・整数解の問題                          S.H 氏

 整数解の問題としては、

 xy−2x−3y+1=0 を満たす整数解の組 ( x ,y ) を求めよ。

のような問題が、高校生レベルとしては妥当なところだろう。

 (整数)*(整数)=(整数)

の形に式変形することがポイントとなる。

(解) 与式より、 (x−3)(y−2)=5 なので、

 (x−3,y−2)=(5,1)、(1,5)、(−5,−1)、(−1,−5)

よって、 (x,y)=(8,3)、(4,7)、(−2,1)、(2,−3)  (終)

 この応用として、次の問題を考えてみよう。

問題  3/x+2/y=1 を満たす整数解の組 ( x ,y ) を求めよ。

(解) 与式より、分母を払って、 xy−2x−3y=0 から、(x−3)(y−2)=6

(x−3,y−2)

=(6,1)、(1,6)、(−6,−1)、(−1,−6)、(3,2)、(2,3)、(−3,−2)、(−2,−3)

よって、(x,y)=(9,3)、(4,8)、(−3,1)、(2,−4)、(6,4)、(5,5)、(0,0)、(1,−2)

ここで、 xy≠0 なので、 (x,y)=(0,0) は不適

よって、求める解は、

 (x,y)=(9,3)、(4,8)、(−3,1)、(2,−4)、(6,4)、(5,5)、(1,−2)  (終)


 このように、 (整数)*(整数)=(整数) の形に式変形することが整数解の問題の基本
的なテクニックであるが、次のような問題については無力である。新たなテクニックが必要と
なる。

 それは、不等式の評価を用いて、どんどん文字の個数を減らす方法である。


問題  方程式 2xyz=x+y+z を満たす自然数解の組(x,y,z)を求めよ。

(解) 式の対称性から、1≦x≦y≦z として考える。

 このとき、 2x2z≦2xyz=x+y+z≦3z から、 2x2≦3 で、 x=1 と確定。

 このとき、

 2yz=y+z+1 となる。 ・・・ この形は、(整数)*(整数)=(整数) が適用できる!

すなわち、 (y−1/2)(z−1/2)=3/4 より、(2y−1)(2z−1)=3 と書けるので、

   2y−1=1 、2z−1=3  すなわち、 y=1 、z=2

 以上から、求める自然数解の組(x,y,z)は、

 (1,1,2)、(1,2,1)、(2,1,1)

の3通り。  (終)


(コメント) もっとたくさんあるかと思いきや、意外に少なかったですね!


 読者のために練習問題を残しておこう。(令和3年7月4日付け)

練習問題  方程式 xyz=x+y+z を満たす正の整数の解の組 (x,y,z) を求めよ。


(解) 1≦x≦y≦z とすると、 x2z≦xyz=x+y+z≦3z より、 x2≦3

 よって、x=1 と確定

 このとき、 yz=y+z+1 より、 (y−1)(z−1)=2 なので、

 y−1=1 、z−1=2 すなわち、 y=2 、z=3

 以上から、求める自然数解の組(x,y,z)は、

 (1,2,3)、(1,3,2)、(2,1,3)、(2,3,1)、(3,1,2)、(3,2,1)

の6通り。  (終)


 「整数問題」に類題がある。

島根大学医学部(2014)

 a、b、c、n を自然数とし、a≦b≦c かつ n(a+b+c)=abc を満たすとする。

(1) a=b=c のとき、nは3の倍数であることを示せ。

(2) n=3のとき、自然数の組(a,b,c)をすべて求めよ。


 ここでは、(別解)を考えてみよう。

(別解)(1) 題意より、 3na=a3 なので、 3n=a2 となる。このとき、a2 すなわち、a は3

     の倍数となる。a=3k (kは自然数) と書けるので、 3n=9k2

     すなわち、 n=3k2 となり、nは3の倍数である。

(2) 題意より、 3(a+b+c)=abc なので、 a2c≦abc=3(a+b+c)≦9c

 よって、 a2≦9 より、 a=1、2、3

 a=1 のとき、 bc=3(1+b+c) から、 (b−3)(c−3)=12

  (b−3,c−3)=(1,12)、(2,6)、(3,4) から、 (b,c)=(4,15)、(5,9)、(6,7)

 a=2 のとき、 2bc=3(2+b+c) から、 (2b−3)(2c−3)=21

  (2b−3,2c−3)=(1,21)、(3,7) から、 (b,c)=(2,12)、(3,5)

 a=3 のとき、 bc=3+b+c から、 (b−1)(c−1)=4

  (b−1,c−1)=(1,4)、(2,2) から、 (b,c)=(2,5)、(3,3)

  (b,c)=(2,5)は、 b<a で不適なので、 (b,c)=(3,3) のみ。

 以上から、求める解は、

(a,b,c)=(1,4,15)、(1,5,9)、(1,6,7)、(2,2,12)、(2,3,5)、(3,3,3)

(終)


 東京女子大学(1991)で、次のような問題が出題されている。

問題  方程式 abcd=a+b+c+d を満たす自然数の解の組 (a,b,c,d) を求めよ。

(解) 1≦a≦b≦c≦d とすると、a3d≦abcd=a+b+c+d≦4d より、a3≦4 なので、

 a=1 と確定 このとき、 bcd=1+b+c+d

 同様にして、 b2d≦bcd=1+b+c+d≦4d より、 b2≦4 なので、 b=1 、2

 b=1 のとき、 cd=c+d+2 より、 (c−1)(d−1)=3 なので、

 c−1=1 、d−1=3 すなわち、 c=2 、d=4

 b=2 のとき、 2cd=c+d+3 より、 (2c−1)(2d−1)=7 なので、

 2c−1=1 、2d−1=7 すなわち、 c=1 、d=4 これは、 c<b で不適

 以上から、求める自然数解の組(a,b,c,d)は、

(1,1,2,4)、(1,1,4,2)、(1,2,1,4)、(1,2,4,1)、(1,4,1,2)、(1,4,2,1)、
(2,1,1,4)、(2,1,4,1)、(2,4,1,1)、(4,1,1,2)、(4,1,2,1)、(4,2,1,1)

の12通り。  (終)



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