・人生の方程式                      S.H氏

 物理学者は宇宙の一切合切が記述できる方程式を追い求めている。ヒッグス粒子の発見
でそれが出来そうな予感...。ただ物理学はそれまで真理と思われていたものが一夜にし
て崩れることを繰り返し経験している。

 それに対して、数学での真理は永遠普遍に真理である。これは物理学と数学の学問上の
性格の違いから仕方のないことである。

 飯高 茂 著 「いいたかないけど数学者なのだ」(生活人新書[NHK出版])を読んでいたら、
その中に、「人生の方程式」なる記述があった。宇宙の法則みたいに人生も1つの方程式で
記述されてしまったら、人生もつまらないものになってしまうが、書籍では、実感年齢について
のものだった。

 生まれてから t 年後の状態(実年齢)が、実は生まれてから x 年後の状態だとそれまでの
経験から判断(経験年齢)できるときを考える。

 このとき、 Δx≒−(k/t)Δt (k は定数) と考えられることから、x は、t の対数関数
x=−k・log t になる。

 対数関数のグラフから、 t → 0 のとき、x → ∞ となる。人間は「生まれたときの可能性
は無限大だ」ということが納得されよう。t → ∞ のとき、x → 0 となり、人間は「老いてくる
と、赤ん坊にかえる」と昔から言われていることも合点できる。

 上記書籍で、代数幾何学の世界的権威であられる飯高先生が、東大教養学部での線形
代数の期末試験に出た次の問題が解けなかったと告白されている。

[問題] AB=A+B を満たす行列は AB=BA となることを示せ。

 土筆の子さんの解法を参考にすれば、次のように簡単に解けると思う。

(解) AB=A+B より、 (A-E)(B-E)=E (E は単位行列) なので、A-E、B-E はそれぞれ

  逆行列を持つ。

   よって、 (B-E)(A-E)=E が成り立つので、 BA-A-B=O より、 BA=A+B

   したがって、 AB=A+B=BA が成り立つ。  (終)


(コメント) A、Bの可換性を示す問題だが、AB=A+B のとき、A-E、B-E が逆行列を持ち、
      可換になるというところがポイントですね。


 JA1NKAさんからのコメントです。(平成26年2月4日付け)

 上述方程式で、AB=BAの成立は逆行列云々をもちだすまでもなく、「右辺で加法の可換
性より明らか。」で、よいのではないでしょうか? AとBを入れ替え、BA=B+A=A+B=ABです。
飯高先生は自嘲気味に、「難しく考え過ぎた」とおしゃられたように思われます。


(コメント) 空舟さんが、平成26年2月4日付けで、「JA1NKAさんは激しい勘違いをしてい
      る」と仰っていますが私もそう思います。

 多分、JA1NKAさんは、条件「AB=A+B」を「任意のA、Bについて」と理解されているのでしょ
う。その理解だと、JA1NKAさんの解の通りになるのですが、問題は、条件「AB=A+B」を「特定
のA、Bについて」成り立つと考えるべきだということです。だから、たまたま「AB=A+B」が成り
立っているだけで、問題文は「BA=B+A」が成り立つことを保証していません。結果としては成
り立ちますが、問題文はあくまでも、「特定のA、Bについて、AB=A+B が成り立つとき」という
ことです。


 JA1NKAさんからのコメントです。(平成26年2月5日付け)

 「任意のA、Bについて」、条件「AB=A+B …(イ)」は成立しません。「(イ)の成立するA、Bに
対して」です。かなり特定、限定されているA、Bです。

 (イ)が成立する行列の集合から2つの行列A、Bを取り出しているのです。どちらをA、どち
らをBと名前づけしても、この2つのA、Bに対して、BA=B+A … (ロ)が成立
します。
                              (アヤシイ部分!
 ここで、一般に、BA≠ABです。ところがこのA、Bは、(イ)(ロ)が成立するA、Bで、(イ)(ロ)の
右辺で加法の可換性から、AB=BA といっているのです。

 (イ)の代わりに、AB=2A+3B … (ハ)の成立するA、Bの間だと、BA=2B+3A≠AB … (ニ)
です。そもそも逆行列解法で、(イ)から、(A-E)(B-E)=E … (ホ)とできるのは、k をスカラーと
して、AB=kA+kB … (ヘ) ⇔ (A-kE)(B-kE)=k2E … (ト)のパターンのみで、これは(ヘ)の
右辺での加法の可換性に依るからです。


 土筆の子さんからのコメントです。(平成26年2月5日付け)

 行列A、Bの可換の関係についてです。

 AB=A+B のとき、(A-E)(B-E)=AB-B-A+E=E  ・・・ (イ)

 一方、 E=(B-E)(A-E)=BA-A-B+E ・・・ (ロ) なので、 AB=BA が言える。

 これは拡長できて、AB=2A+3B のとき、 (A-3E)(B-2E)=AB-3B-2A+6E=6E  ・・・ (ハ)

 一方、 6E=(B-2E)(A-3E)=BA-2A-3B+6E ・・・ (ニ)

 (ハ)(ニ)の右辺をみると、 AB=BA (← この関係がおもしろいと思いました。)

 特別な場合は縮退されていて、自明に見えるけれども、違った観点から変化、拡長させて
真の姿が見えてくるといった風合いです。漸近線の議論でもそれを感じました。

 例えば、次の代数曲線を定義します。

C: 4x4+4x3y+2x3-3x2y2-17x2y-32x2-4xy3-17xy2-15xy+6x-y4-4y3+5y2+36y+39=0

ここで、

C: 4x4+4x3y+2x3-3x2y2-17x2y-32x2-4xy3-17xy2-15xy+6x-y4-4y3+5y2+36y+39-k=0 が

可約代数曲線となるよう k を定めてください。kを変えていくと漸近線に近づいて、k=3 の時
に漸近線それ自体になることが、計算ソフトでグラフ化すると見ることができました。

 C3:  (-2 + x - y) (3 + x + y) (-3 + 2x + y) (2 + 2x + y) = 0


(コメント) 土筆の子さんの例示が一番分かりやすいですね!

      AB=A+B のとき、 AB=BA が成り立ち、また、
      AB=2A+3B のときも、 AB=BA が成り立つ。

   両者の根底にある概念は、「可逆 → 可換」であって、「和が可換 → 積も可換」で
  はないということですね。

 AB=A+B から、BA=B+A としている点が誤りで、一般には、BA=「?」ではないでしょうか?
結果的には正しくなりますが、あくまでもその根拠は、A+E、A-E の可逆性です。ですから、こ
の問題は、可逆性に触れずに可換性を証明することはできないということになります。


 空舟さんからのコメントです。(平成26年2月5日付け)

 確認を試みさせてください。例えば、もし代わりに AB=A2+B2 という条件だとしたら、同じよ
うに「どちらをA,どちらをBと名前づけしても」という理屈で、BA=B2+A2 が成り立つと主張でき
るのでしょうか?(多少過激な言い回ししてしまい申し訳ないです)


 GAI さんからのコメントです。(平成26年2月6日付け)

A=|a  b|
  |c  d|
  と

B=|x  y|
  |z  w|


を、  AB=A2+B2 を満足するようにA、Bを下記のごとく構成しました。

(a,b,c,d) (x,y,z,w)   (a,b,c,d) (x,y,z,w)   (a,b,c,d) (x,y,z,w)   (a,b,c,d) (x,y,z,w)
(-3,-2,2,-1) (-2,1,-1,-3)
(-3,-2,2,-1) (-1,-3,3,2)
(-3,-1,1,-2) (-1,2,-2,-3)
(-3,-1,3,-3) (-3,1,-3,-3)
(-3,-1,3,0) (0,1,-3,-3)
(-3,0,0,-3) (-3,-3,3,0)
(-3,0,0,-3) (-3,3,-3,0)
(-3,0,0,-3) (0,-3,3,-3)
(-3,0,0,-3) (0,3,-3,-3)
(-3,1,-3,-3) (-3,-1,3,-3)
(-3,1,-3,0) (0,-1,3,-3)
(-3,1,-1,-2) (-2,3,-3,1)
(-3,1,-1,-2) (-1,-2,2,-3)
(-3,2,-2,-1) (-2,-1,1,-3)
(-3,2,-2,-1) (-1,3,-3,2)
(-3,3,-3,0) (0,3,-3,3)
(-3,3,-3,3) (-3,3,-3,3)
(-3,3,-3,3) (-2,2,-2,2)
(-3,3,-3,3) (-1,1,-1,1)
(-3,3,-3,3) (1,-1,1,-1)
(-3,3,-3,3) (2,-2,2,-2)
(-3,3,-3,3) (3,-3,3,-3)
(-3,3,-1,-3) (-3,-3,1,-3)
(-3,3,-1,0) (0,-3,1,-3)
(-2,-3,1,1) (-1,-3,1,2)
(-2,-3,3,1) (-3,-1,1,-2)
(-2,-3,3,1) (1,-2,2,3)
(-2,-1,1,-3) (-3,2,-2,-1)
(-2,-1,1,-3) (1,-3,3,-2)
(-2,-1,1,-1) (-1,-2,2,1)
(-2,-1,1,-1) (-1,1,-1,-2)
(-2,-1,3,1) (-1,-1,3,2)
(-2,0,0,-2) (-2,-2,2,0)
(-2,0,0,-2) (-2,2,-2,0)
(-2,0,0,-2) (-1,-3,1,-1)
(-2,0,0,-2) (-1,-1,3,-1)
(-2,0,0,-2) (-1,1,-3,-1)
(-2,0,0,-2) (-1,3,-1,-1)
(-2,0,0,-2) (0,-2,2,-2)
(-2,0,0,-2) (0,2,-2,-2)
(-2,1,-3,1) (-1,1,-3,2)
(-2,1,-1,-3) (-3,-2,2,-1)
(-2,1,-1,-3) (1,3,-3,-2)
(-2,1,-1,-1) (-1,-1,1,-2)
(-2,1,-1,-1) (-1,2,-2,1)
(-2,2,-2,0) (0,2,-2,2)
(-2,2,-2,2) (-3,3,-3,3)
(-2,2,-2,2) (-1,1,-1,1)
(-2,2,-2,2) (1,-1,1,-1)
(-2,2,-2,2) (2,-2,2,-2)
(-2,2,-2,2) (3,-3,3,-3)
(-2,3,-3,1) (-3,1,-1,-2)
(-2,3,-3,1) (1,2,-2,3)
(-2,3,-1,1) (-1,3,-1,2)
(-1,-3,1,-1) (1,-3,1,1)
(-1,-3,1,2) (-2,-3,1,1)
(-1,-3,3,2) (-3,-2,2,-1)
(-1,-3,3,2) (2,-1,1,3)
(-1,-2,2,-3) (-3,1,-1,-2)
(-1,-2,2,-3) (2,-3,3,-1)
(-1,-2,2,1) (-2,-1,1,-1)
(-1,-2,2,1) (1,-1,1,2)
(-1,0,0,-1) (-2,-3,1,1)
(-1,0,0,-1) (-2,-1,3,1)
(-1,0,0,-1) (-2,1,-3,1)
(-1,0,0,-1) (-2,3,-1,1)
(-1,0,0,-1) (-1,-1,1,0)
(-1,0,0,-1) (-1,1,-1,0)
(-1,0,0,-1) (0,-1,1,-1)
(-1,0,0,-1) (0,1,-1,-1)
(-1,0,0,-1) (1,-3,1,-2)
(-1,0,0,-1) (1,-1,3,-2)
(-1,0,0,-1) (1,1,-3,-2)
(-1,0,0,-1) (1,3,-1,-2)
(-1,1,-3,-1) (1,1,-3,1)
(-1,1,-3,2) (-2,1,-3,1)
(-1,1,-1,-2) (-2,-1,1,-1)
(-1,1,-1,-2) (1,2,-2,-1)
(-1,1,-1,0) (0,1,-1,1)
(-1,1,-1,1) (-3,3,-3,3)
(-1,1,-1,1) (-2,2,-2,2)
(-1,1,-1,1) (1,-1,1,-1)
(-1,1,-1,1) (2,-2,2,-2)
(-1,1,-1,1) (3,-3,3,-3)
(-1,2,-2,-3) (-3,-1,1,-2)
(-1,2,-2,-3) (2,3,-3,-1)
(-1,2,-2,1) (-2,1,-1,-1)
(-1,2,-2,1) (1,1,-1,2)
(-1,3,-3,2) (-3,2,-2,-1)
(-1,3,-3,2) (2,1,-1,3)
(-1,3,-1,-1) (1,3,-1,1)
(-1,3,-1,2) (-2,3,-1,1)
(0,-3,1,-3) (-3,3,-1,0)
(0,-3,1,3) (3,3,-1,0)
(0,-3,3,-3) (3,-3,3,0)
(0,-3,3,3) (-3,-3,3,0)
(0,-2,2,-2) (2,-2,2,0)
(0,-2,2,2) (-2,-2,2,0)
(0,-1,1,-1) (1,-1,1,0)
(0,-1,1,1) (-1,-1,1,0)
(0,-1,3,-3) (-3,1,-3,0)
(0,-1,3,3) (3,1,-3,0)
(0,1,-1,-1) (1,1,-1,0)
(0,1,-1,1) (-1,1,-1,0)
(0,2,-2,-2) (2,2,-2,0)
(0,2,-2,2) (-2,2,-2,0)
(0,3,-3,-3) (3,3,-3,0)
(0,3,-3,3) (-3,3,-3,0)
(0,3,-1,-3) (-3,-3,1,0)
(0,3,-1,3) (3,-3,1,0)
(1,-3,1,-2) (2,-3,1,-1)
(1,-3,1,1) (-1,-3,1,-1)
(1,-3,3,-2) (-2,-1,1,-3)
(1,-3,3,-2) (3,-2,2,1)
(1,-2,2,-1) (-1,-1,1,-2)
(1,-2,2,-1) (2,-1,1,1)
(1,-2,2,3) (-2,-3,3,1)
(1,-1,1,-1) (-3,3,-3,3)
(1,-1,1,-1) (-2,2,-2,2)
(1,-1,1,-1) (-1,1,-1,1)
(1,-1,1,-1) (2,-2,2,-2)
(1,-1,1,-1) (3,-3,3,-3)
(1,-1,1,0) (0,-1,1,-1)
(1,-1,1,2) (-1,-2,2,1)
(1,-1,1,2) (2,1,-1,1)
(1,-1,3,-2) (2,-1,3,-1)
(1,-1,3,1) (-1,-1,3,-1)
(1,0,0,1) (-1,-3,1,2)
(1,0,0,1) (-1,-1,3,2)
(1,0,0,1) (-1,1,-3,2)
(1,0,0,1) (-1,3,-1,2)
(1,0,0,1) (0,-1,1,1)
(1,0,0,1) (0,1,-1,1)
(1,0,0,1) (1,-1,1,0)
(1,0,0,1) (1,1,-1,0)
(1,0,0,1) (2,-3,1,-1)
(1,0,0,1) (2,-1,3,-1)
(1,0,0,1) (2,1,-3,-1)
(1,0,0,1) (2,3,-1,-1)
(1,2,-2,-1) (-1,1,-1,-2)
(1,2,-2,-1) (2,1,-1,1)
(1,2,-2,3) (-2,3,-3,1)
(1,2,-2,3) (3,-1,1,2)
(1,3,-3,-2) (-2,1,-1,-3)
(1,3,-3,-2) (3,2,-2,1)
(1,3,-1,1) (-1,3,-1,-1)
(2,-3,1,-1) (1,-3,1,-2)
(2,-3,3,-1) (-1,-2,2,-3)
(2,-3,3,-1) (3,-1,1,2)
(2,-2,2,-2) (-3,3,-3,3)
(2,-2,2,-2) (-2,2,-2,2)
(2,-2,2,-2) (-1,1,-1,1)
(2,-2,2,-2) (1,-1,1,-1)
(2,-2,2,-2) (2,-2,2,-2)
(2,-2,2,-2) (3,-3,3,-3)
(2,-1,1,1) (1,-2,2,-1)
(2,-1,1,1) (1,1,-1,2)
(2,-1,1,3) (-1,-3,3,2)
(2,-1,1,3) (3,2,-2,1)
(2,-1,3,-1) (1,-1,3,-2)
(2,0,0,2) (0,-2,2,2)
(2,0,0,2) (0,2,-2,2)
(2,0,0,2) (1,-3,1,1)
(2,0,0,2) (1,-1,3,1)
(2,0,0,2) (1,1,-3,1)
(2,0,0,2) (1,3,-1,1)
(2,0,0,2) (2,-2,2,0)
(2,0,0,2) (2,2,-2,0)
(2,1,-3,-1) (1,1,-3,-2)
(2,1,-1,1) (1,-1,1,2)
(2,1,-1,1) (1,2,-2,-1)
(2,1,-1,3) (-1,3,-3,2)
(2,1,-1,3) (3,-2,2,1)
(2,3,-3,-1) (-1,2,-2,-3)
(2,3,-3,-1) (3,1,-1,2)
(2,3,-1,-1) (1,3,-1,-2)
(3,-3,1,3) (3,3,-1,3)
(3,-3,3,-3) (-3,3,-3,3)
(3,-3,3,-3) (-2,2,-2,2)
(3,-3,3,-3) (-1,1,-1,1)
(3,-3,3,-3) (1,-1,1,-1)
(3,-3,3,-3) (2,-2,2,-2)
(3,-2,2,1) (1,-3,3,-2)
(3,-2,2,1) (2,1,-1,3)
(3,-1,1,2) (1,2,-2,3)
(3,-1,1,2) (2,-3,3,-1)
(3,-1,3,0) (0,1,-3,3)
(3,-1,3,3) (3,1,-3,3)
(3,0,0,3) (0,-3,3,3)
(3,0,0,3) (0,3,-3,3)
(3,0,0,3) (3,-3,3,0)
(3,0,0,3) (3,3,-3,0)
(3,1,-3,0) (0,-1,3,3)
(3,1,-3,3) (3,-1,3,3)
(3,1,-1,2) (1,-2,2,3)
(3,1,-1,2) (2,3,-3,-1)
(3,2,-2,1) (1,3,-3,-2)
(3,2,-2,1) (2,-1,1,3)

 すると、すべて AB=BA が成立しました!AB=A2+B2 ならば、AB=BA を満たすものと思い
ます。このことから、JA1NKAさんの論法の誤りを指摘する題材しては不適切ということが分か
りました。


 at さんからのコメントです。(平成26年2月6日付け)

 もしも、JA1NKAさんの論法が正しいとすれば、「AB=A3+B3 が成り立つならば、BA=A3+B3
も正しい命題になるはずですよね?しかしこの命題は偽です。なぜならば、次のような反例が
あります。

 A=[[0,-1,1],[0,0,1],[0,0,0]] 、B=[[0,1,-2],[0,0,0],[0,0,0]] に対して、

 AB=[[0,0,0],[0,0,0],[0,0,0]] 、A3=[[0,0,0],[0,0,0],[0,0,0]] 、B3=[[0,0,0],[0,0,0],[0,0,0]]

なので、 AB=A3+B3 が成り立っています。ところが、BA=[[0,0,1],[0,0,0],[0,0,0]] となります
から、BA=A3+B3 は成り立ちません。


(コメント) at さん、ありがとうございます。私もそのような例を発見しようといくつか実験しま
      したが、挫折してしまいました。


 GAI さんからのコメントです。(平成26年2月6日付け)

 ウワッハ〜、これは面白い! AB=A2+B2 を満足するものに限定して調査して判断していま
した。因みに、2次の正方行列で例外は作れますか?3次の正方行列で他の例外も紹介し
てください。


 空舟さんからのコメントです。(平成26年2月6日付け)

 「A、Bが2次正方行列で例外は作れますか?」について、虚数を使った解があります。

  A=[[-4, -3-3],[1-, 2]] 、B=[[4, 6],[-3+, -5+]]

 追記:行列を2行2列に限り成分を実数の範囲に限れば、「AB=A2+B2 ならば、AB=BA」が
    成立するかどうか?という疑問は残りますが、私には分かっていません。
    ---------------------------
     論法のどこがまずかったかを言葉で説明するのは難しいと思い、このような形で確
    認させていただくという選択をしました。自分で気づいて欲しかったというのは確かに
    本音でした。しかしながらやっぱり気づかない場合のために、敢えて言葉で説明を試
    みるのは有意義かもしれません:

     かなり特定・限定されている行列の組(A,B)の集合Sがあったとしても、その特定・限
    定の仕方(元の等式の両辺)がA,Bについて可換ではないから(A,B)を入れ替えた(B,A)
    がSに属する根拠が無いわけです。誰でも間違い・勘違いすることはありますので、ど
    うぞ気になさらないでくださればと思います。気づいて欲しいというのが一番大事な所
    であります。
    -----------------------------


 JA1NKAさんからのコメントです。(平成26年2月7日付け)

 土筆の子さんの例は投稿した後、気付きました。

 AB = kA + mB … (***) だと、(A/m -E)(B/k-E) = E

 (A/m -E)と(B/k-E)は互いに逆行列で、(B/k -E)(A/m-E) = E

展開して、BA/(km)= B/k +A/m

 よって、BA=mB+kA で、(***)より、AB=BA が成立


(コメント) AB = kA + mB ならば、AB=BA がなりたつことを、単に、A、Bの交換でなく、可
      逆性から示されるということを、JA1NKAさんにも追認していただきました。


 りらひいさんからのコメントです。(平成26年2月7日付け)

 空舟さんの追記について、私も証明はしていませんが、2×2行列では複素数を用いないと
難しそうな雰囲気が確かにしますね。

 私も、「AB=A2+B2 かつ AB≠BA」である例を作ってみました。

 k≠0 として、A=[[2,0],[0,-3-]]、B=[[3+,k],[0,-3+]]


 空舟さんからのコメントです。(平成26年2月7日付け)

  が現れることは、実数の方程式として xy = x2+y2 を解いたときにが現れること
と関係あるんじゃないかなと思いつきましたが、根拠は見つけられていません。何かあるかも
しれません。


 りらひいさんからのコメントです。(平成26年2月7日付け)

 私が行った計算では、x2+xy+y2=0 という式からが現れました。この式の解は一般に、
x=t、y=tω (tは任意の複素数,ωは1の3乗根) とあらわされますから、ここからが出
てきます。


 りらひいさんからのコメントです。(平成26年12月15日付け)

 2014年もあと少しということで、いろいろ整理していたら、今年2月ごろの話題に関する計
算メモが出てきました。そのままお蔵入りしてしまったら、もやもやしたまま年越しとなりそうな
ので、簡単にまとめて書き込んでおこうと思います。

趣旨

2次正方行列A、Bで、AB=A2+B2 かつ BA≠A2+B2 を満たすものの例を作りたい。


E={{1,0},{0,1}} (単位行列) とする。AB=A2+B2 かつ BA≠A2+B2 となるためには、A-Tr(B)E
と B-Tr(A)E が零因子となることが必要である。

 そこで、A-Tr(B)E と B-Tr(A)E を次のようにおく。

 A-Tr(B)E={{ac,ad},{bc,bd}} 、B-Tr(A)E={{eg,eh},{fg,fh}}

 ただし、a,b,c,d,e,f,g,h は、次の[1],[2],[3],[4]を満たす複素数とする。

  [1]a≠0 または b≠0
  [2]c≠0 または d≠0
  [3]e≠0 または f≠0
  [4]g≠0 または h≠0

 これからA、Bを求めると次のようになる。

  A={{(ac-2bd-eg-fh)/3,ad},{bc,(-2ac+bd-eg-fh)/3}}

  B={{(-ac-bd+eg-2fh)/3,eh},{fg,(-ac-bd-2eg+fh)/3}}

 このとき、ABおよびBAは次のようになる。

  AB=A2+B2-(s/3)E+(ce+df){{ag,ah},{bg,bh}} 、BA=A2+B2-(s/3)E+(ag+bh){{ce,de},{cf,df}}

ただし、sは次式で定義される。 s=(ac+bd)2+(ac+bd)(eg+fh)+(eg+fh)2

 以上より、 (s=0 かつ ce+df=0 かつ ag+bh≠0) ならば (AB=A2+B2 かつ BA≠A2+B2

が成り立つ。


 以前、私が挙げた例は、 b=3, d=-1-√(-3), e=2, g=3, h=k/2≠0, a=c=f=0 としたものです。

また、s=0 が、 x2+xy+y2=0 の形となっています。


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