ
   くない」となり、日本語として不自然だ。

 問20・打消意志/じ/終止形
    現代語訳は「京都には住むまい。関東の方に安住できる地を探そうと思って出かけ
   て行った」となる。したがって主語は一人称であり「じ」は打消意志になる。なお、後続
   の語は句点ではなく読点であるが、事実上ここで文が切れていると考える。つまり連
   用形の直後に使われる読点とは働きが違う。また助動詞「じ」には連用形がないこと
   も知っておきたい。

 問21・婉曲/む/連体形
    現代語訳は「どうしても月の都に去らなければならないので、(それを知った)ご両親
   様がお思い嘆きになるのが悲しくて、それを今年の春から私も思い嘆いているのです」
   となる。 かぐや姫が竹取の翁の思惑を予測している部分ではあるが、「お思い嘆きに
   なるだろうことが悲しくて」と訳すとかえって不自然になってしまう。したがって「む」を推
   量として無理に訳すのは感心しない。

 問22・推量/む/連体形
    現代語訳は「たとえ耳と鼻がちぎれてなくなったとしても、どうして命までもが助から
   ないことがあろうか。いや、助からないことはない」となる。したがってこれは推量でよ
   い。ちなみに係助詞「か」があるので活用形は連体形となる。現代語訳をする際は「か」
   を反語にして訳す。

 問23・意志/む/終止形
    現代語訳は「ただ祭りの行列そのものだけを見ようとするのであろう」となる。したが
   って主語は見物客で三人称ではあるが、これは見物人の意志と解釈しないとまずい。
   推量にすると「ただ祭りの行列そのものだけを見るだろうとするのであろう」となってし
   まい、妙な日本語になる。

 問24・意志/む/終止形
    現代語訳は「あまりにもおもしろくしようとして趣向を凝らすと、必ずつまらない結果
   に終わるものである」となる。主語は一般的な意味での「人」だが、これは意志である。
   三人称だからといって推量にすると「あまりにもおもしろくしようとして趣向を凝らすと、
   必ずつまらない結果に終わるものである」という現代語訳になり、やはり不自然だ。

 問25・伝聞/なり/終止形
    現代語訳は「故人のことを思い出して偲ぶ人が生きている間はよいが、その人も間
   もなく死んで」となる。したがってこれは意志・適当・推量のいずれにも訳せないので婉
   曲である。これを主語が三人称だからといって「偲ぶ人が生きているだろう間はよいが」
   などと訳すとかえって不自然になる。

 問26・推量/む/終止形
    直訳すると「植えなくてもあるだろう」だが、意訳すると「植えなくても良いだろう」となる。
   いずれにしても助動詞「む」の部分を「だろう」と訳すので推量である。

 問27・仮定/む/連体形
    現代語訳は「馬などを迎えに寄越した時に、もし尻が座らなくて馬から落ちたらおもし
   ろくないだろう」となる。「もし・・・たら」「もし・・・なら」と訳すことができる場合の助動詞
   「む」「むず」は仮定である。

 問28・×
    前の「参ら」が活用語の連用形ではなく未然形である点に注意。したがって「な」は強
   意の働きをする助動詞ではない。これは「なん」一語で助詞である。活用語の未然形の
   後に続いて使われ、希望の意味を表す。問題文の現代語訳は「『惟光が早く参上して
   欲しい』とお思いになる」となる。

 問29・婉曲/む/連体形
    現代語訳は「月の都に去るのも少しも嬉しくはございません」となる。ここも問18と同
   様に、かぐや姫の意志に解釈しないほうが良い。

 問30・打消推量/じ/終止形
    現代語訳は「仏道に志す意志があるならば(どこででも修行できるから)住む場所な
   ど関係ないだろう」となる。主語は一般的な意味での「人」であるから三人称だ。


第20回・助動詞「べし」「まじ」

 次の赤文字の語は用言ないし助動詞である。用言の場合は活用種類・基本形・活用形
を、助動詞の場合は意味・基本形・活用形を答えなさい。ただし中級以上の問題は用言で
も助動詞でもないものや赤文字の部分では一語とならないものがあります。それらは「×」
と解答してください。

【初級】
 問01・右近は物も覚えず、君につと添ひたてまつりて、わななき死ぬべし。
 問02・黒き雲にはかに出で来ぬ。風吹きぬべし。御船返してむ。
 問03・毎度、ただ得失なく、この一矢に定むべしと思へ。
 問04・京にはあらじ、あづまの方に住むべき国求めにとて行きけり。
 問05・家の造りやうは夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる。
 問06・住む館より出でて、船に乗るべきところへ渡る。
 問07・冬枯れのけしきこそ、秋にはをさをさ劣るまじけれ
 問08・そしるとも苦しまじ。誉むとも聞き入れじ。
 問09・さらにえ行き着くまじき心地なんする。
 問10・妻といふものこそ、男の持つまじきものなれ。


【中級】
 問11・年々の春の草のみぞ、心あらん人はあはれと見るべきを、
 問12・我は皇子に負けべし。
 問13・長くとも四十に足らぬほどにて死なんこそ、めやすかるべけれ
 問14・殊に人多く立ちこみて、分け入りぬべきやうもなし。
 問15・「後は誰に」と心ざす物あらば、生けらんうちにぞ譲るべき
 問16・死骸は気疎き山の中にをさめて、さるべき日ばかり詣でつつ見れば、 
 問17・ひとり歩かん身は心すべきこそと思ひけるころしも、
 問18・後世を思はん者は、糂汰瓶一つも持つまじきことなり。
 問19・人はただ無常の身に迫りぬることをひしと心がけて、束の間も忘るまじきなり。
 問20・唐のものは、薬の外はなくとも事欠くまじ


【上級】
 問21・もとの住家に帰りてぞ、さらに悲しきことは多かるべき。
 問22・恐れのなかに恐れべかりけるは、ただ地震なりけりとこそ覚えしか。
 問23・羽なければ空をも飛ぶべからず。
 問24・みな聞きて侍り。尚侍になるべかなり。
 問25・女は髪のめでたからんこそ、人の目立つべかめれ。
 問26・右近も動くべきさまにもあらねば、近き御几帳を引き寄せて、「なほもて参れ」との
     たまふ。
 問27・殊更に人来まじき隠れ家、求めたるなり。
 問28・そのほど過ぎぬれば、かたちを恥づる心もなく、人に出でまじらはん事を思ひ、
 問29・参り来て見出し立てんとするを、寄せ給ふまじかなれば、いかがすべからん。
 問30・この人をえ抱き給ふまじければ、上蓆におしくくみて惟光乗せたてまつる。


【解答・解説】

 問01・ナ行変格活用/死ぬ/終止形
    助動詞「べし」は用言・助動詞の終止形の後に続いて使われる。
 問02・推量/べし/終止形
    助動詞「む」と同様に主語が一人称の場合は意志、二人称の場合は適当・勧誘、三
   人称の場合は推量となるのが原則。問題文は主語が風なので三人称。したがって推
   量となる。なお、「べし」の直前に強意の助動詞「ぬ」がある。したがって極めて確信を
   もった推量になり、「黒い雲が急に出てきてしまった。きっと風が吹くに違いない。船を
   岸に戻そう。」という現代語訳になる。

 問03・意志/べし/終止形
    これは弓道の上達方法を説いている場面。現代語訳は「毎回弓を射るたびに当て
   損なうことなく、この1本の矢で必ず的に命中させようと思え。」となる。したがって、主
   語は一人称ではないが意志と解釈するのが良い。

 問04・可能/べし/連体形
    主語は一人称になるが、「京都に住むのはよそう。関東の方に住もう場所を探すとい
   って行った。」では日本語として不自然だ。このように主語が一人称だからといって原
   則どおり意志と解釈したのでは不自然な場合は、他の意味で使われているものと考え
   る。この場合は「京都に住むのはよそう。関東の方に住むことができる場所を探すとい
   って行った。」と訳すのが妥当。したがって「べき」は可能である。

 問05・適当/べし/終止形
    これは作者が読者に対して家の建築のあり方について説いた文である。現代語訳は
   「家の作り方は夏に適することを主とするのが良い。冬はどんな場所でも住むことがで
   きる。」となるので「べし」は適当の意味で使われていることになる。

 問06・当然/べし/連体形
    これも主語は一人称だが「住んでいた官舎を出て、船に乗ろう場所に移動する。」と
   訳すと日本語として不自然。したがって他の意味で使われていると考える。これは意訳
   すると「船に乗ることになっている場所に移動する」→「船の乗り場に移動する」となる
   ので、「べし」は当然の意味で使われていることになる。直訳すると「船に乗るはずの場
   所」となる。

 問07・打消推量/まじ/已然形
    「まじ」も「じ」と同じく主語が一人称なら打消意志、二人称なら不適当、三人称なら打
   消推量となるのが原則。この文は主語が「冬枯れのけしき」なので三人称。したがって
   打消推量でよい。現代語訳は「冬枯れの草木の風情は秋の草木の趣よりも決して劣ら
   ないだろう。」となる。

 問08・打消意志/まじ/終止形
    現代語訳は「他人が悪口を言っても苦にはするまい。逆に褒めてもその言葉を耳に
   留めまい。」となるので、作者自身の意志になる。

 問09・不可能/まじ/連体形
    動詞「行き着く」の直前に陳述の副詞「え」がある点に注目。これがある場合は後の
   打消の意味わ表す語と呼応して主語の人称とは関係なく不可能の意味を表す。現代
   語訳は「到底たどり着くことができそうにない気持ちがする。」となる。

 問10・禁止/まじ/終止形
    主語は一般的な意味での「人」なので三人称だが、打消推量と解釈すると「妻という
   ものだけは男が持たないだろうものである。」という現代語訳になってしまい日本語と
   して不自然。こういう場合は他の意味で使われていることを考える。ここは禁止が妥
   当。現代語訳は「妻というものだけは男が持ってはならないものである。」となる。

 問11・マ行上一段活用/見る/終止形
    問01と同じ。「見る」は終止形・連体形が同じだが、これは終止形である。
 問12・強意/ぬ/終止形
    助動詞「べし」は終止形の後に続いて使われるから直前の「ぬ」も終止形である。し
   たがって打消の助動詞ではなく強意の助動詞である。なお、この「ぬ」は完了と全く同
   じ活用をするが、意味は完了ではない。下の「べし」の意味を強調する働きをもつ。現
   代語訳も「私は皇子にきっと負けるに違いない。」となる。

 問13・推量/べし/終止形
    主語は一般的な意味での「人」であるから三人称。したがって推量と考えて問題なく
   訳せる場合は推量で良い。現代語訳は「長く生きるとしても40歳に満たないうちに死
   ぬのが見苦しくないだろう。」となる。

 問14・可能/べし/連体形
    主語は作者だから一人称だが、意志と解釈すると「特に大勢の人が立ち見して混ん
   でおり私たちがその中に分け入ろうもない。」という現代語訳になってしまい日本語と
   して不自然。したがって他の意味を考える。ここは「私たちがその中に分け入ることが
   できそうにない。」と訳すのが無難。したがって「べき」は可能となる。

 問15・適当/べし/連体形
    主語は一般的な意味での「人」であるから三人称だが、推量と考えると「『自分の死
   後はこの人にあげよう。』と決めている品物があるならば、自分が生きている間にその
   人に譲るだろう。」では不自然だ。したがってここも他の意味を考える。「自分が生きて
   いる間にその人に譲るのが良い。」と、ある行為を人に勧める表現に訳すのが妥当。
   したがって「べき」は適当になる。

 問16・当然/べし/連体形
    まず「さるべき日」とはどんな日かを考える。前に「骸は・・・・・・をさめて」とあり、後に
   「詣でつつ」とあるからこれは墓参りをする日ということがわかるはず。したがって主語
   が三人称なら「墓参りをするだろう日」となるが、これでは不自然。ここは「墓参りをす
   るはずの日」ということで当然の意味で使われている文である。問06でもそうだが、
   「〜することになっている」と訳せる場合は「べし」が当然の意味で使われていると考
   える癖をつけたほうが良い。

 問17・義務/べし/連体形
    現代語訳は「『一人で歩くことが多い我が身には注意しなければならない。』と思った
   ちょうどその頃」となる。したがって義務の意味で使われていることがわかる。なお、主
   語は一人称なので意志としても問題はない。その場合は「『一人で歩くことが多い我が
   身には注意しよう。』と思ったちょうどその頃」となる。

 問18・禁止/まじ/連体形
    主語は一般的な意味での「人」なので三人称だが、打消推量と考えると「来世での極
   楽往生を願う者は糠味噌の瓶一つも持たないだろうである。」となり、日本語として不自
   然だ。したがって他の意味を考える。ここは「糠味噌の瓶一つも持ってはならないので
   ある。」と訳すのが無難。「まじ」は禁止と解釈する。

 問19・禁止/まじ/連体形
    主語は一般的な意味での「人」なので三人称だが、打消推量と考えると「人間という
   ものはひたすら我が身に死が迫ってしまうことを心にしっかり留めて、そのことをわずか
   の間も忘れてはならないだろう。」となり不自然だ。したがって他の意味を考える。ここ
   は「わずかの間も忘れてはならないのである。」と訳すのが無難。「まじ」は問18と同じ
   く禁止と解釈する。

 問20・打消推量/まじ/終止形
    主語は一般的な意味での「人」なので三人称。打消推量と考えて現代語訳をすると
   「中国からの渡来品は薬以外はなくても不自由はしないだろう。」となる。これで不自
   然な日本語ではないので、打消推量で良い。

 問21・ク活用/多し/連体形
    助動詞「べし」は用言・助動詞の終止形の後に続いて使われるが、ラ変型活用語の
   場合は連体形の後に使われるという特例がある。形容詞から助動詞へつながる場合
   は補助活用が使われるが、これはラ変型の活用パターンなので連体形「多かる」から
   「べし」につながることになる。

 問22・義務/べし/連用形
    主語は一般的な意味での「人」だが、推量と考えると「恐ろしいものの中でも最も恐
   れるだろうものは地震だなあ。」となり、不自然な日本語になってしまう。したがって他
   の意味を考える。ここは「最も恐れなければならないものは地震だなあ。」と訳すのが
   妥当。したがって義務の意味で使われていることになる。

 問23・可能/べし/未然形
    現代語訳は「羽がないので空を飛ぶことができない。」となる。この文だけでは「べか
   ら」を適当・推量・意志のいずれにも解釈できそうだが、実際の古文読解では問題文全
   体を読んでいく中で最も適切な訳を選択することが肝要である。

 問24・当然/べし/連体形
    「べかなり」とは助動詞「べし」の連体形「べかる」の「る」が省かれたまま伝聞・推定の
   助動詞「なり」に接続したものである。後続の助動詞が「めり」「らし」「なり」(伝聞・推定)
   の3語の場合は直前のラ変型活用語の連体形活用語尾「る」が省かれて、いわゆる短
   縮形となる。 なお、問題文の現代語訳は「私はみんな聞いています。尚侍(内侍の司の
   長官である女官)になるはずだそうです」となるので、「べか」は当然となる。

 問25・推量/べし/連体形
    問24と同じ理由で「べし」の連体形活用語尾「る」が省かれたもの。現代語訳は「女性
   は髪が立派なのが最も他人の目を惹きつけるようだ。」となる。主語は「女」なので三人
   称。したがって「べか」は推量だが、無理に「惹きつけるのだろうようだ」としたら不自然
   なので訳出しない方が良い。

 問26・可能/べし/連体形
    「べき」の後に断定の助動詞「なり」の連体形「に」・ラ変動詞「あり」の未然形・打消の
   助動詞の3語が続いている場合は、不可能の断定になる。現代語訳は「右近も動くこと
   ができる様子ではないので、近くにあった御几帳を手元に引き寄せて『もっとこっちに持
   って参上しろ。』とおっしゃった。」

 問27・打消推量/まじ/連体形
    主語は一般的な意味での「人」なので三人称。したがって打消推量で良い。現代語訳
   は「特に人がやって来そうにない隠れ家を探したのだ」となる。

 問28・×
    直前の語がダ行下二段活用動詞「出づ」の連用形である点に注目。助動詞「まじ」は
   終止形の後に続いて使われるので、問題文の「まじ」は助動詞ではないことがわかる。
   これは「まじら」で一語。基本形は「まじる」でラ行四段活用動詞である。

 問29・打消当然/まじ/連体形
    問24と同じく後に伝聞・推定の助動詞「なり」が続いている。この場合はラ変型活用
   語の特例が適用され、連体形「まじかる」の後に使われるのだが、さらに連体形活用
   語尾の「る」が省かれて短縮形となる。現代語訳は「あなたのもとに参上して我が子の
   支度をして送り出したいが、私を立ち寄らせてくださるはずがないようなので、どうした
   らよいだろう。」となる。

 問30・不可能/まじ/已然形
    問09と同じく動詞「抱き」の直前に陳述の副詞「え」がある。したがって「まじけれ」は
   不可能となる。現代語訳は「この(死んでしまった)人をお抱きになることができそうに
   ないので、上敷の御座に押し包んで惟光が車にお乗せ申し上げる。」となる。