円周率πが無理数であること                 戻る

 円周の長さの直径に対する比を表す円周率は古くから数学の対象になっていた。円周率
に対して、「π」という記号を初めて使ったのはオイラーで、πの値を正確に記述したのは、
16世紀のフランス人数学者フランソファ・ヴィエタである。

 πの値は、3.1415926535897932384・・・・であるが、πの真の値に近い分数とし
て、「355/113」がよく知られている。πの値を正確に表す方法は、その後いろいろ発見さ
れたが、1761年ドイツ人数学者ヨハンランベルトによって、「πは有理数でない」ということ
が証明された。

 コンピュータ時代の幕開けとともにπの計算は、コンピュータの性能評価に用いられ、詳し
くその値が求められるようになった。1974年コンピュータにより、初めて小数点以下100万
位が求められた。因みに、その値は「1」であった。「πは無理数である」ことに対して、次の
ような証明が知られている。

 関数 F(x)=x(1−x) を考える。2項定理を用いて、

  F(x)=01n+1+・・・+(−1)2n

となるから、第n次導関数を F(n)(x) で表すとき、

 k<n ならば、 F(k)(0)=0

 n≦k≦2n ならば、 F(k)(0)=(−1)k-nk-nk!

が成り立つ。同様にして、

  F(x)=(−1)(x−1)((x−1)+1)
      =(−1)0(x−1)1(x−1)n+1+・・・+(x−1)2n

 k<n ならば、 F(k)(1)=0

 n≦k≦2n ならば、 F(k)(1)=(−1)k-nk!

 以上から、全てのk(0≦k≦2n)に対して、次のことが成り立つ。

  F(k)(0)=n!a 、F(k)(1)=n!b (但し、a、bは整数)

このとき、 I=∫01 F(x)sinπxdx に対して、部分積分を繰り返すことにより

 I=(F(0)+F(1))/π-(F(2)(0)+F(2)(1))/π3+・・・+(-1)(F(2n)(0)+F(2n)(1))/π2n+1

となるので、a+b=c と置くと、c は整数で、

 I=n!(c0−c22+・・・+(−1)2n2n)/π

 今、πが有理数と仮定すると、π2も有理数で、π2=q/p (p、qは互いに素な正の整数)
と書ける。このとき、

  I=n!(c0−c2p/q+・・・+(−1)2n/q)/π より、

  (πq/n!)I=c0−c2p/q+・・・+(−1)2n

が成り立つ。ここで、左辺は正の数で、右辺は整数だから、 (πq/n!)I≧1 となる。

このとき、limn→∞/n!=0 より、 0≧1となり、これは矛盾である。

よって、πは無理数である。

(参考文献:鈴木昌和 著 Quick Note ver.4(日本評論社))