・ 赤いぼうし                      S.H氏

 このページは、平成21年1月1日に書いている。今年も多くの塾生達からメールで「謹賀
新年!」のご挨拶を頂いた。ある女子高生からは、「今度また絡みに行くね...!」などと
怖い一言も。また、歌手の岩崎宏美さんを始め多くの方から年賀状を頂いた。

 その中で毎年楽しみにしているのが北大の中村先生からの年賀状だ。定例的な挨拶は
簡単に済ませられて、いろいろな文献の紹介の方が中心なのだが、コンパクトに要点がま
とめられていて浅学な我が身は、いつもはっとさせられる。

 今年は「赤いぼうし」の話題であった。1984年に、「文 : 野崎昭弘 絵 : 安野光雅」で
童話屋から刊行された、「美しい数学」シリーズの中の絵本で、低学年向けとあるが、内
容は、大人でも読み解くことが楽しくなるような、「十分数学的」な書籍である。

 北大の近くの高校で昨年行った出前講義での話題とのことである。

 赤い帽子を3つ、白い帽子を2つ持った帽子屋さんが、太郎さん、花子さんともう一
人(例えば、これを読者のあなたとしよう!)の3人の前に現れた。

 3人が目をつぶっている間に帽子屋さんが3人に無作為に帽子を被せた。

 どの人も自分の帽子は見えないが、他の2人の帽子は見ることができる。

 帽子屋さんが、「太郎さん→花子さん→あなた」の順番で質問をする。

帽子屋さん:「太郎さん、あなたの帽子は何色ですか?」

 太 郎さん:「う〜む。分かりません!」

帽子屋さん:「花子さん、あなたの帽子は何色ですか?」

 花 子さん:「全然、分かりません!」

帽子屋さん:「それでは、あなたの帽子は何色ですか?」

 帽子屋さんの質問に対して、太郎さん、花子さんの答え方から、あなたは、自分の
帽子が何色か必ず分かる(筈)!

 さて、あなたの帽子の色は何色?


 かなり有名な問題で、以前、TVのクイズ番組でみたような...予感。

 答えは「赤い帽子」であるが、次のように論理的に考えると答えが導かれる。

 まず、起こりうる全ての場合は、下記の(1)〜(7)の7通りしかない。太郎さん、花子さん
の答え方から、「あなたの帽子の色」の起こりうる場合が絞られてくる。

  太郎さん   花子さん   あなた     備       考  
(1)        
(2)       起こり得ない
(3)        
(4)        
(5)       起こり得ない 
(6)       起こり得ない 
(7)        


(2)の場合、太郎さんから見て、「赤1、白1」なので、太郎さんが「分からない」と答えるの
は当然だ。ただ、次の花子さんから見て、「あなた」は白なので、もし、自分が白だったら、
太郎さんは「赤色」と答えるはずなのに「分からない」と答えている。ということは、花子さん
は自分の帽子が赤と答えられる筈だ。なのに、花子さんは「分からない」と答えている。
 よって、この場合は起こり得ない。

(5)の場合、太郎さんから見て、「白2」なので、太郎さんは「赤色」と答えられる筈なのに
「分からない」と答えている。
 よって、この場合は起こり得ない。

(6)の場合、太郎さんから見て、「赤1、白1」なので、太郎さんが「分からない」と答えるの
は当然だ。ただ、次の花子さんから見て、「白2」なので、花子さんは「赤色」と答えられるは
ずなのに「分からない」と答えている。
 よって、この場合は起こり得ない。

以上から、残りの場合全てにおいて、あなたの帽子の色は「赤色」であることを示している。

 厳密に、この問題に取り組むには上表のような吟味が必要と思うが、会話の中で、この
問題を考えるには仰々しい。

 次のように軽妙に考える方が、より実戦的であろう。

 「私が、白だと仮定する。最初に答えた太郎さんが分からないということで、花子さんは赤
と気がつくはずだ!ところが、花子さんは分からないという。ということは、私は赤なんだ!」

 同様の問題が巷間に流布しているようだ。

 3人 A、B、C がいて、Aの後にB、Bの後にCと、縦一列に並ぶ。前に並ぶ人の帽子の色
は分かるが、自分自身と自分の後ろに並ぶ人の帽子の色は分からないものとする。
 また、3人は、赤い帽子が3個、白い帽子が2個のうちのどれかを被っていることは知って
いる。

 誰かがCさんに聞いた。 「あなたの帽子は何色ですか?」

 Cさん:「分かりません。」

 また、誰かがBさんに聞いた。 「あなたの帽子は何色ですか?」

 Bさん:「分かりません。」

 Bさん、Cさんの返事を聞いて、Aさんは自分の帽子が何色か分かったという。

 さて、あなたはAさんの帽子が何色か分かりますか?



 Cさんが「分からない」ということは、Aさん、Bさんの帽子は、「赤、赤」 または 「赤、白」
の何れかである。
 だから、もし、Aさんが「白」と仮定すると、Bさんは「赤」と分かるはずである。それが分か
らないということなので、Aさんは「赤」と決まってしまうのだ。


(コメント) zk43 さんからの情報によると、「赤い帽子の問題」と同様の問題が、多胡 輝
      さんの「頭の体操」第1巻にあるそうです。何でも、

       「囚人3人に帽子をかぶせ、自分の帽子の色が分かったら出獄できる」

      というような設定だったとか...。制限時間10時間くらいの最難関問題だったら
      しいです。今度図書館に行って、のぞいてみようっと!


(追記) 令和元年11月12日付け

 上記と同様の問題に最近遭遇したので考えてみたい。

 3人A、B、Cが1列に前方を向いて並んでいる。今、帽子が白3個、黒2個用意されていて
そこから1つずつ選んで、A、B、Cに分からないようにDさんが3人A、B、Cに帽子を被せる。
3人A、B、Cは、自分が被っている帽子が何色か分からないが自分の前の人の帽子の色
は分かる。

 そこで、Dさんは3人に「自分の帽子の色が分かる人はいますか?」と尋ねたが誰からも
返答がなかった。もう一度同じことを聞いても、やはり誰からも返答がなかった。

 同じことを、もう一度尋ねたら、3人A、B、Cのうちの誰かが正解を答えた。果たして誰が
正解したのだろうか?

 起こり得る可能性は、下表の通りで7通りある。

  (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)

 1回目のDさんの質問に対し返答がなかったということは、(7)は起こりえないということ。
(7)では、黒2が見えているので、自分の帽子の色は白と分かるはず。

 (7)は起こりえないので、A、Bの少なくとも一人の帽子の色は白ということが分かる。
よって、2回目のDさんの質問に対し返答がなかったということは、(4)(6)は起こりえない
ということ。(4)(6)ではAが黒なので、Bは白と分かるはず。

 そうすると、何れの場合もAは白と分かる。よって、正解した人は、Aである。


(追記) 令和4年2月6日付け

 スマリヤンの論理パズル「正直村とウソつき村」に代わって、世紀の変わり目頃から、この
ページのような「帽子パズル」の人気が出てきた。自分の帽子は見えないが他人の帽子は
見えるという状況で、会話などの情報から自分の帽子の色を当てるというものである。

 このタイプの問題としては、上記でzk43 さんも話題にしている「賢者の問題」が有名だろ
う。

 囚人の3人の賢者に、3つの青い帽子と2つの赤い帽子を見せながら、どれかを被せた。
看守は、「自分の帽子が青と確信したら直ちに逃げ出せるが、それが赤だったら死刑」と言
う。
 看守の言葉を聞いて、3人の賢者はしばらく躊躇していたが、他人の様子を見て、3人とも
自分の帽子は青いと判断した。どうしてだろうか?

(解) 3人の帽子のうち2つが赤だったら、青の帽子を被っている者がすぐ気がつくはずだ
   が、直ぐに逃げ出さなかった。

  ということは、赤の帽子は高々1人。すると、青の帽子を被っている者は気がついて逃げ
 出すはずだが、逃げ出していない。

 ということは、3人の帽子の色はすべて青であることが分かる。  (終)


 Dengan kesaktian Indukmu さんからのコメントです。(令和4年2月7日付け)

 「賢者の問題」につきまして、次のようなバージョンの問題はいかがでしょうか。

 囚人の3人の賢者A、B、Cに、7つの帽子が見せられた。7つの帽子のうち、2つは赤色、
2つは黄色、3つは青色であった。

 刑務所長から「以後、一切の会話を禁ずる」と3人は言われた。そして、3人は目隠しをさ
れ、それぞれの頭に帽子がひとつ被らせられた。残りの4つの帽子はどこかに持ち去られ
た。

 目隠しが外されたあと、3人それぞれに4枚づつのカードが配られた。

 各自の手元にある1枚目のカードには、「1枚目:私が被っている帽子は赤色の帽子では
ない、このことが私にはわかる。」と書かれていた。

 2枚目のカードには、「2枚目:私が被っている帽子は黄色の帽子ではない、このことが私
にはわかる。」と書かれていた。

 3枚目のカードには、「3枚目:私が被っている帽子は青色の帽子ではない、このことが私
にはわかる。」と書かれていた。

 4枚目のカードには、「1枚目のカードも2枚目のカードも3枚目のカードも、その内容は私
の状況にとっては真ではない。」と書かれていた。

 刑務所長が言った。「これから各自に順番に質問を出す。質問に対する解答は、各自に与
えられたカードの中から1枚または複数枚を頭上にあげることで行うこと。」

 刑務所長がAに質問した。

「自分に与えられた状況に合致するカードはどれか。全てを上げよ。」

 Aは黙って4枚目のカードを頭上に上げた。

 刑務所長がBに質問した。

「自分に与えられた状況に合致するカードはどれか。全てを上げよ。」

 Bは黙って4枚目のカードを頭上に上げた。

 刑務所長がCに質問した。

「自分に与えられた状況に合致するカードはどれか。全てを上げよ。」

 Cはどのカードをあげるべきか。


 Dengan kesaktian Indukmu さんからのコメントです。(令和4年2月11日付け)

 CにはBの立場に立って考えることが必要でした。

 仮にBの視点からC自身の帽子の色が赤色ないし黄色だったとしましょう。このときのBの
思考をトレースします。

 まず、Aが4枚目のカードを頭上に上げたことが重要です。

 Aが、《BCともに赤色》ないし《BCともに黄色》を見ていたとしたならば、Aは、四枚目のカ
ードをあげることはありません。

 なんとならば、赤色の帽子は二個しかなく、また、黄色の帽子は二個しかないので、BCが
同色で、かつ、その色が赤または黄色だとしたならば、その同色の帽子をA自身が被ってい
ることはありえない、このようにAが考えるはずだからです。

 実際には、Aが4枚目のカードを頭上に上げたのですから、《Cが赤色ないし黄色の帽子を
被っていたときには》Bの視点からは、【Cの帽子の色は自分とは異なる】とわかったはずで
す。

 仮にBの視点からC自身の帽子の色が赤色ないし黄色だったときのBの思考をトレースし
たのですが、実際には、Bは、4枚目のカードを頭上にあげました。

 これらのことから、Cは、自分の帽子の色が青であると確信できます。あげるべきカードは

「1枚目:私が被っている帽子は赤色の帽子ではない、このことが私にはわかる。」

「2枚目:私が被っている帽子は黄色の帽子ではない、このことが私にはわかる。」

の両方となります。



  以下、工事中!


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