不等式の問題
大学入試では、不等式に関わる問題が頻出である。今までまとまったページがなかったの
で、ここで一念発起し、新しいページを起こしてまとめていきたい。
次の東北大学 後期文系(1992)の問題も手頃な不等式の問題である。
問題 x≧0 のとき、つねに x3−ax+1≧0 が成り立つように実数aの範囲を定めよ。
(解) F(x)=x3−ax+1 とおくと、 F’(x)=3x2−a である。
よって、a≦0 のとき、 F’(x)≧0 なので、 F(x)は単調に増加する。
F(0)=1 なので、x≧0 のとき、つねに F(x)≧0 が成り立つ。
a>0 のとき、F’(x)=0 から、 x=±√(a/3)
x≧0 のとき、x=√(a/3) において、極小かつ最小で、最小値 1−2√(a/3)3
よって、条件を満たすためには、 1−2√(a/3)3≧0 であればよい。
(a/3)3≦1/4 から、 a/3≦(1/2) より、 0<a≦(3/2)
以上から、求める実数aの範囲は、 a≦(3/2) (終)
(追記) 令和7年5月16日付け
次の東北大学 後期理系(1993)の問題も手頃な不等式の問題である。
問題 2つの数列{an}、{bn}をそれぞれ
ak=1/k! (k=1、2、・・・) 、bk=1/(k(k+1)) (k=1、2、・・・)
と定める。また、n=1、2、・・・ に対して、
sn=Σk=1n (−1)kak 、tn=Σk=1n bk 、un=Σk=1n ak
とおく。このとき、任意のnについて、次の(1)、(2)、(3)を証明せよ。
(1) sn<0
(2) tn<1
(3) un<2
(解)(1) s1=−a1=−1<0 、s2=−a1+a2=−1+1/2=−1/2<0
s2m=Σk=12m (−1)kak=−a1+a2−a3+a4−・・・−a2m-1+a2m
=−(a1−a2)−(a3−a4)−・・・−(a2m-1−a2m)
すべての自然数mに対して、
a2m-1−a2m=1/(2m−1)!−1/(2m)!=(2m−1)/(2m)!>0 なので、
s2m<0 である。
また、 s2m+1=s2m−a2m+1<0 である。
以上から、すべての自然数nに対して、sn<0 である。
(2) tn=Σk=1n bk=Σk=1n (1/k−1/(k+1))=1−1/(n+1)<1
(3) k!=k・(k−1)・・・・・3・2・1≧2k-1 より、
un=Σk=1n ak=Σk=1n 1/k!≦Σk=1n 1/2k-1=2(1−1/2n)<2 (終)
(追記) 令和7年5月26日付け
次の東北大学 前期理系(1994)の問題も手頃な不等式の問題である。
問題 nを1以上の整数とする。区間 0≦x≦1 で連続な関数F(x)が、
整数 k=0、1、・・・、n−1 に対して、∫01 xkF(x)dx=0 を満たしているものとする。
(1) t が実数全体を動くときの G(t)=∫01 |x−t|ndx の最小値と、それを与える t の
値を求めよ。
(2) すべての実数 t に対して、次の等式が成り立つことを示せ。
∫01 (x−t)nF(x)dx=∫01 xnF(x)dx
(3) 関数|F(x)|の 0≦x≦1 における最大値をMとするとき、次の不等式を示せ。
|∫01 xnF(x)dx|≦M/(2n(n+1))
(解)(1) t≦0 のとき、0≦x≦1 で、|x−t|=x−t なので、
G(t)=∫01 (x−t)ndx=((1−t)n+1−(−t)n+1)/(n+1)
このとき、 G’(t)=−(1−t)n+(−t)n=−((1−t)n−(−t)n) において、
t≦0 より、 1−t>−t≧0 から、 (1−t)n>(−t)n なので、 G’(t)<0
よって、t≦0 において、G(t)は単調に減少して、G(0)=1/(n+1)
0≦t≦1 のとき、
G(t)=∫0t (−x+t)ndx +∫t1 (x−t)ndx
=[−(−x+t)n+1/(n+1)]0t+[(x−t)n+1/(n+1)]t1
=tn+1/(n+1)+(1−t)n+1/(n+1)=(tn+1+(1−t)n+1)/(n+1)
G’(t)=tn−(1−t)n=(2t−1)(tn-1+tn-2(1−t)+・・・+(1−t)n-1)=0 より、t=1/2
t=1/2 のとき、G(t)は極小かつ最小で、最小値 G(1/2)=1/(2n(n+1))
また、 G(0)=G(1)=1/(n+1) である。
t≧1 のとき、0≦x≦1 で、|x−t|=−x+t なので、
G(t)=∫01 (−x+t)ndx=(−(t−1)n+1+tn+1)/(n+1)
このとき、 G’(t)=−(t−1)n+tn において、
t≧1 より、 0≦t−1<t から、 (t−1)n<tn なので、 G’(t)>0
よって、t≧1 において、G(t)は単調に増加して、G(1)=1/(n+1)
以上から、t=1/2 のとき、G(t)は最小で、最小値 1/(2n(n+1)) である。
(2) 2項定理より、(x−t)n=xn+Σk=0n-1 nCkxk(−t)n-k
条件より、整数 k=0、1、・・・、n−1 に対して、∫01 xkF(x)dx=0 を満たしているので、
∫01 (x−t)nF(x)dx=∫01 xnF(x)dx
が成り立つ。
(3) |∫01 xnF(x)dx|=|∫01 (x−t)nF(x)dx|≦∫01 |x−t|n|F(x)|dx
≦MG(t) が全ての実数 t について成り立つので、特に、t=1/2 のとき、
|∫01 xnF(x)dx|≦M/(2n(n+1))
となる。 (終)
(追記) 令和7年7月21日付け
次の東北大学 前期理系(1997)の問題は、面白い問題である。
問題 (1) 関数 F(x)=(log x)/x (x>0) の極値、および y=F(x)のグラフと x 軸との
交点を求め、y=F(x)のグラフの概形をかけ。
(2) a を正の数とする。不等式 ax≧xa が、x≧a である任意の x に対して成り立つような、
a の範囲を求めよ。
(解)(1) F’(x)=(1−log x)/x2=0 より、 x=e
このとき、増減表は、
x=e のとき、F(x)は極大で、極大値は、1/e で、極小値はない。
y=F(x)のグラフと x 軸との交点は、(1,0)である。
また、 x → +0 のとき、 F(x) → −∞ で、x → +∞ のとき、 F(x) → 0 なので、
y=F(x)のグラフの概形は下図。
(2) 不等式 ax≧xa より、 x・log a≧a・log x すなわち、 (log a)/a ≧(log x)/x
x≧a に対して、F(a)≧F(x) から、F(x)は減少関数である。
よって、 a≧e であればよい。 (終)
(追記) 令和7年7月25日付け
次の東北大学 前期文系(1997)の問題は、基本問題である。
問題 2次方程式 x2+ax+b=0 が2つの解をもち、かつその差が1であるとする。
(1) bをaで表せ。
(2) 2次関数 y=x2+ax+b のグラフが、領域 2x+y<0 を通らないような a の範囲を
求めよ。
(解)(1) 2つの解をα、β(α<β)とおくと、解と係数の関係から、α+β=−a、αβ=b
題意より、 β−α=1 すなわち、 (β−α)2=1 から、 (α+β)2−4αβ=1
よって、 a2−4b=1 より、 b=(a2−1)/4
(2) 2次関数 y=x2+ax+(a2−1)/4 のグラフが、y≧−2x 上にあればよいので、
x2+ax+(a2−1)/4=−2x すなわち、 x2+(a+2)x+(a2−1)/4=0 の判別式を
Dとおくと、 D=(a+2)2−(a2−1)=4a+5≦0 より、 a≦−5/4 (終)
(追記) 令和7年8月18日付け
次の東北大学 前期理系(1998)の問題は、基本問題である。
問題 a と b は±1、0でない実数とする。実数 x、y が sinx/siny=a 、cosx/cosy=b
を満たしているとする。
(1) tan2y を a と b を用いて表せ。
(2) 点(a,b) の存在する範囲をab平面に図示せよ。
(解)(1) a2sin2y+b2cos2y=sin2x+cos2x=1 より、 a2tan2y+b2=1/cos2y
よって、 a2tan2y+b2=1+tan2y より、 tan2y=(1−b2)/(a2−1)
(2) (1−b2)/(a2−1)>0 から、 (a2−1)(1−b2)>0
よって、 a2−1>0 、1−b2>0 または、 a2−1<0 、1−b2<0
求める点(a,b) の存在する範囲は下図。ただし、境界線は含まない。
(終)
(追記) 令和7年9月8日付け
次の東北大学 後期文系(1998)の問題は、題意を理解するのが大変な問題である。
問題 nは2以上の自然数とする。
(1) 数列 a1,a2,・・・,an,an+1 において、2≦j≦n を満たすすべての j に対して、不等式
(A) aj≧(aj-1+aj+1)/2
が成り立つとき、2≦k≦n を満たすすべてのkに対して、不等式
(B) ak≧(a1+(k−1)ak+1)/k
が成り立つことを数学的帰納法を用いて示せ。
(2) 1≦j≦n+1 を満たす j に対して、bj=1+(j−1)/{n(n−1)}とし、aj=log2bj と
すると、数列 a1,a2,・・・,an,an+1 は不等式(A)を満たすことを示せ。
(3) 次の不等式が成り立つことを示せ。
(1+1/n)n≧(1+1/(n−1))n-1
(解)(1) 「(A)ならば(B)」が成り立つことを、nに関する数学的帰納法で示す。
n=2 のとき、 a2≧(a1+a3)/2 が成り立つとすると、これは、(B)において、
a2≧(a1+a3)/2
なので、n=2のとき、成り立つことを示す。
n=m(m≧2) のとき成り立つと仮定する。すなわち、
aj≧(aj-1+aj+1)/2 (2≦j≦m) ならば、 am≧(a1+(m−1)am+1)/m
n=m+1 のとき、 am+1≧(am+am+2)/2 が成り立つとすると、
am+1≧(am+am+2)/2≧((a1+(m−1)am+1)/m+am+2)/2
すなわち、 2mam+1≧a1+(m−1)am+1+mam+2 より、(m+1)am+1≧a1+mam+2
よって、 am+1≧(a1+mam+2)/(m+1) となり、n=m+1のときも成り立つことを示す。
以上から、2以上の自然数nに対して、「(A)ならば(B)」が成り立つ。
(2) bj=1+(j−1)/{n(n−1)} のとき、
bj-1=1+(j−2)/{n(n−1)} 、bj+1=1+j/{n(n−1)} なので、
bj-1+bj+1=2+(2j−2)/{n(n−1)}=2bj
よって、 bj=(bj-1+bj+1)/2≧√(bj-1bj+1) から、 aj≧(aj-1+aj+1)/2 が成り立つ。
(3) (1)より、ak≧(a1+(k−1)ak+1)/k が成り立つ。ここで、b1=1、a1=0 なので、
log2(1+(k−1)/{n(n−1)})≧{(k−1)/k}log2{1+k/{n(n−1)}
ここで、k=n を代入して、 log2(1+1/n)≧{(n−1)/n}log2{1+1/(n−1)} より、
nlog2(1+1/n)≧(n−1)log2(1+1/(n−1))
すなわち、 (1+1/n)n≧(1+1/(n−1))n-1 が成り立つ。 (終)
(コメント) この問題は選択問題の一つなんですが、他方の方が易しかったですね!この問
題を選んだ受験生は不運でした!
(追記) 令和7年9月9日付け
次の東北大学 前期理系(1999)の問題は、何となく出来ちゃった感が否めない。
問題 x>0において、関数F(x)を
F(x)={(x2+1)/2}log{(x2+1)/2}+(x−1)2/2−x2logx
で定める。対数は自然対数である。
(1) 導関数F’(x)が単調増加であることを示せ。
(2) F(x)≧0であることを示し、F(x)=0となる x を求めよ。
(3) 正の実数p、qについて、不等式
{(p2+q2)/2}log{(p2+q2)/2}≧−(p−q)2/2+(p2logp2+q2logq2)/2)
が成立することを示せ。
(解)(1) F’(x)=xlog{(x2+1)/2}+x+x−1−2xlogx−x
=xlog{(x2+1)/2}+x−1−2xlogx
F”(x)=log{(x2+1)/2}+2x2/(x2+1)+1−2(logx+1)
=log{(x2+1)/2}+2x2/(x2+1)+1−2(logx+1)
=log{(x2+1)/(2x2)}+(x2−1)/(x2+1)
ここで、(x2+1)/(2x2)=t とおくと、 x2=1/(2t−1)>0 から、t>1/2 で、
(x2−1)/(x2+1)=(1/(2t−1)−1)/(1/(2t−1)+1)=(2−2t)/(2t)=(1−t)/t
なので、 F”(x)=logt+(1−t)/t
そこで、 y=logt+(1−t)/t とおくと、 y’=1/t−1/t2=(t−1)/t2=0 より、t=1 で
yは、t=1で極小かつ最小で、最小値は、0 となるので、 F”(x)≧0
よって、導関数F’(x)は単調増加である。
(2) (1)より、F’(1)=0 なので、F(x)は、x=1で極小かつ最小で、最小値は、0 となる
ので、F(x)≧0である。F(x)=0となる x は、x=1
(3) F(x)={(x2+1)/2}log{(x2+1)/2}+(x−1)2/2−x2logx において、(2)より、
F(p/q)={(p2/q2+1)/2}log{(p2/q2+1)/2}+(p/q−1)2/2−(p2/q2)log(p/q)≧0
すなわち、 {(p2+q2)/2}log{(p2/q2+1)/2}+(p−q)2/2−p2log(p/q)≧0 より、
{(p2+q2)/2}(log{(p2+q2)/2}−logq2)+(p−q)2/2−p2(logp−logq)≧0
よって、
{(p2+q2)/2}(log{(p2+q2)/2}≧{(p2+q2)/2}logq2−(p−q)2/2+p2(logp−logq)
すなわち、
{(p2+q2)/2}(log{(p2+q2)/2}≧−(p−q)2/2+p2logp+q2logq
より、
{(p2+q2)/2}(log{(p2+q2)/2}≧−(p−q)2/2+(p2logp2+q2logq2)/2 (終)
(追記) 令和7年10月6日付け
次の東北大学 後期理系(2000)の問題は、フェルマー点の問題である。
問題 (1) 0でない平面ベクトルa、b、cが a/|a|+b/|b|+c/|c|=0 を
満たすとき、3つのベクトルの互いになす角をそれぞれ求めよ。
(2) a≠0、x を任意の平面ベクトルとするとき、 |a−x|≧|a|−x・a/|a| で
あることを示せ。
(3) すべての内角が120°未満の△ABCの内部の点Xから各頂点までの距離の和
|XA|+|XB|+|XC| が最小となるようなXを求めよ。
(解)(1) |a/|a|+b/|b||=1 の両辺を平方して、
1+2a・b/(|a||b|)+1=1 より、 a・b/(|a||b|)=−1/2
よって、ベクトルa、b のなす角は、120°
同様にして、ベクトルb、c のなす角、ベクトルc、a のなす角も120°である。
(2) |a|−x・a/|a|<0 ならば、|a−x|≧|a|−x・a/|a| は自明なので、
|a|−x・a/|a|≧0 のときを考えればよい。
|a−x|2−(|a|−x・a/|a|)2
=|a|2−2a・x+|x|2−|a|2+2a・x−(x・a)2/|a|2
=|x|2−(x・a)2/|a|2
ここで、 (x・a)2≦|x|2|a|2 すなわち、 (x・a)2/|a|2≦|x|2 なので、
|a−x|2−(|a|−x・a/|a|)2 ≧0
すなわち、 |a−x|2≧(|a|−x・a/|a|)2
|a−x|≧0 、|a|−x・a/|a|≧0 なので、|a−x|≧|a|−x・a/|a|
等号成立は、 x=0 または aとxが平行の時に限る。
(3) |XA|+|XB|+|XC|
≧|a|−x・a/|a|+|b|−x・b/|b|+|c|−x・c/|c|
=|a|+|b|+|c|−x・(a/|a|+b/|b|+c/|c|)
△ABC内の点Pを始点とし、PA=a、PB=b、PC=c、PX=x とおく。
このとき、 ∠APB=∠BPC=∠CPA=120°であるような点Pをとる。
(1)より、 a/|a|+b/|b|+c/|c|=0 なので、
|XA|+|XB|+|XC|≧|PA|+|PB|+|PC|
等号成立は、x=0 すなわち、X=P のときで、このとき、最小となる。 (終)
以下、工事中!