質問に対する回答(11)
平成18年3月30日 A.K さんという方からメールをいただいた。
数学が最近妙に懐かしく思えてきたとのことで、家事の合間に昔の参考書などを引っ張り
出してはいろいろと触って楽しんでいるそうである。ちょうど 3次関数にたどり着いた時に、
四半世紀前に教師から出された問題を見つけたが、どうしてもわからなくて困っているとの
ことである。
問題 3次関数のグラフが、x 軸と異なる3点で交わるものとする。α 、β 、γ を、その交点
の x 座標とする。このとき、そのうちの2つの値の平均である値を
p として、x=p に
おける接線は、選ばれなかった3つ目の交点を通ることを証明せよ。
この問題は大変面白い性質で、興味を引かれました。
(解) この問題について一般性を失うことなく、3次関数として、y = x3+ax2+bx+c と
してよい。いま選ばれた2つの値を、α、βとすると、題意より、2p=α+β
また、解と係数の関係から、 α+β+γ=−a なので、γ=−a−2p が成り立つ。
ところで、x=p における接線の方程式は、
y=(3p2+2ap+b)(x−p)+p3+ap2+bp+c
すなわち、 y=(3p2+2ap+b)x−2p3−ap2+c
このとき、3次関数 y = x3+ax2+bx+c と連立させて、
x3+ax2+bx+c=(3p2+2ap+b)x−2p3−ap2+c
すなわち、 x3+ax2−(3p2+2ap)x+2p3+ap2=0
この3次方程式は、x=p を重解に持つので、(x−p)2(x+a+2p)=0 より、
x = p 、−a−2p
よって、3次関数のグラフと接線との交点のx座標は接点を除いて、x = −a−2p = γ と
なる。以上から、
3つの値のうちの2つの値の平均である値を p として、x=p における接線は、選ばれな
かった3つ目の交点を通ることがいえる。 (終)
(コメント) この問題は計算では示されたが、もっと別な観点からの解法が存在しそうな予
感がある。これについては今後の研究としよう。もし、そのような解法を発見され
た方、こちらまでメールにてご教示ください。
(追記) 平成18年4月4日付けで当HPの掲示板「出会いの泉」にハルさんという方から別
解をいただいた。上記の煩雑な計算を整理・工夫されたものである。ハルさんに感謝
いたします。
(別解) 3次関数を y=F(x)=(x−α)(x−β)(x−γ) として、p=(α+β)/2 とする。
y=F(x) の (p ,F(p)) での接線を y=G(x) とすると、F(x)−G(x) は3次式で、
(x−p)2 を因数に持ち、x3、x2 の係数は、
F(x) の x3、x2 の係数 1、 −(α+β+γ)=−2p−γ と等しいので、
F(x)−G(x)=(x−p)2(x−γ)
と決まる。この形から y=G(x) が (γ ,0) を通ることは明らか。 (終)
当HP読者のHN「南東亜北西」さんから別解をいただきました。(平成28年11月13日付け)
3次関数を f(x)=a(x−α)(x−β)(x−γ) (a≠0) とおき、2p=α+β とする。
このとき、 f’(x)=a{(x−α)(x−β)+(x−α)(x−γ)+(x−β)(x−γ)}において、
f’(p)=a[(p−α)(p−β)+(p−β)(p−γ)+(p−γ)(p−α)]
ここで、 p−α=−(p−β) なので、 f’(p)=a(p−α)(p−β)
(p,f(p))での接線の方程式は、y−f(p)=f’(p)(x−p) で、x=γ、y=0 のとき、
左辺=y−f(p)=−a(p−α)(p−β)(p−γ)
右辺=f’(p)(x−p)=a(p−α)(p−β)(γ−p)=−a(p−α)(p−β)(p−γ)
より、(p,f(p))での接線の方程式は、点(γ,0)を通る事が示された。
#この不思議な性質は、幾何的な側面は分かりませんが、f’(p)の2項と3項が打ち消し合う
処から来ているのではと思います。