・ 図形の完全数? S.H氏
ある数の約数(但し、自分自身は除く)の総和がある数自身に等しいとき、その数のこと
を、完全数という。完全数で一番有名な数は、6 である。
実際に、6 の約数は、1、2、3 なので、1+2+3=6 が成り立っている。
(→参考:完全数)
このことと同様のことが正多角形においても起こるということを最近知ることができた。
正多角形において、その頂点を結んでできる図形が正多角形のとき、その図形は元の
図形の「約数」と考える。
例 正6角形において、頂点を一つおきに結んでできる図形は正三角形で、正6角形の
「約数」となる。自分自身も「約数」で、約数は全部で、3個ある。
正N角形において、その約数の総数が、N に等しいとき、正N角形のことを、「図形の
完全数」ということにしよう。
例 正6角形は、「図形の完全数」ではない。
例 正24角形は、「図形の完全数」である。
正24角形を、図形描画ソフトに描いてもらうと、ほぼ「円」に近い!
正3角形は、下図のように、8個ある。 |
正4角形は、下図のように、6個ある。 | |
正6角形は、下図のように、4個ある。 | 正8角形は、下図のように、3個ある。 | |
正12角形は、下図のように、2個ある。 | ||
以上から、「約数」の総数は、自分自身も含めて、 8+6+4+3+2+1=24 で、
N=24 と一致する。したがって、正24角形は、「図形の完全数」である。
上記では図形を実際に描いて求めたが、直接計算によっても求めることができる。
N=24 の約数は、 1、2、3、4、6、8、12、24 であるが、正 n 角形において、n≧3
なので、1 と 2 は除外して考える。
このとき、 正3角形の個数は、 24÷3=8(個)
正4角形の個数は、 24÷4=6(個)
正6角形の個数は、 24÷6=4(個)
正8角形の個数は、 24÷8=3(個)
正12角形の個数は、 24÷12=2(個)
と簡単に求められる。
正N角形の「約数」の総数は、
Nが奇数のとき、 (Nの約数の総和)−N
Nが偶数のとき、 (Nの約数の総和)−(3/2)N
で求められる。
例 N=24=23・3 のとき、 N の約数の総和は、
(1+2+22+23)(1+3)=15×4=60
したがって、 正24角形の「約数」の総数は、 60−(3/2)・24=60−36=24
(コメント) 正24角形以外に「図形の完全数」は存在するのだろうか?ちょっとプログラム
を組んで計算を試みたが発見することができなかった。数の完全数と同様に開
放型の問題であるので少し発見が難しい。新しい「図形の完全数」を発見された
方、是非こちらまでご教示ください。
(追記) 平成18年4月17日当HPがいつもお世話になっているらすかるさんから、第2、
第3の「図形の完全数」を発見した旨メールをいただいた。
N=24 以外の「図形の完全数」
91963648=28×7×19×37×73
10200236032=214×7×19×31×151
この 91963648 の全ての約数の和を計算してみると、
(29−1)(1+7)(1+19)(1+37)(1+73)=229909120
なので、これを元の数91963648 で割ってみると、
229909120÷91963648=2.5
となる。ちなみに、 24=23・3 についても計算してみると、
全ての約数の和=(24−1)(1+3)=60
より、 60÷24=2.5 で、91963648 の場合と同じ値になっている。
このような性質を持つ数同士を、Friendly Pair と言うらしい。
(コメント) 最近映画でも話題になった「友愛数」のような雰囲気で、大変面白い性質です
ね!らすかるさんの計算結果にはいつも感服しております。らすかるさんに感謝
いたします。
(追々記) 平成18年4月21日当HPがいつもお世話になっているらすかるさんから、最終
報告という形で「図形の完全数」についてのメールをいただいた。
出来るだけ原文に近い形で以下に整理したいと思う。(私の誤解が入るといけないので)
一般に信じられている“予想”や調査などによる数々の状況証拠からの“予想”であるが、
図形の完全数は、 24 、91963648 、10200236032 の3つしかない
というのが結論である。
以下、次の(一般に使用されている)用語を使用することにする。
σ(n): n の約数の総和 σ(n)/n=k である数: k 倍完全数
完全数については多くの人の研究があるが、いろいろな予想の証明は難しいらしく、ちゃ
んと証明されていない予想が数多くある。その中で、
「奇数の完全数は存在しない」 「3倍完全数は6個だけである」
という予想をとりあえず正しいものと仮定する。
図形の完全数は、n が奇数の場合は、
( n の約数の総和)− n = n
から、 σ(n)/n=2 で、(2倍)完全数を求めることに等しく、偶数の場合は、
( n の約数の総和)−(3/2)n = n
から、 σ(n)/n=5/2 で、(2.5倍)完全数を求めることに等しいが、まず奇数の完全数
は存在しないので、奇数は除外して考えることにする。
偶数の2.5倍完全数 n が素因数5を持たない場合、σ(5n)=(1+5)σ(n)=6σ(n) が
成り立つので、
σ(5n)/(5n)=6σ(n)/(5n)=(6/5)σ(n)/n=(6/5)(5/2)=3
となり、5nは、3倍完全数となる。このことから、素因数5を1個だけ含むような3倍完全数
の 1/5 倍の数が、2.5倍完全数となる。
3倍完全数は、以下の6個である。
120 (=23×3×5) 、672 (=25×3×7) 、523776 (=29×3×11×31)
459818240 (=28×5×7×19×37×73)
1476304896 (=213×3×11×43×127)
51001180160 (=214×5×7×19×31×151)
この中で素因数5を1個だけ含むものは、 120、459818240、51001180160 の
3個であるが、これをそれぞれ 1/5 倍すると、
24 、91963648 、10200236032
となり、ちょうど検索で見つけた3個の2.5倍完全数となる。
これにより、素因数5を持たない2.5倍完全数は上記の3個だけということになる。
したがって、もし上記の他に2.5倍完全数があるとすれば、それは5の倍数となる。
これをさらに場合分けすると、検索量を大幅に減らすことが出来る。n が2.5倍完全数な
らば、 2σ(n)=5n ということを考慮して素因数で場合分けをする。
ここで、n の素因数に5を持てば、σ(n)は、6で割り切れ、n は12で割り切れる。すなわち
n は、3で必ず割り切れることになり、n は素因数として、3 を必ず含む。このことに注意して
場合分けを行う。
n の素因数に、3 と 5 を1個ずつ含むとき・・・ σ(n)が、(1+3)(1+5)で割り切れるので、
2σ(n)は、2×4×6=48 で割り切れ、よっ
て、n も48で割り切れる。n
は5でも割り切
れるので、n
は、240の倍数となる。
n の素因数に、3 を2個、5 を1個含むとき・・・ σ(n)が、(1+3+32)(1+5)で割り切れる
ので、2σ(n)は、2×13×6=156
で割り切
れ、よって、n
も156で割り切れる。
n は32×5=45でも割り切れるので、n は、
2340の倍数となる。
n の素因数に、3 を3個、5 を1個含むとき・・・ σ(n)が、(1+3+32+33)(1+5)で割り切
れるので、2σ(n)は、2×40×6=480
で割
り切れ、よって、n
は96で割り切れる。
n は33×5=135でも割り切れるので、n は、
4320の倍数となる。
n の素因数に、3 を4個以上、5 を1個含むとき・・・ σ(n)は、6で割り切れるので、2σ(n)は、
12で割り切れ、よって、n
は12で割り切
れる。
n は34×5=405でも割り切れる
ので、n
は、1620の倍数となる。
n の素因数に、 5 を2個含むとき・・・ σ(n)が、1+5+52 =31で割り切れるので、2σ(n)
は、2×31=62 で割り切れ、よって、n も62で割り切
れる。n は52=25でも割り切れるので、n は、1550の
倍数となる。
n の素因数に、 5 を3個含むとき・・・ σ(n)が、1+5+52+53 =156で割り切れるので、
2σ(n)は、2×156=312
で割り切れ、よって、n も
312で割り切れる。n は53=125でも割り切れるので、
n は、39000の倍数となる。
n の素因数に、 5 を4個以上含むとき・・・ n は2で割り切れ、かつ、54=625で割り切れ
るので、n は、1250の倍数となる。
以上により、
240 、1250 、1550 、1620 、2340 、4320 、 39000
の倍数を調べれば十分であることが分かった。
調査は以下のように行った。
(1) 4〜332億までは偶数を全て調査
この結果発見されたものが、
24 、91963648 、10200236032
の3つである。
(2)332億〜1兆までは、
240 、1250 、1550 、1620 、2340 、4320 、 39000
の倍数を全て調査
この結果、2.5倍完全数は存在しなかった。
(3) 1兆〜300兆までは、212×5=20480 の倍数を全て調査
(補足) 2倍完全数〜5倍完全数を素因数分解して調べると、値が大きくなるほど、ほぼ
対数的に比例して2の指数が大きくなる。
10200236032(約100億)=214×7×19×31×151
であることから考えて、1兆以上の数で素因数2の指数が12未満である2.5倍完
全数が存在する可能性はかなり低いと考えられるので、212の倍数に限定して300
兆までを検索した。
この結果、2.5倍完全数は存在しなかった。
また、k≧3 の時、k倍完全数は有限個と予想されており、最大の3倍完全数〜6倍完全
数は
3倍完全数 5.1×1010
4倍完全数 1.4×1033
5倍完全数 5.5×1076
6倍完全数 1.7×10126
とされている。
この傾向から考えて、2.5倍完全数は、1兆=1012 までに3つ以外は存在せず、300兆
=3×1014 までにほぼ存在しないことから、2.5倍完全数は見つかった3個で終わりだろ
う、という結論に達したものである。
ただ、2倍完全数すなわち普通の完全数がとてつもなく大きい値まで見つかっていることを
考えると、必ずしも2.5倍完全数も上記の傾向に従うとは言えないし、「奇数の完全数は存
在しない」「3倍完全数が有限個」というのも証明されていないので、より大きい「図形の完全
数」が存在する可能性は否定出来ない。
しかし、もし存在するとしても探索で見つけられそうにないので、「3個しか存在しない」を私
の結論にしたいと思う。
(コメント) らすかるさんの検索結果を読んでいて、大変感動しました。まだ確定ではありま
せんが、「3個しか存在しない」ということを私も信じたい気持ちで一杯です。