景品付きバレンタインチョコ                   戻る

 当HPがいつもお世話になっているHN「GAI」さんからの出題です。
                                       (平成26年2月14日付け)

 チョコレートにトランプのカードが一枚景品として付いている。もちろん何のカードであるかは
事前にはわからない。この景品で一組(52種類)のトランプを揃えるには平均何個のチョコレ
ートを購入することになるか?(各カードは等確率で付いているものとする)

 また、半数が揃うためには、平均何個のチョコレートが必要か?

(→ 参考:「クーポン収集問題」)



































(答) らすかるさんが考察されました。(平成26年2月14日付け)

 多分、一組(52種類)のトランプを揃えるには、52/52+52/51+52/50+…+52/1≒234.98個。

半数が揃うためには、52/52+52/51+52/50+…+52/27≒35.55個ですね。


(コメント) チョコレートを買い続けて、n−1個まででk枚(0≦k≦51)のトランプが揃ったと

する。n個目に新しいトランプが揃う確率は、 (k/52)n-1(1−k/52) である。

 よって、k+1個目のトランプが揃うまで買い続けるチョコレートの個数の期待値は、

  E=Σn=1〜∞ n・(k/52)n-1(1−k/52)

 ここで、部分和S=Σm=1〜n m・(k/52)m-1 について、

  (1−k/52)S=Σm=1〜n (k/52)m-1−n・(k/52)

 n→∞ のとき、 E=1/(1−k/52)=52/(52−k) となる。

 らすかるさんは、この公式を使われたんですね!


 GAI さんからのコメントです。(平成26年2月14日付け)

 らすかるさん、正解です! オイラー・マスケローニ定数γ:

   γ=limn→∞Σk=1〜n [1/k-log(n)]=0.57721・・・  (log は自然対数)

というなる有難い値を使うと、 1+1/2+1/3+・・・+1/n≒0.57721+log(n) から、途中の面倒な
論理は省略していますが、全種類揃う平均個数:

 52(1+1/2+1/3+1/4+・・・+1/52)=52(0.58+log(52))=52(0.58+3.951)=235.612
 
から、236(個)。 また、半数揃うには、

 52{(0.57721+log(52))-(0.57721+log(52/2))}=52{log(52)-log(26)}=52log(2)=36.0412

から、平均36(個)。

 半数が揃ったからといって、全種類に挑戦しようとすれば、チョコレートの食べ過ぎに注意
しましょう。


 空舟さんからのコメントです。(平成26年2月14日付け)

 この景品で二組のトランプを揃えるには平均何個のチョコレートを購入することになるか?

という疑問が生まれますが、私には求められませんでした。一組だと簡単な式で求まるのに
二組にするとかなり求めるのが難しい問題になることはちょっと興味深いように思いました。


 at さんからのコメントです。(平成26年2月15日付け)

 つまり、52種類のトランプのカードの各々について、どの種類のカードも最低2枚ずつ集め
るには平均何個のチョコレートを購入することになるのか、ということですね。

 求める期待値は、

 52*∫z=0〜∞(1-(1-e-z・(1+z))52)dz

=52*Σk=1〜52Σ j=0〜k 52kkj・(-1)k+1・(j !)・k-j-1

=340.13239445385891… (正確な値は、分子が848桁、分母が846桁の有理数。)

(→ 参考:「がしゃぽん問題」)


 GAI さんからのコメントです。(平成26年2月15日付け)

 上記の有理数は、

分子=
6397474142794514243009136579027140565282680685242645913042523742111347\
5009498629874779745775228859319912586333160180592134650578898503840564\
5126641456534893006267750440498095683695053667341065353533855724473331\
9988628073067422295334860518791115586063218101103047719598887414088364\
4537519617268511756856803448282451863498801026773367932655364495696745\
5213308099314257753904473739957776195452887219460849512944915297529681\
7566131035093693235477485475850886277169839128338990431943906174959394\
9875137060704397689796633185512667167092347598178110062625722584479726\
8152323433420837946183584279849066205278458391841827238302454057619126\
4428921971059273733789303622644955981182780768277468709884407996492434\
4817127618452909828006033164342519727335414708477764442040660905737936\
9084546070286137278707554890513862423690847476404353643135671683437354\
33548871

分母=
1880877636799858406853858737166371057483164608302368825616008907381434\
8702961559343565880336114642583870043588628285204083895315006751432003\
8614768034392259506742695956859463329526273219671759807330886964088603\
6042543183576020212244372058357807250627830784558449439605892771077352\
3560259186945313567114279529041406803834377386260324183561377953769453\
3647610399869680779163037667563984360206728866292553860377888529738549\
6651732129874423028720410777103967976545256520052158914088447855399432\
4988774584072346305821182341185619950462104118138578623198963168052396\
9846126688764512931865253326442762876355232542700874450261609886147512\
5679625776695228820780867566398398970524481680010003687515835341995557\
0441514847364635984287003025524779836129597353241031475200000000000000\
0000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000\
000000


 at さんからのコメントです。(平成26年2月15日付け)

 そうですね。分母、分子はそれらの値になると思います。

 空舟さんからのコメントです。(平成26年2月15日付け)

 その意図で合っています。そんな計算方法になるのでしたか。ありがとうございます。


(コメント) 上記問題に類似の問題が、数学セミナー ’13年12月号 (日本評論社) の
      「エレガントな解答をもとむ」に出題されていたことに最近気づいた。
                                      (平成26年2月21日付け)

 その解答を参考にしながら、上記の問題を考察したいと思う。上記の問題は、「クーポン
収集問題
」として知られる有名問題である。

補 題 1回の試行で成功する確率を p とする。このとき、成功するまでの試行回数
    の期待値は、1/p である。


(証明) k回目に初めて成功するとすると、その確率は、(1−p)k-1p である。

 よって、求める期待値は、 E=Σk=1〜∞ k(1−p)k-1

 第n部分和 S=Σk=1〜n k(1−p)k-1p について、

 {1−(1−p)}S=Σk=1〜n (1−p)k-1p−n(1−p)

            =p{1−(1−p)}/{1−(1−p)}−n(1−p)

すなわち、 pS=1−(1−p)−n(1−p)p において、 n → ∞ のとき、

 pE=1 となり、 E=1/p である。  (証終)

 上記のような級数計算をしなくとも、次のように考えると簡単に補題の結果は得られるよう
だ。

 試行回数の期待値を x として、1回の試行後、確率pで成功し、確率1−pで振り出しに戻
ることから、
         x=1+(1−p)・x

 よって、 px=1 から、 x=1/p


(コメント) なかなか洗練された考え方ですね!感動しました。


 k種類のトランプがまだ出ていない時点でチョコレートを購入し、そのk種類の何れかがも
らえる確率は、k/52である。

 補題により、残りのトランプが k−1種類になるまでに必要なチョコレートの個数は、52/k
となる。

 和の期待値は期待値の和に等しいから、52種類のトランプすべてがそろうまでに購入す
るチョコレートの個数は、k=52からk=1まで足しあわせれば、

   Σk=1〜52 52/k=52Σk=1〜52 1/k

となる。(この式は、らすかるさんの示された計算式の追認です。)

 ところで、 Σk=1〜52 1/k−1<∫152(1/x)dx<Σk=1〜52 1/k−1/52 より、

      1/52+∫152(1/x)dx<Σk=1〜52 1/k<1+∫152(1/x)dx

ここで、

 ∫152(1/x)dx=[log x ]152=log52=3.95124371858143・・・ (← 関数電卓)

 1/52=0.019230769・・・ なので、

  3.970474487・・・<Σk=1〜52 1/k<4.951243718・・・

 したがって、 206.4646733・・・<52Σk=1〜52 1/k<257.4646733・・・

 これではあまりに幅があるので、「WolframAlpha」にHelpして、

 Σk=1〜52 1/k=4.53804395・・・ から、52Σk=1〜52 1/k=235.9782854・・・

 これより、 236個のチョコレートを購入すれば、52種類すべてのトランプがそろうことが
期待できる。