015 | 平成 8年度前期 | 東京工業大学 | 理系 | ・・・ | 微分積分(数学V) | 標準 |
受験生にとって苦手な整数問題(第1問)で驚かせておいて、この第4問で帳尻を合わせ
た感のある微分積分の標準問題である。数学Vで学ぶいろいろな知識が試される点で受
験数学の良問と言えよう。
東京工業大学 理系(1996)
関数 F(x) は微分可能で、次の(イ)、(ロ)、(ハ)を満たすものとする。
(イ) x≧0 のとき、 F’(x)>0
(ロ) F(0)=a (ただし、 a>1)
(ハ) 曲線 y=F(x) 上の点P( t , F(t) ) ( t≧0 ) における接線と
x 軸との交点
をQ、法線と x 軸との交点をRとしたとき、線分QRの長さ G(t)
は関係式
G(t)/F(t)=F(t)/F’(t)
を満たす。
このとき、次の問いに答えよ。
(1) x>0 で、F’(x) は単調増加で、h>0 に対し、F(x+h)−F(x)≧h
を満たすことを示せ。
(2) 点Pが曲線 y=F(x) ( x≧0 ) 上を動くとき、G(t) の最小値を求めよ。
この問題構成では、(1)が主要部で、(2)は「おまけ」の問題だろう。
(解) (1) 流通座標を、(X,Y)として、点Pにおける接線の方程式は、
Y=F’(t)(X−t)+F(t)
Y=0 として、 X=t−F(t)/F’(t)
これは、点Qの x 座標である。 同様にして、点Pにおける法線の方程式は、
Y={−1/F’(t)}(X−t)+F(t)
Y=0 として、 X=t+F(t)F’(t)
これは、点Rの x 座標である。
(イ)より、F(x)は単調に増加するので、
G(t)=t+F(t)F’(t)−{t−F(t)/F’(t)}=F(t)F’(t)+F(t)/F’(t)
与えられた関係式 G(t)/F(t)=F(t)/F’(t) に代入して、整理すると、
F(t)=F’(t)2+1
両辺を微分して、 F’(t)=2F’(t)F”(t) となるので、F’(t)>0 から、
F”(t)=1/2>0
よって、 x>0 で、F’(x)は単調増加である。
また、平均値の定理より、
F(x+h)−F(x)=hF’(c) ( x<c<x+h
)
となる c が存在する。
F’(x)は単調増加であるので、 F’(c)≧F’(0)≧ より、
F(x+h)−F(x)≧h
が成り立つ。 (終)
(2)については、当初次のように解いていた。
(誤答例) F(t)>0 、F’(t)>0 であるので、相加平均と相乗平均との関係より、
{F(t)F’(t)+F(t)/F’(t)}/2≧=a
なので、 G(t)=F(t)F’(t)+F(t)/F’(t)≧2a
よって、求める最小値は、 2a である。 (終)
上記について、当HP読者のY.N.さんから解答の誤りのご指摘を頂いた。
(平成24年10月16日付け)
最小値において、a>1より等号成立条件を満たす t は存在しません。aにおける場合分
けを行って最小値を決定するしかない問題だと思います。
1<a≦4/3 のとき、 16/9 、a>4/3 のとき、 a2/ かと思います。
(コメント) 相加平均と相乗平均との関係で、等号が成立する条件は、
F(t)F’(t)=F(t)/F’(t) すなわち F’(t)=1
のときで、=a>1 から、それは起こりえないということですね!
ちょっとうっかりしました。ご指摘頂いたY.N.さんに感謝します。
(2)について、再考してみた。
(解) (2) 与えられた関係式 G(t)/F(t)=F(t)/F’(t) より、 G(t)=F(t)2/F’(t)
また、 F(t)=F’(t)2+1 より、 G(t)2=F(t)4/(F(t)−1)
G(t)>0 なので、G(t)2 が最小となるとき、G(t)も最小となる。
そこで、F(t)=x とおくと、x≧a(>1)で、このxの範囲で、関数
y=x4/(x−1)の増
減を考える。 y’=x3(3x−4)/(x−1)2 より、x=4/3 で極小かつ最小となる。
よって、 1<a≦4/3 のとき、 x=4/3 で、G(t)は最小となる。
このとき、最小値は、 (4/3)4/(4/3−1)=256/27 より、
G(t)の最小値は、 16/3=16/9
a>4/3 のとき、 x=a で、G(t)は最小となる。
このとき、最小値は、 a4/(a−1) なので、
G(t)の最小値は、 a2/
(コメント) 冒頭で、(2)は、(1)の「おまけ」の問題としましたが、撤回します。(2)もそれ自
体で微分積分の力を試すのに最適な良問ですね。