・虹の不思議                       S.H氏

 平成19年7月15日、「熱血!平成教育学院」(NTV系)で、虹の問題が出題された。

  虹の上と下は、それぞれ何色か?

気象予報士の石原良純さんによれば、次のように覚えるといいらしい。

  赤橙黄緑青藍紫(せきとうおうりょくせいらんし)

紫藍青緑黄橙赤という覚え方もあるようで、この場合は「知らせろ!男」と呪文を唱える
らしい。(赤を紅(こう)と読み替えるところがミソかな?)

 番組では、「覚え方は知っているが、上はどっちだったかな...?」と迷った石原さんで
あったが、見事に正解されていた。

 確かに、覚え方は知っていても、虹の原理を知らなければ迷うところである。

 虹は、観測者の背後から水平に近い角度で太陽光が空気中の水滴に差し込んだとき、
水滴内で屈折・反射したものが目に見える現象である。

 可視光線の中で紫の波長(4000Å)が最も短く、赤の波長(8000Å)が最も長い。真空
中ではどの波長の光も同じ速さであるが、真空とは異なる媒質中では、光の速さは波長
により異なる。つまり、波長の短い色の方が長い色に比べて光の速さは小さくなる。

 したがって、光の屈折率は媒質中での光の速さに反比例するので、波長が短いほど屈
折率は大きくなる。

 水滴に太陽光が水平に差し込んだとき、
                       

と光が分散し、上から順番に、赤橙黄緑青藍紫 と並んで見える。

(赤の方が水平に対する角度が大きいので、見え方が位置的に上方になる!)

 ヨーロッパでは、虹の色は6色という。それだけ日本人の方が色に関する感性が優れて
いるのだろう。


(追記) 平成26年7月3日付け

 虹の色の数はいくつ?という朝日新聞(’14年6月25日付け 夕刊)の記事が目に留まっ
た。

 日本では、虹の色は7色と相場が決まっているが、その歴史は意外に浅い。国によって、
その数が異なるようで、言語により、6色、5色、3色といろいろあるらしい。

 確かに、実際に虹を見てみると、本当に虹の色は7色かと問われると少し怪しい。ただ、
虹の色が7色というのは、どうもニュートンに起因しているらしい。当初は5色だったのが、
自然界における7の重み(音階が7音など)にこだわった結果、7色になったとのことだ。

 アメリカでも虹の色は当初、7色だったが、藍と紫の見分けが難しいので、最近は、虹の
色は6色で十分と見なされているようだ。

 そもそも虹の色は太陽光にほかならず、太陽光はあらゆる色を含んでいる。虹の色が何
色ということ自体、無意味なことかもしれない。

 7色の虹というと、黒澤明とロスプリモスが唄った『ラブユー東京』を思い出す。
  ♪七〜色の虹が 消えてしまったの ・・・ あたしの涙〜
                          ・・・ ラブユー ラブユー 涙の東京

 虹の色が6色とすると、歌詞はちょっと語呂が悪くなるのかな...?


 空舟さんからのコメントです。(平成26年7月4日付け)

 虹にはオスとメスがあるという話(→ 参考1 参考2)があります。反射する回数が1回か
2回かによって逆順の色になるらしいです。


(コメント) 虹に2種類の虹があるとは初耳です!今度じっくり見てみたいと思います。空舟
      さんに感謝します。


   左の写真は、学士会会報「U7」の表紙
  のもの。虹が何重にも重なっているように
  見える...。











 (追記) 平成20年11月26日付け

  この虹についての考察を、数学における活用型学習のテーマとして、学校全体で取り
 組んでいるのが、お茶の水女子大学附属高校(通称、お茶高)である。11月22日(土)
 に快晴の中、首都圏を中心に30名ほどが集まり、研究会が催された。

  ♪蔦の絡まるチャペルで
   祈りを捧げた日〜♪

  と「学生時代」が聞こえて
  きそうな古風な学舎。

   廊下、教室の床、壁が
  板張りで、落ち着いて学
  習に取り組めそう...。

   映画字幕翻訳家の戸
  田奈津子さんやシンガー
  ソングライターの谷山浩
  子さんなどが卒業生。





  この活用型学習というのは、近々発表される新学習指導要領において大きな変更点
 になるらしい。現行の総合的な学習の時間が大幅に見直される予定である。そんな話
 を、早稲田大学教授の安彦忠彦先生から伺った。

  お茶高では、1年次・2年次と教養基礎「数学I」(1単位)として、10時間程度をかけて、
 下記のような指導計画で実施しているそうだ。通称、「虹の数学」と呼ばれている。

  1年次は、お茶の水女子大学の先生から、虹についての話を伺い、実際に虹のモデル
 を作成して虹の観察を行ったりと、虹というものに触れ、その不思議な現象に興味を起
 こさせるようにしているという。この際、虹発見の歴史を調べたり、平面幾何の確認や、
 光・色・波の実験など数学以外の先生方の支援を受けているという。

  2年次は、1年次に積み上げてきた虹の話を、光線の方程式を求めるなど数学と絡め
 ながら、Mathematica を利用して、光線の道筋を作図させるプログラムを作成させ、
 虹の現象が起こる理由を視覚的に理解させるようにしているという。

  虹の光線の方程式に興味があったので、計算してみた。

  物理学では、光学において、スネルの法則(屈折の法則):

  同一媒質については、入射角と反射角の正弦の逆数の割合は、常に同一値である

 がよく知られている。すなわち、屈折率 n1 の媒質から屈折率 n2 の媒質へ入射する光

線について、入射角 α (境界面の法線から測った角度)と屈折角 β の間には、

      

が成り立つ。(→参考 : 「屈折する理由」)

 このことから、虹の光線は入射角で決まると言える。

 次のような場面設定で、虹の光線の方程式を求めてみよう。

     
  直線 K : y=sin α

     ただし、 x ≦ −cosα

  直線 L : y=−tan(α−β)(x+cos α)+sinα

     ただし、 −cosα ≦ x ≦ cos(2β−α)

  直線 M : y=tan(3β−α)(x−cos (2β−α))+sin(2β−α)

     ただし、 −cos(4β−α) ≦ x ≦ cos(2β−α)

  直線 N : y=tan(4β−2α)(x+cos (4β−α))−sin(4β−α)

     ただし、 x ≦ −cos(4β−α)

となる。水の真空に対する屈折率は、4/3 として、光線の軌跡を描いてみよう。

         

(コメント) αの値を、0 から 0.1 刻みで変化させました。すると、水滴から出る反射光
      線がグ〜っと下がっていって、ある瞬間から逆にグ〜っと上がっていくんですね!
      これが虹の現象にも関係するとか...。


(追記) 平成29年9月18日付け

 昨年度の第14回高校生科学技術チャレンジ(朝日新聞、テレビ朝日 主催)において、愛
知県立一宮高校の位田麻衣・菊入有紗さんが

  「割れる直前のシャボン膜が呈す黄金色や白色は光の干渉によるものか」

についての研究で科学技術政策担当大臣賞を受賞された。

 第15回高校生科学技術チャレンジのエントリーは、平成29年9月1日〜10月2日までと
のことである。今年もどんな研究が発表されるのか楽しみである。

 さて、「シャボン膜」について、上記の話題と関連がありそうなので、まとめてみた。

 シャボン玉遊びをしていると、シャボンの膜が赤や緑、黄、青、紫と虹のように色とりどりに
見えて美しいな〜と思った方は多いと思う。シャボン膜は光の干渉という現象によって、膜が
色づいて見えます。

 その原理からすると、膜が薄くなるにつれて波長の長い赤色から波長の短い青色へと変化
していくことは理解できるのだが、その後、黄金色になった後、白くなって消えていくというのは、
光の波が重なると強め合い、波がずれると打ち消し合う「光の干渉」と呼ばれる現象では説明
がつかないように思えたというのが研究の動機とのことである。

 この素朴な疑問から、位田麻衣さんや菊入有紗さんは、波長ごとの光の強さを調べること
のできる分光器を用いて、シャボン膜からの光を詳しく調べられ、その結果、黄金色や白色
などの膜の色も、光の干渉が見せる一つの様相であることを突き止められました。



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