レンズは、両側の面が球面になっている透明体である。レンズの軸上にある光点Aから出た
光が、どこに像を生じるかは、光学での一つの興味あるテーマとなっている。
レンズの中心Oから光源Aまでの距離を a、レンズの中心Oから像Bまでの距離を
b、レン
ズの中心Oから焦点Fまでの距離を f とすると、次のようなレンズの公式が成り立つ。
ただし、a、b、f は正負をつけて考えるものとする。
光源については、レンズの前方のとき・・・・・ a>0
レンズの後方のとき・・・・・ a<0
像については、レンズの後方(実像)のとき・・・・・ b>0
レンズの前方(虚像)のとき・・・・・ b<0
焦点距離(像空間焦点距離)については、凸レンズのとき・・・・・ f>0
凹レンズのとき・・・・・ f<0
練習問題を一つやってみよう。
練習問題 焦点距離50cmの凸レンズの前方25cmにある光点の像の位置を求めよ。
また、実像か虚像かを明らかにせよ。
(解) レンズの公式より、 1/25+1/b=1/50 より、 b=−50
よって、レンズの前方50cmのところに虚像ができる。 (終)
このように、光学の世界では、レンズの公式を解くことが多い。これに対して、次のような
計算図表が知られている。
上図で、X軸とZ軸、Y軸とZ軸はそれぞれ 60°の角をなす。また、各軸の目盛は同じも
のとする。
(計算図表の使い方) | ||
例えば、a=3.8、b=2.3 のとき、 | を満たすc の値を求めるには、上図 | |
の赤線に定規をあわせ、c の値を読み取ればよい。 c=1.42 位と読み取れるでしょう。 (実際に、計算で求めると、c=1.432 位) |
数学的背景 △OAB=△OAC+△OBC より、
(1/2)absin120°=(1/2)acsin60°+(1/2)bcsin60°である。
よって、ab=ac+bc となり、両辺を abc で割って、
私が高校のときに学んだ教科書に、次のような問題があった。
点Oから出る3つの半直線OX、OY、OZがあって、∠XOZ=∠ZOY=60°とする。1つ
の直線が、OX、OY、OZと交わる点をそれぞれA、B、Cとし、OA=a、OB=b、OC=c
とお
くとき、
が成り立つことを示せ。
在学中は、単なる面積の公式の応用問題という認識しかなく、その重要性にあまり気づか
なかった。今はじめてその意味を知り、その性質の素晴らしさに驚いている。
(参考文献:コロソフ著 木村君男 訳 数学課外よみもの(東京図書))
(追記) レンズの公式を用いる問題に最近遭遇した。(平成27年2月16日付け)
焦点距離 f の凸レンズの左方15cmのところに長さaのローソクをおいたら、凸レンズの
右方に長さ2aの像ができた。このとき、f の値を求めよ。
(解) レンズの公式より、 1/15+1/3f=1/f が成り立つので、両辺を15f 倍して、
f+5=15 よって、求める焦点距離は、f=10(cm) (終)
(追記) 当HPがいつもお世話になっているHN「よおすけ」さんから、上記の「数学的背景」
で用いられた手法の類題をいただきました。(令和3年10月16日付け)
△ABCの辺BC上に点Dがある。∠BAD=α、∠CAD=β、AB=y、AC=x、AD=zとおく。
このとき、 sinA/z=sinα/x+sinβ/y が成り立つことを証明せよ。
(解) △ABC=△ABD+△ADC より、
(1/2)xy・sinA=(1/2)yz・sinα+(1/2)zx・sinβ
両辺を(1/2)xyz で割って、 sinA/z=sinα/x+sinβ/y が成り立つ。 (終)