016 | 平成21年度 | 慶應義塾大学 | 理工 | ・・・ | 確率と漸化式(数学V) | 標準 |
そろそろ平成21年度私立大学の天王山が終わろうとしている。塾生からとってもホットな
入試問題が入手できたので、どこの予備校よりもいち早く解答を公開したいと思う。
理工学部は、5題120分で解かなければならないが、真面目に計算をしようとすると大変
な計算量になる。空欄補充形式にしているのは、大学側の若干の親心なのだろう。
第1問 (1)三角関数の半角の公式または加法定理を用いる問題(数学T・U)
(2)面積計算と、接点、垂線の足を求める問題(数学U)
(3)回転体の体積の問題(数学V)
第2問 確率と漸化式、期待値を無限級数から求めさせる問題(数学V・A・B)
第3問 円と双曲線が接する場合を考えさせる問題(数学U・C)
第4問 3次方程式の整数解の個数とその極限値に関する問題(数学U・V)
第5問 円から円、直線から直線に移る1次変換を求めさせる問題(数学C)
このページでは、私自身が最も興味を持った第2問について考えたいと思う。
慶應義塾大学 理工(2009)
さいころを投げるという試行を繰り返し行う。ただし、2回以上連続して5以上の目が出た
場合は、それ以降の試行は行わないものとする。
n 回目の試行が行われ、かつ、n 回目に出た目が4以下になる確率を pn とする。この
とき、p1=2/3 、p2=( ) 、p3=( ) である。また、p0=1 とおく。
n ≧0 に対して、pn 、pn+1 、pn+2 の間に成立する関係式を求め、それを
pn+2−βpn+1=α(pn+1−βpn) (α>β)
の形に書くと、α=( ) である。よって、pn=/2( ) となる。
また、n 回目の試行が行われ、かつ、n 回目に出た目が5以上になる確率を qn とする。
このとき、 q1=1/3 である。
n≧2 とするとき、qn と pn-1 、pn-2 の間には、qn=( )なる関係式が成り立つ。
したがって、5以上の目が出る回数の期待値は、
である。
この問題では、「2回以上連続して5以上の目が出た場合は、それ以降の試行は行わな
い」という条件を適切に使えるかどうかがポイントになるだろう。
(解)
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左表より、 p2=(2/3)(2/3)+(1/3)(2/3)=2/3 |
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さらに、 p3=(2/3)(2/3)(2/3)+(2/3)(1/3)(2/3)+(1/3)(2/3)(2/3)=16/27 |
同様にして、pn 、pn+1 、pn+2 の間に成立する関係式を考える。2回以上連続して5以上
の目が出た場合は、それ以降の試行は行わないので、起こりうる場合は下表のようになる。
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上表より、 pn+2=pn+1×(2/3)+pn×(1/3)(2/3)=(2/3)pn+1+(2/9)pn |
このとき、特性方程式は、 x2−(2/3)x−(2/9)=0 すなわち、 9x2−6x−2=0
これを解いて、
、
このとき、 漸化式 pn+2−(2/3)pn+1−(2/9)pn=0 は、
pn+2−βpn+1=α(pn+1−βpn)
と書ける。 よって、 pn+1−βpn=αn(p1−βp0)
ここで、 p1−βp0=2/3−β=α なので、 pn+1−βpn=αn+1
同様にして、 pn+2−αpn+1=β(pn+1−αpn) 、 p1−αp0=β より、
pn+1−αpn=βn+1
したがって、2式を辺々引いて、 (α−β)pn=αn+1−βn+1
ここで、 α−β=2/3=2/ より、 pn=(/2)(αn+1−βn+1) となる。
次に、qn 、pn-1 、pn-2 の間に成立する関係式を考える。この場合も、2回以上連続して
5以上の目が出た場合は、それ以降の試行は行わないという条件が決定的な役割を果た
す。 n ≧2 のとき、起こりうる場合は下表のようになる。
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上表より、 qn =pn-1×(1/3)+pn-2×(1/3)(1/3)=(1/3)pn-1+(1/9)pn-2
したがって、5以上の目が出る回数の期待値は、 −1<α、β<1 に注意して、
となる。 (終)
(コメント) 確率というのは出だしだけで、ほとんど数学V・数学Bの問題ですね!定められ
た時間内に完答するのは大変な問題だと思います。正直に告白すると、「2回以上
連続して5以上の目が出た場合は、それ以降の試行は行わない」という条件を巧
妙に使い回して漸化式を得るのに結構時間を費やしました... f(^^;)