くじ引きの原理                              戻る

 次の問題を考えてみよう。

 当たりくじ2本を含む5本のくじをA、Bの2人がこの順に1本ずつ引く。ただし、引いたくじは
元に戻さない。このとき、Bが当たる確率を求めよ。

(解) Aが当たり、Bも当たる確率は、 (2/5)×(1/4)=1/10

    Aがはずれ、Bが当たる確率は、 (3/5)×(2/4)=3/10

   よって、Bが当たる確率は、 (1/10)+(3/10)=4/10=2/5  (終)


 ところで、Aが当たる確率は、2/5で、これは、Bが当たる確率と同じである。

 このように、誰がどの順番でくじを引いても当たる確率は等しくなる。
                            (この事実は、くじ引きの原理と言われる。)

 今まで、「くじ引きの原理」というと、くじを引く順番に関係ないということを強調するために、
上記のような計算を行ってきたが、この計算はあまり本質的ではないということに最近気づ
かされた。

 私の敬愛する駿台予備校講師の安田 亨先生の「条件つき確率」(東京書籍)によれば、
普通の確率の問題では、「事前の確率」、つまり、何もしていない段階での確率だから、

 Aさんが当たる確率が、2/5ならば、Bさんが当たる確率もAと同じで、2/5となる。

 実際に、くじに1から5まで番号をつけ、1と2を当たりくじとすれば、起こりえる全ての場合
は、1、2、3、4、5 の5通りあり、これらは同様に確からしい。Bさんの引くくじについても同
じことが言え、1、2、3、4、5 の5通りあるというのだ。

 この場合、「A、Bの2人がこの順に1本ずつ引く」という条件に惑わされることが多い。

 これは、あくまでも事前の確率で、AさんもBさんもまだくじを引いていないということに注目
しなければいけないということだ。

 だから、Aさんが当たるのは、くじ1または2を引くときで、Bさんが当たるのは(Aさんが
くじ1、2を引かないで)くじ1または2を引くときで、それらは同様に確からしい。

 これが、「くじ引きの原理」の本質だということを実感した。

 また、「くじ引きの原理」は次のように考えてもよい。

 「A、Bの2人がこの順に1本ずつ引く」ので、(A,B)で、引いたくじの番号を明示すれば、
起こりえる全ての場合は、

 (1,2)、(1,3)、(1,4)、(1,5)、(2,1)、(2,3)、・・・、(5,3)、(5,4)

の 52=20(通り)ある。これらは同様に確からしい。

 この中で、Aさんが当たるのは、(1,*)、(2,*)という場合だから、8通りある。同様にして、
Bさんが当たるのは、(*,1)、(*,2)という場合だから、8通りある。

 したがって、Aさん、Bさんが当たる確率は等しく、8/20=2/5 である。

 このような見方が出来ないと、次の問題に即答するにはなかなか辛いものがあるだろう。

 当たりくじ2本を含む6本のくじをA、Bの2人がこの順に2本ずつ引く。ただし、引いたくじは
元に戻さない。このとき、Bが2本ともはずれの確率を求めよ。

 引く順番に惑わされて、教科書的に解けば次のようになるだろう。

(解) Aが2本当たり、Bが2本ともはずれの確率は、 (22/62)×(42/42)=1/15

    Aが1本当たり、Bが2本ともはずれの確率は、 (2141/62)×(32/42)=4/15

    Aが2本ともはずれ、Bも2本ともはずれの確率は、 (42/62)×(22/42)=1/15

   よって、Bが2本ともはずれの確率は、 (1/15)+(4/15)+(1/15)=6/15=2/5

                                                      (終)

 上記の計算に対して、「事前の確率」の計算の立場に立てば、Bが2本ともはずれる確率
は、Aが2本ともはずれる確率に等しく、42/62=6/15=2/5 と即答できるだろう。