多変数多項式
当HPの読者のK.S.さんより、平成24年4月1日付けで標記話題をメールで頂いた。
意外な結果でよく知られているかもしれませんが、具体的な対応関係が面白いと思います。
m次以下のn変数の独立な項の個数と、n次以下のm変数の独立な項の個数が等し
い。但し、定数項を含むものとする。
例 3次以下の2変数 x、y の独立な項として、
1、x、y、x2、xy、y2、x3、x2y、xy2、y3 の計10個
2次以下の3変数 x、y、z の独立な項として、
1、x、y、z、x2、y2、z2、xy、yz、zx の計10個
(証明) m次以下のn変数の項は、
「1、x1、x2、・・・、xn から重複を許してm個とる組合せ」
の数に等しいので、全部で、n+1Hm=n+mCm=(n+m)!/(n!m!)個ある。
同様にして、n次以下のm変数の項は、m+1Hn=n+mCn=(n+m)!/(n!m!)個ある。
以上から、命題は示された。 (証終)
上記のように、命題は直接証明が可能ですが、K.S.さんからは、数学的帰納法による
証明を頂きました。
(別証) まず、次の補題を、n を固定して、m に関する数学的帰納法で示す。
補題: m次以下のn変数の項は、m+nCn=(m+n)!/(m!n!) で表される。
(補題の証明) m=0 のとき、定数項のみなので、項数は、1。一方、nCn=1
よって、m=0 のとき、補題は成り立つ。
m≦k (k は、0以上の整数)について、補題が成り立つものと仮定する。
すなわち、k次以下のn変数の項は、k+nCn=(k+n)!/(k!n!)個
k+1次の項は、x1c1x2c2・・・、xncn (c1+c2+・・・+cn=k+1 、ci≧0) より、
k+1Hn-1=k+1+n-1Cn-1=k+nCn-1 個
となるので、k+1次以下のn変数の項は、k+nCn+k+nCn-1=k+1+nCn個となる。
よって、m=k+1 のときも補題は成り立つ。
以上から、全てのmについて、補題は成り立つ。 (補題証終)
そこで、補題から、 m+nCn=m+nCm=n+mCm が成り立つので、
m次以下のn変数の独立な項の個数と、n次以下のm変数の独立な項の個数が等しい。
(別証終)
具体的な対応関係を考えると、
(1) 辞書式に並べる。
(2) まず、添え字の部分を並べ、更に、次数の部分を並べることにする。
xi1c1xi2c2・・・、xincn、xj1d1xj2d2・・・、xjndn において、
i1=j1、・・・、ih=jh ならば、ih+1<jh+1
i1=j1、・・・、in=jn で、c1=d1、・・・、ch=dh ならば、ch+1<dh+1
以下で、xi1c1xi2c2・・・、xincn を、{{c1 ・・・ cn},{i1 ・・・ in}}と表すことにする。
「同じ個数の変数は、それぞれ同個数ずつある。」
1変数のとき、 {{k},{i}} → {{i},{k}}
(例) n個の変数 x1、x2、・・・、xn のうちの1変数、例えば、x1 について、
x12 → x21=x2 が対応する。
2変数のとき、 {{k1,k2},{i1,i2}} → {{i1,i2−i1},{k1,k1+k2}}
(well-defined)
(例) n個の変数 x1、x2、・・・、xn のうちの2変数、例えば、x1、x2 について、
x12x2 → x21x31=x2x3 が対応する。
3変数のとき、i1<i2<i3 に注意して、
{{k1,k2,k3},{i1,i2,i3}} → {{i1,i2−i1,i3−i2},{k1,k1+k2,k1+k2+k3}}
(well-defined)
これらの対応は、逆も成り立つので、1対1対応になる。変数が多い場合も同様に定義で
きる。具体的に見ると、
(例) n個の変数 x1、x2、・・・、xn のうちの2変数、例えば、x1、x2、x3 について、
x12x24x31 → x21x61x71 → x12x24x31 が対応する。
この対応は、順序を保存する。この対応により、
m変数n次以下の項と、n変数m次以下の項が、同じ変数の個数同士で、
1対1に対応している
ことが分かる。他に、どのような対応があるでしょうか?
例 3次以下の2変数 x、y の独立な項として、
1、x、y、x2、xy、y2、x3、x2y、xy2、y3 の計10個
2次以下の3変数 x、y、z の独立な項として、
1、x、y、z、x2、y2、z2、xy、yz、zx の計10個
であった。上記の対応関係によれば、
1 → 1 、x → x 、y → x2 、x2 → y 、xy → xy 、y2 → y2
x3 → z 、x2y → yz 、xy2 → zx 、y3 → z2
と、1対1に対応する。