・一対一対応 S.H氏
物を数えるとき、「1、2、3、・・・」と順に読み上げたり、または「1、2、3、・・・」と指を折っ
たりする動作を人間は成長する過程でいつ頃獲得するのだろうか?私自身あまり記憶が
定かではない。何れにせよ、物を数えるということは、自然数との一対一の対応そのもの
である。
ここで、次のような事実が知られている。
0 から 9 までの数をそれぞれ3倍して10個の数を求めると、それらの下位1桁に
は、0 から 9 までがどれも1回ずつ現れる。
実際に計算してみると、
0 、3 、6 、9 、12 、15 、18 、21 、24 、27
となるので、確かに成り立つことは分かる。
このことを別な視点でもっともらしく証明してみよう。
(証明) 集合 A={ 0 ,1 ,2 ,3 ,4 ,5 ,6 ,7 ,8 ,9 }とし、集合
A から集合 A への
写像 F を、 F(x)=3x (mod 10) と定義する。F は明らかに、Well Defined である。
さらに、F は、単射である。
実際に、 F(x)=F(y) とすると、 3x (mod 10)=3y (mod
10)
すなわち、 3(x−y)≡0 (mod 10) において、3と10は互いに素なので、
x−y≡0 (mod 10)
x、y はともに集合 A の要素なので、 x=y が成り立つ。
したがって、写像 F は、単射である。
このとき、集合 A から集合 A への写像 F は全単射となり、題意が示された。 (証終)
このような考え方を用いると、
0 から 999 までの数をそれぞれ3倍して1000個の数を求めると、それらの下位
3桁には、0 から 999 までがどれも1回ずつ現れる。
という事実も一瞬で明らかとなるだろう。
(参考文献: 野崎昭弘 著 数学屋の楽しみ (白揚社))