カプレカー操作について               戻る

 3個の数字を並べ替えて、一番大きい数と一番小さい数を作る。3桁にならないときは、左
側の 0 はそのままで、3桁にする。この2つの数の差をとり、新しい数を作る。

 このような操作を、カプレカー操作(カプレカル過程)という。

(注)U.R.カプレカー:インドの数学者で、1940年代に、この問題を考え出したらしい。

 3桁の数に対して、この操作を有限回行うと、実は、ある数に到達し、その後、カプレカー
操作を行っても、その数が繰り返されるだけになる。

 ただし、数の配列によっては、000 という場合もあり得る。このような自明な場合について
は、考えないことにする。

(例) 2、5、9 のとき    952−259=693
                  963−369=594
                  954−459=495
                  954−459=495
                  ・・・・・・・・・・・・・・・・

 4桁の数に対しても、このような現象は存在する。

(例) 1、5、6、9 のとき  9651−1569=8082
                  8820−0288=8532
                  8532−2358=6174
                  7641−1467=6174
                  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 この現象を、数学的に実証してみよう。

(3桁の数の場合)

 3桁の数 abc (9≧a≧b≧c≧0)にカプレカー操作を行い、できる数の各桁が、a,b,c
で表されるときを考える。
                   abc - cba = KLM

       ここで、 M=10+c−a 、L=10+b−1−b=9 、K=a−1−c

   このとき、 (K,L,M)=(b,a,c) または (c,a,b) である。

(K,L,M)=(b,a,c) のとき、 10+c−a=c, a=9 より 1=0 となり、矛盾。

(K,L,M)=(c,a,b) のとき、 a−1−c=c, a=9, 10+c−a=b 
   これを解いて、 a=9, b=5, c=4

  従って、差が 495 になると、以後繰り返す。

(4桁の数の場合)

 4桁の数 abcd (9≧a≧b≧c≧d≧0)にカプレカー操作を行い、できる数の各桁が、
a,b,c,d で表されるときを考える。
                       abcd - dcba = KLMN

 ここで、 b=c とすると、 N=10+d−a 、M=9 、L=9 、K=a−1−d

 このとき、 9≧a≧b≧c≧d≧0 から、a=b=c=9 で、N=d+1 、K=8−d となる。

               N=c 、K=d のとき、d=8 かつ d=4 となり、矛盾。
               N=d 、K=c  のとき、1=0 となり、矛盾。

 よって、上記条件のもとでは、b=c という場合は起こりえない。従って、b>c としてよい。

このとき、
  N=10+d−a 、M=10+c−1−b=9+c−b 、L=b−1−c 、K=a−d

 N=d とすると、a=10 となるので、起こりえない。L=b も明らかに起こりえない。

 M=c とすると、a=b=9 で、 K=9−d  L=8−c  N=d+1 となる。

  このとき、(K,L,N)の可能性として、(9,9,d)、(9,d,9)、(d,9,9) の場合がある
 が、何れに対しても、矛盾を得る。
 実際に、K=9 、L=9 、N=d のとき、1=0 となり、矛盾。
       K=9 、L=d 、N=9 のとき、d=8 かつ d=0 となり、矛盾。
       K=d 、L=9 、N=9 のとき、d が整数であることに矛盾。

 よって、M=c という場合も起こりえない。

 K=a とすると、d=0 で、L=b−1−c 、M=9+c−b 、N=10−a

 このとき、(L,M,N)の可能性として、

          (b,c,0)、(b,0,c)、(c,b,0)、(c,0,b)、(0,b,c)、(0,c,b)

 の場合があるが、何れに対しても、矛盾を得る。
 実際に、L=b 、M=c 、N=0 のとき、a=10 となり、矛盾。
       L=b 、M=0 、N=c のとき、c=−1 となり、矛盾。
       L=c 、M=b 、N=0 のとき、a=10 となり、矛盾。
       L=c 、M=0 、N=b のとき、b=15 となり、矛盾。
       L=0 、M=b 、N=c のとき、a<b となり、矛盾。
       L=0 、M=c 、N=b のとき、a<b となり、矛盾。

 よって、K=a という場合も起こりえない。

 以上から、起こりえる場合は次の通りとなる。

   (K,L,M,N)=(d,c,b,a) のとき、d が分数となり、矛盾。
   (K,L,M,N)=(d,c,a,b) のとき、c が分数となり、矛盾。
   (K,L,M,N)=(d,a,b,c) のとき、b=10 となり、矛盾。
   (K,L,M,N)=(c,d,b,a) のとき、a≧b に矛盾。
   (K,L,M,N)=(c,d,a,b) のとき、b が分数となり、矛盾。
   (K,L,M,N)=(c,a,d,b) のとき、c≧d に矛盾。
   (K,L,M,N)=(b,a,d,c) のとき、d≧0 に矛盾。
   (K,L,M,N)=(b,c,d,a) のとき、a が分数となり、矛盾。
   (K,L,M,N)=(b,d,a,c) のとき、連立方程式を解いて、
         a=7, b=6, c=4, d=1

 従って、差が 6174 になると、以後繰り返す。

 5桁の数については、カプレカー操作をしても、上記のような数は存在しないことが知ら
れている。6桁以上の数についても、同様の議論は存在するが、3桁、4桁のように、唯
一つというインパクトの視点から考えると、面白みに欠ける。

(参考文献:西山 豊 著  人とヒトデとサッカーボール (三省堂))


(追記) ある会合で、神奈川在住の西山さんという方から、上記のカプレカー操作の問
    題に関するお話を伺った。私自身、この問題について当HPでアップロードしたこと
    すら忘れていて、とても新鮮な話に聞こえた。2002年2月9日のことなので、2年
    近く前になる。今改めて読み返してみると、証明と思っていたことが実は全然証明
    になっていないことに気づき、愕然としている。

     上記で示したことは、4桁の数で繰り返しになる数があれば、それは「6174」し
    かないということだけで、全ての4桁の数が、カプレカー操作により「6174」に行き
    つくということは証明していない。

     今回、証明の不備に気づく機会を与えていただいた西山さんに感謝したい。


定理  各位の数が全て同じでない4桁の数は全て、カプレカー操作により、
    「6174」に辿りつく。


 4桁の数 abcd を考える。ただし、各位の数は、全て同じ数ではないものとする。
このとき、
        A=103a+102b+10c+d  (9≧a≧b≧c≧d≧0)
としてよい。
 一方、小さい順に並べた数は、B=103d+102c+10b+a と書けるので、

       A−B=103(a−d)+102(b−c)+10(c−b)+(d−a)
          =(103−1)(a−d)+(102−10)(b−c)
          =999(a−d)+90(b−c)
   条件より、
       a−d=1,2,3,・・・,9
       b−c=0,1,2,・・・,9
   したがって、
       A−B の形の数は、全部で 9×10=90 (個)
   ある。
    次の表は、A−B の計算の結果出てくる可能性のある4桁の数一覧である。

A−B b−c
a−d 999 1089 1179 1269 1359 1449 1539 1629 1719 1809
1998 2088 2178 2268 2358 2448 2538 2628 2718 2808
2997 3087 3177 3267 3357 3447 3537 3267 3717 3807
3996 4086 4176 4266 4356 4446 4536 4626 4716 4806
4995 5085 5175 5265 5355 5445 5535 5625 5715 5805
5994 6084 6174 6264 6354 6444 6534 6624 6714 6804
6993 7083 7173 7263 7353 7443 7533 7623 7713 7803
7992 8082 8172 8262 8352 8442 8532 8622 8712 8802
8991 9081 9171 9261 9351 9441 9531 9621 9711 9801

 カプレカー操作の特性から、上記90個の数全てについて検証する必要はなく、次の30
個について調べれば十分である。

10
9990 9981 9972 9963 9954 9810 8820 8730 8640 8550
11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
9711 8721 7731 7641 7551 9621 8622 7632 6642 6552
21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
9531 8532 7533 6543 5553 9441 8442 7443 6444 5544

 簡単な計算から、これらの数は全てカプレカー操作により、「6174」という数に到達する
ことが分かる。
 実際に、出現する数のパターン番号で計算経過を示せば、次のようになる。

22 14 6174
13 24 22 14 6174
19 14 6174
25 22 14 6174
16 22 14 6174
12 28 19 14 6174
10 13 24 22 14 6174
11 22 14 6174
15 25 22 14 6174
17 24 22 14 6174
18 20 19 14 6174
21 12 28 19 14 6174
23 14 6174
26 13 24 22 14 6174
27 25 22 14 6174
29 22 14 6174
30 16 22 14 6174

 以上により、定理は証明された。

 同様の方法により、3桁の場合についても証明される。

(参考文献:M.ラインズ 著 片山孝次 訳  数 その意外な表情 (岩波書店))


(追記) 平成22年5月4日付け

 当HPの掲示板「出会いの泉」に、当HPがいつもお世話になっているGAI さんが「カプレカ
ー操作」の話題を取り上げられた。(平成22年4月26日付け)

 GAI さんは、「1467法則」「1089法則」と名付けられた。

1467法則

 各位が異なる4桁で、各位の数字を大きい順に並べ替えて出来る4桁の数字から小さい
順に並べ替えて出来る数字を引く。こうして出来る4桁の数に対して、同様な操作を繰り返
す。これを繰り返していくと必ず1467のサイクルに入る。

(コメント) 4桁の整数は、カプレカー操作によりすべて「6174」に収斂することが分かっ
      ている。

1089法則

 各位が異なる3桁で、各位の数字を大きい順に並べ替えて出来る3桁の数字から小さい
順に並べ替えて出来る数字を引く。こうして出来る3桁の数と、この数の各位の数字を逆順
にした数を足すと必ず和が1089になる。

(コメント) 3桁の整数は、カプレカー操作によりすべて「495」に収斂することが分かっ
      ている。よって、 495+594=1089 である。

 これに似た法則は他にもあるだろうか?もし、発見された方はこちらまでご教示下さい。