・ 循環小数の不思議 S.H氏
分数を小数に直す場合、有限小数か循環小数の何れかになる。有限小数も、最後に 0
が循環すると考えれば、循環小数とみなせる。また、逆に、有限小数、循環小数は、必ず
分数に直すことができる。
(例) 0.6666666・・・・・・・ を、分数に直してみよう。
X=0.6666666・・・・・・・ とおくと、 10X=6.6666666・・・・・・・・ である。
これらを辺々引いて、 9X=6 となり、 X=2/3 という分数になる。
上記解答以外に、無限等比級数の公式を使った解法もあるが、上記解答に比べて相当
見劣りがする。
0.6666666・・・・・・・
=0.6+0.06+0.006+・・・・・・・=0.6/(1−0.1)=0.6/0.9=2/3
1 という数を、素数で割った場合、その余りは必ず素数より小さいので、必ず何れは循
環する。問題は、何桁目で循環するのかということである。
有限小数は、0が循環していると考えればよいが、この場合除外する。
いくつか実験してみよう。
1/3=0.33333・・・・
1/7=0.142857142857・・・・
1/11=0.0909・・・・
1/13=0.076923076923・・・・
1/17=0.05882352941176470588235294117647・・・・
1/19=0.052631578947368421052631578947368421・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
上記の実験で、ある法則を発見することができる。
(合同の記号≡については、こちらを参照)
1/3 は、1桁目で循環している。実は、101≡1 (mod 3)
1/7 は、6桁目で循環している。実は、106≡1 (mod 7)
実際に、101≡3 (mod 7) より、103≡27≡−1 (mod 7) から明らか。
1/11 は、2桁目で循環している。実は、102≡1 (mod 11)
実際に、101≡−1 (mod 11) より明らか。
1/13 は、6桁目で循環している。実は、106≡1 (mod 13)
実際に、101≡−3 (mod 13) より、103≡−27≡−1 (mod 13) から明らか。
1/17 は、16桁目で循環している。実は、1016≡1 (mod 17)
実際に、102≡−2 (mod 17) より、104≡4 (mod 17)
よって、 108≡16≡−1 (mod 17) から明らか。
1/19 は、18桁目で循環している。実は、1018≡1 (mod 19)
実際に、103≡−7 (mod 19) より、109≡−343≡−1 (mod 19) から明らか。
以下同様である。
このように、循環する小数 1/p (pは素数)が何桁目で循環するかをみるには、合同式
10n≡1 (mod p)
を満たす n の値を求めればよい。これは、とても面白い性質だと思う。
フェルマーの定理によれば、
Xp-1≡1 (mod p) (ただし、X は、p で割り切れない)
が成り立つので、そのような n は必ず存在する(即ち、必ずどこかで循環する)。
上記循環小数の計算では、Excel のマクロを活用して求めたが、筆算で計算する場合、
計算ミスも起こりやすい。循環する桁数が前もって分かっていれば、検算に活用できると思
う。
幼少の頃、天才数学者のガウスは、循環する小数 1/p をある程度暗記していたと聞く。
そういったもろもろの積み重ねが、法則の発見につながったのだろう。上記の実験で、その
雰囲気が伝われば幸いである。
(参考文献:遠山 啓 著 数学入門(下) (岩波新書))
(追記) 参考までに使用したExcel のマクロを書いておこう。
Function Q(a,b,n)
If n=0 Then
Q=””
Else
Q=Int(10*a/b) & Q(10*a Mod b,b,n−1)
End If
End Function
Excel を起動し、[ツール]−[マクロ]−[Visual Basic Editor] とクリックして Editor
を起動し、[挿入]−[標準モジュール] を選択して、上記を記述すればよい。後は、Excelの
任意のセルに、例えば、 =Q(1,7,30) と打ち込むと、瞬時に、1÷7 の小数点以下
30桁までの数列を得ることができる。
Excel のセルに普通に「=1/7」と打ち込むと、「0.142857143」と小数点以下9桁ま
でしか得ることができない。上記マクロを用いると、より詳しい小数展開が得られて重宝で
ある。
(追記) 上記では、10n≡1 (mod p)を利用して、循環小数が何桁目で循環するの
を見たが、次の性質に着目して求めることもできる。
0.66・・・ を、分数に直す際、 X=0.66・・・ とおいて、 10X=6.66・・・ から、
9X=6 を解いて、 X=2/3 を求めた。
この場合に着目するところは、 X=6/9 という形である。9=101−1 で、その逆数は、
1/9=1/(10−1)
=(1/10)・1/(1−(1/10))
=(1/10)・(1+(1/10)+(1/10)2+(1/10)3+・・・)
=1/10+1/102+1/103+・・・
と書ける。 したがって、 循環小数 1/9 は、1桁目で循環し、その循環節は「1」である。
同様に、 99=102−1 なので、その逆数は、
1/99=1/102+1/104+1/106+・・・
となり、 循環小数 1/99 は、2桁目で循環し、その循環節は「01」である。
例 分数 2/3 は、6/9 と書けるので、1桁目で循環し、その循環節は「6」である。
例 分数 5/11 は、45/99 と書けるので、2桁目で循環し、その循環節は「45」である。
もっとも、 7×(142857)=999999 となる数 142857 を発見して、分数 1/7 は、
142857/999999 と書けるので、6桁目で循環し、その循環節は「142857」であると
する方は、「多分いない!」と思う。
(追記) 平成18年5月31日付け
今頃の高校1年生は、実数という話の中で循環小数のことを学ぶ。(進学校といわれるとこ
ろでは既に終わっているかもしれないが...)
その計算の際、上記のようなことを知っていれば、自分が計算ミスをしているのかしていな
いのかの判定ができる。ただ、それは高校1年生にとっては難しすぎる判定法である。
最近、もっと簡便な判定法があることを知った。それは、
7以上の素数 p に対して、その逆数 1/p の循環節は必ず 9 の倍数になる
ということである。
たとえば、 1/7=0.142857142857・・・・ から、1/7 の循環節は、142857 で、
各位の数の和 1+4+2+8+5+7=27 が9の倍数であることから、142857
は9の
倍数となる。
1/7 程度だったら計算ミスのしようがないかもしれないが、一応簡便な検算が瞬時にで
きる。
1/17 などは、循環することが分かってはいても、
1/17=0.05882352941176470588235294117647・・・・
のような計算が続くと辟易してしまう。これも循環節 0588235294117647
について、
0+5+8+8+2+3+5+2+9+4+1+1+7+6+4+7=72
から、9の倍数となることが確かめられ、ほぼ計算は合っているものと推察される。
このような事実は次のようにして示される。
たとえば、 x=0.142857142857・・・・ とおくと、
1000000x=142857.142857142857・・・・
小数点以下が同じ数字の並びなので、辺々引いて、
999999x=142857
左辺は9の倍数なので、右辺の142857も9の倍数となる。
(参考文献:玉木英彦 著 小学生にピタゴラス (みすず書房))
(追記) 平成18年7月17日付け
上記において、循環する小数 1/p (pは素数)が何桁目で循環するかは、
10n≡1 (mod p)
を利用すればよいことが分かった。
すなわち、循環節の長さが n であるとき、10n を p で割った余りは、1 となる。
このことに関連して、次の事実も知られているようだ。
既約分数 b/a において、a は、2 および 5 を素因数に持たないものとする。
このとき、
既約分数 b/a の循環節の長さが n であるとき、10n を a で割った余りは、
b の値に無関係で、いつも 1 である。
(証明) r = b/a ( a と b は互いに素)とおくと、条件より、ある自然数
m に対して、
10m+n・r − 10m・r =s ( s は自然数)
と書ける。 すなわち、 (10n − 1)10m・b = s・a ( s は自然数)
条件より、右辺は a で割り切れ、10m・b と a は互いに素なので、10n − 1 が a で割
り切れる。したがって、10n を a で割った余りは、b によらず、いつも 1 である。(終)
例 10 を 3 で割った余りは、1 なので、既約分数 1/3 や 2/3 の循環節の長さは、1
例 1000000 を 13 で割った余りは、1 なので、既約分数 1/13
、2/13、・・・ の循環
節の長さは、6
(追記) 平成21年4月10日付け
上記において、1/7 の循環節は、「142857」であることを知ったが、この数は、さらに
次のような面白い現象を引き起こすことを最近知った。
142857×326=46571382
と、電卓を使って計算結果を求めては、その面白さはうかがい知れない。
筆算で求めると、
となり、同じ数字が縦に並ぶ様は、美しい!
実は、このような現象が起きるカラクリは、乗数の「326」にある。この数は、ある特殊な
計算で求められる。
左の筆算から、
|
(追記) 平成25年9月21日付け
1/7 の循環節「142857」について、さらに、次のような面白い現象があることを、放送
大学文京校舎で行われた数理物理セミナーのレクチャーの中で、雑談として飯高先生より
紹介された。
循環節を真ん中で2つの数142、857に分け足してみると、142+857=999 となる。
一般に、
p進展開された数の循環節を同じように計算するとその和の各位の数字は、p−1
になる。(→ 参考:「p進法展開」)
(追記) 令和5年1月5日付け
142+857=999 となる以外に、 14+28+57=99 という」計算も面白い。さらに、
142857×142857=20408122449 であるが、真ん中で分けて、
20408+122449 を計算してみると、142857 になるのには驚かされる。
このような性質を持つ数として、「4950」も有名である。
実際に、 4950×4950=24502500 で、真ん中で分けて、
2450+2500=4950 となる!不思議な計算だ...。