・これって算数?                    S.H氏

 とある中学校の入試問題に、次のような問題が出題された。

問題 3で割って2余り、5で割って3余る2桁の整数はいくつあるか。

 この問題に対して、私自身すぐ思いつく解法は次のようである。

  3X+2=5Y+3 より、3X−5Y=1
 ここで、3・2−5・1=1 なので、3(X−2)=5(Y−1)
  よって、X−2 は、5 の倍数なので、X−2=5・K (K:整数)とかける。
 すなわち、X=5・K+2 となる。したがって、条件を満たす数は、
  3X+2=15K+8 (K:整数) の形となる。
 10≦15K+8≦99 で、Kは整数より、1≦K≦6
  よって、求める整数は、6個ある。

 しかしながら、このような解答をする小学生は、おそらくいないだろう。算数的に解くとすれば、
多分次のようになるであろう。

 条件を満たす最小の数は、8 である。この数に、3と5の最小公倍数15を次々に加えていけ
ば、条件を満たす数が全て求まる。すなわち、23、38、53、68、83、98 の6個である。

 あるいは、簡単に、100÷15 を計算して、6個としてもよい。

 いくら算数的といっても、多分このような解答をする小学生は、やはりいないのでは?と思う。
2つの解法は、表現こそ違いがあるが、整数論に関する洞察が必要であり、このことを、数学
の専門教育を受けていない小学生に期待することは無謀というものであろう。

 はたして、この入試問題を出題された中学校は、どのような解法を期待したのであろうか?
上記のように、エレガントに解ける生徒を期待したのか、または、地道にコツコツ次のように解
く生徒を期待したのか、是非伺ってみたいものだ。

3で割って2余る2桁の数は、
11、14、17、20、23、26、29、32、35、38、41、44、47、50、53、56、59、62、65、
68、71、74、77、80、83、86、89、92、95、98
5で割って3余る2桁の数は、
13、18、23、28、33、38、43、48、53、58、63、68、73、78、83、88、93、98
以上から、両者に共通する数(青字)の個数は、6個である。

 ちなみに、上記の問題は、数列の練習問題として、よく高校生に課せられる問題である。
これまでの経験からいえば、地道に解く生徒のほうが、将来爆発的に伸びるように感じる。


(追記) YI さんから類題を頂きました。(平成26年3月30日付け)

 9で割ると7余り、16で割ると5余る最小の数は何でしょうか。また、一般の場合はどう
求めればよいのでしょうか。

 「いつ自然数?」の計算途中で出てきたものです。結果次第では進展があるかもしれませ
ん。

(解) 9x+7=16y+5 より、 9x−16y=−2

  ここで、 9・(−2)−16・(−1)=−2 なので、 9(x+2)=16(y+1)

  よって、 x+2=16t 、 y+1=9t (t は整数) と書ける。

 すなわち、 x=16t−2 、y=9t−1 (t は整数) が一般解である。

 t=1 のとき、最小で、x=14 、y=8 すなわち、求める数は、9・14+7=133 (終)


 らすかるさんから解答を頂きました。(平成26年3月30日付け)

 最小の自然数ですよね?

 9n+7=16m+5 から、 16m-9n=2 よって、 7m+9(m-n)=2 より、 7(2m-n)+2(m-n)=2

 (2m-n)+2(3(2m-n)+m-n)=2 したがって、 (2m-n)+2(7m-4n)=2 と書ける。

 例えば、2m-n=0、7m-4n=1 で成り立つので、この連立方程式を解いて、m=-1、n=-2

 よって、 m=9t-1 、n=16t-2 で成り立つので、最小の数は、t=1 とすれば、133


(コメント) 式変形が巧妙ですね!


 ABCDEFさんからのコメントです。(平成26年3月31日付け)

 小学校の算数でも高校の数学でも出てくる問題ですが、私は高校生であっても小学生のや
り方で解くことを推奨します。

 16で割って5余る自然数を小さい方から順に書くと、

   5、21、37、53、69、85、101、117、133、・・・・

このうち9で割って7余るのは、133だけなので、答えは、133


 YI さんからのコメントです。(平成26年3月31日付け)

 この問題の真意はというと、

 5n+3が17で割れるとき、nは、16x+5の形で、19で割れるときは、9x+7の形である
ことから、5n+3が17×19で割り切れるときのnはどんな形でなければならないか

という問題と同等でした。今回の結果から、nは、133+lcm(17,19)t より、133+323tの一般式
で表されます。・・・・一般化しないと役に立たないような気がします。


 DD++さんからのコメントです。(平成26年4月3日付け)

 冒頭の問題について、5で割って3余る数は、一の位が3か8。3で割って2余る数は、
(十の位と一の位の和)を3で割った余りも2なので、

 一の位が3のとき、十の位は、2か5か8 、一の位が8のとき、十の位は、3か6か9
 よって、23、53、83、38、68、98 の6つ

 数の範囲ではなく桁数を指定している点、3と5という数字の特殊性からすると、これを想
定していたんじゃないかと思いますがどうでしょうか。

 我々は一般化を考慮するあまり、目の前の問題の偶然的好都合に頼る解法を見落としが
ちであるという好例かもしれませんね。自省も込めて。


(コメント) DD++さん、解答をお寄せいただきありがとうございます。確かに、こちらの方が
      初等的で自然な解答という趣きですね。一般的な解法が思いつくことはもちろん
      大切ですが、問題の特殊性に着目することも重要とのお考えに賛同いたします。


 ABCDEFさんからのコメントです。(平成26年4月3日付け)

 あまり考えずに出題してるんではないかと思います。「2で割って」は今ひとつということで、
3と5にしただけかなと感じます。

 2桁の整数は90個で、3と5の最小公倍数は15、90÷15=6で割り切れる。従って、3で割って
2余り、5で割って3余る2桁の整数を具体的に求めなくても6個とわかります。

 もちろんこれを説明するより具体的に書いた方が早いのは間違いないですが...。

 「3で割ってa余り、5で割ってb余る2桁の整数は何個あるか。」の形の問題は、a、bがなん
であっても6個だから、具体的に求めることをさせるためには数字を変えた方がいいでしょう。

 小学校の算数の問題だとしても高校数学の問題だとしても要求されることは、

1 具体的に条件を満たす(最小の)整数を求めること
2 条件を満たす整数は1で求めた数に3と5の最小公倍数の整数倍を加えたものであること
 を理解していること

の2つでしょう。本当は2の方が重要ですが、問題を解くうえでは、1の方が重視されるように
なってしまうのはしょうがないのでしょう。


 DD++さんからのコメントです。(平成26年4月3日付け)

 冒頭の記述を読んでいただければわかりますが、これは、ABCDEFさんがおっしゃる解法
は整数論的洞察が必要で、小学生に期待するのは無謀で、だとしたら出題者の意図は?
と提示された疑問に対しての私の考えを述べたものです。

 そこに対して疑問の前提をまるごと覆す反論をされましても私としては何とも...。

 また、これが仮に大学入試であったとしても、「条件を満たす整数が15ごとに存在する」とい
うのが本当にこの問題の本質かといえば疑問ですね。「100以下の数で」とかいう指定だった
ならそれが本質なのでしょうが、「2桁で」という指定なのであればやはり「位取り記数法の各
桁の数字と剰余の関連性」の方が本質のように私には思えます。

 もちろんどっちを使おうが論理破綻さえなければ与えられる点数は一緒でしょうけど。


 ABCDEFさんからのコメントです。(平成26年4月3日付け)

 失礼しました。冒頭の記述も読まないで、読んでいれば書くはずのないことを書いてしまい
ました。中学入試の問題だったのですね。となると、3と5はよく考えて選ばれていると考える
べきでしょう。

 DD++さんが書かれた10進法で書かれた数を5で割った余り、3で割った余りが簡単にわか
ることを使って解く方法もあるし、素直に小さい方から順に書いていくという方法でもどちらで
も解けることがこの形で出題した理由だと考えられます。

 私には後者の発想しか浮かびませんが...。多様な解法がありうる問題としての出題とい
うことではないでしょうか。


 GAI さんが冒頭の問題を拡張されました。(平成26年4月3日付け)

 ここは問題を進化させて

<発展問題> 3で割って2余り、5で割って3余り、7で割って5余り、11で割って7余る4桁
         の整数はいくつあるか。


 ABCDEFさんが考察されました。(平成26年4月3日付け)

 4桁の整数は9000個で、3*5*7*11=1155、9000÷1155=7・・・・915 だから、7個か8個だが
8個の可能性の方がかなり高い。マークシートであって時間がないなら8個と答える。

 7個か8個かを確定するためには条件を満たす最小の整数を求めるかそれに近いところま
でいく必要がある。5で割って3余り、7で割って5余るから、35n-2となることがわかる。4桁で最
小のこの形の数は1013、これは3で割って2余るも満たしている。だから、1013に、3*5*7=105
を加えていって、11で割って7余るのを見つければいい。
 1013+105=1118が条件を満たすので、答えは、8個


 GAI さんからのコメントです。(平成26年4月3日付け)

 冒頭の問題および上記の問題に関連して、中国剰余定理を調べていて不思議に思ったこ
とが起きたので、皆さんに考えてもらいたく問題提起します。

 次の条件を満たす整数は何でしょう?

 3で割ったら1余り、4で割ったら2余り、5で割ったら3余り、6で割ったら4余る。
 3で割ったら1余り、4で割ったら2余り、5で割ったら3余り、7で割ったら4余る。
 3で割ったら1余り、4で割ったら2余り、5で割ったら3余り、8で割ったら4余る。
 3で割ったら1余り、4で割ったら2余り、5で割ったら3余り、9で割ったら4余る。
 3で割ったら1余り、4で割ったら2余り、5で割ったら3余り、10で割ったら4余る。
 3で割ったら1余り、4で割ったら2余り、5で割ったら3余り、11で割ったら4余る。
 3で割ったら1余り、4で割ったら2余り、5で割ったら3余り、12で割ったら4余る。
 3で割ったら1余り、4で割ったら2余り、5で割ったら3余り、13で割ったら4余る。
 3で割ったら1余り、4で割ったら2余り、5で割ったら3余り、14で割ったら4余る。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 3で割ったら1余り、4で割ったら2余り、5で割ったら3余り、29で割ったら4余る。
 3で割ったら1余り、4で割ったら2余り、5で割ったら3余り、30で割ったら4余る。

 これら一連の問題のうち、解が存在しないものがどの問題であるかが事前に指摘できます
か?


 らすかるさんからのコメントです。(平成26年4月3日付け)

 割る数が互いに素なら存在するはずで、互いに素でない場合は最大公約数で割った場合
の余りの関係を調べれば良いだけだと思います。

 4で割って2余るのなら、4の倍数で割った時に4n+2余るはずなので、8、12、16、20、24、28
で割って4余ることはありません。

 5で割って3余るのなら、5の倍数で割った時に5n+3余るはずなので、10、15、20、25、30で
割って4余ることはありません。

 3の倍数で割って4余れば、3で割って1余りますので、3で割って1余ることは存在しない条件
にはなりません。

 4で割り切れない偶数の場合は、4で割って余り2と両立します。

 よって、存在するものは、 6 7 9 11 13 14 17 18 19 21 22 23 26 27 29
     存在しないものは、 8 10 12 15 16 20 24 25 28 30        になると思います。


(追記) GAI さんから問題を頂きました。(平成26年4月30日付け)

 1000個近いキャンディを子供達へ、7個ずつ配ると4個余り、5個ずつ配ると3個余り、3
個ずつにすると2個余ったという。正確に、最初キャンディは何個あったのか?

 また、余りなく同数ずつを配るためには子供の人数は?


(解) 題意より、 7m+4=5n+3=3k+2 より、 5n−7m=1 、 3k−5n=1

 5・(−4)−7・(−3)=1 より、 5(n+4)=7(m+3)

  よって、 n=7t−4 、 m=5t−3

 n=7t−4 を、3k−5n=1 に代入して、 3k−5(7t−4)=1 即ち、3k−35t=−19

 このとき、 3・(−18)−35・(−1)=−19 より、 3(k+18)=35(t+1)

   よって、 k=35λ−18 、t=3λ−1 となり、結局、

    m=5t−3=15λ−8 、n=7t−4=21λ−11 、k=35λ−18

となる。そこで、 7m+4=105λ−52

 ここで、λ=10 のとき、7m+4=998 で、「1000個近いキャンディ」があったことから、
これが求める解となる。即ち、最初キャンディは、998個あった。

 998=2×499 なので、余りなく同数ずつを配るための子供の人数は、

  1人 、2人 、499人 998人


(コメント) 問題を解き終わってふと思った疑問:「子供の数は配る個数で変わる?」
      ということは、非常にたくさんの子供たちがいて、例えば、7個ずつ配って4個余る
      場合、7個配られた子供と全く配られなかった子供の両方がいるということ?
       数学の問題としては成立するが、人道的には好ましくない問題ですね!


 らすかるさんからのコメントです。(平成26年4月30日付け)

 3×5÷7は1余るから、3×5×4÷7は4余る。3×7÷5は1余るから、3×7×3÷5は3余る。
5×7÷3は2余る。よって、3×5×4+3×7×3+5×7=158は条件を満たすから、1000個近い
なら、158+105×8=998個。
 余りなく同数ずつ配れる人数は、1人か2人か499人か998人
(1人は「同数ずつ」とは言わないので除外するなら、2、499、998)


(コメント) とても斬新な解法ですね!初めて見る計算です...。


 GAI さんからのコメントです。(平成26年4月30日付け)

 流石鮮やかな解法ですね。代表的中国剰余定理の問題を敢えて出題したのは、次のよう
な解答に出会ったからでした。(問題文は適当に作りかえましたけど・・・)

 求める数の代表をNとすると、条件より、

 N≡4 (mod 7)・・・・・(3) 、N≡3 (mod 5)・・・・・(2) 、N≡2 (mod 3)・・・・・(1)

 ここで、m1=3、m2=5、m3=7 とおき、

  N=N1+m1・N2+m1m2・N3=N1+3N2+15N3・・・・・(4)

と置いて、(・・・この部分が新鮮であった。)

 (4)→(1)に代入して、N=N1≡2 (mod 3) から、N1=2を選ぶ。

 (4)へ入れ、(2)と組み合わせて、 N=2+3N2≡3 (mod 5)

 よって、3N2≡1 (mod 5) から、N2=2 を選ぶ。

 (4)へ入れ、(1)と組み合わせて、

 N=2+3×2+15N3=8+15N3≡ 4 (mod 7)

よって、 15N3≡-4 (mod 7)、これから、N3=3を選ぶ。

 したがって、(4)から、N=2+3×2+15×3=53

 LCM(3,5,7)=105 から求める数は、53+105×9=998(個)

というものでした。私が感激した解答にほとんど、いやそれ以上に洗練されたお手並みに更
に感激しました。


 DD++さんからのコメントです。(平成26年4月30日付け)

 この数字の場合、非常に特徴的な解答ができます。

 x≡4 (mod7) 、x≡3 (mod5) 、x≡2 (mod3) より、

  2x≡1 (mod7) 、2x≡1 (mod5) 、2x≡1 (mod3)

 よって、2x-1 は、105の倍数かつ奇数で、ほぼ2000なので、

  2x-1=105×19=1995 より、x=998

※もちろん一般的に使える方法ではありません。たぶん...。


(コメント) なるほど!上手い解法ですね。


(追記) 令和元年10月6日付け

 最近、数学の啓蒙書を読んでいて、次の問題に上記のDD++さんの手法が使えることに
気が付いた。

問題 2で割って1余り、3で割って2余り、4で割って3余り、5で割って4余り、6で
   割って5余るような最小の自然数を求めよ。


(解) x≡1 (mod2) 、x≡2 (mod3) 、x≡3 (mod4) 、x≡4 (mod5) 、x≡5 (mod6) より、

x≡−1 (mod2) 、x≡−1 (mod3) 、x≡−1 (mod4) 、x≡−1 (mod5) 、x≡−1 (mod6)

 よって、求める x+1 は、2、3、4、5、6 の最小公倍数 60 に等しいので、 x=59  (終)



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