放物線の相似性
このページは、当HPをご覧になられた「Gnomon@杉井」様から頂いた問題について考え
たものである。これは、相当に昔の立教大学の入試問題にもなっている。
【 全ての放物線は互いに相似形である 】
「Gnomon@杉井」様によれば、名詞サイズほどの空間でその証明が出来たとのことなの
で、恐らく、次のような証明ではなかったかと推察される。
放物線 y=ax2+bx+c は、y=a(x+b/(2a))2−(b2−4ac)/(4a) により、平行移動
して、放物線 y=ax2 と合同になる。ここで、y 軸方向の拡大・縮小(相似の中心が無限遠
点の相似変換!) X=x 、Y=(1/a)y を行えば、放物線 y=ax2 は、Y=X2 に変換され
る。したがって、放物線 y=ax2+bx+c と放物線 y=x2 は相似である。
この問題に付随する問題として、放物線を平行移動させないで、直接的に相似の中心を
求めたいという場合がある。
少し、用語の復習をしよう。
2つの図形(上図では、正方形とした!)において、対応する2点(上図では、PとQ)を結
ぶ直線がすべて1点で交わり、交点から対応点までの距離の比が常に一定であるとき、2
つの図形は相似の位置にあるといい、相似の位置における2つの図形は相似であるとい
う。ここで、交点を、相似の中心、一定な比の値を、相似比という。
放物線を平行移動させないで、放物線 y=ax2+bx+c と 放物線 y=x2 が相似であ
ることを示すには、相当な計算力が必要である。
ここでは、具体的な場合について、その方策を記録に留めようと思う。
練習問題 放物線 y=2x2+4x+1 は、放物線 y=x2 と相似であることを証明し、相
似の中心と相似比を求めよ。
(解) y=2x2+4x+1=2(x+1)2−1 より、頂点の座標は、A(−1,−1)
また、(x+1)2=(1/2)(y+1) より、焦点の座標は、F(−1,−7/8)
同様にして、
放物線 y=x2 の頂点の座標は、B(0,0) で、焦点の座標は、G(0,1/4)
2つの放物線の頂点と頂点、焦点と焦点を結ぶ直線の方程式は、それぞれ、
y=x 、 y=(9/8)x+1/4
となる。この2直線の交点の座標は、 S(−2,−2) である。
(実は、この交点が、相似の中心となる!)
この点 S を通り、x 軸と角 θ をなす直線の方程式は、媒介変数表示を用いて、
x=−2+t・cosθ 、 y=−2+t・sinθ
と書ける。この式を、 y=x2 に代入して整理すると、
t2・cos2θ−t・(4cosθ+sinθ)+6=0 ・・・・・ (*)
同様に、y=2x2+4x+1 に代入して整理すると、
2t2・cos2θ−t・(4cosθ+sinθ)+3=0
2式の定数項をともに6にするために、両辺を2倍して、次の式を得る。
(2t)2・cos2θ−(2t)・(4cosθ+sinθ)+6=0 ・・・・・ (**)
(*)の t の値は、点 S から放物線 y=x2 までの距離を表し、(**)の t の値は、
点 S から放物線 y=2x2+4x+1 までの距離を表す。
このとき、(*)、(**)より、点 S から放物線 y=x2 までの距離は、点 S から放
物線 y=2x2+4x+1 までの距離の2倍に等しいことが分かる。
したがって、相似の中心は、S(−2,−2) で、相似比は、2 : 1
であることが分か
る。(終)
上記の2つの放物線と相似の中心を図示すれば、下図のようになる。
(追記) 「Gnomon@杉井」様から、【 全ての放物線は互いに相似形である 】ことの大変
簡明な証明を頂戴した。
任意の放物線は、平行移動により、放物線 y=ax2 と合同である。放物線 y=ax2 と、
直線 y=kx の交点を求めると、(0 ,0)、(k/a ,k2/a)である。(前者が相似の中心)
この2点の距離 L(a) を求めると、 L(a)= (k/a) √(1+k2) となる。
同様にして、放物線 y=x2 と、直線 y=kx の交点を求めると、(0 ,0)、(k ,k2)な
ので、この2点の距離 L(1) は、 L(1)= k √(1+k2) となる。
このとき、 L(a)/L(1)=1/a は、直線の傾き k に無関係な定数である。
よって、放物線 y=ax2 は放物線 y=x2 に相似で、相似比は、a : 1 となる。(証終)
(注意) 相似比を、「元の図形 y=x2 」 : 「相似の図形 y=ax2 」 の形で表している。
私の想定した解法とは違い、とても基本に忠実に解かれたもので分かりやすい。今まで
私自身、この問題に対する解答の方針として、y 軸の拡大・縮小でとらえてきたが、上記
の解答の方が自然であることに気づかされた。
上図からも分かるように、放物線 y=(1/4)(x−1)2 のグラフが、x 軸に沿って原点にだん
だん近づくとき、相似の中心も、だんだんと原点に近づく。したがって、2つの放物線の頂点
がともに原点であるとき、相似の中心も原点であるということは、とても自然なことである。
視点の転換をお教えいただいた「Gnomon@杉井」様に感謝したい。
(追々記) Margulis 様より上記問題の別解を頂戴した。
a≠0 のとき、 y=ax2 は、 ay=(ax)2 と書ける。
この式で、 X=ax 、 Y=ay とおくと、 Y=X2 となる。
このことは、相似比 a の相似変換
により、放物線 y=ax2 が、放物線 y=x2 に変換されることを意味する。
簡単に言えば、これは座標平面を原点を中心として、全体のスケールを
a 倍にして
みると、放物線 y=x2 と合同形になるということである。
したがって、
「元の図形 y=ax2 」 : 「相似な図形 y=x2 」= 1 : a
である。
(コメント) とてもスッキリした証明ですね。Margulis 様に感謝!