・ 見かけは悪いが美しい数              S.H氏

 例えば一般の3次方程式や4次方程式を、解の公式に従って解くと、答に平方根、立方根、
2重根号などが入り乱れて、「汚いな〜」という経験をされた方は多いと思う。しかし、ある工
夫をすると、手品のように、我々が知っている身近な数になる場合もある。

 の値は、実は、−9 に等しい。

 上記のことをすぐに信用する人は多分いないだろう。しかし、「伊東家の食卓」のお父さん
風にいえば、「なるものはなる!」である。実際に、確かめてみよう。

(解) α= とおくと、α2 なので、 分子 = (1−α+α2)3

 いま、X= 1−α+α2 とおくと、αX=α−α2+2 = α−(X−1+α)+2=3−X

さらに、X2 = (1−α+α2)2 = 3(α2−1) なので、X4 = 9(α2−1)2 = 9(3−2X)

 ここで、(分母)・X = (1−α)X = X−αX = 2X−3

      したがって、 与式 = −9  (終)

 このような計算技法は、「私の備忘録」の中の裏技の記録 『関数の値』 においても
活用された。

 (別解) (1+α)(1−α+α2) = 1+α3 = 3 であることを用いれば、もっと楽に求め

     ることが出来る。

      このとき、  (1+α)3(1−α) = (1+α)2(1−α2

                         = (1+2α+α2)(1−α2

                         =1−2α3=−3
     なので、
            与式 = 27/(−3) = −9  (終)

(参考文献:1995年度日本数学オリンピック 国内予選問題)


 上記の問題について、当HPがいつもお世話になっているS(H)さんが多項式論からのア
プローチを試みられた。(平成21年2月8日付け)

(解) α=1− とおくと、 (α−1)3=−2 より、 α3−3α2+3α+1=0

  このことから、多項式 F(x)=x3−3x2+3x+1 は、α の最小多項式である。

  このとき、 F(x)+(−x2+3x−3)x=1 であるので、有理数体Qに α を添加した体

  Q(α)=Q[x]/(F(x)Q[x]) において、 1/α=−α2+3α−3 が成り立つ。

  すなわち、 1/α=−(1−2+3(1−)−3=−1−

    したがって、 与式=(1−3(−1−

               =−(1−2(1−)(1+

               =−(1−2{(1+2

               =3(1−)(1++2

               =3(1−4)=−9  (終)

(コメント) 次のように計算してもいいかも...と思って計算したら意外に大変だった!

      与式=(1−α+α23(−α2+3α−3)

         =(1−α+α22{(1−α+α2)(−α2+3α−3)}

         =(α4−2α3+3α2−2α+1)(−α4+4α3−7α2+6αー3)

         =(α3−3α+1)(α3−4α2+7α−3)

         =3α(α−2)(−α2+4α−4)

         =−3α(α3−6α2+12α−8)

         =−3α(−3α2+9α−9)

         =9(α3−3α2+3α)

         =−9


(追記) 平成21年2月7日付け

 の値は、実は、 に等しい。

 そんな問題が、東京理科大学(平成21年度)で出題された。

 一応正解をなぞっておこう。

  、  とおくと、明らかに、 αβ=2 である。

 また、
     α3−β3=(α−β)3+3αβ(α−β)=(α−β)3+6(α−β)=20

において、 x=α−β とおくと、 x3+6x−20=0 となる。

 このとき、 (x−2)(x2+2x+10)=0 において、 x2+2x+10=0 は実数解を持た

ないので、 x=2 となる。 すなわち、

        =2

 冒頭の問題の出典は定かではないが、東京理科大学の問題は明らかに3次方程式の解
法を意識した問題であることが伺える。

 実際に、 3次方程式 x3+ax+b=0 を解くには、 u 、v についての方程式

   (u−v)3+a(u−v)+b=0

を満たす一組の解を見つければよい。

 (u−v)3=u3−3u2v+3uv2−v3=u3−v3−3uv(u+v)

なので、 u3−v3+(−3uv+a)(u+v)+b=0 となる。

 そこで、 u3−v3=−b 、 uv=a/3 となる u 、v を求めればよい。

 u3 、−v3 は、2次方程式 t2+bt−a3/27=0 の解となる。

 これと先の結果を合わせると、 α3 、−β3 は、2次方程式

     t2−20t−8=0

の解となる。逆に考えれば、 α−β は、3次方程式 x3+6x−20=0 の解の一つとな

る。


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