023 | 平成21年度前期 | 京都大学 | 理系・乙 | ・・・ | 1次変換(数学C) | 標準 |
あと何年かすると高校数学の標準的な履修内容から「行列・1次変換」が消える。このこと
を意識したように、今年度は難関大学において、1次変換の問題が、これまでのストックをは
き出すように目白押しだ。
京都大学 理系・乙(2009)
を ad−bc=1 をみたす行列とする(a、b、c、d は実数)。自然数 n に対 | |
して、平面上の点 Pn( xn , yn ) を |
により定める。OP1、OP2 の長さが 1 のとき、すべての n に対して OPn の長さが 1 で
あることを示せ。ここで、O は原点である。
同様の問題 :
を ad−bc=1 をみたす行列(a、b、c、d は実数)とし、正の整数 n に対 | |
して、 |
により、 xn 、 yn を定める。 x2 + y2 =x3 + y3 =1 ならば、すべての n に対して
xn + yn =1 であることを示せ。
が京都大学 理系・甲(2009)でも出題されている。多少表現が異なっているが、全く
同一の問題である。(甲と乙で、添え数にズレがあることに注意!)
ひたすら成分計算することにより自ずから正解に到達しえることだろう。
(解) x1=a 、 y1 =c より、 a2+c2=1
x2=a2+bc 、 y2 =c(a+d) において、ad−bc=1 より、 bc=ad−1 なので、
x2=a2+bc=a2+ad−1=a(a+d)−1 、 y2 =c(a+d)
このとき、 {a(a+d)−1}2+c2(a+d)2=1 より、
(a2+c2)(a+d)2−2a(a+d)+1=1
a2+c2=1 なので、 (a+d)2−2a(a+d)=0
よって、 (a+d)(d−a)=0 より、 a+d=0 または d=a
(イ) a+d=0 のとき、
Cayley-Hamilton の定理より、 A2−(a+d)A+(ad−bc)E=O
ここで、 a+d=0 、ad−bc=1 より、 A2=−E
したがって、自然数 n に対して、行列 An は、 A 、−E 、−A 、 E 、 A 、・・・ なので、
OP1 の長さが 1 のとき、すべての n に対して OPn の長さは 1 となる。
(ロ) d=a のとき、
a2+c2=1 、ad−bc=1 より、 a2+c2=1 、a2−bc=1
辺々引いて、 c(b+c)=0 より、 c=0 または b+c=0
(@) c=0 のとき、 a=d=±1
このとき、 x1=±1 、 y1 =0 より、 x2=(±1)2 、 y2 =0 、・・・
一般に、 xn=(±1)n 、 yn =0 なので、すべての n に対して OPn の長さは
1 となる。
(A) b+c=0 のとき、 b=−c で、かつ a2+c2=1 、 ad−bc=1
そこで、 a=cosθ とおくと、 c=±sinθ となり、
行列 A は原点中心の角θまたは−θの回転移動を表す1次変換の行列となる。
よって、OP1 の長さが 1 のとき、すべての n に対して OPn の長さは 1 となる。
(終)
平成21年3月9日付けで、当HPがいつもお世話になっているS(H)さんが、上記の問題
の条件を満たす行列Aについて、次のような視座を示された。
x1=a 、 y1 =c より、 a2+c2=1 なので、 a=cosθ とおくと、
c=±sinθ となる。
このとき、 cosθ=cos(±θ) 、 ±sinθ=sin(±θ) (復号同順) であるの
で、最初から、 a=cosθ 、c=sinθ とおいても一般性は失われない。
このとき、 ad−bc=1 において、
c=0 とすると、 a=±1 で、 ad=1 より、 d=±1 (復号同順)
明らかに、すべての n に対して OPn の長さは 1 となる。
よって、 c≠0 として、 b=(d・cosθ−1)/sinθ なので、
x2=cos2θ+d・cosθ−1=d・cosθ−sin2θ
y2 =sinθ・cosθ+d・sinθ=sinθ(cosθ+d)
x22+y22=1 なので、 (d・cosθ−sin2θ)2+sin2θ(cosθ+d)2=1
d2・cos2θ+sin4θ+sin2θ・cos2θ+d2・sin2θ=1
よって、 d2=1−sin4θ−sin2θ・cos2θ=1−sin2θ=cos2θ より、
d=cosθ または d=−cosθ
d=cosθ のとき、 b=(cos2θ−1)/sinθ=−sinθ
このとき得られる行列Aは原点中心、角θの回転移動を表すので、
OP1 の長さが 1 のとき、すべての n に対して OPn の長さは 1 となる。
d=−cosθ のとき、 b=(−cos2θ−1)/sinθ=sinθ−2/sinθ
このとき得られる行列Aは、 A2=−E なる性質を有するので、
OP1 の長さが 1 のとき、すべての n に対して OPn の長さは 1 となる。
(コメント) 上記の解答に比べて、何かスッキリしたような...感じですね!