・等角共役点と等距離共役点             りらひい氏

 昨年からの私の個人的なブームは、三角形に関するあれこれで、今も継続しています。
数日前にふと問題を思いついたので書いてみます。ただし、問題は作りましたが自分で解
いてはいないので解答は用意していません。
(この問題の内容を含むより一般的な命題が成り立つことは確認しています。)

(前提知識その1) 等角共役点 (isogonal conjugate)

 三角形ABCの各辺およびその延長線の上にない点Pをとる。

 角Aの二等分線に関する直線APの鏡映を直線L
 角Bの二等分線に関する直線BPの鏡映を直線M
 角Cの二等分線に関する直線CPの鏡映を直線N

とすると、3本の直線L、M、Nは1点Qで交わる。この交点を(三角形ABCに関する)点Pの
等角共役点
という。

  

 「3本の直線L、M、Nが1点Qで交わる」ことは、次のように、チェバの定理を用いて示さ
れる。

(証明) 直線APと辺BCの交点をDとおく。また、∠PAB=α とおく。このとき、

 BD : DC=△ABD : △ADC=(1/2)AB・ADsinα : (1/2)AC・ADsin(A−α)

すなわち、 BD : DC=ABsinα : ACsin(A−α)

 同様に、直線BPと辺CAの交点をEとおく。また、∠PBC=β とおく。このとき、

 CE : EA=BCsinβ : BAsin(B−β)

直線CPと辺ABの交点をFとおく。また、∠PCA=γ とおく。このとき、

 AF : FB=CAsinγ : CBsin(C−γ)

 3直線AP、BP、CPが1点で交わるので、チェバの定理により、

 (AF/FB)・(BD/DC)・(CE/EA)=1 なので、

(CAsinγ)/(CBsin(C−γ))・(ABsinα)/(ACsin(A−α))・(BCsinβ)/(BAsin(B−β))=1

すなわち、(sinγ)/(sin(C−γ))・(sinα)/(sin(A−α))・(sinβ)/(sin(B−β))=1

(CBsinγ)/(CAsin(C−γ))・(ACsinα)/(ABsin(A−α))・(BAsinβ)/(BCsin(B−β))=1

が成り立つ。直線Lと辺BCの交点をD’、直線Mと辺CAの交点をE’、直線Nと辺ABの交点

をF’とおくと、上記の等式は、(F’B/AF’)・(D’C/BD’)・(E’A/CE’)=1

 すなわち、 (AE’/E’C)・(CD’/D’B)・(BF’/F’A)=1 が成り立つことを意味する。

よって、チェバの定理より、3直線L、M、Nは1点Qで交わる。  (証終)


 上記の証明について、「弦に対するチェバの定理」を用いると、もっとエレガントに示すこと
が出来る。(令和5年6月21日付け)

  

(別証) 弦に対するチェバの定理より、 (AF/FB)・(BD/DC)・(CE/EA)=1

題意より、∠ACF=∠∠BCF’ なので、 AF=BF’

 ∠BCF=∠F’CA なので、 BF=F’A

 ∠BAD=∠CAD’ なので、 BD=CD’

 ∠DAC=∠D’AB なので、 DC=D’B

 ∠CBE=∠ABE’ なので、 CE=AE’

 ∠EBA=∠E’BC なので、 EA=E’C

 よって、 (BF’/F’A)・(CD’/D’B)・(AE’/E’C)=1 より、

 (AE’/E’C)・(CD’/D’B)・(BF’/F’A)=1 が言える。

 このことは、弦に対するチェバの定理より、3直線AD’、BE’、CF’が1点で交わることを

意味する。  (別証終)


(コメント) 基本的に2つの証明は、ほとんど同義である。


(応用例) 三角形ABCの垂心Hと外心Oは、互いに等角共役点である。

(証明) 下図において、

  ∠CAH=90°−∠C

  ∠C=∠D 、∠ABD=90° なので、

  ∠OAB=90°−∠D=90°−∠C

 よって、∠CAH=∠OAB となり、∠Aの2等分線に関して、

 AHとAOは対称である。 

 同様に、∠Bの2等分線に関して、BHとBOは対称で、∠Cの2等分線に関して、CHとCO

は対称となる。以上から、垂心Hと外心Oは等角共役点である。  (証終)


(補足) ・内心の等角共役点は内心自身である。
     ・傍心の等角共役点は傍心自身である。


(前提知識その2) 等距離共役点 (isotomic conjugate)

 三角形ABCの各辺およびその延長線の上にない点Pをとる。直線APとBCの交点をL、BP
とCAの交点をM、CPとABの交点をNとし、

 線分BCの中点に関して点Lと対称な点をL’
 線分CAの中点に関して点Mと対称な点をM’
 線分ABの中点に関して点Nと対称な点をN’

とすると、3本の直線AL’、BM’、CN’は1点Qで交わる。この交点を(三角形ABCに関する)
点Pの等距離共役点という。

  

 「3本の直線AL’、BM’、CN’が1点Qで交わる」ことは、次のように、チェバの定理を
用いて示される。

(証明) 3直線AL、BM、CNが1点で交わるので、チェバの定理により、

 (AN/NB)・(BL/LC)・(CM/MA)=1 が成り立つ。

 題意より、 AN=BN’、BN=AN’、BL=CL’、CL=BL’、CM=AM’、AM=CM’

なので、 (BN’/N’A)・(CL’/L’B)・(AM’/M’C)=1 すなわち、

 (BN’/N’A)・(AM’/M’C)・(CL’/L’B)=1 が成り立つ。

よって、チェバの定理より、3直線AL’、BM’、CN’は1点Qで交わる。  (証終)


 それでは、問題です。

問題その1

 三角形の内接円に対して、あるひとつの傍心から2本の接線を引いたときの2つの接点は
互いに等角共役点であることを示せ。

問題その2

 三角形ABCに対して、四角形ABCDが平行四辺形となるように点Dをとる。三角形ABCの
内接円に対して、点Dから2本の接線を引いたときの2つの接点は、互いに等距離共役点
であることを示せ。


 壊れた扉さんからのコメントです。(令和5年6月10日付け)

 問題その1について、ちょっと考えてみました。

(解) △ABCの内心を I とし、∠B内の傍心を I’とす

 ると、3点B、I、I’は一直線上にあり、I’から内接円に

 引いた接線の2つの接点を I’I に関して点A側をS、

 点C側をTとすると、AI は∠Aの二等分線で、AI’は

 ∠Aの外角の二等分線より、∠IAI’=90°

 また、I’S⊥IS より、∠ISI’=90°

 よって、∠IAI’=∠ISI’より、円周角の定理の逆により、

 4点S、I、I’、Aは同一円周上にある。

 ところで、△I’SI≡△I’TI より、∠SI’I=∠TI’I=●

 と置くと、円周角より、∠SAI=∠SI’I=● である。

 また、∠ITI’=90°、∠IAI’=90°より、四角形AITI’は円に内接する四角形である。

よって、円周角より、∠IAT=∠II’T=● から、∠SAI=∠IAT

ところで、AIは∠Aの二等分線より、ASとATは、∠Aの二等分線に関して鏡映である。

また、△I’SI≡△I’TI より、∠I’IS=∠I’IT なので、∠BIS=∠BIT

また、半径より、IS=IT で、BI は共通より、二辺夾角が等しいので、△BIS≡△BIT

より、∠IBS=∠IBT である。

ところで、BIは∠Bの二等分線より、BSとBTは∠Bの二等分線に関して鏡映である。

よって、点Sと点Tは互いに等角共役点である。よって、示された。

(補足)

∠ITI’=∠ICI’=90°から、4点 I、T、C、I’は同一円周上にあり、円周角より、

∠TCI=∠TI’I=● である。

また、四角形SICI’は、円に内接する四角形より、円周角で、∠ICS=∠II’S=●

より、∠TCI=∠ICS である。

ところで、CIは∠Cの二等分線より、CTとCSは∠Cの二等分線に関して鏡映である。 (終)


(コメント) 壊れた扉さん、証明をありがとうございます。美しい証明ですね!


 りらひいさんからのコメントです。(令和5年6月12日付け)

 壊れた扉さん、答えていただきありがとうございます。6つの点 A、C、S、T、I、I’ が同一円
周上にあるんですね。

 問題その1は、それほど難しくはないだろうなとなんとなく思っていましたが、かなりきれい
な形でした。

 ちなみに、

 「三角形の傍接円に対して内心から2本の接線を引いたときの2つの接点は互いに等角
共役点である」

こともほとんど同様に示せます。

  


 壊れた扉さんからのコメントです。(令和5年6月14日付け)

 りらひいさんの

 「三角形の傍接円に対して内心から2本の接線を引いたときの2つの接点は互いに等角
共役点である」

こともほとんど同様に示せます。


 先程やってみました。「ほとんど同様」の意味が分かりました。ある謎を解かないといけま
せんね。


(コメント) 上記の証明に挑戦してみました。(令和5年6月20日付け)

(証明) 上図の△API と△AQI において、AI は共通、IP=IQ、∠AIP=∠AIQ から、

△API ≡△AQI なので、 ∠PAI =∠QAI

よって、AP、AQはAI に関して鏡映である。

 また、6点 I、B、P、I’、Q、Cは同一円周上にあるので、PI’=QI’から、

 ∠PBI’=∠QBI’ となるので、BP、BQはBI’に関して鏡映である。

同様にして、 ∠PCI’=∠QCI’ となるので、CP、CQはCI’に関して鏡映である。

 以上から、P、Qは互いに等角共役点となる。  (証終)


 問題その2を解こうとする方のために、図の準備をしておこう。

 三角形ABCの内接円の中心を I として、点Dから内接円に引いた接線の接点をP、Qとお
く。辺BC、CA、ABの中点をそれぞれA’、B’、C’とおく。このとき、直線AP、AQが辺BCと
交わる点をそれぞれL、L’とおく。同様に、直線BP、BQが辺CAと交わる点をそれぞれM、
M’とおき、直線CP、CQが辺ABと交わる点をそれぞれN、N’とおく。

 2点P、Qが等距離共役点であることを示すには、

 LA’=L’A’ 、MB’=M’B’ 、NC’=N’C’

を示せばよい。

 


 りらひいさんから新しい問題が届きました。(令和5年6月14日付け)

 上記の話題に関連して、もう一問投稿してみます。こちらも問題は作りましたが、自分で解
いてはいないので、解答は用意していません。
(この問題の内容を含むより一般的な命題が成り立つことは確認しています。)

問題その3

 三角形ABCがあり、線分BCの中点をD、線分CAの中点をE、線分ABの中点をFとする。三
角形ABCの外接円Oと直線EFの2つの交点S、Tにおける外接円の接線をL、L’とする。直
線Lと直線BC、CA、AB の交点をそれぞれ P、Q、R とし、直線L’と直線BC、CA、AB の交点
をそれぞれP’、Q’、R’とする。このとき、 PD=DP’ 、QE=EQ’ 、RF=FR’ が成り立つこ
とを示せ。
  


 壊れた扉さんからのコメントです。(令和5年6月14日付け)

 りらひいさん、簡単なやつ1つだけでもよろしいでしょうか。

(@) PD=DP’ の証明

 題意より、2点E、Fは線分ST上にあり、△ABCでの中点連結定理より、FE//BC

すなわち、ST//BC である。

また、直線LとL’の交点をGとすると、円と接線の関係より、GS=GT から、△GSTは二等

辺三角形である。

また、点P、P’はBCの延長上にあり、ST//BCより、ST//PP’ である。

 よって、△GST∽△GPP’ より、△GPP'も二等辺三角形である。

 よって、GからPP’に垂線を下ろし、その足をHとすると、PH=HP’ ・・・ @

ところで、ST//BC より、四角形SBCTは台形で、円に内接する台形は等脚台形で、また、

△GSTは二等辺三角形より、点Hは、BCの中点である。すなわち、H=D ・・・ A

 Aを@に代入すると、PD=DP’ なので、よって、示された。  (証終)

(補足) 円に内接する台形は等脚台形である事を使わない場合は、BTを結ぶと錯角より、

 ∠STB=∠TBC より、弧SB=弧TC なので、SB=TC

 また、ST//BC より、四角形SBCTは等脚台形である。


 DD++ さんからのコメントです。(令和5年6月14日付け)

 この命題には、∠B と ∠C が直角ではないという前提が必要な気がします。あるいは、平

行線は無限遠で交わっているとみなすと補足を入れるか。それはそれとして、PD = DP’ に

ついては、辺 BC の垂直二等分線を引くと、LとL’がこの直線に関して対称になる、というこ

とを考えれば、わりと自明な感じがしますね。


 りらひいさんからのコメントです。(令和5年6月15日付け)

 確かにそうですね。失礼しました。∠B と ∠C が直角ではないとするのがよさそうですね。

(平行線は無限遠で交わっているとみなすと補足を入れる場合は、交点は定義されても長さ
が定義されないので、問題文の最後を「PとP'がDに関して対称」のような形にするのがよい
ですかね?対称の定義が無限遠点に及ぶかわからないから微妙かな?)

 「等角共役点と等距離共役点」の私の説明も、平行線となる場合が抜けていて不十分です
ね。ユークリッド平面に無限遠点の集合である無限遠直線を加えて射影平面の定義を満た
すように拡張した平面で考えているとしてください。この拡大ユークリッド平面では平行線は
無限遠点で交わります。


 りらひいさんからのコメントです。(令和5年6月15日付け)

 もう一問作りました。例のごとく、問題は作りましたが自分で解いてはいないので、解答は
用意していません。
(この問題の内容を含むより一般的な命題が成り立つことは確認しています。)

問題その4

 三角形ABCがあり、∠Aの二等分線と辺BCの交点をD、∠Bの二等分線と辺CAの交点を
E、∠Cの二等分線と辺ABの交点をFとする。内心を I とおく。三角形ABCの外接円と直線
EFの2つの交点S、Tにおける外接円の接線をL、L’とする。LとL’の交点をGとおく。直線L
と直線BC、CA、ABの交点をそれぞれ P、Q、R とし、直線L’と直線BC、CA、ABの交点をそ
れぞれP’、Q’、R’とする。このとき、∠PAD=∠DAP’ 、∠QBE=∠EBQ’ 、∠RCF=∠FCR’
が成り立つことを示せ。

  

#GeoGebraで作図してみると、どうやら ∠QBE(=∠EBQ’) と ∠RCF(=∠FCR’) も等しくなり
そうです。こちらは証明していないので正しいかどうかわかりません。


 りらひいさんからのコメントです。(令和5年6月22日付け)

 この問題の元ネタ(より一般的な命題)を載せておきます。

 以下、ユークリッド平面に無限遠点の集合である無限遠直線を加えて、射影平面の定義
を満たすように拡張した平面で考えます。この拡大ユークリッド平面では、任意の異なる2点
を結ぶ直線がただ1つ存在し、任意の異なる2直線はただ1点で交わります。

<ことばの定義> 内接二次曲線

 3直線BC、CA、ABに接する二次曲線を三角形ABCの内接二次曲線という。

※三角形の内側にあり、3辺に接する楕円だけではなく、三角形の外側にあり、1辺と残り2
 辺の延長線に接する楕円・放物線・双曲線を含める。


問題その1の元ネタ

 三角形ABCの内心と3つの傍心の中から三角形ABCの内接二次曲線Γに2本の接線が
引ける点を選ぶ。その点からΓに引いた2本の接線の接点は、互いに三角形ABCに関する
等角共役点である。


問題その2の元ネタ

 三角形ABCに対して、四角形ABA’C、ABCB’、AC’BC が平行四辺形となるように点A’、
B’、C’を定める。三角形ABCの重心Gと3点A’、B’、C’の中から三角形ABCの内接二次
曲線Γに2本の接線が引ける点を選ぶ。その点からΓに引いた2本の接線の接点は互い
に三角形ABCに関する等距離共役点である。


 元ネタの元ネタ(より一般的な命題)も載せておきます。

 等角共役点や等距離共役点は、さらに一般化された「点の共役関係」のうちのひとつで
す。一般化された点に関する共役関係には、自己共役な点を4つ持つものと1つも持たない
ものがあります。

 元ネタの元ネタ

 三角形ABCに関して、自己共役な点を4つ持つ「点に関する共役関係」をひとつ決める。
その4つの自己共役な点の中から三角形ABCの内接二次曲線Γに2本の接線が引ける点
を選ぶ。その点からΓに引いた2本の接線の接点は互いに最初に定めた共役関係にある。


 この元ネタの元ネタは、射影幾何の範疇なので、双対が成り立ちます。その双対が、もう
ひとつの「三角形の外接二次曲線と共役直線」の元ネタの元ネタになります。


(前提知識その3) 相反共役線

 三角形ABCの各頂点を通らない直線Lをとる。直線Lと直線BC、CA、ABの交点をそれぞ
れP、Q、R とし、線分BCの中点に関して点Pと対称な点をP’、線分CAの中点に関して点Qと
対称な点をQ’、線分ABの中点に関して点Rと対称な点をR’とすると、3点P’、Q’、R’は一直
線上にある。この直線を(三角形ABCに関する)直線lの相反共役線という。


(前提知識その4) 角度の共役線?

 三角形ABCの各頂点を通らない直線Lをとる。直線Lと直線BC、CA、AB の交点をそれぞ
れP、Q、R とし、角Aの二等分線に関する直線APの鏡映が直線BCと交わる点をP’、角Bの
二等分線に関する直線BPの鏡映が直線CAと交わる点をQ’、角Cの二等分線に関する直
線CPの鏡映が直線ABと交わる点をR’とすると、3点P’、Q’、R’は一直線上にある。

 この直線を何というのかわたしは知りませんし、そもそも名称があるのかどうかもわかりま
せんので、こでは、この直線を(三角形ABCに関する)直線Lの角度の共役線と呼ぶことに
します。


<ことばの定義> 外接二次曲線

 3点A、B、Cを通る二次曲線を三角形ABCの外接二次曲線という。

※一部が三角形ABCの内部を通る双曲線も含める。

<ことばの定義> antiorthic axis

 三角形ABCに対して、点A、B、Cの外角の二等分線と対辺の延長線の交点をそれぞれ
D’、E’、F’とすると、この3点は一直線上にある。この直線を三角形ABCの antiorthic axis
という。(日本語の名称はわかりません。)


問題その3の元ネタ

 三角形ABCがあり、線分BCの中点をD、線分CAの中点をE、線分ABの中点をFとする。無
限遠直線と直線EF、FD、DEの中から三角形ABCの外接二次曲線Γと2点で交わる直線を
選ぶ。その直線とΓの2つの交点における接線は互いに三角形ABCに関する相反共役線で
ある。


問題その4の元ネタ

 三角形ABCがあり、点A、B、Cの内角の二等分線と対辺の交点をそれぞれD、E、Fとする。
三角形ABCの antiorthic axis と直線EF、FD、DEの中から三角形ABCの外接二次曲線Γと
2点で交わる直線を選ぶ。その直線とΓの2つの交点における接線は互いに三角形ABCに
関する角度の共役線である。


 元ネタの元ネタ(より一般的な命題)も載せておきます。

 相反共役線や角度の共役線は、さらに一般化された「直線の共役関係」のうちのひとつで
す。一般化された直線に関する共役関係には、自己共役な直線を4つ持つものと1つも持た
ないものがあります。


元ネタの元ネタ

 三角形ABCに関して、自己共役な直線を4つ持つ「直線に関する共役関係」をひとつ決め
る。その4つの自己共役な直線の中から三角形ABCの外接二次曲線Γと2点で交わる直線
を選ぶ。その直線とΓの2つの交点における接線は互いに最初に定めた共役関係にある。


 この元ネタの元ネタは、射影幾何の範疇なので双対が成り立ちます。その双対がもうひと
つの「三角形の内接二次曲線と共役点」の元ネタの元ネタになります。


 わたしがこれらのことを考えるきっかけになったのは、次の定理を見かけたことによります。

 問題その1からその4やそれらの元ネタの命題は次の定理からの連想で生まれました。

 三角形ABCの相反共役線となる2直線の組は、3点A、B、Cを通るある双曲線の
2本の漸近線である。



(コメント) 掲示板「出会いの泉」におけるタイトル「三角形の『内接二次曲線』や三角形の
      『外接二次曲線』に、どんな関係があるのか不思議でしたが、りらひいさんの種明
      かしを伺って、合点がいきました。

 直角双曲線 y=1/x 上に3点A(1,1)、B(2,1/2)、C(−1,−1)をとる。

直線BCの方程式は、 y=(1/2)x−1/2 なので、点AからBCに下ろした垂線の方程式は、

 y=−2x+3 である。同様にして、 直線CAの方程式は、y=x なので、点BからCAに下

ろした垂線の方程式は、 y=−x+5/2 である。 したがって、△ABCの垂心Hの座標は、

(1/2,2)となり、Hは、明らかに、直角双曲線 y=1/x 上の点である。

  

 逆に、三角形の頂点と垂心を通る双曲線は直角双曲線であることが知られている。

 このとき、直角双曲線 y=1/x は、△ABCの外接二次曲線と言われる。


 次の定理が知られている。

定理  △ABCにおいて、等角共役点をP、Qとする。このとき、この2点を焦点とし、△ABC
    の3辺に内接する2次曲線(△ABCの内接二次曲線)が存在する。

(補足) ・P、Qがともに△ABCの内部、または、外接円の外部にあるとき、2次曲線は楕円
    ・P、Qの一方が△ABCの外部かつ外接円の内部にあり、他方が外接円の外部にある
    とき、2次曲線は双曲線
    ・P、Qの一方が△ABCの外接円上(頂点は除く)にあり、他方が無限遠点であるとき、
    2次曲線は放物線


定理  △ABCにおいて、等角共役点をP、Qとする。Pより、3辺に垂線の足P1、P2、P3
    下す。同様に、Qより、3辺に垂線の足Q1、Q2、Q3を下す。
    このとき、6点P1、P2、P3、Q1、Q2、Q3は同一円周上にあり、線分PQの中点が円
    の中心となる。
  

(証明) 円は3点で定まるので、4点P1、P3、Q1、Q3 が同一円周上にあることを示せば
    十分である。
  

 4点B、P1、P、P3 は同一円周上にあるので、 ∠PP13=∠PBP3

 P、Qは等角共役点なので、 ∠PBP3=∠QBQ1

 4点B、Q1、Q、Q3 は同一円周上にあるので、 ∠QBQ1=∠QQ31

 よって、 ∠PP13=∠QQ31 である。このとき、

 ∠Q113=∠Q11P+∠PP13=90°+∠PP13=90°+∠QQ31

 =∠QQ3A+∠QQ31=∠AQ31

が成り立つので、4点P1、P3、Q1、Q3 は同一円周上にある。

 同様にして、4点P1、P2、P3、Q3 も同一円周上にあり、4点P1、P3、Q1、Q2 も同一円

周上にあることから、結局、6点P1、P2、P3、Q1、Q2、Q3は同一円周上にある。

円の中心は、線分P11と線分P33 の垂直2等分線の交点で、線分PQの中点で交わる。

すなわち、円の中心は、線分PQの中点である。  (証終)


(コメント) 上記の証明には直接関係しないが、「BQ⊥P13」という関係が成り立つことに、
      上記の証明を考察している際に気が付いた。

 実際に、△SBP1と△SP1Tにおいて、4点B、P1、P、P3 は同一円周上にあるので、

 ∠PP13=∠PBP3 で、P、Qは等角共役点なので、∠PBP3=∠QBQ1 より、

 ∠PP13=∠QBQ1 すなわち、∠SP1T=∠SBP1

 ∠P1SBは共通なので、2角相等から、 △SBP1∽△SP1

 ところで、∠SP1B=90°なので、∠STP1=90° 即ち、BQ⊥P13 が成り立つ。


定理  △ABCにおいて、等角共役点をP、Qとする。Pより、3辺に垂線の足P1、P2、P3
    下す。同様に、Qより、3辺に垂線の足Q1、Q2、Q3を下す。PのP1、P2、P3、Q1
    Q2、Q3に関する対称点をP1’、P2’、P3’、Q1’、Q2’、Q3’とすると、この6点は、Q
    を中心とする円周上にある。

  

(証明) 点Pに対して、点P1’、P2’、P3’、Q1’、Q2’、Q3’の取り方から、

 △P123∽△P1’P2’P3’ 、△Q123∽△Q1’Q2’Q3’ (相似比 2) である。

  
 6点P1、P2、P3、Q1、Q2、Q3を通る円は、6点P1’、P2’、P3’、Q1’、Q2’、Q3’を通る

円に相似拡大される。

 その円の中心は、Pに関して点Oを2倍に相似拡大すれば、Qとなる。  (証終)


定理  △ABCにおいて、等角共役点をP、Qとする。Pより、3辺に垂線の足P1、P2、P3
    下す。同様に、Qより、3辺に垂線の足Q1、Q2、Q3を下す。QのP1、P2、P3、Q1
    Q2、Q3に関する対称点をP1”、P2”、P3”、Q1”、Q2”、Q3”とすると、この6点は、P
    を中心とする円周上にある。

(証明) 上記と同様にして示される。  (証終)


 りらひいさんからのコメントです。(令和5年6月30日付け)

 一般化された「点に関する共役関係」(自己共役な点を4つ持つもの)について書き込んでお
きます。

 1点を通る4直線の複比を [l1,l2;l3,l4] のように書き、1直線上にある4点の複比を
[P1,P2;P3,P4] のように書く。

 点Dは直線BC、CA、AB上にないとする。4つの自己共役な点を持ち、その中の1つが点D
であるような共役関係のことをD-共役と書くことにし、ある点に対して、D-共役の関係にある
点のことをD-共役点と書くことにする。

<D-共役点>

 直線BC、CA、AB上にない点Pに対して、直線m1は点Aを通り、[AC,AB;AD,m1]=1/[AC,AB;AD,AP]

となる直線とし、直線m2は点Aを通り、[BA,BC;BD,m2]=1/[BA,BC;BD,BP] となる直線とし、

直線m3は点Aを通り、[CB,CA;CD,m3]=1/[CB,CA;CD,CP] となる直線とする。

 このとき、3本の直線m1、m2、m3は1点で交わる。この点が点PのD-共役点である。


 ちなみに、直線BCとADの交点をA’、CAとBDの交点をB’、ABとCDの交点をC’とすると、
D-共役の4つの自己共役な点のうち点D以外の3つの点は、点A、A’に関する点Dの調和共
役点 、点B、B’に関する点Dの調和共役点 、点C、C’に関する点Dの調和共役点である。

調和共役点とは複比が-1となる点のことをいう。


 一般化された「直線に関する共役関係」(自己共役な直線を4つもつもの)について書き込ん
でおきます。

 直線dは点A、B、Cを通らないとする。また、直線dと直線BC、CA、ABの交点をそれぞれD1、
D2、D3とする。

 4つの自己共役な直線を持ち、その中の1つが直線dであるような共役関係のことをd-共役
と書くことにし、ある直線に対してd-共役の関係にある直線のことをd-共役線と書くことにする。

<d-共役線>

 点A、B、Cを通らない直線lと直線BC、CA、ABの交点をそれぞれL1、L2、L3とする。

 点M1は直線BC上にあり、[B,C;D1,M1]=1/[B,C;D1,L1] となる点とし、点M2は直線CA上に
あり、[C,A;D2,M2]=1/[C,A;D2,L2] となる点とし、点M3は直線AB上にあり、
[A,B;D3,M3]=1/[A,B;D3,L3] となる点とする。

 このとき、3つの点M1、M2、M3は1直線上にある。この直線が直線lのd-共役線である。


 ちなみに、d-共役の4つの自己共役な直線のうち直線d以外の3本の直線は、直線BC、AD1
に関する直線dの調和共役線、直線CA、BD2に関する直線dの調和共役線、直線AB、CD3に
関する直線dの調和共役線である。

調和共役線とは複比が-1となる直線のことをいう。



  以下、工事中!



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