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022 | 平成21年度前期 | 横浜国立大学 | 工学部 | ・・・ | 微分積分(数学V) | 標準 |
この問題は、ひたすら計算で、受験生の根気と忍耐が試される問題と言えよう。
横浜国立大学 工学部前期(2009)
平面上に3点 O 、A 、B があり、OA=a 、OB=b (0<a<b) で OAとOBのなす角θ
は 0<θ≦π/2 をみたす。点Cを OC=OA+OBで定める。また、Oから引いた半直線
OA上に点Pを OA<OP となるようにとる。直線PCと直線OBの交点をQとし、AP=x
、
PQ2=F(x) とするとき、次の問いに答えよ。
(1) F(x) を x , a , b , θ を用いて表せ。
(2) 第2次導関数 F”(x) は x >0 のときF”(x)>0 をみたすことを示せ。
(3) a=1、b=、cosθ=1/
のとき、PQの長さの最小値を求めよ。
(解) (1)
左図において、
OP=((x+a)/a)OA は明らか。
また、 BQ : b+BQ = a : x+a より、
BQ=ab/x となる。
よって、 OQ=b+ab/x=b(x+a)/x より、
OQ=((x+a)/x)OB
このとき、 F(x)=PQ2=|OQ−OP|2=(x+a)2(x2−2bxcosθ+b2)/x2 となる。
(2) F’(x)=2{x4+(a−bcosθ)x3+ab(acosθ−b)x−a2b2}/x3
F”(x)=2{x4+2ab2x−2a2bxcosθ+3a2b2}/x4
=2{x4+2a2b(1−cosθ)x+2ab(b−a)x+3a2b2}/x4
このとき、 x>0 において、 1−cosθ≧0 、 b−a>0 から、 F”(x)>0
(F’(x)の計算が結構大変でした!)
(3) 条件より、
F(x)=(x+1)2(x2−2x+6)/x2=(x4+3x2+10x+6)/x2
なので、 F’(x)=2(x+1)(x−2)(x2+x+3)/x3=0 より、 x=2
x=2 のとき、 F(x)は極小かつ最小となり、最小値は 27/2
よって、PQの最小値は、 3/2 となる。 (終)
(コメント) 上記では、意図的に極力途中計算を省略してみた。解法的には教科書レベル
であり、何ら難しいことを聞いていないことを確認してもらうためである。
しかし、一度自分で上記の計算をやってみると、嫌気がさすくらいに大変な計
算量に圧倒されるはずである。ある者は途中で計算を放り出してしまうかもしれ
ない。
横国は往々にして、このような計算力を問う問題がお好きなようだ。横市もそ
うかな?
予備校が公開している解答を参考にすれば、F(x)を、
F(x)=(1+2a/x+a2/x2)(x2−2bxcosθ+b2)
=x2−2bxcosθ+b2+2a(x−2bcosθ+b2/x)+a2−(2a2bcosθ)/x+a2b2/x2
の形に展開してから第2次導関数を計算する方が楽なようだ!
実際に、 F’(x)=2x−2bcosθ+2a(1−b2/x2)+(2a2bcosθ)/x2−2a2b2/x3
F”(x)=2+4ab2/x3−4a2bcosθ/x3+6a2b2/x4
=2{x4+2ab2x−2a2bxcosθ+3a2b2}/x4
となる。後は、本解と同様に、
F”(x)=2{x4+2a2b(1−cosθ)x+2ab(b−a)x+3a2b2}/x4
と式変形して、 F”(x)>0 が示される。
(コメント) 腕力を過信して、積の導関数・商の導関数の公式でぐりぐり計算するよりも、軽
妙に展開して軽くかわす計算がとてもおしゃれですね!
(1)で、余弦定理から、
F(x)=(x+a)2+b2(x+a)2/x2−2bcosθ(x+a)2/x
とした方が後の展開が楽だったかもしれない!もしかして、出題者は、受験生がこのよう
に導くことを想定して、その後の計算にはあまり無頓着だったかも...?
F”(x)を計算してみよう。
F’(x)=2(x+a)+b2{2x(x+a)−2(x+a)2}/x3−2bcosθ{2(x+a)x−(x+a)2}/x2
=2(x+a)−ab2(2x+a)/x3−2bcosθ(x2−a2)/x2
よって、
F”(x)=2−ab2{2x−3(2x+a)}/x4−2a2bcosθ/x3
=2+ab2(4x+3a)/x4−2a2bcosθ/x3
=2{x4+2ab2x−2a2bxcosθ+3a2b2}/x4
とすれば、後は、本解と同様になる。(な〜るほど...計算はそれほど大変じゃない!)
平成21年3月7日付けで当HPがいつもお世話になっているS(H)さんが、判別式を利用
する解法を提示された。
F(x)=(x4+3x2+10x+6)/x2=k とおき、分母を払って整理すると、
x4+(3−k)x2+10x+6=0
この判別式は、S(H)さんの計算によれば、
D=16k(2k−27)(3k2+17k+135)
となるらしい。このことから、臨界点は2箇所(k=0 と k=27/2)あり、幾何学的に考え
て、求める最小値は、k=27/2 の場合に与えられることが分かる。
S(H)さんの解法に触発されて判別式(というか...重解)を意識した次の解法を思いつ
いた。
G(x)=x4+3x2+10x+6 、 H(x)=kx2
とおき、2つの曲線が共通接線を持つ場合を考えればよい。
共通接線の接点の x 座標を t とおくと、 G(t)=H(t) 、 G’(t)=H’(t)
すなわち、 t4+3t2+10t+6=kt2 、 4t3+6t+10=2kt
第2式より、 2t4+3t2+5t=kt2 なので、第1式を辺々引くと、
t4−5t−6=0
因数定理により、 (t+1)(t−2)(t2+t+3)=0 なので、 t=−1、2
t>0 であるので、t=−1 は不適
t=2 のとき、 k=27/2
幾何学的に考えて、k=27/2 のとき、F(x)=(x4+3x2+10x+6)/x2 は最小。
(コメント) 上記では、文字 k を消去しましたが、文字 t を消去すれば判別式が得られま
すね!
また、S(H)さんによれば、次のような視座も可能のようだ。
BQ=y とおくと、 OQ=b+ab/x=b(x+a)/x より、 b+y=b(x+a)/x
よって、 bx+xy=bx+ab より、 xy=ab
ここで、 a=1、b=、cosθ=1/
とすれば、
G( x , y )=xy−=0 のとき、
F( x , y )=(x+1)2+(y+)2−2(x+1)(y+
)/
の極値を調べればよい。 F( x , y ) の極値を与える点( s , t )は次の式を満たす。
2(x+1)−2(y+)/
+λy=0
2(y+)−2(x+1)/
+λx=0
xy−=0
このとき 2(x+1)x−2x(y+)/
+λ
=0 より、
2(x+1)x−2x(y+
)+6λ=0 すなわち、 2
x2−2
+6λ=0
2(y+)y−2(x+1)y/
+λ
=0 より、
2(y+
)y−2(x+1)y+6λ=0 すなわち、 2
y2+10y−2
+6λ=0
より、辺々引いて、 2(x2−y2)−10y=0 となる。
すなわち、 (x2−y2)−5y=0
y=/x を代入して、
x2−6
/x2−5
/x=0 より、 x4−5x−6=0
因数分解して、 (x+1)(x−2)(x2+x+3)=0
x>0 であることから、 x=2 で、このとき、 y=/2
幾何学的に考えて、 x=2 、y=/2 のとき、 F( x , y )は極小かつ最小となる。
(コメント) パソコンを使うと、一瞬で、「x=2 において、極小かつ最小」が見えますね!