いつも問題を作って、解かせている立場からいえば、問題そのものを問う場合を除いて、あ
る問題を解くための途中の問題の場合はなるべく解きやすい問題設定にするものだ。これは、
主問題の理解度をみるために、途中でつまづかないようにとの配慮からである。
しかし、実生活に数学を適用する場合、このような配慮は全くないと思って差し支えない。
次のような問題が好例である。
あるコンサートのチケットを600枚用意し、前売り券は当日券より200円引きの値段で販
売したところ、600枚全部が売り切れた。当日券の売り上げが312000円、前売り券の売
り上げは340000円であった。当日券は何枚売れたか?
(〜HPサイト「飛行船すうがく」 解けそうで解けない2次方程式より〜)
当日券の枚数を X として方程式を作れば、
X2−3860X+936000=0
となる。このように係数が大きい2次方程式を解かせることは、通常は考えられない。
2次方程式解法の基本である因数分解は、直ぐには出来そうにないし、解の公式を使っ
ても、
で、一筋縄ではいかない。
題意から、X は整数なので、27889 がある数の平方になっていることは明らかだが、普
通の人にとって、その数を手計算で見つけることは大変なことだろう。
(電卓を使えば容易だが、手計算では、開平法の知識が必要である。)
ここでは、電卓も開平法も使わず、腕力で、そのような数を発見する方策を探る。
題意から 19302−936000=102(1932−9360) は平方数なので、
1932−9360=X2
とおける。このとき、 (193+X)(193−X)=9360 である。ここで、
(193+X)+(193−X)=386、(193+X)−(193−X)=2X
であることから、
0<X<193 、193+X<386 、193+X と 193−X はともに偶数
がいえる。
9360=24×32×5×13 なので、193+X と 193−X の組み合わせは次の表の
ようになる。
2 | 3 | 5 | 13 | 193+X | 193−X | X |
1 | 2 | 0 | 1 | 234 | 40 | − |
2 | 0 | 1 | 1 | 260 | 36 | − |
3 | 1 | 0 | 1 | 312 | 30 | − |
3 | 2 | 1 | 0 | 360 | 26 | 167 |
この中で、(193+X)+(193−X)=386 を満たすものを探せば、X=167 のみとな
る。(167 は素数なので、27889=X2 を満たす X を見つけるのが大変だったのはうなづける。)
以上から、2次方程式の解が求められて、当日券の枚数は、260枚であることが分かる。
上記のような解法に対して、HPサイト「飛行船すうがく」では、とても実戦的な解法を示し
ている。とても興味を引く解法であった。