こてんこてん蔵庫5(その1)             戻る

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第1回・歴史的仮名遣いの発音

 次の赤文字の単語あるいは語句を発音した場合の音をカタカナで記しなさい。なお、( )
はその漢字のふりがなを歴史的仮名遣いで記したものである。

【初級】
 問01・衰へたる末の世とはいへど、
 問02・人みな病(やまひ)あり。
 問03・老い来たりて、はじめて行ぜんと待つことなかれ。
 問04・何事も古き世のみぞ慕はしき
 問05・童(わらは)の法師にならんとする名残とて、
 問06・住み果(は)てぬ世に醜き姿を待ち得て何かはせん。
 問07・命長ければ恥(はぢ)多し。
 問08・水車(みづぐるま)を造らせられけり。
 問09・今は、竹取の翁といふ者ありけり。
 問10・この児、さだめておどろかさむずらむと待ちゐたるに、


【中級】
 問11・植ゑずともありなん。
 問12・幼(をさな)き人は寝入りたまひにけり。
 問13・衣冠より馬・車に至るまで、あるに従ひて用ゐよ
 問14・かぐや姫いといたく泣きたまふ
 問15・いたうこそ困(こう)じにたれ。
 問16・世には心得ぬ事の多(おほ)きなり。
 問17・ただ食ひに食ふ音のしければ、
 問18・つひに木曾殿の首をば取つてんげり
 問19・三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり。
 問20・ありたき事は、まことしき文の道、作文、和歌、管絃(くわんげん)の道。


【上級】
 問21・聖教(しやうげう)のこまやかなる理、いとわきまへずもやと思ひしに、
 問22・有職(いうそく)に公事の方、人の鑑ならんこそいみじけれ。
 問23・松は五葉(ごえふ)もよし。
 問24・八重桜は異様(ことやう)のものなり。
 問25・こは、なでふことのたまふぞ。
 問26・忘れじのゆくすゑまではかたければけふを限りの命ともがな
 問27・暁近くまで待ち出でたるが、いと心深う、青みたるやうにて、
 問28・つくづくと一年を暮らすほどだにも、こよなうのどけしや。
 問29・この女いとよう化粧(けさう)じて、うち眺めて、
 問30・旧主先皇(せんくわう)の政にも従はず、


【解答・解説】

 問01 イエ 語中・語末がハ行の仮名の場合はすべてワ行の発音となる。
 問02 ヤマイ 問01と同じ。
 問03 ハジメテ 単語の最初がハ行の仮名の場合はそのままハ行の発音となる。
 問04 シタワシキ 問01と同じ。
 問05 ワラワ 問01と同じ。
 問06 ハテヌ 複合動詞の場合は複合前、つまり元の動詞と同じ扱いとなるため問03
          のルールを適用する。

 問07 ハジ ダ行の「ぢ」「づ」は語頭・語中に関わらずザ行の「ジ」「ズ」と同じ発音であ
         る。

 問08 ミズグルマ 問07と同じ。
 問09 ムカシ 単語の最初の仮名が「む」の場合はそのまま「む」と発音とする。
 問10 オドロカサンズラン 助動詞の「む」及び、語中・語末の「む」は「ン」と発音する。

 問11 ウエ ワ行の「ゐ」「ゑ」「を」はそれぞれ「イ」「エ」「オ」と発音する。
 問12 オサナキ 問11と同じ。
 問13 モチイヨ 問11と同じ。
 問14 タモー 「ふ」は「ウ」と発音するが、前の「ま」と合わせると「まう」になり母音だけ
          でみると「あう」と連続する。「あう」は「オー」と発音するため、結果として
          「モー」になる。

 問15 コージ 「こう」は母音だけでみると「おう」と連続する。「おう」は「オー」と発音する
          ため、結果として「コー」となる。

 問16 オーキ 「ほ」は「オ」と発音するが、前の「お」と合わせると母音が「おお」と連続
          する。したがって「オー」となる。

 問17 クー 「ふ」は「ウ」と発音するが、前の「く」と合わせると母音は「うう」と連続する。
         したがって「ウー」となる。

 問18 トッテンゲリ 「取って」「行って」などに使われる促音「っ」は古語では「つ」と表記
             されていた。しかし発音は現代と同じく促音となる。

 問19 ウツクシュー 「しう」は母音だけでみると「いう」と連続する。この場合は「ユー」と
              発音するため、結果として「シュー」となる。

 問20 カンゲン 「くわ」は「カ」、「ぐわ」は「ガ」と発音する。

 問21 ショーギョー 連続する母音が「あう」の場合は「オー」、「えう」の場合は「ヨー」と
             発音する。

 問22 ユーソク 問19と同じで「いう」と連続する母音は「ユー」と発音する。
 問23 ゴヨー 「ふ」は「ウ」と発音するがこの結果「えう」と母音が連続するため問21と
          同じく「ヨー」と発音する。

 問24 コトヨー 「やう」は母音だけでみると「あう」と連続している。したがって問14と同
          じく母音の部分は「オー」となる。

 問25 ナジョー 「ふ」は「ウ」と発音するからこの場合「でう」になるが、母音が「えう」と
          連続するため問21と同じく「ヂョー」となる。また、問07に記したとおり「ぢ」
          は「ジ」と発音するから結果として「ジョー」となる。

 問26 キョー 「ふ」は「ウ」と発音するから「けう」になる。母音が「えう」と連続するため
          問21と同じく「ヨー」となる。

 問27 ココロブコー 「深う」は「ふかう」となるが、母音だけでみると「あう」と連続してい
             る。したがって問14と同じく母音の部分は「オー」となる。

 問28 コヨノー 「なう」は母音が「あう」と連続するため問14と同じく母音の部分は「オー」
          となる。

 問29 ケショー 「さう」は母音が「あう」と連続するため問14と同じく母音の部分は「オー」
          となる。

 問30 センコー 「くわ」は問20と同じ。「せんかう」となるが母音が「あう」と連続するため
          問14と同じく母音の部分は「オー」となる。


第2回・文節ごとに区切る

 次の各文を文節ごとに区切りなさい。なお、初級・中級の1〜5は現代文です。

【初級】 
 問01・雨が降る。
 問02・昨日も地震があった。
 問03・病院に診察を受けに行く。
 問04・学校から家に帰る途中で生徒手帳を紛失した。
 問05・やはり私の思ったとおりだ。
 問06・牛を売る者あり。
 問07・道遠く覚ゆ。
 問08・大きなる枝、心なく折り取りぬ。
 問09・人の亡きあとばかり悲しきはなし。
 問10・寺、社などに忍びてこもりたるもをかし。


中級】
 問11・あれ、高橋さん留守かな。なぜだろう。
 問12・「おい!最後までしっかり走れ。」と監督に怒られた。
 問13・ああ今日も遅刻してしまった。
 問14・すぐに謝罪しようとしない態度に誠意のなさを感じる。
 問15・晴れときどき曇りで昼過ぎから所により一時雨か雷雨。
 問16・何事も古き世のみぞ慕はしき。
 問17・冬はいかなる所にも住まる。
 問18・かかることは文にも見えず、伝へたる教へもなし。
 問19・少しのことにも先達はあらまほしき事なり。
 問20・花は盛りに、月はくまなきをのみ見るものかは。


【上級】
 問21・法師ばかり羨ましからぬものはあらじ。
 問22・ありがたき志なりけんかし。
 問23・植ゑずともありなん。
 問24・妻といふものこそ、をのこの持つまじきものなれ。
 問25・冬枯れのけしきこそ、秋にはをさをさ劣るまじけれ。
 問26・この児、さだめておどろかさむずらむと待ちゐたるに、
 問27・こは、なでふことのたまふぞ。
 問28・長くとも四十に足らぬほどにて死なんこそめやすかるべけれ。
 問29・しかじかのことは、あなかしこ、あとのため忌むなる事ぞ。
 問30・さはいへど、そのきはばかりは覚えぬにや。


【解答・解説】

 問01・雨が降る。
     「が」は助詞。助詞は単独で文節を構成しないので「雨」の後では区切ることができ
     ない。

 問02・昨日も地震があった。
     「た」は助動詞。助動詞も単独で文節を構成しないので「あっ」の後では区切ること
     ができない。

 問03・病院に診察を受けに行く。
     問01と同じ。
 問04・学校から家に帰る途中で生徒手帳を紛失した。
     問01問02と同じ。
 問05・やはり私の思ったとおりだ。
     最後の「だ」も助動詞である。
 問06・牛を売るあり。
     「を」以外は全て自立語なので単独で一文節となる。
 問07・道遠く覚ゆ。
     すべて自立語だけで構成されているので3語とも一文節になる。
 問08・大きなる枝、心なく折り取りぬ。
     「折り取り」は複合動詞。こういう場合は一語の動詞として扱う。
 問09・人の亡きあとばかり悲しきはなし。 
     「の」「ばかり」「は」はいずれも助詞。問01と同じ扱いとなる。
 問10・寺、社などに忍びてこもりたるもをかし。
     「など」「に」「て」「も」は助詞、「たる」は助動詞。いずれも付属語なので一文節とは
     ならない。

 問11・あれ、高橋さん留守かな。なぜだろう。
     冒頭の「あれ」は代名詞ではなく感動詞。独立した文節である。
 問12・「おい!最後までしっかり走れ。」と監督に怒られた。
     「走れ」の後にそこまでの会話部分を受ける「と」がある。この場合は「と」までが文
     節となる。

 問13・ああ今日も遅刻してしまった。
     「しまっ」は「閉まる」「締まる」といった動詞ではなく助動詞。
 問14・すぐに謝罪しようとしない態度に誠意のなさを感じる。
     現代語文法では「ない」は助動詞になる。
 問15・晴れときどき曇りで昼過ぎから所により一時雨か雷雨。
     「昼過ぎ」ど複合名詞なので一語として扱う。
 問16・何事も古き世のみぞ慕はしき。
     「のみ」「ぞ」はいずれも助詞。最後の「慕はしき」はこれで一語の形容詞。
 問17・冬はいかなる所にも住まる。
     最後の「る」は助動詞。
 問18・かかることは文にも見えず、伝へたる教へもなし。
     「かかる」は連体詞なので自立語。一文節を構成する。「なし」は形容詞である。
 問19・少しのことにも先達はあらまほしき事なり。
     「まほしき」は助動詞。
 問20・花は盛りに、月はくまなきをのみ見るものかは。
     「ものかは」という一語の助詞もあるが、この文はそれではない。
 問21・法師ばかり羨ましからぬものはあらじ。
     「羨ましから」が形容詞、「ぬ」は助動詞。
 問22・ありがたき志なりけんかし。
     「なり」「けん」は助動詞、「かし」は助詞でいずれも付属語。
 問23・植ゑずともありなん。
     「ず」「な」「ん」はいずれも助動詞。「とも」は助詞。
 問24・妻といふものこそ、をのこの持つまじきものなれ。
     「まじき」「なれ」は助動詞である。
 問25・冬枯れのけしきこそ、秋にはをさをさ劣るまじけれ。
     「をさをさ」は副詞なので自立語。「まじけれ」は助動詞。
 問26・この児、さだめておどろかさむずらむと待ちゐたるに、
     「おどろかさ」までが動詞で「むず」「らむ」は助動詞「と」は助詞。
 問27・こは、なでふことのたまふぞ。
     「なでふ」は連体詞なので自立語。
 問28・長くとも四十に足らぬほどにて死なんこそめやすかるべけれ。
     「ほど」は名詞。最後は「めやすかる」が形容詞で「べけれ」は助動詞。
 問29・しかじかのことは、あなかしこ、あとのため忌むなる事ぞ。
     「あな」は感動詞「かしこ」は形容詞語幹だが、2つで一語と扱っても可。
 問30・さはいへど、そのきはばかりは覚えぬにや。
     「さ」は副詞、「そ」は代名詞でいずれも一語の自立語である。


第3回・品詞分解

 次の各文を品詞分解しなさい。(品詞分解とは単語に区切り、各単語の品詞を答えること。)

【初級】 
 問01・雨、降る。
 問02・春は藤波を見る。
 問03・あるいは大家滅びて、小家となる。
 問04・住む人もこれに同じ。
 問05・寄居は小さき貝を好む。
 問06・今は昔、比叡の山に児ありけり。
 問07・友とするにわろき者、七つあり。
 問08・京に入り立ちて嬉し。
 問09・日暮るるほど、例の集まりぬ。
 問10・かぐや姫に見せたてまつり給へ。


【中級】
 問11・消えずといへども、夕を待つことなし。
 問12・子持ちてこそ、親の志は思ひ知るなれ。
 問13・辻風はつねに吹くものなれど、かかる事やある。
 問14・道知れる人もなくて、惑ひ行きけり。
 問15・かばかりと心得て帰りにけり。
 問16・かねて耳驚かしたる二堂開帳す。 
 問17・男女の情けもひとへに逢ひ見るをば言ふものかは。
 問18・死は前よりしも来たらず。
 問19・いかでこのかぐや姫を得てしがな、見てしがな。
 問20・男もすなる日記といふものを女もしてみむとてするなり。


【上級】
 問21・忘れがく口惜しきこと多かれど、え尽くさず。
 問22・この枝かの枝散りにけり。
 問23・「後は誰に。」と心ざす物あらば、生けらんうちにぞ譲るべき。
 問24・や、な起こしたてまつりそ。
 問25・さのみやはとて、うちいではべりぬるぞ。
 問26・多くの殺してける心ぞかし。
 問27・弓矢して射られじ。
 問28・さるところへまからむずるも、いみじくも侍らず。
 問29・この頃となりてはただ事にも侍らざめり。
 問30・しやせまし、せずやあらましと思ふことは、おほやうはせぬはよきなり。


【解答・解説】

 問01・雨、降る。
     (名) (動)
 問02・春藤波見る。
     (名)(助)(名) (助)(動)
 問03・あるいは大家滅び小家なる。
     (接)   (名) (動)(名) (名) (助) (動)
 問04・住むこれ同じ。
     (動)(名)(助)(代)(助) (形)
 問05・寄居小さき好む。
     (名)(助) (形) (名)(助)(動)
 問06・今昔、比叡ありけり。
     (名)(助)(名)(名) (助)(名)(助)(名)(動)(助動)
 問07・友するわろき者、七つあり。
     (名)(助)(動)(助)(形) (名) (名) (動)
 問08・京入り立ち嬉し。
     (名)(助) (動) (助)(形)
 問09・日暮るるほど、集まりぬ。
     (名)(動)  (助) (名)(助) (動) (助動)
 問10・かぐや姫見せたてまつり給へ。
     (名)   (助)(動)  (動)   (動)

 古典文法の勉強を始めたばかりの方はここまでの問題を正解できればOKです。
用言と付属語を学習した段階で中級以後の問題に進んでください。


 問11・消え ずいへども、待つことなし。
     (動)(助動)(助)(動)(助) (名)(助) (動) (名) (形)

 問12・子持ちこそ、思ひ知るなれ。
     (名)(動)(助)(助) (名)(助)(名)(助) (動)  (助動)

 問13・辻風つねに吹くものなれど、かかるある。
     (名)(助) (副) (動) (名) (助動)(助) (連) (名)(助)(動)
 問14・道知れ る もなくて、惑ひ行きけり。
     (名)(動)(助動)(名)(助)(形) (助) (動) (動)(助動)

 問15・かばかり心得帰りけり。
     (代)(助)(助) (動)(助)(動)(助動)(助動)
 問16・かねて驚かしたる二堂開帳す。
     (副) (名) (動) (助動) (名) (動)
 問17・男女情けひとへに/逢ひ見る言ふものかは。
     (名) (助)(名)(助) (副)    (動)  (助)(助)(名) (動) (助)
 問18・死 前より来たらず。
     (名)(助)(名)(助)(副)(助) (動)(助動)
 問19・いかでかぐや姫得てしがな、しがな。
     (副) (代)(助) (名)  (助)(動) (助)  (動)(助) (助)
 問20・男 も なる日記いふものを、 
     (名)(助)(動)(助動)(名)(助)(動) (名) (助)(名)(助)(動)(助)(動)
     む と てするなり。
     (助動)(助)(助)(動)(助動)
 用言・付属語までの学習をしたばかりの方はここまでの問題を正解できればOK。
すべての品詞について一通り学習した段階で上級の問題に進んでください。


 問21・忘れがたく口惜しきこと多かれど、尽くさず。
       (形)   (形)  (名)  (形) (助)(副) (動) (助動)
 問22・こ の か散りに けり。
     (代)(助)(名)(代)(助)(名)(動)(助動)(助動)
 問23・「後に。」心ざすあらば、生けら ん うち
     (名)(助)(名)(助)(助) (動) (名) (動)(助) (動)(助動)(助動)(名)
     
譲るべき。
     (助)(助)(動)(助動)
 問24・や、起こしたてまつりそ。
     (感)(副) (動)  (動)  (助)
 問25・さのみやはて、うちいではべりぬるぞ。
     (副)(助)(助)(助)(助)  (動)   (動)(助動)(助)
 問26・多く殺して ける かし。
     (形)(助)(名)(動)(助動)(助動)(名)(助)(助)
 問27・弓矢してられじ。
     (名) (助)(動)(助動)(助動)
 問28・さるところまからむずるも、いみじく侍らず。
     (連)(名) (助) (動) (助動)(助)  (形) (助) (動)(助動)
 問29・こ の 頃 なりは、ただ事侍らめり。
     (代)(助)(名) (助)(動)(助)(助) (名) (助動)(助)(動)(助動)(助動)
 問30・し  や せまし、せ  や あら まし思ふこと 
     (動)(助)(動) (助動)(動)(助動)(助) (動) (助動)(助)(動) (名) 
     は、おほやう せ ぬよきなり。
     (助)  (副)  (助)(動)(助動)(助)(形)(助動)


第4回・用言の種類と活用形の判別

 次の赤文字の単語は用言である。動詞・形容詞・形容動詞のいずれかを判別し、後に続
いている語句を参考にして活用形を答えなさい。但し、上級の問題は用言ではない語も混
じっている。その場合は×と答えなさい。

【初級】 
 問01・日を望めば都遠し
 問02・天気のことにつけつつ祈る
 問03・かへすがへすもすさまじと言ふは愚かなり
 問04・或は家を忘れて山に住む
 問05・秋刈り冬収むるぞめきはなし
 問06・「我こそ死なめ」とて泣きののしること、いと堪へ難げなり
 問07・歩くかと見れば、すなはち倒れ伏しぬ。
 問08・めでたき事を見聞くには、まづただ出で来にぞ出で来る。
 問09・ただ静かなるを望みとし、愁へなきを楽しみとす。
 問10・あやしがりて見るに、鉢の中に文あり


【中級】
 問11・果ては、大きなる枝、心なく折り取りぬ。
 問12・いますかりつる志どもを思ひも知らで罷りなむずる事の口惜しう侍りけり。
 問13・恋しからむ折々、取り出でて見たまへ。
 問14・月明ければ、いとよく有様見ゆ。
 問15・とかく遊ぶやうにて明けにけり。
 問16・嵯峨の天皇の御時、都と定まりにけるにより後、すでに四百余歳をたり。
 問17・いとあはれなることも侍りき。
 問18・すなはちは、人みなあぢきなきことを述べて、
 問19・まのあたり珍しかなりし事なり。
 問20・あまりさへ疫癘うちそひて、勝様に跡かたなし。


【上級】
 問21・世の中の絶えて桜のなかりば春の心はのどけからまし
 問22・いとはつらく見ゆれど、こころざしはむとす。
 問23・大家滅びて小家となる
 問24・京なる医師のがり率て行きける道すがら、人の怪しみ見ること限りなし。
 問25・昔あり家は稀なり。
 問26・よろしき姿たる者、ひたすらに家ごとに乞ひ歩く。
 問27・急ぎもせぬほどに、月出でぬ。
 問28・ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。
 問29・いといみじうめでたしとぞ見えたまふ。
 問30・駿河国になる山の頂に持てつくべきよし仰せ給ふ。


【解答・解説】

 問01・形容詞  /終止形
     「遠し」は現代語の「遠い」になる。現代語で「い」で言い切る単語は形容詞。古語
    の形容詞は「し」で言い切る。

 問02・動詞   /終止形
     「祈る」は最後の字が「る」→すなわち五十音図の「ウ」の音である。「ウ」の音で言
    い切る単語は動詞。

 問03・形容動詞/終止形
     「愚かなり」は現代語の「愚かだ」である。現代語で「〜だ」で言い切る単語は形容
    動詞。古語は「〜なり」「〜たり」のいずれかで言い切る。

 問04・動詞   /終止形
     問04と同様に五十音図の「ウ」の音で言い切る単語である。
 問05・形容詞  /終止形
     「有り」は動詞であるが、その対義語である「なし」は形容詞である点に注意。
 問06・形容動詞/終止形
     「〜げだ」という言葉は現代でも数多くあるが、これらは古語では「〜げなり」という
    形で言い切る形容動詞である。問01からここまではすべて後続の単語がなく句点
    「。」で文を言い終えているため、用言の活用形は終止形となる。

 問07・動詞   /已然形
     言い切るときの形は「見る」。したがって問02と同じ理由で動詞である。助詞「ば」
    に続く形はほとんどが已然形である。

 問08・形容詞  /連体形
     現代語では「めでたい」にあたる語。したがって問01と同じ理由で形容詞。後続の
    語は名詞「こと」なので連体形。

 問09・形容動詞/連体形
     現代語では「静かだ」となる。したがって問03と同じ理由で形容動詞。後続の語は
    「を」だが、その前に名詞「こと」が省かれた形である。したがって連体形となる。

 問10・動詞   /終止形
     動詞は普通五十音図の「ウ」の音で言い切るが、「あり」など一部の語だけは「り」
    で言い切るという例外がある。


 古典文法の勉強を始めたばかりの方はここまでの問題を正解できればOKです。用言を
学習した段階で中級以後の問題に進んでください。

    
 問11・形容動詞/連体形
     後続の語は「枝」、つまり名詞なので連体形。なお現代語の「大きい」は形容詞だ
    が、古語では形容動詞である。現代語で「い」で言い切る単語は形容詞だが、これ
    だけは例外なので注意。

 問12・動詞/連用形
     問10と同じく例外的に「り」で言い切る動詞。終止形と連用形が同じ形で外見上の
    区別はつかない。この場合は後続の語があれば連用形と考えること。

 問13・形容詞/未然形
     現代語では「恋しい」というので形容詞。助動詞「む」につながる場合は未然形で
    ある。

 問14・形容詞/已然形
     現代語の「明るい」に相当する語なので形容詞。活用形は問07と同じ理由で已
    然形。

 問15・動詞/連用形
     現代語の「明ける」に相当する語で動詞である。したがって、問14とは別の語で
     ある。このような例は他にも動詞「悲しむ」と形容詞「悲し」などがある。

 問16・動詞/連用形
     現代語では「経る」。助動詞「たり」につながる場合は連用形。
 問17・形容動詞/連体形
     現代語の「哀れだ」にあたる。後続の語は「こと」という名詞なので連体形。
 問18・形容詞/連体形
     現代語にはない言葉であるが、「〜なき」という形は「〜なし」を言い切りの形とす
    る形容詞と考える。他にも「甲斐なし」「心なし」「おぼつかなし」など数多くある。活
    用形は問17と同じ理由で連体形。

 問19・形容動詞/連用形
     現代語の「珍しい」は古語では「珍し」だが、それとは別に「珍らかなり」という基本
    形をもつ語がある。

 問20・形容動詞/連用形
     現代語にはない語だが「〜に」という形で後続の用言につながる場合はナリ活用
    の形容動詞と考える。基本形は「勝様なり」だ。


 ここから先はさらに難しい問題です。助詞・助動詞まで一通り学習した段階で挑戦して下
さい。

 
 問21・×
 問22・動詞/未然形
     問21・問22とも同じ「せ」だが、「する」という意味を持つ語が動詞、そうでないも
    のが助動詞である。問21は過去の助動詞「き」の未然形で、「〜た」と訳す。

 問23・動詞/終止形
 問24・×
     問23・問24とも同じ「なる」だが、「〜となる」「〜になる」という意味を持つ語が動
    詞、そうでないものが助動詞である。問24は存在の助動詞「なり」の連体形で、「〜
    にある」と訳す。
  
 問25・×
 問26・動詞/連用形
 問27・×
     問25〜問27とも同じ「し」だが、問22と同じく「する」という意味を持つ語が動詞で
    ある。問25は過去の助動詞「き」の連体形で、「〜た」と訳す。問27は強調するため
    に添えられた副助詞。これがなくても不自然な感じもなく文として成立する点に注目。
 
 問28・×
     これは動詞の連用形から転じて名詞化された語である。現代語でも「詰まっていた
    パイプに水が流れ、きれいになった。」という場合の「流れ」は動詞だが、「作業の流
    れが悪すぎる」という場合の「流れ」は名詞である。問28は後者と同じもので「絶えず
    して」の述語に対する主語になっている。

 問29・形容詞/連用形
     現代語には存在しないが「いみじ」という基本形の形容詞がある。「いみじう」は本来
    「いみじく」となるものだが、「く」がウ音便化したものである。

 問30・動詞/連体形
     これはもともと動詞「あり」の連体形「ある」である。それが伝聞の助動詞「なり」につ
    ながることで短縮形化され、「る」が消失したものである。


第5回・四段活用動詞

 次の赤文字の語は動詞である。活用種類・基本形・活用形を答えなさい。

【初級】 
 問01・男はうけきらはず呼び集へて、いとかしこく遊ぶ
 問02・大家滅びて小家となる
 問03・夜もすがら雨やまず。
 問04・大津より浦戸をして漕ぎ出づ。
 問05・しばしと惜しむ心やあらむ。
 問06・ただ月を見てぞ、西東をば知りける。
 問07・磯に下り居て別れがたきことを言ふ
 問08・ある人の詠める歌、
 問09・風吹けばえ出で立たず。
 問10・おのれは疾う疾う女なれば、いづちへも行け


【中級】
 問11・潮満ちぬ。風吹きぬべし。
 問12・今日は都のみぞ思ひやらるる。
 問13・恋しからむ折々、取り出でて見たまへ
 問14・下りし時の人の数足らねば、
 問15・打ち割らんとすれどたやすく割れず。
 問16・くもれる雲なくなりて暁月夜いとおもしろければ、船を出だして漕ぎゆく。
 問17・上中下酔ひ飽きて、いとあやしく潮海のほとりにてあざりあへり。
 問18・今一度起こせかしと思ひ寝に聞けば、
 問19・一度にいらへむも待ちけるかともぞ思ふとて、
 問20・ただ逃げ出でたるを事にして、向かひの面に立てり。


【上級】
 問21・かれこれ、知る知らぬ、送りす。
 問22・「同じう死ぬとも大勢の中にてこそ討ち死にをもせめ」とて、真っ先にぞ進んだる。
 問23・女は船底に頭をつきあてて、音をのみぞ泣く
 問24・甲斐の一条次郎の御手とこそ承り候へ
 問25・三浦の石田次郎為久おつかかつて、よつ引いてひやうふつと射る。
 問26・ただ「射取れや」とて中に取りこめ、雨の降るやうに射けれども、
 問27・三浦の石田次郎為久が討ち奉つたるぞや。
 問28・枕上に寄り居て泣き悲しめども、聞くらんとも覚えず。
 問29・なんでふ物の憑くべきぞ。
 問30・それなん、また、え生くまじく侍るめる。


【解答・解説】

 問01・バ行四段活用/遊ぶ/終止形
     後続の語が何もない場合は原則として終止形か命令形のいずれかである。活用
    語尾がウの音なら終止形、エの音なら命令形と覚える。

 問02・ラ行四段活用/なる/終止形
     問01と同じ理由でこれも終止形である。
 問03・マ行四段活用/やむ/未然形
     四段活用では活用語尾がアの音になったら未然形である。
 問04・サ行四段活用/さす/連用形
     四段活用では活用語尾がイの音になったら連用形である。
 問05・マ行四段活用/惜しむ/連体形
     四段活用では活用語尾がウの音になったら終止形か連体形であるが、後続の語
    がある場合は原則として連体形と考える。

 問06・ラ行四段活用/知る/連用形
     問04と同じ理由で連用形である。
 問07・ハ行四段活用/言ふ/終止形
     現代仮名遣いでは「言う」だが、古語ではハ行である。ア行ではない点に注意。
 問08・マ行四段活用/詠む/已然形
     四段活用では活用語尾がエの音になったら已然形か命令形であるが、後続の語
    がある場合は原則として已然形と考える。

 問09・カ行四段活用/吹く/已然形
     問08と同じ理由でこれも已然形である。
 問10・カ行四段活用/行く/命令形
     問08と逆の理由、すなわち活用語尾がエの音で後続の語がないため命令形であ
    る。


 古典文法の勉強を始めたばかりの方はここまでの問題を正解できればOKです。用言・
助動詞・係助詞を学習した段階で中級以後の問題に進んでください。

    
 問11・タ行四段活用/満つ/連用形
     現代語の「満ちる」は上一段活用だが、古語では四段活用である。鎌倉時代以
    後上二段活用になっている。

 問12・ラ行四段活用/思ひやる/未然形
     現代語の「思いやる」に相当する語。
 問13・ハ行四段活用/たまふ/命令形
     問10と同じ理由で命令形である。
 問14・ラ行四段活用/足る/未然形
     現代語の「足りる」は上一段活用であるが、古語では四段活用である点に注意。
 問15・ラ行四段活用/打ち割る/未然形
     「打つ」と「割る」とで合成された複合語である。
     「割る」には四段活用と下二段活用の2種があるが、未然形が「ア」の音になって
    いるので、これは四段活用である。
     
 問16・ラ行四段活用/くもる/已然形
     後続の「る」は存続の意味を表す助動詞で四段活用の已然形接続である。
 問17・カ行四段活用/酔ひ飽く/連用形
     「酔ふ」と「飽く」とで合成された複合語である。なお、「飽く」は現代語の「飽きる」
    に相当するが、古語では四段活用である点に注意。

 問18・サ行四段活用/起こす/命令形
     命令形は後続の語が普通は存在しないが、この例のように終助詞が使われる
    ことがある。現代語でも「早く行けよ!」の「よ」がそれに該当する。

 問19・ハ行四段活用/思ふ/連体形
     文中に係助詞「ぞ」「なむ」「や」「か」がある場合は係り結びの法則が働いて文末
    の活用語は連体形になるが、「思ふ」の後に格助詞「と」があるため、ここまでが一
    文である。したがって係助詞「ぞ」は「思ふ」に作用する。なお、四段活用動詞の場
    合は終止形・連体形が同形だが、この文の「思ふ」は終止形ではない。

 問20・タ行四段活用/立つ/已然形
     「立つ」には四段と下二段の2種がある。前者は自動詞、後者は他動詞である。
    後続の「り」は存続の意味を表す助動詞で、これは四段活用動詞の已然形接続で
    ある。下二段活用動詞には接続しない。

 問21・ラ行四段活用/知る/連体形
     後続の語は動詞「知ら」であるが、この語との間に体言「人」が省かれている。し
    たがって連体形となる。現代語訳は「私の知っている人も知らない人も、みんな見
    送りをする」となる。

 問22・マ行四段活用/進む/連用形撥音便
     本来は「進み」となるべきところ音便化した形。したがってもともとはマ行である。
    なお動詞の音便は連用形に限って見られる。

 問23・カ行四段活用/泣く/連体形
     文中に係助詞「ぞ」「なむ」「や」「か」がある場合は係り結びの法則が働いて文末
    の活用語は連体形になる。四段活用動詞の場合は終止形・連体形が同形だが、
    この文の「泣く」は終止形ではない。

 問24・ハ行四段活用/候ふ/已然形
     本来は「候ふ」で文を終えるべきところ、「御手と」の後に係助詞「こそ」があるため、
     その結びで「候ふ」は已然形となる。命令形ではない点に注意。

 問25・カ行四段活用/よつ引く/連用形イ音便
     本来は「よつ引く」となるべきところ音便化した形。したがってもともとはカ行である。
    なお「よつ」は接頭辞。現代語でも「壊す」に対して「ぶっ壊す」、「飛ばす」に対して
    「かっ飛ばす」など数多く見られる。

 問26・ラ行四段活用/射取る/命令形
     問18と同じ理由で命令形である。
 問27・ラ行四段活用/奉る/連用形促音便
     本来は「奉り」となるべきところ音便化した形。したがってもともとはラ行である。
 問28・カ行四段活用/聞く/終止形
     後続の「らん」は現在推量の意味を表す助動詞で終止形接続(活用語の終止形の
    後に使われる言葉)である。

 問29・カ行四段活用/憑く/終止形
     現代語には存在しないが「取りつく」」「のり移る」という意味の語。後続の「べき」は
    当然の意味を表す助動詞で終止形接続である。

 問30・カ行四段活用/生く/終止形
     現代語の「生きる」は上一段活用だが、古語では平安時代院政期まで四段活用と
    して使われていた。後続の「まじく」は不可能の意味を表す助動詞で終止形接続であ
    る。