回転体の体積
非回転体の体積は、切り口を巧妙に選ぶと面白いように体積が求められる。
例 放物線 Y=3/4−X2 を Y軸の周りに回転してできる立体を、K とおく。この立体 K を、
回転軸と 45°をなす平面 H で切断したとき、平面の上方の部分の体積を求めよ。
(東京大学)
XYZ空間において、立体 K は、方程式 Z≦3/4−X2−Y2 で与えられるものとしてよい。
|
この立体を、平面 H : Z=Y で切断する。 その結果できる立体のうち、平面 H の上方 にある立体を、平面 X = t で切ったときの切 り口の図形は、方程式 Z≦−Y2+3/4−t2 (ただし、Z≧Y) となる。(下図) |
||
α+β=−1 、αβ=t2−3/4 なので、
S=(1/6)(β−α)3=(1/6){(β−α)2}3/2
=(1/6){(α+β)2−4αβ}3/2=(4/3)(1−t2)3/2
このとき、求める体積 V は、
置換積分により、 V=π/2 となる。
このような非回転体の体積に対して、回転体の体積の計算は、面白みに欠けるところが
あるが、その方法論には微分積分の考え方のエッセンスが含まれているものと考えられる
ので、このページで整理しておこうと思う。
左図のように、曲線 Y=f(X) が、直 |
||
ぞれ M、M’とおくと、次の不等式が成り立つ。 |
Δx → 0 のとき、M、M’ → PH なので、
となる。したがって、求める体積 V は、次の定積分により求められる。
( ここで、 | , | である。) |
この公式は、次のように考えても得られる。 |
|
において、 |
なので、
よって、
ここで、
なので、
が成り立つ。
(注意) PH=PQcosθ なので、上記の公式は、
とも書ける。
例 放物線 Y=X2 と直線 Y=X で囲まれた部分を直線の周りに回転させてできる立体の
体積を求めよ。
求める体積 V は、
となる。
(参考) 上記の例の問題は、教科書等では通常次のように解かれている。
左図において、求める体積 V は、
ここで、
なので、
よって、
読者のために、練習問題を残しておこう。
練習問題
左図において、2曲線で囲まれる図形を直線の
周りに回転させてできる立体の体積を求めよ。
(答は、(2/3)(485−252log6)π かな?)
(追記) 平成25年9月9日付け
慶應義塾大学 理工(2013) でこのタイプの問題が出題された。慶應らしく、計算が複
雑になるように意識的に問題が作られているところが心憎い。
放物線 y=/2x2 と直線 y=x で囲まれた図形を、直線 y=x のまわりに1回転してで
きる立体の体積Vを求めたい。
(1) r≧0 とする。直線 y=x 上にあり原点Oからの距離が r となる点のうち、x 座標が0
以上の点をPとする。点Pを通り、直線 y=x に垂直な直線をLとすると、Lの方程式は
y=( イ )となる。また、放物線 y=/2x2 上にあるのは、r=0 と r=( ロ )のと
きである。
(2) 0≦r≦( ロ )とし、点Pと直線Lを(1)のようにとる。直線Lと放物線 y=/2x2 の
交点のうち、x 座標が0以上の点をQとする。点Pと点Qの距離PQの2乗を r を用いて
表すと、PQ2=( ハ )となる。
(3) 求める立体の体積Vが、V=π∫0(ロ)( ハ )dr となることを用いて、Vを求めなさ
い。
(略解) (1) y=−x+r 、r=2 (2) r2+6r+2−2(r+1)√(4r+1)
(3) π/15
(追記) 平成23年12月11日付け
上記の話題について、当HP読者のHN「十六夜♪」さんから12月10日付けでメールを頂
いた。
斜回転体の傘型分割で、「扇形の面積×dx」を集めて計算するのが普通らしいのですが、
私は高校時代から、斜回転体の体積は、「傘型分割→押しつぶす」方式で計算していまし
た。
押しつぶされた円柱 |
よって、求める体積は、 |
私の探し方が悪いのか、それともマイナーな考え方なのか、ネット上検索しても同様の計
算方法はなかなか見つかりません。
この考え方は、おそらく正しいと思うのですが、普通の方法なのか、それともあまりやらな
いものなのか、ぜひご意見を聞かせてください。
(コメント) 結論から言うと、よく知られた普通の方法です。数学的には、
πPH2・Δxsecθ=πPH・PHsecθ・Δx=πPH・PQ・Δx
と変形し、微小部分の体積を
{(扇形の弧長)÷2}×(扇形の半径)×(厚み)=(扇形の面積)×(厚み)
と考えるのが一般的です。
「十六夜♪」さんの考え方は、この流れに沿ったもので正統的な解法と言えると思います。
(参考文献) 秋山 仁 著 「立体のとらえかた」 (駿台文庫)
第2章 立体の体積の求め方 p.61〜p.109
(閑話休題)
直線の周りの回転は、適当な座標変換(回転移動)により、座標軸の周りの回転の問題
に帰着される。
次のような問題が、よく知られている。
例 曲線 と各座標軸で囲まれた部分を、直線 y = x の周りに回転させて
できる立体の体積を求めよ。(お茶の水女子大学)
Hint: 2曲線を原点の周りに45°回転させて考える。
曲線の方程式は、X2=X−(1/2) となる。
(答は、π/48 かな?)
この方法は、私が高校生の頃よく用いられた解法である。計算が煩雑すぎて、あまりお勧
めできないが、求めたい体積が確かに求まっているということが実感できる解法である。
(参考文献:谷口 勝 著 微分・積分 (旺文社)
小原實晃 著 直線 l の周りの回転体の体積 (数研通信))
(追記) 平成21年7月1日付け
「熱血!平成教育学院」(フジTV系 19時〜)の6月28日放送で、回転体の形を問う問
題が出題された。
ちょっと目を引く問題だったので考えてみた。
左図のような三角形をまず、x 軸の周り
に回転させ、そのとき出来る図形を、さら
に、y 軸の周りに回転させる。
このとき出来る図形は、どのような形に
なるだろうか?
この問題は、円錐の母線からなる三角形と底面の円を同一平面に描いて考えると、どんな
図形になるかは容易に予想できるだろう。
こんな感じかな?
この立体の体積を求めることは、数学Vの手頃な演習問題になるだろう。
x2+y2=1 と x+2y−2=0 の交点の y 座標は、1 または 3/5
よって、
となる。
平成27年度入試 東京大学前期理系で次のような回転体の体積の問題が出題された。
何も難しいところはなく教科書的で良心的な出題と言えよう。
問題 aを正の実数とし、pを正の有理数とする。
座標平面上の2つの曲線 y=axp (x>0)と y=log x (x>0)を考える。この2つの
曲線の共有点が1点のみであるとし、その共有点をQとする。
以下の問いに答えよ。必要であれば、limx→∞ xp/log x=∞ を証明なしに用いてよい。
(1) aおよび点Qのx座標をpを用いて表せ。
(2) この2つの曲線とx軸で囲まれる図形を、x軸のまわりに1回転してできる立体の体積を
pを用いて表せ。
(3) (2)で得られる立体の体積が2πになるときのpの値を求めよ。
(解)(1) 曲線 y=axp (x>0)と y=log x (x>0)はともに増加関数で、前者は下に凸、
後者は上に凸のグラフである。
よって、題意を満たすためには、共有点Q(t,atp)で2曲線が接することが必要十分で
ある。
したがって、 atp=log t 、 aptp-1=1/t より、 plog t=1 すなわち、 t=e1/p
このとき、 ae=1/p より、 a=1/(ep)
(2) V=π∫0e1/p a2x2p dx−π∫1e1/p (log x)2dx
=π(a2/(2p+1))[x2p+1]0e1/p−π([x(log x)2]1e1/p−2∫1e1/p (log x)dx)
=π(a2/(2p+1))e(2p+1)/p−πe1/p(1/p)2+2π([xlog x]1e1/p−∫1e1/pdx)
=π(a2/(2p+1))e(2p+1)/p−πe1/p(1/p)2+2π(e1/p(1/p)−e1/p+1)
=π(a2/(2p+1))e(2p+1)/p−πe1/p((1/p)2−2/p+2)+2π
ここで、 a=1/(ep) であるので、
V=π(1/(2p+1)e2p2)e(2p+1)/p−πe1/p((1/p)2−2/p+2)+2π
=π(1/(2p+1)p2)e1/p−πe1/p((1/p)2−2/p+2)+2π
=2π{(1−2p)/(1+2p)}e1/p+2π
(3) 題意を満たすためには、 1−2p=0 すなわち、 p=1/2
(コメント) 計算の方針はすぐ立ちますが、それを実行する計算力が求められていますね!