相対評価の真実
今、学校現場では絶対評価の一人勝ち状態である。個人の努力目標に対して、その成
果を正当に評価する方法としては、確かにいいものなのかもしれない。
ただ、その絶対評価が他との比較に用いられるとき、絶対評価にも問題点はいろいろあ
りえる。特に、入学者選抜においては、悲惨である。
ある県の有数の進学校に毎年ある程度の実績を持っていた公立中学において、合格者
が激減して、社会問題化している。他の中学に比べて、絶対評価の基準が厳しかったた
めらしい。入試では、中学校間格差はないことを前提にしているので、数値を平等に処理
せざるをえない。数値そのものの信頼性に関わることで、不利益を被った受験生は、かわ
いそうである。「○○中学は、評価が甘くていいな〜」ということを、受験生に言われないよ
うにしなければいけないと思う。
以前は、相対評価による入試であったが、これも問題がないわけではない。やはり、中
学校間格差により、他校では、評価「4」のものが、評価「3」とか「2」になったりもする。今
から30年ほど前、ある特定の中学卒業者に対して内申点の底上げをして問題になった
こともあるくらいだ。
絶対評価にしろ、相対評価にしろ、それぞれ利用目的を外れた使い方をするから問題
になるわけで、入試では参考資料に留める程度にすればいいのだろうと思うのだが..。
今では、化石化しつつある相対評価について、まとめておきたい。
相対評価は、個人の得点を集団成員の得点と比較することによって、その相対的位置
を明らかにする方法である。学習効果を全体の中で評価するので、個人が努力して成績
が向上しても、全体の成績が向上すれば、個人の努力の成果が現れにくくなる。
相対評価は、1、2、3、4、5 で記述される。それらの割合も、慣行的に定まっている。
1 7% 2 24% 3 38% 4 24% 5 7%
この割合は、集団の得点分布が正規分布(平均 50 標準偏差 10)に従うものと仮
定されて求められる。(全体を 1 とする。)
1 x≦35 のときの割合は、 0.06681 → 7%
2 35≦x≦45 のときの割合は、 0.24173 → 24%
3 45≦x≦55 のときの割合は、 0.38292 → 38%
4 55≦x≦65 のときの割合は、 0.24173 → 24%
5 65≦x のときの割合は、 0.06681 → 7%
上記の割合について、斬新な考え方があることを最近知る機会があった。
上図のような道具で、上から球を落とし入れる。そうすると、各1、2、3、4、5 の部分に
球が入る確率はそれぞれ
1/16 4/16 6/16 4/16 1/16
となる。これらを小数に直せば、
1/16 = 0.0625
4/16 = 0.25
6/16 = 0.375
となり、何となく相対評価の割合に似ていて、上図を眺めていると、相対評価の真実が見え
てきそうである。